老いのゆくえ　　　黒井千治　　　　中公新書　　　

「子供叱るな来た道じゃ、年寄りわらうな行く道じゃ」というのは浄土真宗の寺にかかげてあった一日一訓だそうだが、40歳位の時に知って感心した覚えがあるが、自分が年寄りといわれる年代になると益々この言葉の深さを感じる。　

新聞に月一回位の頻度でかれこれ15年程まえから連載されている、この著者自らの老いに関するエッセーを愛読しているが、その著者も既に85歳だというから、連載しはじまったのは、丁度今のタカさん位の御年であったわけで、なんだか自分の「行く道」の道標のような気がしてきて本書も楽しく読み、時折、「そう、そう」と相槌をうったりした。

タカさんは、昨年夏、熱中症で2日連続で救急車のお世話になり、それがきっかけで車の運転を思い切ってやめたが、本書でも度々、転倒した経験を語り、又、運転免許の返納手続きについて触れているが、タカさんは未だ免許の返納はしていないが、妻が返納した時の話との符号するところも多く、まさに親しい人で一歩先を行く人の話を聞くようで、心強くなれる。

既に年老いた人ばかりではなく、まだまだ若い40代、50代の人たちも「行く道」の先達の話として読んでおかれることを勧めたい一冊だ。

（19年6月発行）