日本人になった祖先たち　　　篠田謙一　　　　　NHKブックス　　　　

S・オッペンハイマーの「人類の足跡10万年全史」を読んで我々現生人類はすべて共通の祖先をもち、ミトコンドリアDNA解析によって今から8万5千年前にアフリカにいたたった一人の女性の子孫であるが明らかになったことを知った。

又、このミトコンドリア・イヴの子孫がいかにして世界の隅々まで拡散していったかを追うことによって、世界各地の人々の祖先の足跡が分かるというロマンチックな人類史の面白さも学んだ。

本書は、そのオッペンハイマーの著作の内容とほぼ同じものを、より分かり易く解説し、しかも我々日本人の祖先がどのような旅路を経てこの東アジアの島国に住むに到ったかを、これまたロマンに溢れる形で解説してくれる。

ミトコンドリアDNAの解析は、我々日本人が今から2万年ほどまえから2000年前ぐらいまでの間に、北方、南方、あるいは朝鮮半島や中国から渡来した実に多様な祖先を持つことをあきらかにしている。

又、このミトコンドリアDNAを縄文人、弥生人の骨から採取し解析することで、縄文人や、弥生人の祖先の系統も分かるという。

「我々はどこから来たのか」という哲学的な疑問に、DNAが答えてくれるというのも実に愉快ではないか。