カラスの教科書　　　　　　松原始　　　　　　　雷鳥社　　　　　　

トキの復活に日本中が一喜一憂し、ヤンバルクイナの絶滅をいかに回避すべきかに大きな国家予算が費やされているが、同じ鳥類であるカラスが「増えている！」と聞けば大半の人は「早くカラスを捕殺しろ！」と叫ぶだろう。

なにせ、カラスは白鳥や鶴のように「白く」はないし、なんとなく不吉な感じのするクロである。死肉や腐肉に群がり、ゴミの集積所ではあっという間にゴミ袋を食い破りゴミを散らかしまくる。「こんな鳥、絶滅させてしまえ！」と叫んだところで、「あの人は、非情で残酷だ！」などと非難されることもない―――動物愛護だの、愛鳥だのといったところで所詮は人間の勝手な都合でしかないということなのだが―――。

そんな世の中だが変わった人はいるもので、著者は自称「カラス屋」を名乗るほどの「カラス、Love」の方である。

動物行動学という研究分野からの「研究者としてのカラス屋」というよりも、本書を読んでみるとどうも「なにしろ、オタク的にカラスの全てが好き」という人であるようだ。

カラスは何を食べているか、どこに巣をかけ、どれ位の卵を産み、どうやって育て、寿命はどれ位なのかといったまあ、動物行動学的な観察記録（学問的というよりは、かなり趣味的な観察ではあるが）だけではなく、カラスはどんな遊びをしているのか、本当に頭はいいのか？等々になると、全く学問的ではないとまでは言わないまでも、著者のオタクの世界に誘われているようでなんとも楽しい。

なんと400ページ近い分厚い一冊ながら、著者の中々、面白いイラストなどもあってあっという間に読破できる楽しい一冊である。もっとも、だからと言ってカラス好きにはなれないようには思うが。

（参照：「可哀想なカラス」8/11/00）