日々早々バックナンバー

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2014年12月

2014年の下期各月バックナンバー： 7月、 　8月、 9月、 　10月、　11月、12月、

＜＜2014年：12月分　タイトル＞＞
12/29 よいお年をお迎えください 12/26 校長先生が泣いた 12/24 野依さんの晩節 12/19 敵か味方か 12/18 驚かされる国 12/17 悪くないタイミング 12/16 大ハズレの責任は！ 12/15 乗り越えられない違い 12/12 リスク認知能力を磨こう 12/11 さてどうなるか 12/10 ロゼッタストーンとエルギンマーブル 12/09 愛人持つのは罪か 12/08 ○か×か 12/04 生物か無生物か 12/03 やるだけ無駄 12/02 アトムと金妻 12/01 シニア婚

2014年12月29日

よいお年をお迎えください

本年も、「タカさん大いに語る」にお付き合いいただき誠にありがとうございました。本ホームページは、12月29日より来年1月4日まで、お休みいたします。

来年も、世の中のあらゆる事に好奇心と関心をもち続け、自分の頭で考えたことを、｢日々早々」と「タカさんの読書日記」で、大いに語っていこうと思っていますので、どうかよろしくお付き合いください。

新しい年が皆様にとってより良い年でありますように。

（12/28/14 10:00pm S.T.）

2014年12月26日

校長先生が泣いた

当時厚生労働大臣であった舛添さんが、深夜1時半から緊急記者会見を行い「パニックに陥らないように！」と叫び、その模様を、NHKはじめ、民放各局が臨時ニュースで流したのは今から5年程前の、新型インフルエンザ流行のニュースが世界を駆け巡った時期だった。

深夜の舛添さんの緊急会見は、同日カナダから帰った神奈川の修学旅行生達の中で発熱していて「新型インフルエンザの疑い」が持たれる生徒が何人かいたことを発表する為のものだった。

成田から横浜の病院へ緊急移送されたという、この神奈川の高校生達は、今年秋の「エボラ出血熱の疑い」といわれたジャーナリストと同じように「疑い」を持たれただけで、大変な騒ぎの渦中の人となってしまい、あの時の、マスコミの大げさすぎるほどの大報道体制は、今思い出すとなんだか笑ってしまうほどのものだった。

結局、舛添さんの記者会見から一日か二日たってから、この高校生たちの発熱は、A香港型のインフルエンザであり、新型インフルエンザではない！ということが判明し、「なあ〜んだ！」という形で報道体制も一気にとかれたし、新型インフルエンザではないと知って、その高校の校長が、「よかった〜」と記者たちの前で喜びの余り涙を流したシーンを思い出す。

もし生徒達が新型インフルエンザだったら、自分はその生徒達の学校の校長として「日本に新型インフルエンザをもちこんでしまった責任者！」として、世間に対して本当に申し訳ない！という気持ちからか、検査結果が出るまでの期間、おそらく一睡もできなかった校長さんが、「新型ではない！」という結果を聞いた瞬間、あまりに安堵して思わず落涙したのだとおもうが―――この校長先生、今時珍しい、責任感の強い、かなり良い人だったのだろう。

例えあれが新型インフルエンザだったとしても、校長先生がわざわざ生徒達を新型インフルエンザ汚染地区（？）に修学旅行に行かせた訳ではないし、生徒にしてもインフルエンザに罹ってしまったのは、あくまでも「運」でしかないというのに、こうやって、インフルエンザに罹った人やら、その保護者を追っかけまわすような風潮、すなわち「患者いじめ」のような騒ぎは、なぜ起こってしまうのだろう。（まあ、パニックの一番の原因を作ったのは、夜中の1時半に緊急記者会見を開き「パニックを起こさないように！」と叫んだ舛添さんだったといえるが）

タバコを何年も吸い続けて、肺の病気になったとか、酒の飲み過ぎで肝臓を患ったというなら、多少は本人の責任（自業自得的な）を責めてもよいかもしれないが、インフルエンザは、前にも言ったように罹ってしまうのは全くの「運」でしかないのだからそこまで大騒ぎして、本人達やら、校長先生を取り囲む必要があったのだろうか－。

今も電車の中で咳でもしようものなら回りから結構、非難の目で見られるのは――あれもある種の「患者いじめ」だ。

ところで、今はインフルエンザかどうかの判定は鼻に綿棒をいれて鼻粘膜の検査をすれば5分ほどで結果が出るのだとか――5年前に校長先生が結果が出るまで随分またされたことを考えると、この辺りの医学の進歩のスピードは、凄いものなのだと感心させられる。

(12/25/14 10:00pm)

2014年12月24日

野依さんの晩節

記者会見で追及される中で健気に「STAP細胞はありま〜す！」と語った小保方さんを見て、おばあちゃんの着ていた割烹着を着て世界的な発見をしたという彼女の言葉が真実であって欲しいと思ったのは、若く健気な女性に弱いタカさんだけではなかったのではないだろうか。

検証実験の責任者を務めた理研の委員自身が（自分自身の責任逃れのニュアンスが強いけれど）、「研究者を犯罪人扱いしての検証は、あってはならない」と記者会見の最後でコメントしたほど、過酷な条件下（まるで拘置所に留置されている容疑者ででもあるかのように、立会人や監視カメラなどの視線にさらされるなか）で進められた検証実験でもSTAP細胞の再現は叶わず、あの「STAP細胞発見」の論文の価値はゼロとなり、小保方さんは「魂の限界まで取り組んだが〜」とこれまた記憶に残る名言を残して理研を去った。

無いことの証明、すなわち「悪魔の証明」は不可能である以上、今回の再現実験結果をもってしても「STAP細胞は存在しない」ということの証明にはならないものの、理研と小保方さんを中心とした作成された論文が、科学論文としてのいろはを全く無視したものであり、日本の科学界の信頼を大きく傷つけたという最悪の結果になったという事実がこれで確定してしまったということになる。

小保方さんが、何らかの意図をもってこのような論文を作成したのか、そのような作為は全くなくて、何らかの錯誤が重なってこうなってしまったのかは、これからも永遠に解けぬ謎となってしまった訳だが、しかし、この論文が不正なものであったこと、その影響は実に大きなものであったことなどの責任は、誰かがとらなければならないことだけは明らかだ。なにせこの再現実験だけをとっても1500万円の研究費が投じられていることからしても不正な論文に費やされた費用は膨大だ。理研は国費によって賄われているいわばとなれば、これはすなわち、国民の税金が無為に投じられたということでもあり「再現できませんでした、なぜかなぁ〜」では済まないのは当然だ。

小保方さんは退職し、小保方さんのこの論文にかかわった理研の多くの博士達も処分を受けるなどして責任を追及されたし、小保方さんの上司でもあり論文の共同執筆者であった理研の笹井副センター長は、この夏、自殺している。しかし、不思議でならないのが、ノーベル賞受賞者で、理研の理事長を務める野依理事長自身は、まだ一切その責任をとっていないし、自らの責任に言及したこともないということだ。

野依さんは、笹井さんが自殺した際も、「世界の科学界にとってかけがえのない科学者を失ったことは痛惜の念に堪えません」とご本人が笹井氏の上司であり、STAP細胞問題で揺れる理研の理事長であることを忘れ全くの部外者であるかのコメントを出し、今回の小保方さんの退職に関しても、「前途ある若者なので、前向きに新しい人生を歩まれることを期待しています」と、他人事のようなコメントを出しただけだ。

日本の科学界で、ノーベル賞受賞であり、文部省とも一体の関係にあり何千億円ともいわれる科学関連予算を左右することもでき、且つ、理研という日本一の研究機関の理事長である人に、「責任をとってそろそろお辞めになってはどうですか」と諫言できるような人がいないということなのかもしれないが〜。

もう、こうなったら世界的な大学者である野依さんご自身が、自らの晩節をこれ以上汚すことを潔しとはしない、というご自覚をもって頂くしかないのだろうか。

(12/23/14 10:00pm)

2014年12月19日

敵か味方か

スティーブン・ホーキング博士は、学生の時に発症したALS（筋委縮性側索硬化症）のために全身の筋力が低下し、今は自力で手足を動かすこともできず「車椅子の物理学者」となっているが、発症後50年を過ぎた今も、尚研究生活を続け、又、コンピューターによる合成音声を利用しての講演活動なども行っている。宇宙物理学における画期的理論の構築、不自由な体にもかかわらず尚、新しい研究に没頭し続けるホーキング博士だけに、「知の巨人」としての彼の発言は、常に世界の注目を集めてきた。

そんなホーキング博士が、今月「我々人類が現在進めている『完全な人工知能の開発』は人類の終わりをもたらす可能性がある」という警告を発したが、その警告が科学界のみならず様々な方面で多くの議論を呼んでいるという。

コンピューターが円周率8000兆桁まで既に計算した――とか、チェスや将棋で人工知能が人間と互角以上に戦えるようになっているといった事実から、プログラムを与えられれば、人工知能が、人間をはるかに超えた能力を発揮できることは、既に万人の認めるところではあるが、人工知能には人間のように「創造性」をもって自ら思考するようになるのはまだまだ先のことだし、そんなことは将来的には、起きないかもしれない、という漠然とした「人間優位」の考え方が一般的にあっただけに、世界最高位の科学者として尊敬を集めるホーキングが、「人工知能が自ら考えるようになり自己増殖を始める可能性があり、そうなると人工知能が、人類の存在を脅かすようになる可能性も出てくるだろう」といったことで、人々は突然、あの映画「2001年宇宙の旅」の狂人コンピューター「ハル」や、アシモフのSF小説「アイ、ロボット」で未来の人類を支配するヒューマノイドのような存在が、ひょっとしたら今のコンピューター開発の地平にあるのでは―――という恐怖心を抱き始めたという訳だ。

例えば、我々にとって最も身近な人工知能であるスマホでも、便利な機能がどんどん増え、今なにをするにしても人が自分で考えるということをしなくなっている。一例をあげれば、予測変換システムを使えば、ちょっとした難しい論文なども、漢字などをほとんど覚えていなくても書き上げることができるし、ひょっとしたら、この予測変換のシステムによって本人が思いついてもいなかったような豊かな表現を生みだしてくれる、といったことも限られた場面では既に起きている。

手紙のテンプレートを利用すれば、季節に応じた気の利いたあいさつ文を作ってくれるのと同様に、その内、あらゆるTPOにそった文章、例えば女性のタイプさえ入力すれば、情熱的な恋文をスマホが書いてくれるようになるかもしれない。

こういうケースが増えると、人は人工知能を「使って」文章を書いている、と思っていても、実は人口知能に「使われている」というのが実体だ、と言えるようになるかもしれない。

「鉄腕アトム」は完全に「正義の味方ロボット」だったけれど、あれだけの能力をもったロボットが、我々と同程度の善意と悪意の入り混じった「普通のロボット」だったとしたら―――確かに、人類はロボットに、存在を脅かされるかもしれない。

日本人は鉄腕アトムの時代から、ロボットというものは親しみ易い、人間に友好的なものだと考えがちだが、西欧ではラッダイト運動の頃から、機械や人工知能は、最終的には人間の敵になる可能性があるものと考える傾向があった。（まさに「2001年宇宙の旅」の世界だ）

そう考えれば、ホーキング博士の警鐘に、西欧の科学界が大きく動揺しているという話もわからないではないが---。

果たして、人工知能は我々の敵なのだろうか、それとも味方なのだろうか。

(12/19/14 10:00pm)

2014年12月18日

驚かされる国

沈み行く船に乗客を残し、船長を先頭に乗組員が逃げ出したセオウル号沈没事故を目の当たりにして、さすがにウリナラ（我が国）自慢の韓国の人達も、自国のモラルレベル、安全意識の低さには、ショックを受けたとは思う。

しかも、事件の背景には、船長や乗組員といった一部の人達の社会規範意識低さといった問題だけではなく、賄賂によって人の生命にかかわる安全検査や、許認可さえおざなりに済まされてしまうという腐敗した社会体質、自分の利益の為なら他人の安全は二の次といった道徳意識の低さといった問題があったことも随分指摘されたことは、韓国人にとっては相当ショックだったと思うのだが―――あの事故から半年以上が経過した今でも、そういった韓国社会の様々な歪みが大きく是正されたとは思えない事件が再び起きてしまった。

ケネディー空港で離陸体制に入っていた大韓航空機の機内で、大韓航空を傘下に置く韓進グループのオーナー一族の娘であり、同社の副社長を務める趙顕娥（チョ・ヒョナ）女史が、ナッツの出し方が悪いと激怒、客室サービス責任者の男性を降ろして離陸を遅らせたといういわゆる「ナッツ航空事件」だ。いくつかの同族経営の財閥が韓国経済の主要部分を握り、その財閥一族の傲慢さ横暴さが、アメリカの空港における安全運航の妨げになり問題となったことは、韓国の社会モラルの低さ、安全意識の低さが世界にまで害を及ぼしている例として長く記憶されることだろう。

それにしても、ナッツの出し方で若干30代の副社長が飛行機を止めたというだけでも呆れた話ではあるが、事後に伝えられた機内でのこの副社長の激怒振りも常識外れだし、その副社長の激昂ぶりになすすべもなく飛行機を止めた機長をはじめとする搭乗員、そして事件が問題化するや、叱責された客室サービス乗組員に、「副社長の叱責には問題はなかったが、自分から自発的に機を下りたと証言しろ！」と、証拠隠滅を図ったという大韓航空の幹部や職員たち―――といった次々に出てくるまさかと思えるような話は、あたかも大韓航空という韓国のナショナルフラッグキャリアーが、実は封建時代の李王朝のようなものであり、お姫さまのわがままを、家来一同が必死にもみ消しを計っているかのようで、呆れるというよりは、笑ってしまうほどだ。

この事件がもし韓国内の空港で起きたとしたら、現朴槿恵大統領の父である故朴正煕大統領の後押しで躍進した財閥のお嬢さんの我がままということで、ひょっとしたら事件はもみ消されたかもしれないが、なにせニューヨークでの事件であり、アメリカ航空当局が怒っているとなれば、韓国政府も見過ごす訳にはいかず、韓国国交省は、趙副社長を航空法違反容疑で検察に告発し、同省への出頭を求めたというが、副社長の出頭の前日には、大韓航空の役員等40人が同省を事前視察に訪れ、トイレなどの清掃を求めたというから凄い話だ。

日本でいうならば、全日空なり日本航空の若い女性副社長が国交省に呼び出されたからというので、役員達が40人も国交省に押しかけ「女性用トイレが汚いから、彼女が来るまでにちゃんと掃除しておくように！」と要求した―――ということだ。

お役所や、検察が数段低くて、財閥とそしてそのお嬢さん、更にはその取り巻きの方がずっと偉い、というのだから。いやはや、なんとも驚かされる国だ。

(12/17/14 10:00pm)

2014年12月17日

悪くないタイミング

今までの中韓に対する自虐的で卑屈な姿勢に比べれば、「日本を、取り戻す」と理不尽な攻撃に対しては毅然と反論してきた安倍政権が291議席を獲得し、連立与党で衆議院の2/3を超えた今回の衆議院選挙結果は、面白くなかったに違いない。

2/3以上の議席を背景に安倍政権は暫くは安定するだろうし、場合によっては長期政権となる可能性まであるとなれば「その内、安倍政権が潰れるだろう」との期待（？）の下に、頑なに首脳会談を拒んできた中韓首脳は、対日外交戦略の見直しを迫られることになるだろう。

韓国の朴槿恵大統領にいたっては、国内経済の悪化に加えて自らのスキャンダルなどもあってその支持率は急落中であるとなれば、いつまでも捏造された慰安婦問題に固執していては、自らの首を絞めることにもなりかねないし、かといって日本側がかつてのように「なにしろ頭を下げておこう」等と下手に出る可能性も薄いとなれば、引くに引けずに随分困っていることだろう。（悪口おばさんの自業自得ではあるが）

そんな中韓のイライラが伝わってくるようなニュースがいくつか伝わってきているが、笑ってしまったのは、安倍与党の圧勝に対する苛立ちからか、「自民党は大勝したが、投票率が極めて低く（戦後最低の52.66％）、真に民意を反映しているとはいえない」という中国新聞社の記事だ。

「反安倍が我が社の社是」と発言した主筆がいた朝日新聞と同じで、「なにがなんでも反安倍」という気持ちもわからないではないが、一党独裁で国民には選挙権すらなく、香港では「民意」の抹殺を行っている中国が、日本の選挙の低投票率を指して「民意を反映していない！」と批判するとは――これはもうドタバタ喜劇以下ではないか。

国家財政を原油に大きく依存しているロシアは、国際原油価格の急激な値下がりでルーブルが急落しており、ロシア中銀は16日、主要政策金利を従来の10.5％から17％へ利上げすることを決定したという。金利17％とはおそらく98年のロシア通貨危機以来の高金利レベルだが、それほどロシア経済は急激に悪化しているということであろう。そうなれば、来年プーチンの訪日時に、日本からの経済協力を材料に、北方領土問題の解決を有利に展開できる可能性が高まったとも考えられる。

完全なレイムドダックとなった米国のオバマ政権では停滞していたTPP交渉も、議会の主導権を握ったTPP積極推進派の多い共和党との間で進展する可能性が高くなってきた。TPP交渉に相変わらず抵抗を示してきた農協や医師会といった圧力団体の神通力も、しばらくは安定政権への信頼を得た安倍内閣を敵に回せないとなれば、随分と交渉はやり易くなるだろう。

解散前と選挙後では、与野党の議席数に大きな差が出なかったことを上げて、「結局、650億円の無駄遣いだったのでは」などと言われた総選挙だったが、こうやって外交面から見てみると、「安定政権としての国民の信任」というお墨付きを、しかも、この時期に得たことは、かなり好材料として働く可能性はある。

その意味では安倍首相の解散・総選挙の判断は（怪我の功名かもしれないが）悪くないタイミングだったといってよいようだ。

(12/16/14 10:00pm)

2014年12月15日

乗り越えられない違い

国家があり国境があるから人は戦争をするのだ。人類は人種や言語の違いを乗り越えて一つの国家の下に融和すれば世界平和は実現する、人間性善説に基づくコスモポリタン思想は、ギリシャの哲学者ディオゲネスに始まると言われる程その起源は古い。

確かに、日本国憲法が言うように「他国民の（人類の）善意を信じる」事で全てが解決するのなら国や民族が違いを乗り越え、統一政府のようなもの、あるいはその前哨段階である地域連邦のようなものを作って行くことができるかもしれないが、地域統合体であるEUや、アメリカが主導しているグローバリズム、あるいはイスラムによる統一を目指すイスラム国など、いずれも現在、世界の人々に様々な困難や混乱を起こしていることを考えると、どうも「世界は一つ、人類は皆兄弟」的な考え方は、現実的ではないと言えるように思う。

もっともだからと言って、「ディオゲネスのそもそもの間違いは、人の善意を信じたこと」といってしまっては身も蓋もない。どんな悪人でも、芥川の小説「蜘蛛の糸」のカンダタがそうであったように善意の欠片はある、いや、むしろ善意に溢れているといってもよいかもしれない。しかし、人々には善意だけではどうしても乗り越えることのできない個人の欲望、宗教、人種、文化、金、といった違いがあることも事実で、それ等が争いの素になることは避けられない。

ディオゲネスの間違いは、人の争いのタネを余りに過小に考えたことだ。人の争いのタネは、人種や言語の違いによるものばかりではない、世界政府の下でも、宗教の違い、文化の違い、歴史の違いといったものは、そう簡単に乗り越えられる物ではない。

チトーの理想の下に統一を成し遂げたかのユーゴスラビアが血を血で争う内戦の末に今や5つの国に分裂したこと、旧ソ連邦の下で一つの強力なブロックを形成していた国々は、ロシアとウクライナの現状が示唆しているのは、コスモポリタン思想の限界ではないだろうか。EUにいつまでたってもトルコが入れないのは、EUの主要国とトルコの宗教の違いが唯一、最大の理由だ。宗教の違いは、いかにコスモポリタン思想をもってしても乗り越えられるとは思えない。トルコはいつまでもEUからつまはじきされ続けることだろう。

そうそう、最近、スエーデンやデンマークといった高福祉、高負担の北欧福祉国家では、EU離脱の世論が高まってきているという。これは、アフリカや中東の何万という難民がボートピープルとしてイタリアに上陸、EUが国境線を無くしたことを利用して、高福祉の北欧に大量流入し、生活保護を求めていることが一つの理由だという。税金の負担もない数万の難民が、彼等の本国での生活レベルよりもはるかに豊かな生活費を支給されているとなれば、収入のほとんどを税金として納めている、元からの国民にとっての不満が高まるのも当然かもしれない。

最近、かならずしもよくない対中、対韓関係の改善の糸口として中国、韓国から「正しい歴史認識」を持つべきだという話があり、国内の「平和勢力」からはこれに答えるべきだといった声もある。慰安婦問題あるいは南京虐殺にしても、難癖でしかない「正しい歴史認識」を押し付けられることがなぜ「平和」とつながるだろうか。

どうしても乗り越えられない物、例えば歴史や文化の違いまで、敢えて融和(泣き寝入り)するような夢想的な平和思想には、限界があることを理解しておくべきだ。

(12/14/14 10:00pm)

2014年12月12日

リスク認知能力を磨こう

9.11の同時多発テロが起きてしばらくの間、全米の交通事故死者数が急増した。世界貿易センタービルに航空機が突っ込む映像を見た人々は、飛行機に乗ることによって事故に合う可能性を極端に恐れ、長距離移動の際にも車での移動をはじめた為だ。

アメリカの国家運輸安全委員会によると、アメリカ人が航空機に乗って死亡事故に遭う確率は0.000034%、すなわち一人の人間が、8200年間毎日航空機に乗ったとして、1度事故に遭う確率だという。これに対して、アメリカ人が自動車事故に合う可能性は飛行機事故の33倍も高いという。

冷静にこのリスク確率を比較すれば、9.11直後に航空機ではなく自動車で移動することにした人達は、自らリスクの高い移動方法を選んでしまったということになる。

このように、人々のリスクに対する評価は、実際のリスクの可能性とかけはなれたものになりがちだ。

日本でも同じようなリスク認知の齟齬はあちこちで起きている。いや、むしろわれわれ日本人は正しいリスク認知は極めて苦手にしているといえるかもしれない。

例えば、東北大震災の惨事から3年近く経とうとした今でも「地震と交通事故のどちらが怖いですか」と聞けば、ほとんどの日本人が「地震」と答えるのではないだろうか。しかし、統計によれば戦後の交通事故による死者数累計は60万人に達するが、地震による死者数は東日本大震災、阪神淡路大震災の死亡者数を入れても6万人程だという。もちろん6万人もの死者というのはとんでもない数ではあるが、「地震と交通事故のどちらが怖いですか」と尋ねられた場合、交通事故を怖がる方が、正しいリスク認知能力ということになるのだが――――。

高市前政調会長が「福島原発の被曝で亡くなった方はいない」と発言して反原発派などから猛烈な批判を受けたことがあったが、化石燃料起因で起きる大気汚染による呼吸器系の疾患で亡くなった人の数の方が原発事故の何千倍にもなるという事実は一切問題にされず、日本人の原発事故に対する過敏なリスク認知感覚はびくともしない。

京都五山の送り火に越前高田の松からとった薪を使おうとしたら、「放射能は大丈夫なのか」と大変な反対運動が起きて、結局、善意で贈られた薪の使用は中止されるという騒ぎがあった。使用反対の運動の中からは「越前高田の松を燃やせば京都に放射能が拡散する」とか「琵琶湖の水が飲めなくなる」といった声まであったと当時の新聞は伝えているが、これが本当に正しいリスク認知だったのか、それとも太古の人々が、日食を怖れたのと同じレベルの話だったのかの冷静な議論は未だにないままだ。

集団的自衛権行使容認の閣議決定により「日本は戦争への道へ大きく踏み出した！」と煽る人達がいる。彼等の戦争リスク認知は、本当に正しいレベルにあるのだろうか。逆に、彼等は、今、日本を取り囲む凶暴な国々によって日本が侵略されるリスクについては、どのようなリスク認知をしているのかを是非聞いてみたい気もする。

「怖がる」という感情は、人にとっては自らの命を守るために生まれつき備わった本能的感情ではあるから大切にしたいが、できればその判断基準は、情緒的な物ばかりではなく、できうる限り合理的なデータを加味して、より正しい怖がり方をしたいものだと思う。

(12/11/14 10:00pm)

2014年12月11日

さてどうなるか

あれよあれよという間に瓢箪から駒のように衆議院が解散された当座、準備が整っていなかった野党からは「大義のない解散だ」という声が一斉に上がった。

世論の多くも「師走の忙しい時に！」だとか「選挙費用だけで650億円もかかるが、これだけあればxxができるのに〜」なんていう論調が多かったことを思い出す。

しかし、投票日まであと数日、期日前投票を済ませた人もかなりの数に上るといわれている昨今は、「自民党300議席超え」などというマスコミの予想もあって、落選危機にあると噂される野党幹部は、自らの選挙区に張り付いてどぶ板選挙に駆け回っているというのだから「大義がない」云々は、なんだか「引かれ者の小唄」に聞こえる所為もあってさっぱり聞かれなくなった。

結果論かもしれないが、今回のサプライズ解散、安倍首相の作戦勝ち的な要素がかなり強いように思う。谷垣さんをはじめ、この時期の解散には自民党内からもかなり反対があったと聞くし、菅官房長官でさえ解散には消極的であったらしいがそれを押し切っての解散は、安倍さん一人の考えなのか、あるいはよほどの策士、ブレーンがいたのだろうか。今後の政局を占う上で是非知りたいところではある。

まず、感心したのは、来年から予定されていた消費税を10%への上げを17年迄延期すると発表した直後に解散に踏み切ったことだ。「12月初めに発表される7-9月の実質経済成長率を見てから来年からの消費税10％の実施可否を決める」と以前から言っていたのを、12月の発表を待たずして早々と延期を宣言したことは、実質経済成長率がマイナスだと発表されてから「それでは、10%への上げを延期します！」と追い込まれたように宣言するのに比べて、「財政規律よりも、国民の生活を優先した」といった人気取りにはなった。

もし、実際に悪い数字が発表されてから追い込まれたように増税延期を発表したのでは、野党もマスコミも一斉に「それみたことか、やっぱりアベノミクスは失敗だった！」と総攻撃をかけただろうし、そうなると安倍内閣も一気に弱体化への道を辿ったかもしれない。

一旦弱体化しはじめたら、もはや解散に打ってでる訳にも行かなかっただろうし、来年4月ごろに解散したら、与党は大幅に議席を減らすことになっただろう。そう思えば、やっぱりあのタイミングで消費税上げの延期を宣言し、野党側にアベノミクスに対する対案がない内に、一気に解散してしまったことで、却って「300議席越え」などというムードがうまい具合にできた、ともいえよう。

集団的自衛権行使に関する閣議決定を「民意を問うていない！」「非民主主義的な手続きだ！」と言っていた野党やマスコミが、民意を問う唯一最大の機会である解散、総選挙を、「大義がない」「650億円の無駄遣い」と批判したのも、ご都合主義的な「なんでも反対」ではないかと思われてしまい、安倍首相にとってはプラスに働いたといえよう。

そうそう、「与党を余り勝たせては、やりたい放題になる」という海江田さんの主張も、長い間の衆参でのねじれが続いて、何事も前に進まなかった酷い時代を思い出してしまう人の方が多く、全く賛同は得られていない。

いずれにせよ、泣いても笑っても結果が出るのはもうすぐだ。さてどうなるか。

(12/10/14 10:00pm)

2014年12月10日

ロゼッタストーンとエルギンマーブル

エジプト駐在時代に、ナイル河口の町、ロゼッタを訪れたことがある。もちろんお目当ては、エジプト象形文字であるヒエログリフ解読の手がかりとなったロゼッタストーンを見ることだった。小学時代、ヒエログリフを解読した天才シャンポリオンの物語を読んで一度はその実物を見たいと思っていたから勇んででかけたのだが－－。

ロゼッタは決して大きな町ではなかった。詳しいロゼッタのガイドブックをもっていた訳でもなく、エジプト人の運転手と二人で出かけたこともあって、この町の一体どの辺りにロゼッタストーンがあるのかさっぱりわからず、随分と色々訪ね歩いて漸くたどり着いたのが、ロゼッタストーンが発見された所に建っている小さな記念館だった。記念館とはいうものの、一軒の民家位の大きさであり、展示物は少なくほとんどがパネル展示だ。「ロゼッタストーンは何処？」と尋ね漸く見つけたのはなんとプラスチック製（？）とおぼしきロゼッタストーンのレプリカだ。

「えっ！実物はどこに？」と尋ねたところ「ロンドンにある」というではないか。その時まで全く知らなかったのだが、ロゼッタストーンは1799年にナポレオンのエジプト遠征軍の兵士が発見したものの、その2年後、エジプトに上陸しフランス軍を降伏させたイギリス軍が戦利品として本国に持ち帰り、以後、大英博物館に収容されているのだとか。ロゼッタを訪れた翌年、ロンドンに行く機会があり、そこで初めて本物のロゼッタストーンと対面した感激は今でも忘れない。（今現在も、大英博物館の一番の目玉といえば、このロゼッタストーンだ）

このように、今から300年も前のこととは言え、この人類史上最大級の宝物ともいえるロゼッタストーンは、エジプトから「盗まれた物」といえる。古くからフランスとイギリスでその所有権を巡って争いがあったことは、ロゼッタストーン物語などで幾度も書かれてはいるが、早くからこの宝の返還を求めているエジプトにとっては、二人の泥棒同士の言い争いに過ぎないということになるのだが―――。

ロゼッタストーンと同じ運命を辿っているのが、アテネのパルテノン神殿を飾っていた大理石の諸彫刻群、エルギンマーブルだ。（これまた、アテネではみられず、大英博物館で見たのだけれど、実に息を飲む見事なものだった）

このエルギンマーブルも、1800年頃、当時、イギリスの外交官であったエルギン卿が、パルテノン神殿の壁からはぎとってイギリスに持ち帰ったものだ。（それやこれや、大英博物館の展示物の多くは、大英帝国時代に、盗んできたものだともいわれており、この博物館が別名「泥棒博物館」ともいわれる理由になっている）

イギリスは、ロゼッタストーンについてはエジプト政府に「世界の宝ともいえる物だから、世界中の人が見に来やすいロンドンで預かっている方がよいのでは―――」と言い訳し頑として返還に応じていないし、エルギンマーブルについては、ギリシャ政府に「劣化が激しく、ギリシャへの輸送には耐えられないから」と返還を拒んでいる。

ところが、先日、大英博物館はこのエルギンマーブルの一部をロシアのエルミタージュ美術館に貸し出したと明らかにしたから、ギリシャ政府の怒ること、怒ること。

盗まれたという訳ではないが（売っ払ってしまったらしいが）、例えば写楽や歌麿の浮世絵や、若冲、蕭白の重要な作品の大半が海外にあることの口惜しさを思えば、エジプト人やギリシャ人の気持ちはよく分かるような気がする。

(12/09/14 10:00pm)

2014年12月9日

愛人持つのは罪か

中国の習近平指導部は胡錦濤主席時代、中国共産党中央政治局委員の一人として、党内序列第9位にあった周永康氏の党籍を剥奪し刑事責任を追及すると発表した。

「ハエも虎も叩く」というスローガンの下に習近平指導部が推進する汚職追及姿勢をアピールし、失墜している共産党への信頼回復を目指す為、と言われているが、「最高指導部は訴追されない」という結党以来の不文律を破ってまでも彼の逮捕に踏み切った本当の理由は、習近平が自らの権力基盤を固めの為に、汚職追及に名をかりて対抗派閥叩きをしているからだ、との見方がもっぱらだ。

確かに、習近平自身も含めて約9割の中国共産党政治局委員たちの直系親族は既に海外に住んでおり、彼等の海外に持ち出した資産総額は一人当たり数千億に上るといわれていることからすれば、汚職追及が習近平派閥以外を狙い撃ちしていることとも符合する。

周永康は、長く中国の石油、天然資源の総元締の地位にあり、その時代から自身と親族が行った汚職による蓄財総額は、なんと驚くなかれ1兆9000億円に上るといわれている。しかも中央政治局委員時代は、公安部のトップを兼務していたというのだから、汚職取り締まりの総元締が、実は大泥棒だった訳だ－－－中国共産党政権のデタラメさには畏れ入るばかり。

いくら習近平が「汚職撲滅！」等といったところで、自身がまっ黒であり、今年の上期だけでも全国で2万5千人の公務員（全員が共産党員）が逮捕されたとか、この22年間にカナダとアメリカに逃亡した高級官僚が2000人、彼等が中国から持ち出した不正蓄財額が2兆円といったスケールのでかすぎる汚職体質が、共産党政権の下ではよくなる訳もないとは思うが－－－。(参照：「怖い共産党」11/11/14）

ところで新華社が伝える周永康の罪状は、汚職、権力乱用、といったもの他に、「女性たちとの不道徳な関係」というのがあったのが目を引いた。

1兆9千億円もの「富」と、（公安という）最強の「権力」を手中にしておれば、なにも中国でなくても、女性はよりどり、みどりだろうし、本人がその気になれば、妻以外に愛人を数人どころか、数十人抱えることも可能だろう。日本でも富と権力をもっている人物が愛人を持っている等という例はいくらでもありそうだが、それが「罪」に問われるなんていうことはないが－－－共産中国では「愛人は罪」なのだろうか。

今や、イスラム圏、あるいは韓国や台湾といった特殊な例を除けば、不倫が罪に問われる国は、世界には数少ないのに―――（アメリカや日本で政治家が愛人を持っているとか、不倫を働いた、という場合には確かに政治家としては致命傷になりかねないとは思うが、「不道徳罪」で刑事告発される―――なんていうことはない。

そういえば、かつて日本共産党の副委員長を務め参議院議員であった某氏も、不倫を理由に共産党を除名された例もあったし、周永康も不倫が党籍はく奪の理由の一つになっているところを見ると、共産党は不倫には厳しいということなのだろうか。

いやいや、共産主義の元祖、マルクスは、奥さんが実家から連れてきた女中をに子供を産ませてエンゲルスに「お前が産ませたことにしてくれ」と頼んだとか。

共産党宣言には、「愛人は罪」と書いてあるのだろうか―――一度調べてみよう。

(12/08/14 10:00pm)

2014年12月8日

○か×か

「この道しかない！」とアベノミクスの成果をアピールする安倍さん、「アベノミクスは失敗だった！」と叫ぶ野党という選挙序盤だった。

アベノミクスが成功（もしくは成功途次）であるのか、失敗であるのか、いってみれば○か×かという一見単純な問いに対してすら、与野党どころか、新聞各紙、あるいは経済の専門家といわれる諸先生方の中でも意見が両極端に分かれているとなれば、政治やら経済の素人である一般選挙民は「今回の選挙の争点はアベノミクス是か否かですよ。よく考えて投票しましょう！」と言われても、一体、何を根拠に判断して自分の意見を決めたらよいのかさっぱり分からないのは当然だ。

アベノミクスの3本の矢の内、第一の矢である「大胆な金融政策」は日銀を使っての大幅な金融緩和によって、又、第二の矢「機動的な財政政策」は、10兆円規模の公共事業を中心とする政府需要の創出などによって、起きた大幅な円安や物価の上昇、あるいは株価の上昇、といった形では、その成果はみえつつあるようにも見える。（少なくとも民主党政権時代の泥沼時よりはマシだ、と思う人はおおいかもしれない）

問題は第3の矢の成長戦略だが、こちらは規制緩和による新しい市場の開拓一つをとってみても、農協や医師会のような既得権に阻まれて中々前に進んでいないのが現状だ。そもそも、金融政策や財政政策と違って成長戦略は、今日やったら明日成果が出るといった即効性のあるものではなく、成果が出るまでには少なくとも2年や3年は時間がかかるという性質があることを考えれば、総合的には今の時点で「アベノミクスは○か×か」を判断せよ！といわれても時期尚早と思わないではない。

我々の判断を迷わせる要因は他にもたくさんある。例えば、安倍さんは「アベノミクスで雇用が100万人増えた」という。それに対して、海江田さんは「増えたのは非正規ばかり」と言っている。統計数字をみると確かにこの間、正規雇用は22万人減（役員を除く）非正規雇用は123万増となっているから海江田さんのアベノミクス批判は的を射ているようにも受け取れるが、その中身を見てみると、全体で3305万人いる正規雇用で減った大部分は定年退職であり、その数が新規採用者数を22万人上回ったに過ぎないとなると、これが「正規雇用がアベノミクスでどんどん減らされている」ということではないようだ。

123万人増えて1952万人になったという非正規雇用も、その内訳は定年退職後、継続して以前の会社に再雇用された人、今まで外で働くチャンスのなかった主婦などがパートなどで働き始めたケースがほとんどであり、完全失業者数も238万人と前年同期比23万人減っているというところをみると、民主党政権下では、再就職の道もなかった退職者や長期失業者にも雇用チャンスが出てきているという見方もできるから、海江田さんの言うように「アベノミクスで雇用もメチャクチャ」という話にはならないような気がしないではない。

同じ、雇用統計の数字にしても、朝日、毎日の解説を読むと海江田さん流の批判になるし、安倍さん寄りの新聞をみると、「良くなってきている」ということになるのだから－－－アベノミクスの可否の判定なんて、我々にできる訳もない！ということなのだろう。

(12/07/14 10:00pm)

2014年12月5日

バスケの外圧

FIBA（国際バスケットボール連盟）に6年も前から指導されている「1国1リーグ制への統一」が実現できず、遂に日本のバスケットは、FIBAから「国際試合への参加資格停止」という処分を課されてしまった。

このままで行くと、2020年に開かれる東京オリンピックでの開催国枠での出場すらできなくなるし、今現在、FIBAの方針通り「1国1リーグ」でやっている女子バスケットまで男子のトバッチリで出られなくなってしまうというのだから「何をやってるんだ！」「さっさと統一しろ！」と日本国内からも非難一辺倒の声がわきあがるのも当然かもしれない。

ただ、この騒ぎ、「世界基準がこうだから、それに従わねば試合に出してやらない！」という、いわゆる外圧をかけてきたFIBA、そしてそれに唯唯諾諾と従わないからといって猛烈な非難を浴びせる日本のスポーツマスコミに対して、タカさんはどうも違和感を禁じ得ないのだ。

日本のトップリーグは現在２つある。企業スポンサー名を冠する企業クラブ的な色彩を残したアマチュアチームと、企業をスポンサーにしたプロチームの混成であるNBLと、完全プロチームだけが集まったtkbjリーグだが、tkbjは、サッカーのＪリーグのようにチーム名には地域名しか認めないという方式をとっている。tkbjは、企業のお抱えチーム的な要素を嫌い、「プロとしてやっていく」という強い自覚をもった「プロ」の集団ということだろうか。

FIBAの勧告に従って1国1リーグに再編しようとすれば、どうしても所属チーム数の多いtkbjにNBAが加わるという形になるのだろうが、そうなるとNBLは企業名を外さなければならない。

しかし、NBAのスポンサー企業にしてみれば、企業名を外したチームをサポートし続ける意味は見いだせないだろうし、企業所属のアマチュア選手としてNBLチームでプレーしてきた選手の中には、バスケットを辞めざるを得ないという選手も出てくるだろう。

サッカーのJリーグのように、年間850万人もの観客が集まるリーグならともかく、さほどの観客動員も中々期待できそうもない日本のバスケットとなれば、いかにチーム維持費が安い（選手数は少ないから）とは言っても何十ものチームでのリーグが商業的に（興行的に）やっていけるかは大いに疑問がある。

実際、サッカーのなでしこリーグやアイスホッケー、ラグビーなど企業名があってこそ存続できているリーグもあることを考えると、今のところさして観客動員数も多くないバスケのリーグから企業を排除して本当に大丈夫か？と思わないではない。

まあ、色々な利害もあるだろうし、NBLにもtkbjにも言い分はあると思うが、なにしろ、タカさんの違和感というのは、まるで占領軍総司令部（GHQ）のように、「俺たちがこうしろと言っているのだからこうしろ！」と権威を嵩にきて威圧的に迫るFIBA、そして「外圧がそうしろと言っているのだから、日本国内事情などと四の五の言わずに従うべきだ！」と非難の声を上げるマスコミやスポーツ評論家に対してだ。

例えば、一体、どこの国が「国連という国際機関がこうしろと言っているのだから、国内事情など無視してでも、彼等に従うべきだ！」などというだろうか。もしそんな国があったとしたら、その国はとても独立国とは言えないではないか。国連のいうことは何事も「内政干渉だ！」とはねかえす中国のような根性は、日本にはないのか！

「日本には日本の事情がある！それを聞き入れないというなら2020年の東京オリンピックでバスケットはやらせないぞ！」と、FIBAをどやしつける位の気概を日本も示したらどうだ！と思うが――――無理でしょうねぇ〜。

(12/05/14 10:00pm)

2014年12月4日

生物か無生物か

国内最大のツルの飛来地である鹿児島県出水市の出水平野で鳥インフルエンザに感染したマナヅルが見つかったという。

ニワトリだったら数千羽を一気に殺処分するなどして被害が拡がらないように防疫体制をとるのだろうが、なにせ海の向うから飛んできて国の特別天然記念物に指定されているツルとなるとまさか殺処分という訳にも行くまいし、そうかと言ってこのまま放っておくと、近くの養鶏場のニワトリが鳥インフルエンザで大騒ぎということにもなりかねないだろうから、いやはや大変なことになってきたものだ。

この冬は、鶏肉が中々手に入らない、なんていうことになりかねないだけに、この際、大急ぎで鳥から揚げやら、フライドチキン（タカさんの大好物）の食べ溜めをしておこうかしらん。

今年の冬は人間様のインフルエンザの流行も例年より1ヵ月近く早くはじまっているという。予防ワクチンを打っておけば100%大丈夫という訳ではないらしいが、万一感染しても重症化は避けられる可能性が高いというからやっぱり接種を受けておいた方がよさそうだ。

インフルエンザの原因になっているのは「ウィルス」という奴だが、このウィルスというやつ、細菌の大きさの100分の1とか1000分の1という小ささであり電子顕微鏡を使わなければ見えないのだとか。しかも、「生物」の定義である「細胞」を持たず「カプシド」と呼ばれるタンパク質の殻と、ウィルス核酸と呼ばれる物だけでできているという何とも奇妙な物らしい。

生物ではない物なら、無生物というカテゴリーになるはずだが、ウィルスは生物にはできて無生物にはできないが「増殖」が行えるという点では、生物に近い訳で―――なんとも奇妙な地球外生命のようなものなのだとか。

細菌性の伝染病ならば、抗生物質のような対抗手段があるけれど、ウィルスに対抗する有効な方法は中々ないというからややこしい。(ウィルスが寄生した細菌を消毒などでやっつける、という方法位しかないらしい）

インフルエンザをはじめ、最近はエボラ出血熱やエイズのようなウィルスが原因になっている病がやたらと多いような気がする。タカさんが2度ほどなったヘルペスもウィルス性だというが、確かに痛みで七転八倒している間に医者がくれた薬といえば、鎮痛剤だけだったような気がする。

「横になって体力を回復させるのが一番」といわれたような気がするけれど―――そういえば風邪になった時には、風邪薬を飲んでも効かないけれど、「なにしろ寝床に入っていなさい！」と親に言われた記憶があるのも、やはり「ウィルスの対抗手段は、自己免疫を回復させるしかない」という昔からの自然療法が一番ということなのかもしれない。

そういえば、マラリアに罹った患者は寝たきりになるのに、風邪をひいた患者は熱があっても会社に行こうとするのは、マラリアは蚊に運んでもらえるから患者が動かなくても大丈夫だけど風邪のウィルスは患者が移動しないと動けないから患者が外に出て行きたがるように操っているからだ―――と聞いたことがある。

細菌の1/1000の小さな生物とも無生物ともつかないエイリアンが、我々人類の生殺与奪の鍵を握っているというのだから---インフルエンザも、エボラも侮ってはいけないということなのだろうか。

(12/03/14 10:00pm)

2014年12月3日

やるだけ無駄

天井知らずの選挙費用にせよ、テレビCMによる品の無いネガティブキャンペーンにせよ、ほとんど野放し状態のように見えるアメリカの選挙に比べれば、雁字搦め、規制だらけに見える日本の選挙も、アメリカに比べればそれはそれでよい点も多いようには思うが、その反面、あまりに「公正」だとか「機会均等」にこだわり過ぎて本音の見えないウソっぽさが気になることもある。

公示前日に行われた「8党首討論会」なる催しにしても、その茶番っぽさになんだか滑稽味さえ感じてしまった。

党首討論に呼ばれた8党の衆議院議席数は、自民293、公明31、民主62、維新42、次世代19、共産8．生活5、社民2、だそうだ。前回12年の総選挙の党首討論に出ていたのが全部で12党あったのに比べれば（参照；「ボウフラも平等に」11/28/12）ひな壇の席も随分整理された観はあったけれど、それでも衆議院議席数が10に満たない党が3党もあって、この席で初めて顔を見たご仁までいたけれど、議席数2だとか5といったゴミみたいな党にまで、300近い議席を占める自民党や曲りなりにも野党第一党を名乗る民主党などとも同じ程度の発言チャンスを与えられていたのは、いかに「みな平等に」という配慮とは言え何だかバカバカしさを感じてしまう。（かといって議席が少ないからと言って討論に呼ばなければ、「差別だ！」と騒ぐ連中がいるから誰も「あそことあそこは外しましょう！」と言えないというジレンマが毎回選挙で繰り返されている）

「少数意見に耳を傾けるのが民主主義なのだ！」という教科書的な正論に真正面から逆らうつもりもないけれど、横綱と序の口力士を同等にあつかって「これこそ平等だ！」と息巻いているようなものではないかと、思うとよほどのヒマ人ででもないかぎり8党首討論会なる物をじっくり見た人はいないようにも思うが―――。

討論の翌日の新聞各紙も、8党（政党要件を満たしていないのでよばれなかった新党改革とかいうところを入れて9党にしている新聞もあったが）の発言をほぼ同じ比重で並べていたけれど、これにしても本当に読者のことを思えば、今回選挙で問われている「選択」のヒントを読者に提供するという目的ならば、目一杯手を広げたにしろせいぜい5党か6党の主張の主要部分だけを簡潔にまとめてくれた方が余程親切というものだ。

新聞各紙によると今回選挙は、「アベノミクスの評価」が争点だそうだ。その点について討論会では安倍首相は、「この道しかない」と叫んでいたし公明党も成果を強調していたが、野党第一党の民主党をはじめ野党側は概ね「アベノミクスの失敗」を主張していた。

「この道しかない」と宗教じゃあるまいし理屈の説明もないドグマの押しつけの与党側も与党側だけれど、「いや、こういう別の道がある！」という具体策の一つも出さずにただ批判だけの野党も野党だとおもう。そんな討論会をきいていて、一体どうやって「選択」しろというのだろう。

こんな茶番ばかりが続くなら、もう今後は党首討論会なんてやるだけ無駄、いや、やっぱり、こんな時期に総選挙なんてやるだけ無駄、という気がしてならない。

(12/02/14 10:00pm)

2014年12月2日

アトムと金妻

美術館や博物館などに行くと入り口で必ず音声ガイドを借りることにしている。老眼を凝らして説明書を読むより、500円かそこらで借りられて懇切丁寧に見どころを解説してくれるから凄く便利なのだが、先日、ある博物館にいったら音声ガイドのレンタルがない。えっ、こんな立派な博物館でなぜ？と思って受付のお嬢さんに聞いたら、「展示品の前にあるQRコードをスマホで読み取っていただければ、無料でガイドをお聞きいただけます」というではないか。博物館としてはタダでガイドを提供しているのだから文句はあるまい！ということなのだろうが、前世期の遺物のごとく意固地に「ケイタイを持たない主義」を貫いているタカさんとしては、これからはどんどん社会から切り離されて行く！ということなのかと、ちょっと鼻白んでしまった。

それにしても、ケイタイだ、スマホだといわゆる情報機器（今や電話とは言わないようになったようだ）の進化のスピードは凄まじいものがある。

タカさんが子供の頃は、今や懐かしい黒電話で、ほとんどの家では玄関に置いてあった。かかってくる電話は、お客様と同じだから玄関でお出迎えしなければ―――なんていうことでもあったのだろうか。あるいは、昔はご近所の方がよく電話を借りに来たし、呼び出し電話、なんていうのがあったから玄関に置く必要があったからだろうか。

それが、段々、茶の間に置かれるようになり、年頃になった息子や娘が、彼氏とか彼女に電話するとか、あるいは電話がかかってくると－－－家族全員の耳がダンボになるなんていうプライバシーのかけらもない時代があり、その内に、子機なんていうのができてからは、子供たちは高校生ぐらいになると自室で電話ができるようになり（この頃から、親のコントロールが効かなくなりはじめた）さらには、今のように、小さな内から一人一台、ケイタイが持てるようになった訳だが、たかだか数十年のこの変わりようは、なんとも驚く限りだ。

そうそう、鉄腕アトムの雑誌連載が始まったのは1952年、テレビアニメが始まったのは1966年だが、2003年に生まれという設定のアトムが活躍する21世紀の未来社会は、超高層ビルの合間を、高速道路網が縦横に走り、自動操縦らしい空も飛べる自動車が行きかっているというなんとも夢あふれる世界だった。あのアニメに描かれた21世紀の都市は、実際今21世紀の我々が見かける景色と大きく違わない高層ビルが立ち並んでいる。空を飛べる自動車はまだ開発されていないが、排気ガスを出さないで水素エネルギーで動くエコ自動車や、自動操縦車も既に開発されていることを考えると、手塚治虫の未来を見通す目と、想像力がいかに優れていたかがわかろうというものが、敢えて、彼が見通せなかった物といえば電話の進化だ。アトムは、あれだけの未来都市で活躍しているのに、使っている電話はコード付の黒電話だ。さすがの手塚治虫も、ケイタイ電話、そしてスマホ全盛の21世紀、というのは想像できなかったようだ。

そういえば、1983年に放映されたテレビドラマ都会の奥様たちの不倫の物語「金曜日の妻たち」（金妻）の主題歌「恋におちて」の歌詞にも「ダイヤル回して手をとめた〜♫」というのがあることからすれば、あの頃はまだケイタイどころか一般家庭でもプッシュ式電話すらなかったということだ。

アトムや、金妻でさえ予測できなかった進化だもの、タカさんだけが古い訳でもないようだ。

(12/01/14 10:00pm)

2014年12月1日

シニア婚

昔のように親戚や近所の世話好きのおばさんがお見合い相手を紹介してくれて――といった機会もほとんどなくなった昨今では、男女ともに、結婚相手と出会う機会は自力で見つけるしかない。

それでは、最近結婚したカップルに「お二人のなれそめは何ですか」という質問をぶつけてみると、ここ30年程、第一位が「職場」、第二位が「学生時代からの知り合い」、第三位が「友達の紹介」という順位に全く変わりがないのだとか。

確かに、タカさんと同年代の夫婦に限らず最近結婚した若いカップルに当てはめてみても、この三つのパターンから外れるケースは意外と少ない。（「渋谷でナンパ」と結婚披露宴で暴露された夫婦を一組知っているが）

最近のカップルのほとんどが「合コン」だとか「婚活パーティー」あるいは「インターネットのサイト」なんていう出会いばかりなのではと思っていたが、この手の出会いはまだまだ下位に位置しているという。

もっともこれはあくまでもある程度若いカップルのケースであって、中高年となると中々そうもいかない。特に、中高年になってからの離婚や、伴侶に死に別れてしまったというケースの場合、職場、同級生、友人の紹介、という若い人達に恵まれている出会いのチャンスは、ほとんど皆無となる。

平均寿命がまだ短かった時代ならば、例えば60代で独り身になっても、もう今更結婚でもないだろう、と本人も回りも考えたかもしれないが、子供たちも既に独立して一人暮らしになってから、あと20年、30年もある平均寿命までの月日を考えれば「もう一度、結婚しようか」と思う人が出てきて当然なのかもしれない。

かつては、若い独身男女をターゲットにした結婚情報サービス会社も、最近は、50代60代以上を専門にしたサービスに特化したところも多いし、今、都内で開かれている婚活パーティーの約1/3は、中高年を対象としたいわゆるシニア婚活パーティーだというから、このトレンドはしばらく変わらないようにも思える。

もっとも年代によって結婚観が全く違うということを考えると、シニア婚も中々やっかいなところがあるようだ。「20代の女性にとっては金よりも愛、40代になると愛よりも金」という言葉があるけれど、ある結婚相談所によると、シニア婚活中の女性の婚活理由の一位は、「老後の経済不安の解消」であり、男性の婚活理由は、「話し相手が欲しい」「家事をして欲しい」だというから、男女の結婚目的の齟齬から、シニア婚には、そうそう理想的な出会いがある訳でもないようだ。

折から、直木賞作家黒川博行の小説「後妻業」を地でいくような、75才の夫が67才の再婚相手に毒殺される事件が起きた。この67才の容疑者、幾度も再婚を繰り返し以前の再婚相手5人は、再婚直後に不審死を遂げており今までに彼女が受け取った前夫の遺産総額がなんと10億円に上るというのだから―――ここしばらくはシニア婚も若干下火になるのだろうか―――。

いやぁ〜つくづく妻には健康でいて欲しいと思うし、なにしろ、嫌われないようにしなければ―――と思う。

(11/30/14 10:00pm)

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