反日種族主義　　　　　李栄薫　　　　　　文芸春秋

慰安婦問題、徴用工問題での異様なまでの韓国における反日運動はまだしも、旭日旗問題などでの大騒ぎを見るにつけ、余りにも曲解、こじつけが幼稚すぎて、「もはや相手にしないでほっておこう」と思う韓国の反日だが、どうしてここまでのことをやらないと気が済まないのかを、韓国内部の学者が分析した本書を読むと、なんとなく彼等（韓国人）の「反日」の成り立ちのメカニズムが、理解できる。

韓国の歴史学者というか、韓国人の文化人類学の分析者としての著者によれば、いま文政権が主導している反日運動の根本にあるのは、韓国人の民族意識などではなく、前近代的な「種族主義（トライバリズム）」によるものだという。

著者によれば、種族主義とは、自分たち（反日を叫ぶ人達）と異なる意見は一切受付ず、韓国人の中でも自分達の意見に異を唱える人々には、強制的に自分達の意見に従わせ屈服させようとする、という実に危険極まりない考え方のことだという。

その一方では、強い相手（歴史的に見て長い間、韓国の宗主国であった中国）には、媚へつらうという性質をもっているから、国際的な共生を阻害するばかりではなく、自主性のない、国際秩序の攪乱者でしかないという存在に自国を貶めている―――というのだ。

韓国国内からこういった分析がなされ、しかもこの本がある程度韓国国内で売れているという事実に、日韓関係の行く末にいくらか希望がもてるような気がするが―――強固で前近代的な種族主義が、そういった教育で育った若い世代ほど強いという韓国の現実を思うと、やっぱりそういう人たちとは極力、関係を持たないに越したことはないという気がしてしまうが―――幾ら避けようとしても、なんでもかんでも難癖をつけようと手ぐすね引いている彼等の魔の手から逃れる方法はないとも言えるのだが―――。

（19年11月発行）