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2014年11月
2014年の下期各月バックナンバー： 7月、 8月、
9月、 10月、 11月、12月、
＜＜2014年：11月分 タイトル＞＞
11/28 ミランコビッチ・サイクル 11/27 近くの他人 11/26 幻のサカナ 11/25 ただの人にはなりたくない！ 11/21 北京秋天
11/20 女性が輝くとは 11/19 打ち込みオーケストラ 11/18 第二次ラッダイト 11/17 サンシティーと独身税 11/14 素人には分からない
11/13 本当に重要なのは 11/12 会わなきゃよかったのに 11/11 怖い共産党 11/10 これって本当に国益か？ 11/07 少子化は止まらない
11/06 会費かみかじめ料か 11/05 汚らわしい場所 11/04 マイナス成長に備える
2014年11月28日
ミランコビッチ・サイクル
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によるとこのまま温暖化ガスの排出が続くと、今世紀末には世界の気温は4.8度上昇。現在陸地にある氷床が溶け海面が82センチも上昇するのだとか。
気温上昇による海水の体積膨張なども加味すると、今世紀末には世界の広い地域が水没、東京や大阪、ニューヨークやロンドンといった大都市には人が住めなくなるのだとか。今世紀末の世界人口は123億人（現在72億）になっているという予測を合わせて考えると、100年後の地球は、狭い陸地にとてつもない人間が暮らす、いわば満員電車の中のような状態になる―――ということになる。
もっとも、海面上昇して陸地がなくなり農業生産も落ちれば、必然的に人口増加にも歯止めがかかるだろうから未来学者が吹きまくるような満員電車状態にはなりようがないとは思うが－－－それはともかく「地球温暖化をどうにかしなければ大変なことになる！」という話題で今は持ち切りだ。
ただ、長い地球の歴史をみてみると、生命にとって地球が温暖化している時期と寒冷化している時期とを比べれば、いままでは温暖化の時期こそ生命繁栄の時代、逆に寒冷化の時期は生命にとっての危機の時期であったということが言える。
誕生以来まだわずかに500万年しか経っていない人類にとっても、温暖化よりも地球の寒冷化の方が、生存、繁栄の為には大きな障害であった。
実際問題、今からわずか2万年前までは北半球の大陸の大部分は氷床（氷河）に覆われていたいわゆる氷河期であった。人類は、この氷河期が終わり（現在は間氷期といわれる氷河期の中休み期だという説もある〉温暖化に向かいはじめてから農業を開始することで食糧増産を行い人口が増加、世界各地に拡散し現在の繁栄を得たのだ。
氷河期は一体どのような要因で起こり、そして終わるのか。ミランコビッチ説という仮説によると、次の3つの要因の内、少なくとも2つが重なる時、氷河期になるという。その3つとは。
１．地球の公転軌道は楕円であることは知られているが、その楕円軌道もその離心率は約9万年周期で変化している。離心率が大きい時期には地球はわずかながら太陽から遠ざかる。太陽から遠ざかるということは、すなわち地球が太陽から受ける熱量が微妙に減るということであり、寒冷化の要因となる。
２．地球の自転軸の傾きも22度から24.5度の間を約4万年のサイクルで変化しているが、自転軸が立っている時（22度に近い時）には、陸地が多く氷床ができやすい北半球の夏は寒くなる(現在は23.5度)。
３．地球の楕円の公転軌道の近日点（太陽と地球の距離が最も短い点）が北半球の冬に当たる時（現在の地球の近日点は1月上旬）北半球の寒冷化は進む。
この3つだが、現在は氷河期の要件としては３．だけしかないために氷河期になっていない（なれない）という説である。
ミランコビッチ説に基づいて計算すると、今から6万年後には、氷河期になる3要件が全てそろい、再び氷河期が始まるという。
約2万年前まで続いた先の氷河期、現在の北米大陸の大部分、北部ヨーロッパは氷床に覆われていたため、人類が住める陸地は限られていたし、農業生産もほとんど期待できなかったことを考えると6万年後、再び氷河期に突入した時に人類がどうなってしまうのか心配ではある。
人類がいつまでこの地球上にいるかは定かではないが、もし100年後（多分存在していると思うが）も、あるいは6万年後も―――いつまでたっても、温暖化と寒冷化の間で、心配し続けなければならないということのようだ。
(11/27/14
10:00pm)
2014年11月27日
近くの他人
先週末、長野県北部を襲ったマグニチュード6.8の地震、被害が集中した白馬村、小谷村の映像を見るとよくあれだけの被害が起きながらも死者ゼロで済んだものだとほとほと感心する。
白馬村では、地震で少なくとも10人が建物の下敷きになったというが、消防などの公的な救助が到着する前に、住民同士の助け合いによって全員が救助されたという。まさに「奇跡的な死者ゼロ」だと報じられている。
決して大きな村ではないということもあったからかもしれないが、村民同士が皆、顔見知りであり倒壊した家屋には、誰が住んでいるのか（どの辺りに寝ているか）といったことをお互いが知っていたこともあって、住民全員の安否確認が短時間でできたことが、初動が大切という災害時の救助活動がスムーズに行えた理由だとか。
新聞テレビで、この奇跡の「死者ゼロ」が詳しく報じられているが、果たしてこの地震が都会で起きたらどうなっていただろうかと思った。
東日本大震災を経験して、我が町内でもどの家に誰が住んでいるのか、（少なくとも何人住んでいるのか）といった住民台帳のようなものを完備しようという話が出て、住民もあの震災を経験したこともあって、助け合いの必要性を感じ台帳作成などには協力した。
しかしその後、集めた情報についての取扱いが中々面倒くさいことになっている。「町内のどこに誰が住んでいて、家族構成はどうなっているか」といった情報は、やはり「個人情報に属することだから」ということで以前のように、腫れ物に触るような扱いにならざるを得ないから、結局、情報の台帳は、町内会の金庫の中に厳重に保管ということになっている。
いざ災害が起きた！ということになれば、金庫を開けて台帳を見れば用は足りるということかもしれないが、白馬村のような迅速性に欠けるだろうし、一刻一秒を争う救助の場面で、役に立つか、という問題もある。
白馬村では、「住民同士が皆知り合い」という風土が美風（タカさんも羨ましいとは思うが）とされた訳だが、「都会のよいところは、隣に誰が住んでいるかも気にしないで、個人のプライバシーが完全に守られるところだ！」と考える人も少なくない。（自治会名簿を発行するだけでも、必ず数人の反対者が出る）
我が町内でも高齢者の一人暮らしが増えており、防災のボランティアグループなどでは、そういう一人暮らしの方々などを重点的に、安否確認を行う仕組みを作るなどしているが、そういうボランティア自身の高齢化も進んできていることからも、将来への不安は残る。
日本には古くから「遠い親戚より近くの他人」という言葉もあるが、高度成長期の頃から特に都会では「遠い親戚も近くの他人もいらない」という方向に個人主義が、進んで行ってしまったようにも思う―――。
あの白馬村の互助の仕組みは羨ましくは思う物の、都会暮らしでは真似ることさえ難しくなってしまっているのではないかと思わないではない。
(11/03/14 10:00pm)
2014年11月26日
幻のサカナ
秋田の名物料理であるしょっつるといえば秋田の県魚にもなっているハタハタだが、かつては北海道のニシン同様に産卵期には大群が押し寄せるといった状態で獲れたという。
昭和40年代の最盛期には年間15000トンの漁獲があったというが、その後乱獲により急激に漁獲が減り、昭和50年代後半には年間わずか200トンと最盛期の1/70以下とほぼ絶滅状態に陥ってしまった。あわてた県では、平成4年から3年間、全面禁漁を実施しその後も厳しい漁獲高規制を行って資源回復に努めた結果、近年では年間約3000トンにまで漁獲高は回復し、毎年このレベルを維持できているという。
乱獲による絶滅危機から禁漁も含む厳しい漁獲規制による資源の回復、安定的な漁獲の確保、という成功例と言える訳だが、これと同じような資源回復が図られつつあるのが、数年前に絶滅危惧種に指定された大西洋クロマグロだ。ノルウェーをはじめとする漁業管理機関が、30キロ未満の幼魚の漁獲を禁止、更に厳しい漁獲割当制度を実施して資源回復に努めた結果、資源量が徐々に回復しており、来年2015年の各国漁獲割当量は前年比20％増となったという。
ハタハタや大西洋クロマグロのこういったはっきりした数字を見る限り、太平洋クロマグロの近年の急激な資源量減と、そのとるべき対策は火を見るよりも明らかだが－－－。
国際自然保護連合（ICNU）が、太平洋クロマグロを絶滅危惧種に指定し最新のいわゆるレッドリストに掲載したという。すしなどのネタとして日本人に好まれる太平洋クロマグロの総漁獲量の8割を日本人が消費しており、漁獲においても日本がダントツ一位を占めているという実態からすれば太平洋クロマグロが絶滅してしまう前に、日本が先頭を切って漁獲制限、資源保護の旗を振らなければならないのだが―――全く上手くいっていないというから何とも情けない限りだ。
大西洋のマグロ資源量回復の第一の決め手となったのは、成魚となって産卵する3歳魚以前の幼魚、すなわち30キロ未満のマグロの漁獲禁止措置であったというが、太平洋クロマグロの場合、尾数からみると全体の99%が30キロ未満の幼魚だという。まだ、産卵期前の幼魚を根こそぎ獲ってしまえば、数年後に太平洋クロマグロが絶滅してしまうことは誰が考えても分かりそうなものだが－－－漁業者の早い者勝ちの、乱獲競争を止めることができないというのだから－－－。
30キロ以下のクロマグロはメジマグロとも呼ばれスーパーで刺身として、あるいは回転ずしなどのネタとして提供されている。まさに、我々日本人が好んで食べるからこそ、漁獲に歯止めがかからないということでもあるのだ。
さらには、養殖マグロの生簀に放たれる稚魚としては1キロ程度のいわばマグロの赤ちゃんが、年間450万匹も取られているというのだから－－－。太平洋クロマグロの赤ちゃんから、産卵前の成魚までを獲り尽くしてしまったら――。
マグロが幻のサカナになる日も遠くないかもしれない。（参照：「サンマは大丈夫か」6/19/14）
(11/25/14 10:00pm)
2014年11月25日
ただの人になりたくない！
「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人だ」という名言がある。「代議士はお前ら、ただの人とはちがうんだ！」という政治家の鼻持ちならないエリート意識の裏返しともいえる言葉だが、選挙に落ちた途端、無職になってそれまで議員歳費だけでも2200万、政党交付金やらなにやらを入れると4000万円以上あった年収がゼロになるのだから確かに「ただの人への転落感」は大変なものなのだろう。（選挙に落ちたら3日間以内に議員宿舎から退去しなければならないし、その退去費用も全額、落選議員の個人負担だというから厳しい！）
そういう大変な思いをしなければならない「ただの人への転落」だけに、なにがなんでもそれを避けようと必死になるのは当然なのかもしれないが、なにしろ代議士という職にしがみつきたい！という先生方の、節操などかなぐり捨てての、死にもの狂いのあがきを見せられる選挙民の、政治家と政治に対する信頼の喪失は、更には政治に対する軽蔑という形で跳ね返ってくるだろうし、それは日本にとって取り返しのつかないダメージになるように思えてならない。
かつて、郵政民営化に造反して自民党を除名された先生方が、次の選挙では「郵政民営化に反対しません」という誓約書に署名して自民党に復党した例があったが、あの時、当時の安倍首相は、復党議員に対して「おかえりなさい」と発言したために、70%もあった支持率を一気に20%以上落としてしまったことを思い出す。
世論が嫌ったのは、郵政選挙の最大の争点であった課題に対する見解を、選挙に受かりたいがためにコロッと180度変えた造反議員、そしてそんなあからさまな変節漢、政治家を、あっさりと受け入れてしまった自民党の節操のなさだったのだ。
突然降ってわいたような解散、年末選挙に向けて特に各党で、野党統一だとか選挙協力だとかう名の下に、節操のない動きが顕著だ。みんなの党や、次世代の党といった沈没寸前の党から、沈みゆく船から逃げ出すネズミのように他党へ乗り換えようという先生方の動きなどはまさに無節操の誹りを免れ得ないものだ。
更には、維新のように、政策協議も進んでいないのに、民主党などと選挙区調整をしようという党の動きも活発だ。
民主党の枝野幹事長が「強力な野党間の連携を図ることが、今の自民党一強を変えていくためには不可欠であり、国家のためだ」と発言したのには驚いた。政策一致もないままに、節操もなく野合することのどこが「国家のため」なのだろうか。
民主党は、元々、自民党よりも右寄りの一派と、革マルなどが支配する労組の支援を受ける左派あるいは、政局屋の小沢一派などが寄り集まった選挙互助会だから、今回も、ミソもクソも一緒の「統一候補」作りに走るのはある意味必然なのかもしれないが、それにしても、05年郵政選挙では自民党公認で当選、その後、09年、12年の選挙ではみんなの党から当選した代議士やら、民主党から除籍処分されて「生活の党」の幹部を務めていた二人の代議士の復党まで受け入れたというから、いやはや、節操も政治信念のカケラもない代議士先生とそれを「国の為」と言って平気な政党には呆れるばかりだ。
「ただの人になりたくない」という先生方の執念に褒美を与えるような投票だけは止めようではないか。
(11/24/14 10:00pm)
2014年11月21日
北京秋天
北京でAPECが開かれると聞いた時、あのPM2.5による大気汚染で煙る町にいかなければならない各国首脳はなんと気の毒な！と思ったものだったが、首脳会議がひらかれた今月10日、11日の両日の北京の映像を見てなんだかキツネにつままれたような気がした。
梅原龍三郎の名作「北京秋天」さながらの、済んだ空が広がっているではないか。そうそう、今から20年以上前になるが、中国がまだまだ経済成長を遂げる前、北京の町が自転車であふれていた頃の、澄み渡った秋の空の色はこうだった！となんだか感無量の思いがした。（あの頃は、年に何回も北京を訪れたものだった）
聞くところによれば、中国政府は北京で開かれるAPECを2008年の北京オリンピックに次ぐ、国威発揚の場と位置づけ、徹底的な「青空作戦」を展開したのだとか。開催一週間前の今月3日からは北京市内で走ることができる車を奇数日はナンバーの末尾が奇数の車、偶数日はナンバーの末尾が偶数の車という風に制限し、北京市内での全ての建設工事は禁止、首脳会議当日の10日と11日は河北省全域で工場に操業停止命令が出されたというのだ。
確かに、そこまでのことをやれば、20年、30年前の北京秋天が戻ってくるのも当然、という気がしないではないが、それはとりもなおさず、そこまでの事をやらない限り、日本の環境基準の12倍という北京の大気汚染は止められないということでもあるのだ。
一党独裁、全体主義国家だからこそできる、省全体の工場操業停止命令や建設工事禁止、あるいは車両の乗り入れ制限という強制措置が、いとも簡単にできるということは、「大気汚染防止」という目的だけをみれば、なんだか羨ましいように思わないではないが、民主主義だとか個人の権利といった価値観を持つ我々からみるとなんとも空恐ろしい社会（参照：「怖い共産党」11/11/14）という気がしてならない。
APEC期間のあの北京秋天には驚いたが、今日のニュースを見て再び驚いた。
APECが終了するやいなや、すべての青空作戦は終了し、工場はすべて操業を再開、建設現場も動きはじめ、北京に乗り入れる車の制限もとかれたこともあって再び大渋滞が起きているという。
何しろニュースが映し出す北京の空は、1キロ先も見えないほどの灰色のスモッグに覆われ、PM2.5濃度も、以前と同じように日本の環境基準上限を10倍以上になっているというのだ。
これだけの落差があると、あのAPEC期間中の青空が、中国の国威発揚どころか、中国という強権国家の恐ろしさを世界に伝える証拠になりはしないのかとさえ思うのだが---。
まあ、考えてみれば、東京だって正月三が日の間は、工場が休み、交通量が少なくなると、富士山がくっきり見えるようになるから、北京のことばかり言ってはいられないが---。
要するに、大気汚染を止め、きれいな青空が見たいというなら、人間がいなくなることが一番だということなのだということだけは改めて分かったけれど。
(11/20/14
10:00pm)
2014年11月20日
女性が輝くとは
安倍内閣の「女性が輝く社会」というスローガンは何とも美しく響くが、裏返せば「今のところ女性は輝けていない」ということを言っているように聞こえる。
厚労省の「女性が輝く社会に向けて」というパンフレットには、「女性が輝く」とは、「女性が職場で活躍する」ということだとある。
以前から、「男女共同参画」だとか「女性が輝く社会」という掛け声が強くなってきたのと、日本の少子高齢化に対する危惧の声が高くなってきた時期とが、ぴったりと符合することになんとなく違和感を抱いていたのだが、この厚労省のパンフレットをみて合点がいった。「社会に出て働く女性」が輝いているというのは確かだろう。しかし、その裏返しは、かつての専業主婦のように、結婚して出産、育児の為に家庭に留まる女性は、古い時代の社会の犠牲者、「輝けなかった可哀想な女性」ということを意味しているようにうけとられなくもない。そうだとしたら大いに異議ありだ。
「働く女性」を奨励しようという理由からだろうか、かつて「専業主婦優遇ではないか」といわれた年間給与103万円以下の配偶者に与えられていた「配偶者控除」や、同じく130万円以下ならば年金保険料を払わないでよいという「第3号年金被保険者制度」を廃止しようという「改革案」が財政健全化の審議の中で度々取り上げられるようになっている。
配偶者控除や３号年金の「廃止」が、なぜか女性に社会進出してもらうための「奨励策」であるかのようなレトリックが使われているが、これにしても、社会経費や国の借金が増える一方なのに、働く若者が減ってくることでどんどん下がってきている税収を賄うために、「この際女性たちに働きに出てどんどん稼いでもらうことで、税金をたくさん払ってもらいたい」という財政上の都合からの騙しのテクニックのような気がしないではない。すなわち、「女性共同参画」やら「女性が輝く社会」などという美しげな言葉も、なんのことはない、その真意は、女性たちを職場に駆り立てるためのムチなのかもしれないのだ。
女性の社会進出や子育て支援制度等々で、常にお手本といわれる西欧の国々のことを、多くの日本の女性たちは「女性が安心して子供を預け社会で、働くことができる国」として羨ましがっているが、先日、ある番組で、スウェーデンの女性が、「私としては我が子を手元において育てたいし、家族のために家事に専念したいけれど、この国では、働かなければ暮らしていけないから」とその「働く理由」を答えていた。
北欧の社会福祉大国には押しなべて日本のような扶養制度がない。すなわち、女性たちは外に出て働き、産休後、早い時期から子供を預かる保育、育児制度や老後介護のための社会福祉費を賄う高額な税金や、老後の生活保障の為の、年金保険料を稼がない限り社会のつまはじきになってしまうのだ。
女性の社会進出も、子育て支援などの社会福祉制度も、なんともうらやましいと思うけれども、その一方では、かの国々では女性には、「専業主婦として家事や育児、あるいは親の介護といった形で社会参画したい」というチョイスは許されないということらしい。これって本当に「女性が輝く社会」と言えるのだろうか。
社会に出て働くか、家庭に留まって主婦として働くか、の自由が確保されたその先にこそ、本当の意味での「女性が輝ける社会」があると思うのだが。
(11/19/14 10:00pm)
2014年11月19日
打ち込みオーケストラ
昨日（「第二次ラッダイト」11/18/14）の続きにもなるけれど、数十年前までは、こればかりは機械が人間に変わることなどないだろうと思った極めて人間的な職業で、今や、消えつつある職業の一つにバンドマンがある。
「グランド・キャバレー」が消えてからもうかれこれ30年位になるだろうか。いまでもキャバレーだとかクラブだとかいうホステスが客の席に付くスタイルの店ならあるけれど、グランド・キャバレーとの一番の違いは、ショーを行えるステージがあり、生バンドの演奏で客とホステスがダンスを踊れるスペースがあるというところだった。グランド・キャバレー全盛期（？）だった60年代、70年代には、ちょっとした地方都市にも、一つや二つのグランド・キャバレーがあったという記憶がある。
しかし、ショーの為の踊り子さんやら、大人数のバンドマンをいれて―――となるとその人件費だけでも大変だったからだろうか、それとも、客のニーズそのものがショーや生バンドというところではなく、今でいうキャバクラ的な「お色気」にあったからなのか分からないが、ある時を境に急激にこのグランド・キャバレーは消えて行ったように思う。（日本人ホステスやバンドマンは人件費がかかるということからだろうか、フィリッピンなどからの出稼ぎホステスやバンドマンがとって変わり、その後、更に人件費のいらないカラオケになっていったという他の産業と同じような経緯を経たという意味ではバンドマンも機械化の波に飲まれたということなのだろう）
グランド・キャバレーが姿を消したためにすっかり見なくなった職業が、冒頭で述べたバンドマンというか楽団員だ。（ホステスという職業はしっかり残っているのに）
グランド・キャバレーからばかりではない、ビッグバンド自体が消滅しつつあるように思う。例えば、あの頃の紅白歌合戦などを思い出すと紅組、白組にそれぞれ伴奏の為の大人数のバンドというかオーケストラがついていたものだが、最近は紅白を見ても当時のような大編成ではない。（小林幸子のような派手な衣装で大編成の楽団をバックに歌う、というスタイルが、最近では流行らないのだろうか）
編成が小さくなってもまだレコーディングなどの際にはちゃんと生バンドが使われているというならまだしも、最近はライブやレコーディングの際にも「打ち込み」といわれるドラムマシーンや電気楽器などの音を事前にコンピューターに打ちこんでおくいわゆる自動演奏が頻繁に使われるようになっている。
バンドが消え、バンドマンがいらなくなって遂には、機械が人間に変わって音楽を奏でる時代になっているのだ。（歌手にしても、初音ミクをはじめ既に数えきれないほどの機械歌手が誕生していることを思えば、数年後の紅白歌合戦には人間がほとんど出場していない、なんていうことになるかもしれない）
バンドマンという職業は、昔から女性にもてる職業だといわれ、自由人的な雰囲気のある職業だったけれど、それと同時に「女性が結婚相手にしてはいけない職業」の一つともいわれていた。バンドマンは、薄給で、生活が不規則（夜の仕事が主になるから）、将来性がない、なんて散々に言われていたことを思い出すが、更に、近年になって機械にとってかわられたというのだから、随分と気の毒なことになったものだ。
クラシック界でもオーケストラ（交響楽団）の数が随分減っているというが、こちらも、いつか「打ち込みのオーケストラ」が幅を利かせるようになるのだろうか。
(11/18/14 10:00pm)
2014年11月18日
第二次ラッダイト
日本は産業用ロボット技術では世界トップにあるという。実際に、今日本の多くの工場で全自動化進んでいていわゆるロボットたちの正確でしかもスピーディーな仕事ぶりには驚嘆させられる。
かつては、ロボットといえば力仕事だとか単調な作業の補助役だったけれど、いまやハイテク産業、精密機械産業などでは人間にはできないレベルの複雑かつ高度な仕事を担っている。製鉄所などに行くと人間の姿をほとんど見ることがない、というほどに全自動化が進んでいる。
「この仕事は、決して機械が人に変わってできるとは思えない」とおもわれていたような仕事まで、いつの間にか機械がとって変わっている。持ち帰り寿司やら、一部の回転寿司では、握りロボットが次々に寿司を握っている。まさか寿司職人がロボットに変わられるなんて、20年前、30年前の寿司職人さんたちに想像ができただろうか。
スーパーのレジでも既にレジ係がいないセルフレジがあるし、その内、カートに乗せた商品をそのまま通過させただけで、数秒でレジを済ませることができるようになるともいわれているから、パートのレジ係のおばさんたちの仕事ももうそう何十年もある訳ではないかもしれない。
ワンオペといわれる「ブラック」ぶりが問題になった牛丼チェーンの「すき家」は、人出不足に見舞われ、深夜営業をやめざるを得なくなって大赤字になったという。どうしても人出不足を解消できないとなれば、この際、「全自動牛丼店オペレーションロボット」でも導入したらどうだろうか。（深夜に入った牛丼屋には、店員が一人もいないが、自動的に温かい牛丼が出てくる―――なんていうのも近未来的で面白いかも）
先日、新聞を読んでいたら、「今後2，30年でロボットに変わられる可能性の高い仕事リスト」という記事があった。かつてのイメージのように、単純作業や3K（きつい、汚い、危険）職場ばかりが機械に変わられる訳ではない。先に述べたように、高度かつ複雑な作業、あるいは高度な職人技が必要とされる仕事なども次々と機械がとって変わるという。
最近は一部の開腹手術などもでも手術ロボットが使われていて好成績を収めているというから、そのうち医者も全自動化され人間の医師はいらないということになるかもしれないし、法律と照らし合わせて判断するのが基本というのだから弁護士や裁判官だって全自動裁判ロボットにとって変わられる時代がくるかもしれない。
考えてみると、世の中に、この仕事は絶対に機械ではできない！と断言できるような仕事は少ないような気がする。一説によると、近い将来、ロボットによって人間の失業率は50%に達するともいう。
産業革命の初期、職を機械に奪われる！という恐れから、イギリスの繊維労働者はラッダイト運動といわれる機械打ち壊し運動をやったというが、失業率が50%にもなった将来、第二次ラッダイト運動が起きないだろうか―――。
ちょっと心配だ。
(11/17/14 10:00pm)
2014年11月17日
サンシティーと独身税
少子化対策とやらが賑やかに語られ、「どうやったら子供の数が増えるか」に政治家先生はやっきになっているようだが、逆に「子供排除」の考えで作られた町もある。
アリゾナ州のサンシティーをはじめとする全米にいくつかある高齢者の町がそれだ。
日本の限界集落のように若者が出て行って老人だけが残された町、というわけではない。逆に「55歳以上であること」といった条件の下、積極的に「老人の町を作ろう」として砂漠の中に計画的に作られた町であり、人口は既に3万人にもおよぶ。
お金持ちの引退生活者ばかりが居住者となり作った大都市から遠く離れたコミュニティーであり、豊富な資金によって町の中には、水と緑が溢れている。居住者が選ばれたお金持ちばかりという訳で、治安もきわめてよい。高齢者の生活を十分満足させる豊富な施設があり、正に引退者達の理想郷とも言える町だ。
この町の大きな特徴は、子供や若者がいないということだ。従って、この町は、公共施設として保育園や学校と云った施設を作る必要がないから、財政的には教育関連費用だとか子育て支援といった出費が一切必要なく、他の目的に使うことができるという訳だ。
アメリカでも、もちろん「子供は社会の宝」という考え方が一般的であり、子供がいる人もいない人も、子育てや教育にかかわる社会的費用は、みんなが出し合った税金から支出するのは当然！、と考える人は多いけれど、世の中。皆が独立独歩でやっていくべきだ！という個人主義的な考え方も決して少ない訳ではない。
そういう考え方からすれば、他人の子供の教育や福祉の為に、あるいは貧しい人たちへの社会福祉に、自分達の税金を使われるのは、面白くないという考えも成り立つのかもしれない。
「他人の子供は自分には関係ない」なんていう考え方は、エゴむき出しではないかとも思うが、彼等は案外「なんでも、自己責任を徹底しているのだ」と、自分たちこそ真の自由主義者だ！と考えている。
その一方で、サンシティーとは全く逆の話、「子供がいないのは罪」という話ももちろんある。
日本以上に深刻な少子化問題に悩む韓国で、少子化対策担当の保健福祉省の幹部が「数年後をめどにペナルティーとして、未婚の男女を対象に『独身税』を徴収することも考える」と発言したという。この発言に対して、ネットなどで猛反発が起き、「好きで独身でいるわけではなく、経済的に苦しいから独身なのだ！」とか「朴槿恵大統領からも徴収するのか！」とネットは炎上中なのだとか。
あわてたこの幹部「冗談だった」と弁明したというが、先日の都議会での「産めないのか」というセクハラヤジと同様に、その発言の背景にはやはり「産まないのは罪」といった考え方があることは否定できない。
戦争前の日本では、兵隊として戦える男の子を産むことが奨励され「産めよ増やせよ」というスローガンが叫ばれ、いつまでも独身でいると、周りから。冷たい視線をあびせられたという話も聞く。
産まないことが「国賊」だという考え方は、現代の、日韓両国の「少子化対策」にも、その強い痕跡がうかがえる。かといって、子供排除思想的なサンシティーコンセプトにもどうにも馴染めないけれど―――。
「子は宝」という言葉も、「誰にとっての宝なのか？」となると、結構迷うところではある。
(11/16/14 10:00pm)
2014年11月14日
素人には分からない
キューリー夫人が女性として初めてノーベル賞を受賞したことは、当時のヨーロッパでは大センセーションを巻き起こした。とはいっても、放射能が何であるか、なんていうことは当時の一般の人々は全く知らかったから「何しろ、女性初のノーベル賞だって！すごいわねぇ〜」と何しろ賞賛の声を上げそれが大ブームとなったということのようだ。放射能ブームにあやかって放射能(ラジウム)入り化粧クリームやら、石鹸、あるいは飲料水などが大量に売り出され大人気を博したという。
今も、この時に売り出されたクリームやら、石鹸が博物館に保存されているが、放射能レベルが今の基準を超えているというので展示はできないという。
福島の原発事故以来、さっぱりみかけなくなったがそれ以前は日本でも「ラジウム温泉」「ラドン温泉」の看板を掲げる温泉が結構あった。「放射能はリラックス効果を生み体によい」だとか「ガン細胞だけをやっつけるから末期ガンにも効く」なんていうことがいわれ、東北の某温泉などは、藁をもつかむ思いのガン患者で予約が取れない状態だったという。
原子爆弾により多くの被害者が出たし、ビキニ環礁の核実験の灰を浴びた第五福竜丸の乗組員が亡くなったという悲惨な例にことかかないだけに、「放射能は体によい」なんていう言葉を鵜呑みにしていた今世紀はじめのフランス女性やら、東北の温泉におしかけた人達の楽観論の格差に戸惑うが、実際のところ、放射能が本当に人体に悪いのか、あるいはある程度の低線量なら「人体によい」のかは、科学的に結論が出ている訳ではないのだという。
ニューヨークまでの航空機に乗っている間に浴びる自然放射能だとか、レントゲンやらMRI検査を受けることで浴びる放射能なら、まあ、大丈夫だ！という話は聞くが、じゃあ、年に何十回も国際線に乗っているパイロットやスッチーは大丈夫なのか、あるいは病院をたらい回しされ、検査漬けにされている患者は大丈夫なのか、となる素人にとってはさっぱり分からない。
「さっぱり分からないけれども、でも、やっぱり放射能は浴びないに越したことはないだろう〜」というのがいわゆる「素人」の放射能観である。
各地で行われた除染作業によって出た残土の処理を巡っての騒ぎをみているとまさに、この放射能観による騒ぎ、というところだ。
原発事故から半年位の間は、ガイガーカウンターを持って、あちらの公園、こっちの側溝---といった具合に、放射能レベルを調べて歩くのが大流行りで、時には通行止めまでやっての除染（とはいっても水を撒く程度だったような〜）作業が行われたけれど、あの騒ぎは今どうなったのだろう。
福島や栃木、宮城では除染作業でかき集めた残土を、今度はどこにもっていくかで今も大騒ぎが続いている。栃木のどこかの自治体の首長さんが「もともと、福島が原因で出た残土なのだから福島で引き取って欲しい」と言ったとかで、こんどはこの首長さんが「なんと、利己主義な！」と炎上しているらしい。石原前環境相の「最後は金目でしょ！」以来、この残土問題、様々な舌下事件の元になっている。
何が、そしてどこまでが、危ないのかはっきりしない中で、皆がビクビクと大騒ぎしているといえば、エボラもそうだけれど―――。
福島原発事故で帰宅困難地域となって人が住めなくなった地域には、この三年半でイノシシやネズミなどが大繁殖しているというけれど、奴らはよっぽど放射能に強いのだろうか。いや、素人には本当に分からないことだらけだ。
(11/13/14
10:00pm)
2014年11月13日
本当に重要なのは
TPP（環太平洋パートナーシップ協定）は、環太平洋地域の12か国が「高度な自由貿易圏」を設立しようという目的で、2010年からその交渉が開始された。
環太平洋12か国とはいっても、この中の日米両国が占める経済比率は8割にも及ぶことからすれば、TPPという自由貿易圏が成立するかしないか、すなわち、この地域における自由貿易が実現するかしないかは、日米両国間での基本合意ができるかどうかにかかっているといっても過言ではない。
しかし、先日もこの欄で書いたけれど(参照：「これって本当に国益か？」11/10/14)日米協議はここのところ丸3年間、毎年「年末までに大筋合意を目指す」というお題目がとなえられながらも、「オオカミ少年」よろしく「毎年いうだけ」に終わり今年も、又、結局年末までの合意にいたらず「来年早い時期の合意を目指す」とのいつもの常套句で終わっている。
全体の8割を占める日米が合意に達しないとなれば、残りの2割で合意に達したところでその「自由貿易圏」のスケールは微々たるものになってしまう。（実際、米共和党の中にはこの際、いつまでも日本が農産物関税にこだわるなら日本をTPP交渉から外してしまえ！」という声も出ている）
いずれにせよ、日本がこうまでかたくなではTPP交渉を続けるだけ時間の無駄だから、この際、TPPはご破算にしよう！という話にならないとも限らない。要するに、環太平洋の自由貿易圏構想は夢に終わるということだ。
日米交渉が行き詰まっている一番大きな理由は、日本が農産物主要5品目の将来的な関税撤廃（当面は、関税引き下げ）に頑として応じないためである。アメリカも医薬品やハイテク製品などの特許期間保護期間の延長などを主張している問題もあるが、こちらは他のTPP参加国も全面的に拒否していることもあるし、そもそも「自由貿易」という「規制緩和」に反するアメリカ一国の主張だから、いずれアメリカも妥協せざるを得ないだろう。すなわち、極論すればTPPが合意できない理由は、日本が「農業5品目のバカ高い関税率は、絶対に譲れない！」と主張しているからにほかならない。
先日も書いたが、例えば、コメに対する高い関税を設定していることによって、日本の消費者は、もしコメが自由化された場合にくらべ、6000億円も高い金を支払わされている。しかも、関税障壁を設けてもなお年々減っているコメ消費量のおかげで下がっている国内価格を維持しようと減反を奨励し、その奨励金として年間4000億円を国庫（国民から徴収した税金）から支払っている。（自由化し減反も止めれば、8000億円で買えるコメに、今、日本人は1兆8000億円支払っているのだ）しかもこの体制を維持することを固執する余り環太平洋12か国の「自由貿易体制作り」の障害となっているという訳だ。
折からの円安で、トヨタをはじめ海外に生産拠点を持つ日本企業の多くは、記録的な収益を上げている。そう考えると、日本が自由貿易圏入りをしないということになれば、こういった大企業は、これからも日本国内に生産拠点を置かず、ますます海外に拠点を置くようになるだろう。（韓国と中国はFTAを結んで関税自由化をするというから、日本企業は、韓国に工場を作って中国に製品を輸出すればよいことになる）
すなわち、TPPを拒否してコメを守っても、仕事はどんどん、国外に出ていってしまい、日本人の雇用は失われていく―――ということになるかもしれない。
「重要5品目を守る」ことによって日本から何が失われていくか―――本当に重要なのは一体何なのか、よく考えた方がよい。
(11/12/14 10:00pm)
2014年11月12日
会わなきゃよかったのに
「日中間には尖閣列島の領土問題があること」「安倍首相が靖国参拝しないことの確約」という2条件を日中首脳会談の前提条件としていた習近平主席だが、「条件を飲まなければ会わないというのであれば、今回、会談ができなくても致し方ない」という日本側の強硬姿勢を見て、中国側が妥協した―――というのが、今回の日中首脳会談の実現だったという。
一日500件、年間で18万件起きているという反政府暴動に見られるように中国の内政は、今危機的ともいえる状況だ。
それもこれも、汚職まみれの共産党支配に対する国民の怒りが大本にあるのだが（参照：「怖い共産党」11/11/14）、その内政への不満を外に敵を作ることによってかわすことに必死な習近平は、連日「日本の軍国主義化」を自ら叫んでいる。
そんな日本批判の掌を返したかのような日中主脳会談だけに、国内向けには「俺は、日本は大嫌いだが、会ってくれと言ってきたから、いやいや会ってやったのだ」という姿勢を国内向けにアピールせざるを得ないだけに、あの仏頂面になったのだろうが、「テーブルの上では笑顔で握手しながら、テーブルの下では蹴り合いをする」といわれる国際外交の舞台でのあの不機嫌そうな顔と、あの不機嫌そうな態度といい、あの場面が国際映像として流れたことは、中国という国の未開さと、そして習近平という最高首脳の未熟さ世界にさらしてしまったと言えるのではないだろうか。（それに比べれば、決して卑屈にはならず、あの場面を堂々とやり過ごした安倍首相の大人振りは合格点と言える）
マスコミなどでは、「今回は、2年半ぶりに両首脳が会ったというだけで日中関係にとっては成果といえる」等という解説がもっぱらだが、2年半ぶりに二人が会ったからと言ってあの習近平の無礼極まりない仏頂面を見せられた日本人の世論の大半は憤っているのではないだろうか。少なくとも、「さあ、これから中国に積極的に投資をしよう！」「中国観光に出かけよう！」と思う日本人は少ないと思う。
マスコミの心にもない（建前、といってよい）「会談実現してよかった」とは裏腹に、日本の世論の本音は、「無理して会談することもなかったのに」「やっぱり会わない方がよかったのに―――」というところだろう。（それどころか、安倍首相も、「小笠原のサンゴ密漁船をどうにかしろ！」位のことは一言、言えばよかったのにと思う）
習近平は、会談で「歴史問題は13億の中国人の（感情）の問題」だと言っている。共産党一党独裁への、そして現政権に対する国民の不満を、「日本悪者論」やら「日本の軍国主義化」をでっち上げることでかわそうとした上で、「中国人の感情」などと手前勝手に決めつけられたのでは、これを日本が唯唯諾諾と認めるとでも思っているとしたら習近平の非常識は極まれり、というところだろう。
それだけ、相手をけなしてしまっては、この先何年たっても、「日中友好」など築けるものだろうか。
中国という日本と仲良くしようと思っていない相手が、そんなに短時間で態度を変えることはないだろう。そう思えば、次の日中首脳会談は又、2，3年後でも十分だ。
(11／11／14 10:00pm)
2014年11月11日
怖い共産党
共産党一党独裁の中国では、政府高官はもちろんのこと地方政府や国営企業の幹部になれるのは共産党の党籍を持っていることが絶対必要条件である。
習近平国家主席今月、北京の人民大会堂でカナダのハーパー首相と会談し国外に逃亡した汚職公務員の捜査での協力を要請、ハーパー首相は応じる考えを表明したという。別電が伝えるところによると中国で92年以降に少なくとも2万人の汚職官僚が米国やカナダなどの国外に持ち出した資産は一兆元（約19兆円）に上るという。
中国の汚職官僚たちの多くは、職権を利用して、まず家族を米国やカナダなどに移住させ、汚職によって手にした個人資産を海外の家族名義に全て移した上で、最後に自分が家族の滞在する国に高飛びするのだとか。（高飛び前のこういった腐敗幹部たちは、家族も資産も全て海外に移しいわば身一つになっていることから、「裸官」と呼ばれている）
すなわち、習近平主席がハーパー首相に協力を要請したのは、2万人以上の元共産党員であり元裸官の中国への連れ戻しと、19兆円ともいわれる掠め取られた不正資金の回収だ―――。
それにしても、20数年間に亘って、2万人の党幹部たちが、せっせと19兆円もの資金を国外に持ち出していたのに、今の今まで、それを放置していたというのだから、共産党の一党独裁というものが、いかに恐ろしいものかと改めて思う。
国外逃亡をした「大口汚職官僚」の数にも驚くが、官僚（すなわち共産党員）による日常的な汚職の規模にも驚かされる。
先日の新華社電によれば、今年上期に摘発された汚職公務員は2万5000人以上、その85％は汚職金額が「大規模案件」であり、高飛び後に中国に送還されたいわゆる裸官も、320人に及ぶというのだから－－－。
中国における公務員（共産党員）による汚職がいかに酷いものか―――中国の人口の1/10である日本に置き換えてみた。92年からの22年間に、中央、地方合わせて2000人の公務員が、約2兆円（2兆円！）を汚職によってふところにし、家族ともども米国やカナダといった移住先で優雅な生活を送っており、さらには漸く、汚職追放の掛け声がかかりはじめた今年になってからでも、前半期だけでも、2500人の役人が「大規模汚職」で逮捕され、既に海外逃亡していた30人ほどが漸く強制送還された―――というのだから！！これで政権がひっくり返らないというのだから――――。
薄熙来、周永康といった党中央でさえ巨額汚職で逮捕されたし、習近平主席や、胡錦濤、江沢民一派といった前政権幹部自身にも、巨額利権の噂は絶えない。（要するに、今の習近平による「汚職撲滅キャンペーン」も、その真の狙いは、胡錦濤、あるいは江沢民派に対する派閥争いだともいわれている。
よく、これで政権が保っていられるものだし、国民もよく耐えているものだとほとほと感心するが、なにせ、一党独裁、反対することは絶対に許さない！という怖い、怖い共産党に逆らっては、中国では命の保証がないということなのだろう。
共産党が怖いというのは、思い出せば、ソ連もそうだった、東ヨーロッパもそうだった、北朝鮮は今もそうだが―――日本は―――。
(11/10/14 10:00pm)
2014年11月10日
これって本当に国益か？
できうる限り規制を排除して「自由競争」を重んじるというのが、中間選挙で勝利した共和党の伝統的な方針であることを考えると、永遠に終わりそうもないTPP交渉における日米協議において、いつまでも日本が農業8品目の関税撤廃を頑として拒否しつづけていると、アメリカから「もう、日本抜きでTPPをやろう」などと言い出してくる可能性も出てきたような気がする。
忘れてはならないのは、TPPの根本的な理念は、「全ての関税の撤廃を含めて、高いレベルの自由貿易を行おう」というものであるということだ。すなわち、各国は、究極的には(いつの日か)完全な「自由貿易」が行われるようにしていきましょうという理念の下で交渉を続けているという原点を無視する訳にはいかない。
ところが、今、政府のみならずマスコミまでもが「TPP交渉とは国益と国益をかけた交渉だ！」というレトリックにはまり込んでいる。しかも、その日本の国益なるものが、どうも「農業8品目の関税撤廃や引き下げにあくまでも抵抗し拒否すること」という1点だというのだからなんだか訳がわからない。
いつまでも、国際価格よりもはるかに高い国内農産品を守るために、高い関税をかけて農産品を輸出したがっている他のTPP参加国からの輸入に障壁を設けることが、日本の「国益」であるというコンセンサスは一体、いつ、誰が決めたのだろう。
日本の農産物の生産額は年間4兆円に過ぎない。これは日本の自動車産業の生産額の1/13だというから、数字の上から言えば農業という「国益」に固執しつづけ、世界の人々を豊かにするといわれる（必ずしもそうは限らないという意見もあるが）「自由貿易」というTPPの最終理念を阻み続けることに、正当性は余り感じられない。
今、国は、年間4000億円という減反奨励金を支払ってまでも、供給を減らしコメの価格を維持しようと必死だが、今年の新米は昨年に比べて大きく値下がりをしている。減反資金の4000億円に加えて日本の消費者は、国際価格より約6000億円も高いコメを買っているという。すなわち、コメの関税を守るために日本人は1兆円も多くの金を負担しているのだとか。これが、本当に「国益」なのだろうか。
決して農業を切り捨てろといっているのではない。関税を短期間で撤廃し、減反を止め（補助金は廃止）、日本国内で流通するコメの価格が国際価格に近いものになれば、今、無駄に使われている1兆円が節約できる。その原資を基に農業の生産技術の推進や、流通の合理化を図れば、生産者にとっても消費者にとってもウィン・ウィンの改革ができるはずだ。
自由貿易によってコメの生産国に対しては大消費国として様々な注文（品質など）もできるだろう。国民は、安くて美味いコメがたべられるようになる―――これこそが国益と言えるのではないだろうか。
(11/09/14 10:00pm)
2014年11月7日
少子化は止まらない
中学3年の時に同級生の家に遊びに行ったら彼が子守をしていた。「弟？」と聞いたら「いや、叔父さん」と答えた。すなわち子守をしていたのは、彼のお婆ちゃんの子供だったのだ。
友人は中三だから15歳、彼の上にお兄さん、お姉さんがいたから、彼のお母さんは当時、30代後半から40歳代前半だったのではないだろうか。そうすると、彼のおばあちゃんは当然、50歳は過ぎていただろう。おばあちゃんが50歳としたら、おじいちゃんはその7－8歳年上、ひょっとしたら60過ぎだったのではないだろうか。
今から半世紀前ならば、特に田舎では、70近くになって子宝に恵まれる男性、50歳代になっても出産する人もいたということだ。
連合艦隊司令長官山本五十六の名前は、父親が56歳の時に生まれたからそう名付けられたことはよく知られているが、五十六を産んだ時、母親は45歳だったという。
今、日本産婦人科学会では、35歳を過ぎての初産を「高齢出産」と定義し、更に40歳を過ぎての初産は、母体、胎児ともに出産に伴うリスクが高くなるとしているが―――、半世紀も前となれば、5人、6人兄弟という例もおおかったから、母親が40代、50代といっても初産ではなく「経産婦」だったから「高齢出産」なんていうことに、誰もビクビクしたりしなかったということなのだろうか。
加山雄三の父親、往年の二枚目スター上原謙は71歳の時に再婚相手との間に一子をもうけている。最近は、「年の差婚」だとか「年の差カップル」が激増中なのだとか。
確かに、芸能界を中心にして20歳位の年の差ならばそれほど驚かないし、中には加藤茶のような45歳年下の花嫁なんていうケースまである。まあ、こういった例のように、男性が年上で女性が年下で若いカップルならば、子供が生まれる可能性は十分あるが、（昔から世界各地で、跡継ぎを産んでもらうために、金持の男性が、出産可能な若い女性と結婚するというケースは数限りなくあったから加藤茶のケースもそんなに驚くほどのことではないのかもしれないが）
最近は、花婿の方が花嫁よりも年下という「年の差婚」も結構あるというから、これにはちょっと驚きだ。(これも、落語の「厩火事」のように稼ぎのある髪結い女にぶら下がっている若い遊び人の亭主の話があるように、昔から皆無という訳ではないが)
若い内はしゃにむに働いて、結婚には目もくれないで来た物の、ようやくキャリアも、収入も安定してきたので、結婚を考えはじめ、良い相手が見つかった―――というケースなのだろうが、40代、50代での初婚となれば、どうしても相手の異性は、若い人になってしまう。（同年代はほとんど結婚してしまっているから）
すなわち、男女ともに、結婚が遅いとどうしても「年の差婚」になる可能性は高い―――。男の場合、結婚が遅れても子供ができる可能性はかなり残っているが、女性が40歳近くで結婚した場合、どうしても高齢出産の問題が付きまとうことになって――――こう考えると、男女ともに結婚年齢がどんどん遅くなってきている今、日本の少子化は止まらない！というのは必然なのかもしれない。
(11/06/14
10:00pm)
2014年11月6日
会費かみかじめ料か
英語で’Pay Tax’（税金を支払う）は、日本ではなんというだろう。「税金を取られる」「税金を納める」辺りだろうとおもうが、英語的なニュアンスは、例えていうならう国、社会に居るための会費を「支払う」という感じであるのに対して、日本だと「日本国という親分にみかじめ料（用心棒代）を徴収される」といったところだろうか。
アメリカ人も、税金はできるだけ少ない方がよいと思ってはいるけれど、税金とは、自分たちの安全を守る警察・消防などの経費、道路・水道などの生活インフラや公共サービス、年金・医療・福祉・教育などの社会維持の為の費用であり、国民である以上、その応分の負担をするのは当然であり、いってみればアメリカという国、あるいは社会の一員である以上、「会費」として支払うのは当然だと考えている節があるから、「税金を支払う、Pay Tax」となるのではないかと思う。
それに対して、日本では概して「税金」とは、何の用途に使われているのかさっぱり分からない（分かろうともしていない）金であり、いわば、地元の暴力団が強制的に徴収にくるみかじめ料のようなものという感覚ではないだろうか。若い衆が何かと理屈をつけては、力づくで取っていったみかじめ料は、結局、何に使うのかもわからない（酒と女に浪費するかもしれない）のに―――という感覚があるから「税金を取られた」「税金を納めさせられた」という表現がぴったりするのではないだろうか。
消費税を予定通り、来年10月から10%に上げるかどうかの安倍首相の判断まで後、1ヵ月近くになった。4月の消費税の8%への3%引き上げ後遺症は、当初政府が言っていたほど短期には治まっていないし、円安による物価上昇もあって、実質の給与所得上昇もさほど顕著ではない現状を考えれば、消費税10%への引き上げは一年乃至二年先延ばしした方がよいのではないか――という意見も結構強くなってきているようだ。
何しろ「税金と名がつくものは全部反対」という「庶民」だらけの日本であるし、そういった「庶民」の票が欲しい政治家の先生たちにしてみれば、「ここは増税反対論でもぶっておいて人気を高めておいた方がよさそう！」という計算もなりたちそうだ。（もっとも解散がないとなれば安倍さんや麻生さんなど幹部が「予定通り実施」に傾いている今、変に「延期論」をぶって党幹部や財務省に睨まれたくないという議員先生も多いだろうから、自民党内での増税延期論がそんなに大きくなることはないとは思うが---）
「消費増税による増収分は社会保障費に回す」というそもそもの消費税国会での与野党合意のことを考えると、既に1000兆円を超えた国の借金、益々増える医療費、年金あるいは少子化対策費等々といった「待ったなし」の財政状況からしても、悠長に「一年か二年延期」などとのんびりしたことを言っていられるのかという気はするが―――。（今延期してしまえば、今より、安倍政権が強くなっているとは思えない一年か二年先に、10％に上げる等というチャンスはない！と読むべきだ）
要は、安倍さんが国民に、この2%は「会費」なのであって「みかじめ料ではありません」ということを納得させられるかどうかにかかっているのだ－－－。
(11/05/14 10:00pm)
2014年11月5日
汚らわしい場所
キリスト教カソリックには女性神父はいない。男女平等、男女同権が社会の趨勢となっている現代においてローマ教皇は頑として女性に神父職を解放する気はないようだ。（プロテスタントの牧師には女性もいるが）
カソリックもプロテスタントも教義によって同性愛者を禁じている。これを犯したものは罪人として天国にいけないとされている。コンピューターの父ともいわれるアラン・チューリングは同性愛で逮捕され有罪判決を受け女性ホルモンを投与されたが、そのことで精神異常を来たし自殺した。後にチューリングの名誉回復宣言を行った時の首相、トニー・ブレア―は彼の死によって永遠に失われた多くの科学的業績は、人類にとって取り返しのつかない損失であったと語っている。
今の世界的な常識でいえば、キリスト教の女性神父禁止は、女性差別であり、同性愛禁止は、今でいうならば、人種差別や階級差別同様に「性的嗜好による差別」という「差別」の一種類であるということになる。まあ、2000年に亘って「神の掟」として守られてきた女性神父や同性愛の禁止を、ここ数十年か、たかだか百年にしか過ぎない「世界の常識」だとか「人権の尊重」なんていう価値観をもって「差別だ！」と非難されても、神やらイエスさんも戸惑うだろうが---。
宮沢洋一経済産業相の資金管理団体が「18000円也」のSMバーへの支払いを政治資金として不正支出したのではないかという問題で、これを舌鋒鋭く追及する民主党の女性議員が衆議院本会議で「口にするのも汚らわしい場所へ出入りするとは！」とののしったこの発言が、ネット上で「職業差別だ」「ヘイトスピーチじゃないか」と大炎上しているという。下仁田ネギの小渕さん、うちわの松島さんという二人の大臣を辞任に追い込んだ勢いをかりて、もう一人、SMバーの宮沢さんを辞任に追い込んで「さすがに民主党！」という賞賛を得ようと思ったのかもしれないが、菊田さんというこの民主党女性議員、今の差別やらヘイトスピーチに対する世の中の趨勢を完全に読み間違えてしまったようだ。
SMバーが「汚らわしい場所」と差別された時代も確かにあった。しかし、今の世の中、それは、あくまでも個人の嗜好の問題でしかなく、国会の本会議場でしかも全国テレビ中継の中で口汚くののしるのは政治家としての配慮に欠けている。
世の中には、政治活動費ではなく自分の財布から出した金で通っている「SMバーファン？」や、SM嗜好のある人は多く（多いかどうかは定かではないが）いるかもしれない。その人達を敵に回して、菊田さんが「汚らわしい！」と投げつけた言葉によって傷ついた人がいるかもしれないし、職業としてSMバーで働いて生計を稼いでいた従業員たちにとっては菊田さんの言葉は、「職業差別」に当たるかもしれない。
資金問題追及の陣頭指揮に立っていた枝野さんは、革マルの影響下にあるJR総連から800万円の政治資金を受け取っていたことを安倍首相に批判されオタオタするし、蓮舫さんは、松島さんと同じ（但し柄はついていない）うちわを配っていたことがバレて勢いがなくなったし---とどめがこの菊田さんの「汚らわしい！」という差別発言というのでは――――民主党のお家芸といった感のある「ブーメラン発言」(他人に投げつけた言葉が、自分に返ってくる)は、未だに健在ということのようだ。
(11/04/14 10:00pm)
2014年11月4日
マイナス成長に備える
未来学という学問がある。様々な前提に基づいて未来がどのようになるかを推論する学問というから中々まっとうな学問のようにも思えるが、何しろそれが当たったかどうかが実証されるのは「未来」のことであるということを考えると、「占い」やら教祖様の「ご宣託」あるいは競馬予想屋の「必勝情報」とどれほどの違いがあるのかという揶揄の声も聞かれないではない学問分野である。
未来学の中でも、「まあ、かなり当たる確率が高い」というのが将来人口予測である。今現在の年齢別人口とその人達の平均余命や年間死亡率、それに年間人口再生産率（要はどれぐらいの出生数があるか）といった基礎データを足し算、引き算をすれば、おおよその人口推計が可能であり、又、この種の基礎数字は余程の事がない限り大きく狂うことはないから（彗星が衝突したとか、致死性のウィルスが人類の生殖能力を奪った、といったとんでもないことがおきない限り）40年、50年先程度の人口推計ならまあ大きくはずれることはないと考えてよいのかもしれない。
政府の財政諮問会議が人口減少と超高齢化社会への対策をまとめた最終報告書の原案をまとめたという。これによると、現在の1.43という日本の合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供の平均人数)が続くと50年後の2060年代には日本の人口は8700万人と現在の2/3になり同時に進む超高齢化社会による社会保障費の負担が家計所得の半分を超えることになるというのだ。
オブラートに包んだようなことを言ってはいるが、ぶっちゃけて言えば、50年後の日本は、働いて稼ぐ人が少ない上に、高齢化により年金支払いやら医療費といった社会負担はべらぼうに増えるから「日本人は貧乏になる！」という訳だ。（一人当たりのGDPは、現在の米国比7割が、6割になってしまうらしい）
冒頭でも述べたように、人口推計は前提になる数字が大きく狂わない限りは「当たる」確率が高いことを考えれば、「50年後の日本の国力は随分と弱くなる」のは避けられないということのようだ。
経済諮問委員会原案の結論は、「だから、女性にはもっと働いて貰い、労働力になって稼いで貰いたいし、1.43などと言わないで、もっとたくさん子供を産んで欲しい」ということのようだが、いずれにせよ50年後にはその多くはいないであろう人たちの主張だけに、「なんだかなぁ〜」と思わざるを得ない諮問案ではある。
「子供はじゃんじゃん産んで下さい、そして外に出て働いて下さい！そうして貰わないと日本は世界の小国になってしまいます」といわれた女性たちにはなんだか随分お気の毒、という気がしないではないが。
この手の政府諮問機関なるものの案という奴の問題点は、いつも「目的達成の為の方法論がない」ことだ。少子化対策はもう随分前から叫ばれてはいるものの、合計特殊出生率はこの10年を見ても微増にとどまっているし、そもそも平成に入ってからだけをみても年間の出生数は多くて120万、少ない年では100万しかないことを考えると、この平成生まれの世代が合計特殊出生率をちょっと上げたところで、戦後のベビーブームのような「むちゃくちゃ子供が多い！」状態になどなりっこない。
やっぱり、人口推計という未来学が当たる可能性がかなり高いと考えれば、いまさら「経済のマイナス成長を避けるためには50年後に人口一億維持が必要」等という夢みたいなことを考えるのではなく、8600万人の人口でも「国民が幸せと感じる社会」を作るにはどうしたらよいのかを考える方がよほど合理的だ。
すなわち、もう今まで見たいに、アメリカに負けた、中国に追いつかれた、なんていって「国力」という絶対値で競争するのを止め、例えば「アメリカより治安がいい」「中国より水と空気がきれい」「世界一、礼儀正しく親切」といった相対値な価値で世界と競っていく！という方針に切り替えるべきではないかと思うのだが。
(11/03/14 10:00pm)
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