カレーライス 重松清 新潮文庫
重松清の小説は、よく小学生の教科書に取り上げられているという。
文章がきれいでまるでつづり方教室のお手本のようなところがある上に、ストーリーがどれも誰もが思い当たる節のあるものであり、登場人物が多様ではあるが、悪人はいない―――といった教科書にピッタリのところがあるからだろう。
勿論、この著者の作品の傾向は、彼のヒット作「口笛吹いて」「その日のまえに」のような一般向け小説でも変わらない。
本書も表題作を含めてどれも著者らしい特徴を備えた作品ばかりの短編集で、実際何篇かは教科書にも載っているらしく、そんなこともあってか著者の作品は中学入試問題にもよく使われているのだとか。
掲載作9編はいずれも小学5年生の学校生活を題材にした作品であり、大人も自分の5年生だったころの。あの楽しかったが、甘酸っぱくもあった頃を思い出して楽しむことができるのではないだろうか。
(20年1月発行)