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21世紀の不平等 A・B・アトキンソン 東洋経済新報社
著者アトキンソンは、一昨年随分と話題になった「21世紀の資本」の著者トマ・ピケティ―ピケティの師であるという。
資本主義が行き詰っているのではないかという論議は最近とみに盛んで、その要因としてピケティ―が挙げていたのが「格差の拡大」であったが、アトキンソンもおなじくこの「格差の拡大」を本書のメインテーマにおいていて、その実態と「格差の拡大」すなわち不平等拡大の原因分析に多くの紙幅を割いている。
どちらかというと不平等（格差の拡大）の実態についての詳細な指摘は、ピケティ―の書と大きく変わるものはないが（国民所得に占める賃金のシェアは縮小し、利潤のシェアが増大しているから―――という指摘も別段に目新しいものではない）ピケティ―の著作に比べれば、本書ではその格差拡大の是正策についての提言がなされているのに好感が持てるが、経済学者特有の現場感覚の乏しい理想論、夢想論的な色彩が強く今一つ納得がいかない部分が多い。
アトキンソンの掲げる不平等是正のための提案は15にのぼるが、例えば：
1．世代間の不平等拡大の改善手段としてすべての人々に資本給付を行う。
2．現代の経営層への異常に高い報酬の防止として、最高所得税率を引き上げる
3．児童貧困の減少のため全児童に対し相当額の児童手当を支給する
といったものだが、要するに「バラマキ」策として批判も多い既に実施されている施策や、破たんした共産主義の理念的な施策を焼き直しで挙げただけで、実効性がほとんどありそうもないバラ色経済政策といった感じを強く受ける。
人々は概してその時々の経済状況には不満をもつものだが、ポピュリスト政治家がそういった不安感に乗じてバラマキ論を振りまいて経済状況を更に悪化させてきた（あの民主党政権時代を思い出す）
アトキンソンもそんなインチキ政治家があがめ祀る偶像に過ぎないような気がしないではない。
(15年12月発行)