わたしは哺乳類です　　　　リアム・ドリュー　　　インターシフト　

我々人類はこの地球上に生きる900万種類とも言われる生命種の一つであり、門では脊索動物門、亜門では脊椎動物亜門、綱では哺乳綱に属する霊長目ヒト科ヒト族ホモサピエンス種の生物種である。

他の多くの生命種と同じくいわゆる哺乳類と呼ばれる動物の一つである。この哺乳類には他の動物たちと異なる様々な特徴があるが、生物進化論的にみればその特徴は、それぞれ不思議なところが多い。

生物進化を研究してきた著者によるこの哺乳類に関する疑問の数々は、彼個人の経験、あるいは彼が結婚し子供を得たことによって体験的に湧いて来た疑問に基づいており、生物進化論的な興味というよりは、我々の共感しうる個人的エッセー風の一冊になっている。

まず、第一章が、彼がサッカーの試合中に股間にボールを受け悶絶した経験から生じたものだ。なぜヒトの陰嚢は、こんなところにあるのだろうか？　熱に弱いといわれる精子を守る為だという説があるが、それでは陰嚢を持たないゾウなどの哺乳類の説明がつかない―――メスに見せびらかすため―――精子を体外において鍛える為――などの諸説があるが、いずれも難がある。

男性ならば一度ならずも嫌という程、タマタマを何かにぶつけて「ご婦人方には分からない激痛」を味わったことがあるはずで、この第一章から引き付けられた。（股間にファウルボールがぶつかり悶絶する捕手の姿に、同情しつつ大笑いしてしまう男性陣のいかに多いことか）

ヒトを巡る様々な疑問たとえば、なぜ体毛を失ったのか、女性の出産の苦しみ、といった疑問や、ヒト以外の哺乳類の疑問－－－哺乳類ながらも卵を産むカモノハシの疑問――等々、あらためて我々ヒトとその属する哺乳類の不思議さ、そして生命進化の不思議さに興味をひかれる一冊だ。

（19年6月発行）