「砂漠の狐」ロンメル 大木毅 角川新書
エジプトに駐在していた時、第二次大戦の北アフリカ戦線の激戦地であったエルアラメインを訪れたことがある。（参照：「エルアラメイン」11/27/98）
ドイツ軍の名称といわれた「砂漠の狐」の異名で知られるロンメル率いる独伊同盟軍と、これまた名称といわれたモンゴメリーに率いられる連合軍とが半年にわたる激戦を交えた砂漠の地である。
ロンメルはヒトラーに忠実で優秀な将軍として知られるも、最後はヒトラー暗殺に加担したと疑われ自殺を強いられたということもあってその歴史的評価は、絶賛から酷評まで様々であったが、80年代からはその評価は安定したもの（すなわち、どちらかというと愚将）として定まってきているという。
その点、日本でのロンメル評価は、元々研究者が少ないこともあって、欧米での評価の受け売りが続き最近までは安定したものではなかったが、本書の著者によって漸く、安定した公平なものになってきたようだ。
本書によれば、ロンメルはドイツ軍の中では傍流に属していたために、それほどの出世が望める立場ではなかったが、生来の功名心の強さと、自己アピールの巧みさによってヒトラーに認められ出世したものの、「猪武者」（むやみと先頭を切って突き進むだけ）として後方部隊を混乱させた源義経同様、司令官であるにも関わらず前線に立って指揮することが多かったため、しばしば全軍の指揮系統を混乱させる事が多く前線指揮官としてはともかく、全軍指揮という面では愚将と言ってもよかったという。
エルアラメインに限らずトブルクの攻防なども丁寧に描かれており、一時期この種の軍記物をよく読んでいた身としては、懐かしさも感じる一冊であった。
(19年3月発行)