FACTFULNESS　　　　ハンス・ロスリング　　　　日経BP

冒頭に3択問題が13出題されている。あてずっぽうに選ぶチンパンジー選ばせればその正答率は33％になるだろうが、これを各国の常識ある人々に出題すると、どの国においてもその正答率は驚くほど低い。すなわち人間はチンパンジーより正答率が低いということになる。

例えば、「現在、世界中の30歳男性は平均10年の学校教育を受けています。同じ年の女性は何年間学校教育を受けているでしょう」A.9年 B.6年　C.3年だが、正解はA.9年　である。しかし、この質問の正解率はもっともよかったハンガリーでさえ32％、フランスやスペイン、北欧各国にいたっては軒並み10％台であり、チンパンジーよりも低いのだ。

13の設問を一つ一つ事実（FACT）を明らかにすることによって、人々がいかにフェイクニュースに惑わされやすいか、思い込みに陥りやすいかがとかれていく。

著者によればたとえば、人間にとっては「良いこと」より「悪いこと」の方が目につきやすいし、人はどうしても直線的に考えてしまう傾向がある（故に、「このまま人口が増え続けると、世界の人口がパンクする」という思い込みに陥りがちだ）といった分析は、確かにFACTを突き付けられてみると説得力がある。

本書で教えられたのは世界は我々が思い込んでいるように「悪く」なってはいないし、寧ろ、「良く」なっているということだ。

そういえば、自分も、20年前の印象のままでひさし振りに訪れた台湾やシンガポールは、東京やニューヨークにも負けないほどに発展していて驚いたが本書の指摘する思い込みは自分も往々にしてやってしまっていることに気づかされた。

(19年1月発行)