ルポ教育困難校　　　朝比奈なを　　　　　朝日新聞社　　

日本の高校進学率は98.8％であるという。すなわち、義務教育である中学を卒業した子供たちの全員が何らかの高校に進学している訳だ。

従って高校の中には一流大学進学を目指す子供たちが集まるいわゆる「進学校」を頂点とする生徒たちの能力に基づくランク付けが出来てしまうのは必然といえる。

従来、能力別ランクでいうと偏差値が30台の底辺校といわれる高校のことを、著者は「教育困難校」と言い換えて、これらの高校の実態と問題点、あるいは解決法をかつてこの教育困難校の教師を務めていた体験をもとに語ったのが本書だ。

九九が言えない大学生がいるとか、アルファベットが書けない大学生がいる、といった具合にいわゆるＦランク大学生を嘲笑する記事などを良く見かけるが、そういう大学への供給先（？）としての高校があるのは容易に想像がつくが、本書はそういった高校や生徒たちを無責任に嘲笑する本ではなく、むしろ愛情をもってそれらの高校で教える教師たちの情熱と奮闘ぶり、それにその報われない現状や、自信を失い途方にくれている生徒たちに目をむけ、社会がこれらの教師や生徒たちにどう目を向けていくべきかを問いかける情熱の一冊と言ってよい。

考えさせられることの多い書であった。

（19年7月発行）