動的平衡2　　　　　　福岡伸一　　　　　木楽舎　

生物学者である著者が、いくつかの新聞、雑誌などに発表したによるエッセーからなる本書は、前著「動的平衡」の続編だ。

売れっ子生物学者としての知見、さらには絵画、音楽や昆虫採集などの著者の趣味に関する考察などの多種の題材にわたるエッセーは著者の中々ユニークな物の考え方、そして巧みな文章と相まって中々面白い。

主題はないようでいて、やはり著者の専門である生物に関する物だといえるだろう。特に著者の主張である「生命とは機械仕掛けのものではなく、常に移り変わる動的な物、しかもその動的な平衡状態によって保たれているものだ」という点にある。

「川」というものが決して静的な状態で説明できないものであり、「水の流れ」という片時も同じものではない物が動的に平衡していることによって維持されているように、生命も片時も留まることのない動的なもののバランスによって成り立つという著者の主張は、なるほどと思わせる説得力がある。

著者の生命動的平衡論に基づくと、臓器をあたかも機械部品のようにあつかう臓器移植による医療も、「利己的な遺伝子」理論のドーキンスでさえも生命の本質がわかっていないのではないかとさえ思えてくる。そんなところは、なんだか著者がカリスマ宗教家的要素すら持っているようにさえ思えてくる。

その理論の可否は置いておくとして、「生命とは何か」に興味を持つ人にとっては必読の一冊といえるかもしれない。