予想どおりに不合理 ダン・アリエリー 早川書房
行動経済学に興味をもったのは本著の著者であるダン・アリエリーの「不合理だからうまくいく」を読んだからだが、この「予想通りに不合理」の方が出版は先であるらしい。
内容は「不合理だからうまくいく」とほぼ同じと言ってよく、人間の行動が必ずしも合理的な説明のつかない、どちらかといえば不合理、見方によっては「バカみたい」な決定によって行われている―――という点を様々な実証実験によって証明した事例が紹介されていて、著者の話の振り方が上手いせいもあって実に面白い。
胃薬だと偽って小麦粉を飲ませても胃痛が治る例がある（プラセボ効果）が、同じ小麦粉でも飲ませる前に「これは一包、10セントです」というのと「これは一包、10ドルです」というのでは効き目ががぜん違ってくる―――というのは、中々合理的な説明のつかない人間心理学の一分野であるけれど、こういった人間の不合理さと経済学という基本的には合理性の追求の学問との融合をさせようという行動経済学という分野に多少、「なんでも後に経済学をつければ学問らしくなるのか？」と思わないではなかったけれど―――。
しかし、本書を読んでみると、様々な場面における人間の一種、不合理と思える行動や判断のパターンをつかみ、そういった不合理さを予測することによって経済行動を行って行こうという意図はなんとなく理解できる。
例えば、プラセボ―にしても使い方一つでは、かなり有効な副作用のない向精神薬なんていうのも考えられるような気がしないではない。
不合理極まりないとさえ言える人間の活動の集積である「経済」がそうそう簡単に理論家できない、すなわち経済活動を学問的研究によって極めることなんてできる訳もない！ということをアリエリーという「経済」学者が言っているような気がしないではない、変な気持ちになる一冊だ。
（13年8月発行）