日中の失敗の本質　　　　　宮本雄二　　　　　　中公新書

古くから、日本は中国に対して「一衣帯水」の関係にある国だと認識し、漢字という同じ文字を使っていることからも親しみとあこがれを持ってきた。

しかし、実はそんなに似通った国同士でもないということは、お互いを知ることによって徐々に認識させられてきた。

そこには、かつての大国であった中国が西洋列強によって蚕食されたとか、日本の中国進出といった歴史が絡んでくるだろうし、逆に中国からみればかつては辺境の野蛮国であった日本の成り上がり的進出や、日本と中国の社会体制の違い、また近年は中国のGDPが日本のそれをはるかに抜き去っているといった事実も複雑に絡んでいる。

元中国大使である著者による日中関係の歴史とこれからのあるべき姿への提言が本書に込められているが、物理的のみならず経済的にもお互いが相変わらず「一衣帯水」の関係にあり、離れる訳にはいかないながら抜き差しならないほどの違いをかかえているという実に難しい関係に対する処方箋の困難さが語られている。

日中の関係はもはや二国間の問題ではなく、民主主義と社会主義、米中の覇権争い、資本主義と共産主義の争い、あるいは広くいえば世界政治の枠組みの中でしか語れなくなってきており実に複雑であることを改めて思い起こさせられる。

幸い多くの中国人が訪日するようになって中国側の日本の見方も徐々にかわりつつあるという。

その辺りに大きな期待を持ちつつ30年先、50年先の日中の相互理解に期待するしかないのかも。

（19年3月発行）