百年の孤独　　　　　ガルシア・マルケス　　　　新潮社

書だなにかれこれ10年以上積読（つんどく）状態になっていた本で、全く手をつけない訳ではなく、年に一度か二度、挟んでおいた栞の続きを読み始めるのだが、数日にして挫折、又栞を挟んでは積読状況になる―――ということの繰り返しだった。

要するに、「つまらない」のだ。

しかし、10年以上も積読でありながらも読了をあきらめなかったのは、寺山修司をはじめ、名高い読書家といわれる人々の絶賛と、溢れる著名な書評家たちの「ラテン文学を代表する名作」といった評論、それにマルケスがこの作品でノーベル賞をとったという評価が気になり、この作品の良さが分からない自分がわるいのではないか――という恐怖心に煽られた所為もある。

今回、この歳で諦めてしまえばもう二度と読み切る意欲をうしなってしまいそうだと一大決心をして残り半分ほどを一気に読了したが―――最後まで、この作品の何処がいいのか、寺山修司はこの作品の何処を評価しているのか―――が全然理解できなかった。

小説というものは、いわゆるあらすじがあるもの、あるいは筋らしきものがない観念小説、あるいは幻想小説、といった範疇にありそうなものだという先入観があるだけに、そのいずれもに該当しない（と思える）この小説を読み切ることは結局、自分自身にとっては苦行にしか過ぎなかったような気さえする。

敢えていえば、筋書き（ストーリー）といえるものはないではない。ブエンディア一族が蜃気楼の村マコンドを創設し、隆盛を迎えながらも、やがて滅亡するまでの100年間を描いた小説、ともいえる。

近い血縁での婚姻が続いたせいで豚の尻尾が生えた奇形児が生まれてしまったことに怖れを抱いた始祖の一人であるウルスラが性行為を拒否していたが、そのことを馬鹿にした男を、ウルスラの又従兄弟で夫のホセ・アルカディオ殺してしまう。しかし殺された男がホセとウルスラの前に現れ続けるので、それを嫌って夫妻は故郷を離れてジャングルに、新しい蜃気楼の村「マコンド」を開拓し、マコンドは何代かに亘って繁栄するが―――と続くのだ――――。

400頁に亘るこの小説が何を言おうとしているのか、書評家たちが何に感動しているのか、終始わからないままだったことを、（恥ずかしながら）正直に告白せざるを得ない―――。

別に恥ずかしがらなくてもよいし、むしろ、それが自分の独自の読み方だと思えば、却って誇らしいような気もしなくはない。

そういえば、自分はそもそも寺山修司や彼の劇団が好きではなかったし、学生時代から体質に合わなかったことでもあるし―――。

(06年12月発行)