選挙制を疑う ダーヴィツ・レインブルック 法政大学出版局
民主主義社会において広く信じられているベストの民意決定プロセスとは、「選挙によって選ばれた人々が集う議会における多数決」だが、このプロセスの「選挙」および「多数決」についてその欠陥が様々に言われている。
18歳以上の男女に平等に与えられる選挙権にしても、先の参議院選挙における全国投票率が50％を割り込んでおり年代別だと10代にいたってはわずかに3割というのだから、これで「民意」が反映されているとは言い難いのではないかということが言われているにも関わらず、その改善方法が差し当って見当たらないとなれば、もう一つの柱である「多数決」も成り立たないということになってしまう。
以前、この読書日記でも取り上げたのは「多数決を疑う」であったが、本書はもう一つの「民主主義」の柱といわれる「選挙制」に対する疑問と改善策を述べたものだが、現実味はともかくとして中々面白い提案だ。
著者が一人一票の選挙制度に代わる制度としてもっとも押しているのは、議会のメンバーを裁判員を選ぶのと同じような抽選制で選ぶという方法だ。
抽選制で選ばれた議員は任期をある程度、長く（例えば15年）する代わりに再選を禁止とし、議会はそのメンバーを例えば毎年その定数の1/15ずつ入れ替えていくという制度を採用すれば、熟議が可能で、利権との癒着の怖れの無い議員が選ばれるのではないか―――という。
たしかに今各地の民主主義国が抱えている問題たとえば、ポピュリズムの台頭、特定勢力の利権の蔓延、逆に少数意見の軽視、といった問題は、裁判員制度のような抽選制で選ばれた再任不可の議員のみで構成される良識ある議会によって改善される可能性はあるが――――。
ただその実現性は殆ど夢物語に近いのではないか―――とも思えるのだが。
(19年4月発行）