台湾論　　　　　　小林よしのり　　　　　　小学館　　　

戦後29年間、ルバング島の密林に潜んでいた小野田寛郎さんが帰還後語った日本人の矜持は、占領軍による徹底的な洗脳によって腑抜けにされてしまっていた当時の日本人に衝撃を与えた。この時、小野田さんと同年代の我々の父祖世代が、なぜこういった話を聞かせてくれなかったのかと恨めしい思いをした人も多かったのではないだろうか。しかし、小野田さんの語った戦前、戦中の「日本人の誇り」は、自虐史観のマスターベーションに淫するサヨクマスコミ、進歩的文化人、そして中国共産党や朝鮮半島の反日の声の中で再び、埋もれさせられていった。(参照：「だから日本人よ、靖国に行こう」

そんな中、小野田さんの語った「日本人は立派だった」という話を再び話してくれたのが、李登輝だった。彼はまさに小野田さんと同年代、日本が台湾を施政下においていた時代に日本の教育を受け、日本人として育ち、戦った世代だ。

李登輝は、敗戦後、日本に代わる支配者として乗り込んだ蒋介石率いる中国国民党の台湾人に対する圧制を最後には巧みにはねのけ、遂に台湾の民主化を実現した英雄といってよいが、彼が「日本精神こそが今の台湾にも望まれる」と言ってくれたことが、今漸くおきはじめている「反自虐史観」という草の根運動という形で戦後歪め続けられてきた、日本の政治、外交を少しは軌道修正するきっかけとなったのではないだろうか。（それでも、相変わらず自虐史観どっぷりの、土下座外交を言い張る連中のしぶとさは酷いものだが）

「台湾人と日本精神」の中でもふれられていた本書は、そんな台湾の歴史、そして李登輝世代のみならず「日本精神の復活」こそが、新しい台湾人としての矜持であるべきだと考える台湾の若い世代の声であり、それは腑抜けになってしまった今現在の日本人に対するラブコールなのだという作者の熱きメッセージである。

漫画というメディアを使っているが、本書に述べられた台湾論、そして日本精神に関する資料は忠実に事実に基づいており、慰安婦問題での河野洋平発言のような不確かもしくは虚偽によるものの対極をなすものである。

やがて去っていくであろう李登輝や小野田さんの世代を継ぐ論客として活躍して欲しい漫画家である。