カラフル　　　　　　　森絵都　　　　　　　文春文庫　　　　　　　　

「ラン」という作品を読んでこの作家に興味を持ち、彼女の初期の作品の中でも評判の高い本書を手にとってみた。

読みやすいマンガを手にとった時のような気楽な気持ちで読めることとか、それでいてちょっと考えさせるところがあるようにも思えるこの作家の作風は、「ラン」と変わりはないようだ。

生前になんらかの罪を犯したために輪廻のサイクルからも外されてしまったぼくの魂に、天使業界から抽選に当たったという知らせが飛び込む。

もう一度下界で死にかけている人の体に乗り移り、その体を借りて生前の罪を洗うことができれば、魂を再び輪廻サイクルに戻そうというのだ。

ぼくは、いやいやながら小林真という自殺を図った少年の体に乗り移り、真の家族、そして中学校の同級生たちの中で修行をしていくことになる。

しかし、真という少年、家族の中でも孤立、学校では友人もなく勉強への意欲もないという最低の少年だった−−−。

こういったSF的な設定を使う作品の数は多いが（浅田次郎などはよく使う）、この作家の作品は冒頭述べたように、マンガ的な雰囲気がより色濃くあることもあって、「面白い」ことは間違いない。