ふしぎな鉄道路線　　　　竹内正浩　　　　　　　NHK出版

日本ではじめて鉄道が開通（新橋―横浜間）したのは明治維新からわずか5年後のことであり、東海道線（新橋―神戸間）が全通したのも維新からわずか22年後のことである。

この間、鉄道は西南戦争、日清戦争などにおいて兵員や物資の輸送に多大な貢献をしており、鉄道の開通が明治日本の近代化、西洋化にいかに多大な貢献をしたかが、この鉄道の歴史をみただけでも分かる。

しかし当初日本の幹線としての東海道線は、海からの防御に弱いことが懸念され、中山道沿いに鉄道幹線の敷設が計画されていたことは本書を読むまで知らなかった。

地形が鉄道建設には向かなかったことなどもあってこの幹線は断念され、結局東海道で落ち着いたといった話をはじめ、かつて北九州に約一週間だけ幻の巨大駅が存在したというエピソード、又、新京成線が風水害に強い理由と鉄道連隊、新幹線の基となった戦前の、弾丸列車構想等々、鉄道が「戦争」と深く結びついて構想されたことなども改めて驚かされた。

よくこんな知られざるエピソードを発掘したものだと、著者の鉄道近代史愛に驚嘆させられる。

(19年7月発行)