ホモ・デウス（上下）　　　ユヴァル・ハラリ　　　河出書房新社　

前著「サピエンス全史」において我々ホモ・サピエンスが他の既に絶滅してしまった人類と違って今や大繁栄を迎え、AIとクローン技術を駆使することで、今や永遠の命さえも手に入れようとしているのは、全て5万年前に起きた認知革命によるものだという大胆な仮説を唱えた著者だが、その著者が前著の続編として書いた本書が主張するのは、この認知革命が将来辿るのは、ホモ・サピエンスよりも更に賢くて強い存在である神ともいえる存在、すなわちホモ・デウスになる道であるという仮説だ。

我々が、永遠の命を得たらどうなるか―――SFなどでよく語られるテーマだが、今まではあくまでも想像の世界でしかなかったことが、現実に起きる可能性がでてきているというのだ。

もし我々が死なない存在だとしたらなにも子孫を作って「命を繋ぐ」必要だってなくなるし、そうだとしたら生殖行為も必要でなくなる。（もし、死なない人間共が何百年も子孫を作り続けたりしたら、地球は人であふれかえってしまう）

いやそれどころか永遠の命があれば、神のように体なんていうものもいらないし、意識だけが電脳空間にあればいいということになりはしないだろうか。

これってユートピアなのだろうか、それとも手塚治虫の「火の鳥」で描かれた永遠の命を得たことによって永遠に逃れられなくなる苦しみの世界に入って行った猿田彦のような、ディストピアなのでは――――。

作者の説く仮説は、両論併記的な部分が多いが全体的にはホモ・デウスの、明るい未来が語られていることが、本書も「サピエンス全史」に次いで世界的ベストセラーとなった所以だと思うが――――。

生命も全て解析可能なアルゴリズムだし、いずれあらゆるアルゴリズムはどれだけふくざつであろうが解析されるだろう―――という著者の前提は、遠い将来までを見通せば否定しがたいようにも思うものの、男女の恋愛の駆け引きやの機微や、BREXITの誰もが満足する解決策などと言う物が、どう逆立ちしても見付からない現状からすると、例え、実現するにせよまだまだ遠い将来のことだし、少なくともいま71歳の自分が悩むことではないようにも思う。

（18年9月発行）