この空のかなた 須藤靖 亜紀書房
ニューヨークが大停電に見舞われた時、「夜空に光るものが一杯ある！」と新聞社に電話が殺到したという話があるが、確かに都会に住む多くの現代人にとっては星空はあまりにもなじみのない物になっているかもしれないが、高知の片田舎で育った著者は、こどもの頃からその美しさに魅せられており、それが嵩じて星空のことをもっと知りたいとおもい宇宙物理学者になったという。
確かに著者のいうとおり「人は誰でも天体の写真を眺めると本能的に美しいと感じるようです。星空を醜いと感じる人には出会ったことはありません」というのは事実であろうし、その神秘に満ちた美しさに魅せられれば、そのことをもっと知りたいと思うのは、多くの宇宙好き、天文好きに共通する所だろう。
著者にとっての同好の士であるカール・セーガンもそういう中の一人であるが、彼の足跡をはじめ、宇宙に関する数々の謎とその答えを、美しい写真を駆使し、美しい文章でつづっている本書は、実に夢のある一冊といえる。
(18年6月発行)