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地球の歴史（上中下） 鎌田浩毅 中央公論新社
この宇宙の誕生は137億年前のビッグバンだが、それからほぼ100億年経った今から45億年前に太陽系が誕生し、それとほぼ同時に我が地球が誕生した―といわれている。
宇宙の歴史からみれば「地球の歴史」というのはかなり短く、つい最近、宇宙誕生後、約2/3の歴史が経過後ということになるが、その「地球の歴史」も同じく、創生以降、今から約6億年程前までは、その証拠となるような痕跡が地球の大地からほとんど得られていないことを考えると、その歴史の前半約2/3は、研究による理論と推理に基づいたものでしかないということになるし、地球史の中でも最大の謎と言われる「一体生命はどうやって誕生したのか」をはじめとする多くの謎を、再現性のある証拠をもって説明することは不可能だ。
しかし、逆に考えれば今現在、（現象的には）「宇宙」はある訳だし、「太陽系惑星としての地球」も現実的に存在し、その上に我々を含めた生命が存在しているのだから、あらゆる謎はいつの日か必ずや解明されるであろうと、信じることは可能だし、あるいは将来、この地球」が、そしてそこに存在する「生命」がどういう運命をたどるであろうかの予測も可能になるかもしれない。
本書はそういう意味を込めて著者が現時点で人類の生命の歴史を含む「地球の歴史」について科学がどこまでの知見をえているかを新書3冊に亘って解説したもので、新書らしく一般の読者にも分かり易い解説書となっているが、その内容は専門書に近い詳報的なものであり、地球歴史に迫る手法も、「物理的手法」「科学的手法」等々多岐にわたるもので、説得力は抜群だ。
時間スケールを含めて長い宇宙史から見れば、「わずかなる時期」のようにも思える地球史、特に生命の歴史が大きく動いたこの6億年を中心にした記述であるものの、もうそれでも我々の思考のスケールをはるかに超えるに十分すぎる期間であり、再三繰り返して読みながらも理解はとうてい及ばないようにさえ思える大作だ。
地球史に関しては一番の名著だと思っていまも座右に於いている丸山茂穂の「地球と生命の歴史」を最新の知見に基づき増補したかのような3冊であり、著者の口調も丸山茂穂調というか自身に満ちた断定調であるところに、謎多きこの分野に切り込んでいくためのガイド本としての頼もしさが感じられるのもうれしい。
（16年10月発行）