マルカの長い旅　　　　ミリヤム・プレスラー　　　　徳間書店　

イェジー･コシンスキーの（「ペインテッド･バード」は、ナチスの迫害迫るポーランドで両親と離れ一人放浪し生きる6歳の男の子の物語であったが、その余りにも過酷な物語故に、あるいは作者が自殺を遂げたといったこともあって偽書ではないか（実話であって欲しくない！）という噂の耐えなかった一冊であるが、本書の物語も、まさに「ペインテッド･バード」のストーリーを、主人公を女の子にして書き換えたんのではないか思えるほどよく似たストーリーである。

実話であるというこの物語も、ドイツや嘗てナチスに協力したポーランド、オーストリア人にとっては「ウソであって欲しい」物語ではないだろうか。（やはり実話に基づいた話だというから）

ユダヤ人女医であり村のただ一人の医者であるハンナは、ある日突然村のユダヤ人狩を始めたナチスの手から守るべく娘マルカを世話になった知人の家に置いていくのだが―――。

第二次大戦中、ナチスによるユダヤ人迫害という厳しい状況下、ハンナとマルカはいかにして生き延び、そしていつ再開を果たすことができるのか―――。

母と娘が再びめぐり合うまでの日々を緊迫感あふれる筆致で描く物語は、少年少女向けとは思えないほどのスリルに満ちていて、息を詰めながら一気に読んでしまうほどの緊張感に溢れている。

母と娘がそれぞれこの受難の時期を生き抜いて再会するのだが、ホローコーストという過酷な運命を潜り抜けた後では、なんのわだかまりもない元の母と娘には戻れないという結末も、妙にリアルであり文学性を感じる。