「学力」の経済学 中室牧子 ディスカヴァー21
ダン・アリエリーの「不合理だからうまくいく」で行動経済学という経済学があることをしったが、本書は（多分？）その行動経済学の一分野とおもわれる「教育経済学」なる経済学の一冊だ。（それにしても、なんにでも「経済学」をつければ、それらしい学問に見えるのだから、経済学は奥が深いというか、いい加減というか―――）
著者の説明によれば、教育経済学の根本にあるのは、「データ」だそうだ。冒頭にあげられている3つの教育に関する問題、すなわち「ご褒美で釣ること」「ほめて育てること」「ゲームを持たせること」の是非について、教育評論家や、子育て専門家の回答（ご褒美で釣っては「いけない」、ほめ育てはしたほうが「よい」、ゲームをすると「暴力的になる」）を例に挙げ、データの裏付けのないこのような回答が、じつは教育経済学的立場からとったデータに基づくと悉く間違っていること、（すなわちご褒美で釣ることも「よい」し、褒め育てはしてはいけないし、ゲームをしても暴力的にはならない）をデータに基づいた説明を読むと、確かに説得力はある。
その他にも「少人数学級は、そのコストに見合うほどの効果はない」あるいは「学力テストの県別、学校別成績公表は、実は弊害ばかりだ」といった例など、納得いく話が多く面白かった。
確かに、著者の言う通り、教育問題となると専門家でもない連中（総理大臣やら、ただ子供の数の多い親等々）が、一家言もっていても誰もオカシイとは思わないのも変ではある。
(15年6月発行)