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子供の宇宙 河合隼雄 岩波書店
著者が亡くなってから既に10年が経つ。
著者の肩書は「臨床心理学者」と紹介されることも多く、確かにユングは心理分析学の普及につとめ、それに関する著作も多いのだが、それにもまして心理学にとどまらない日本文化の精神構造の研究などの著作も多く、その分析成果は今も日本文化研究の基礎ともなっているのだからまさに「知の巨人」といってよい人物であったことが思いだされる。（参照：「中空構造日本の深層」）
本書はそんな著者が、かつては子どもであった我々大人が忘れてしまっている子どもの時代にもっていた心の中の広大な宇宙について、臨床心理学者として分析したものだが、確かに本書を読んでみると、なんだか昔の子ども時代の自分を懐かしく思いだすような気がする。
その手法は、多くの児童文学の作品を手掛かりに、こどもが持つ様々な問題（例えば登校拒否や家出といった）への子ども自身による解法を探る―――というものであり、子どもの無限ともいえる可能性に対する著者の信頼が読んでいても伝わり、何だか夢がひろがるような気がする。
家族・秘密・動物・時空・老人・死・異性という７つのテーマごとに、子どもたちがこれらがどう関わろうとしているのか、そして我々大人はそれをどう見守っていくべきなのかが述べられていて説得力がある一冊だ。
（08年6月発行）