魚はどこに消えた？ 片野歩 ウェッジ
東日本大震災によって東北の漁業は大きなダメージを受け、又福島原発事故による風評被害も加わって特に福島、宮城の近海での操業は大幅に低下している。
地震から4年近くが経とうとしている今、実は東北近海、特に福島県沿岸では、はっきりと各魚種の個体数、群体数の大幅回復が見られているという。
著者は、かつて世界一を誇った日本の漁獲高(1982年には1282万トン)だが、近年はピーク時の半分以下(2012年には遂に500万トンを割った)世界12位に転落してしまっている理由の最大のものは、東日本大震災後の魚体数の回復が如実に物語っているように「乱獲」によるものだという。
世界各地からの魚の輸入買付に当たっている著者は、北欧などの欧州、そしてオセアニアや北米各国では、厳格な資源管理の下、最新の漁業技術（多くは、日本で開発されたもの）を使って、漁獲高も漁業収入も増え続けているのに、日本は乱獲に歯止めがかからず世界の漁業の中で「一人負け状態」にあるという。
「ソーラン節」にあるようにかつては年間100万トンあった北海道のニシンが今や、（多少資源量が回復したといっても）年間4000トンが精々であることや、近年のサバやイワシの資源量の極端な減少は、野放図な乱獲が原因であることは、例えば、秋田沖で数年間、ハタハタの禁漁を行った結果、資源量回復の兆候が見られていることからも明らかだという。
日本にも漁獲量の割り当て制限などが全くない訳ではないが、その方式にはザルともいえる様々な欠陥があることを、著者は北欧などとの漁獲規制と具体的に比較することによって指摘しており、極めて説得力がある。
「日本の漁業は世界一」という自負から世界に目を向けることもなかった日本は、世界の漁業の常識から置いていかれ、ガラパゴス化してしまった日本だが、著者は的確な対策を打てば必ず日本の漁業は復活するであろうと、様々な提言を行っており、大いに参考になる。
ウナギにしても、結局、乱獲によって絶滅危惧種に指定されるまで何も手が打てなかった（打たなかった）、日本の漁業に対する著者の「喝」には、官民ともに耳を傾ける必要があると思う。
（参照：「幻の魚」11/26/14）
(13年8月発行)