21 Lessons　　　　ユヴェル・ノア・ハラリ　　　河出書房新社　

前著「サピエンス全史」「ホモ・デウス」が世界的なベストセラーとなったハラリによる三冊目だが、「サピエンス全史」では人類が過去における認知革命によっていかにその歴史を育んできたかを、「ホモ・デウス」においてはその未来が、AIとゲノム編集によってもう一度、今までの人類とは違った存在になる可能性について言及しただけに、この三冊目は全二冊のまとめ、完結編になるのかとも期待したが、意外と肩透かしをくらったような読後感だった。

確かに本書の前半では、現在の人類が到達した社会形態が自由民主主義といえるが、その自由民主主義が揺らいでいる現状に言及しているものの、後半部分では期待された揺らぐ自由民主主義への処方箋は、仏教の教えに基づく、人間自身の内面を見つめひたすら観察するという「瞑想」に戻ることだという―――。

確かにAI やゲノムは瞑想することはできないから、ノアリの三冊を通じての結論は、結局、人間賛歌なのかなぁ～とも思えるが―――何か狐につままれたような気がしないではなかった。

(19年11月発行)