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2014年の各月バックナンバー：1月、2月、3月、4月、5月、6月
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2014年2月
＜＜2月タイトル＞
02/28 名札が消えた 02/27 ひまわりと美人の国 02/26 お肌がツルツル 02/25 三百代言 02/24 レジェントになるには 02/21 ジンクピリジオン効果 02/20 正気か？ 02/19 ソチの暖冬と東京の大雪 02/18 教育委員会制度改革 02/17 安心という主観 02/14 松井臨時コーチ 02/13 Winner takes All 02/12 騙され好き 02/07 儒教道徳を捨ててから 02/06 当選確実 02/05 暴走老人Ⅱ 02/04 STAP細胞のミーハー 02/03 明日ママがいない
2014年2月28日
名札が消えた
今時、大きな病院なら診察の順番が来たからといって名前で呼びところはタカさんが知る限りではない。どこも、受け付けで渡された番号で呼ばれるのが普通になった。
確かに、病院に行って知った人の名前が呼ばれているのを聞けば、「えっ、あの人どこが悪いのだろう」と気になるし、本人にとっても病院に通っているということは（痔なのかも知れないし、何か悪い性病かもしれないし）究極の個人情報といってよいものだから、病院が館内放送で患者の個人情報を漏洩してしまうかのような行為は、避けるに越したことはない。
病院が名前ではなく番号で患者を呼ぶようになったのは個人情報保護が制定された2003年頃からではなかったかと思う。今、入院した人の見舞いに訪れても、病室に患者の名前を書いた札があるところは少ないのもやはり個人情報保護の観点からなのだろう。タカさんも、当初は、違和感もあったが最近はむしろ町の歯医者などで名前を呼ばれた時の方が、ちょっと変な気さえするようになってしまった。慣れというのは恐ろしいものだ。
聞いた話では今、全国のほとんどの小学校では名札は廃止されているという。これは個人情報保護というよりは、名札をつけたまま登下校すると、不審者による誘拐などの恐れがあるからという防犯上の理由からだとか。時代の流れとは言え、タカさんのもつ「新品の大きなランドセルを担ぎ、胸には大きな名札を胸につけて」－－－というピカピカの一年生のイメージはすっかり変わっているようだ。
町内会や同窓会の名簿が発行されなくなったといった個人情報保護法施行直後の不便さも今となっては慣れた。考えてみれば、名簿がなくては連絡がつかないような相手には、元々連絡する必要なんかなかった訳だし、連絡したい相手ならば直接、連絡先を聞けばよいことなのだから―――と、割り切れば済むことだ。
個人情報保護法が施行されて以降、ダイレクトメールやら電話勧誘を「個人情報保護法」を盾に断ることが堂々とできるようになったことも、この法律のメリットだ。企業の側からみたら、個人情報の取り扱いに注意しなければならなくなった分、コストがかかるようになったこととか、系列会社同士での顧客情報の共有ができなくなったといったデメリットの方が多いかもしれないが、個人の立場から見ると、デメリットはほとんどゼロ、メリットの方がはるかに多いような気がする。
大きな事故があった時に、被害者の名前などが個人情報保護の観点からか報道されない、というケースも増えてきたが、これにしても、身内が亡くなって悲嘆に呉れる遺族に無作法にマイクを向け、あるいは親族から昔々の花嫁姿の被害者の写真を借りてきて断りもなく新聞に掲載していた時代の人権意識の方がおかしかったのだと今なら思う。
情報化社会となって世の中には益々情報が溢れ、一見便利になったように思うが、個人情報のようなものが、この情報化社会で溢れだしていくことが、必ずしも社会の安定や、個人生活の利便性を確保するものではないということを、教えてくれた名札の廃止を歓迎したいと思う。
（02/27/14 10:00pm）
2014年2月27日
ひまわりと美人の国
「ウクライナ」といわれるとまず思い浮かぶのが、ソフィア・ローレンが主演したイタリア映画「ひまわり」だ。新婚わずか10日でロシア戦線に出征して帰らぬ夫の生存を信じ、10年も待ち続けた妻が、漸く入国が許されるようになったソ連に夫捜しの旅に出かける。
ローレン演じる妻が乗る列車はゆっくりと、どこまでも続く大平原の中を進んでいくのだが、その平原は見渡す限りのひまわり畑だ―――あの強烈な黄色の大平原のシーンは、ローレンの美しさとともに今も強烈な印象として残っており忘れられない。
ロケはウクライナで行なわれたものだと聞いて、もうかれこれ40年以上前の映画だがいつの日か是非ウクライナを訪ねてみたいものだと思ったものだった。
残念ながら、まだ実現していないウクライナ訪問だが、ここのところこの憧れのこの国の名前を頻繁に聞く。ただし、しかし、ウクライナで今、一体何が起きているのか、何とも分かり難いことばかりだ。
報道を自分なりにざっくりと整理してみると、親EUのウクライナ人の多い西部が押す野党側と、ロシア人比率が高く親ロシアの東部の主導権争いは、あのオレンジ革命以来、二転三転しており、当初は、オレンジ革命では民主化の旗手のように言われた親EUのユシチェンコ対親ロシアのヤヌコビッチの政争かと思ってみていたら、お互いが汚職やら選挙違反で罵りあいとなり、そこに今度はユシチェンコ大統領時代に首相を務めたロシア系（非ウクライナ系）のティモシエンコがユシチェンコと離反、幾度もの政争を経て、今回は東側のユシチェンコが政権を放棄、国外脱出をはかり、親EUのティモシエンコ派が巻き返しつつあるが－－－経済的にウクライナの後ろ盾になっているロシアとしては、ウクライナの東半分を分離独立させロシアに編入させることも考えているようだ－－－といったことらしい。何事も二極対立で捉えたがるマスコミだが、親EUと親ロシア、ウクライナ系とロシア系、民主化（を名乗る勢力）と、スターリンにノスタルジーを感じる勢力、反ユダヤと親ユダヤといった様々な要素がからみあった情勢のアルゴリズムはさすがの評論家たちにもお手上げの様子だ。
どちらが、「クリーンか」という対立軸にしても、大統領を追われたヤヌコビッチの反政権勢力によって公開されたが私邸をネットで見ると、「広大な敷地に大理石を敷き詰めて建てられた大豪邸、プライベートのゴルフコースや動物飼育施設─―」といった具合で、嘗てのルーマニアの独裁者チャウシェスク同様、旧共産圏の独裁者の乱脈振りは、ソ連崩壊から4半世紀も経つのに、まったく変わっていないなぁ～とおもったし、ヤヌコビッチ後の選挙への立候補意欲を示しているティモシエンコ女史にしても、元々「ガスの女王」などともいわれた、ロシアが国際価格の1/5でウクライナに提供していた天然ガスを西側に横流しして巨万の富を築いた上、ロシアへは代金を未払いにしているという、これまたとんでもない容疑で有罪となり服役していたという食わせ物らしいから、EUやアメリカがいうような「クリーンな民主化の星」とはほど遠いようだ。
人口が5000万、総面積は日本の約2倍、大穀倉地帯でもあり、石炭などの地下資源は、ソ連時代からロシアの重工業を支えてきた、という意味では中央アジアにおけるウクライナは、重要な国でもあるのだが、正直言えば、日本からは余りに遠いし、タイの情勢ほどには日本人の関心がそれほどたかまらないのは致し方ないところだ。
ウクライナはロシアから離れその支えを失うとディフォルトの可能性が高いともいわれるから、ギリシャ危機の時のように日本にも余波が及ぶ懸念はあるが、元々その経済規模はアラバマ州のそれと同じ程度ともいわれているから、IMFにとってもそれほどの大事にはならないようにも思えるし－－－。
そうそう、ウクライナといえば、「美人の国」としても有名だが－－－ひまわり畑と美人を見にいつかこの国を訪れることができる日がくるだろうか－－－。
（02/27/14 10:00pm）
2014年2月26日
お肌がツルツル
「スッポンが指に食いついたら雷が落ちても離さない」などという話がまことしやかに言われる位だし、あの頭の形が男性の何に似ていないこともないこともあって昔からスッポン料理、特にその生血は精力に良いと言われている。男性客だけでスッポン料理に行けば今でもお互いににやにやしながら「今晩眠れなくなっても知らないぞ！」なんていうちょっと卑猥な話で盛り上がったりもする。
この頃は、スッポンに含まれるコラーゲンは美肌効果が抜群だ、という話もあり、サントリーなどの有名食品メーカーから得体の知れないインチキ臭い食品サプリメーカーまでもがコラーゲンサプリを大宣伝していることもあって、女性陣にとっても（何が入っているのかは良く知らないが）コラーゲン鍋なる変わり鍋が大人気だそうだ。女子会でコラーゲン鍋を前にした女性達が、「これで、明日の朝、お肌は、ツルツルね！」なんてはしゃいでいるという話も聞く。
ところが、このスッポンなりコラーゲンで、精力モリモリ、お肌ツルツルという話、医学的には根拠がないということをご存知だろうか。厚労省のホームページには、コラーゲンとは人体に存在するたんぱく質の約30％を占める極めてありふれたたんぱく質であり、「スッポン肉やらフカヒレなどからでなければ摂取できない」などという希少なたんぱく質ではないとある。
そもそも、人間の体というものは、食事で摂取したコラーゲンをそのまま自分の体内にコラーゲンとして取り入れるようなことはなく、一旦その基礎素材であるアミノ酸に分解、その分解したアミノ酸から再びその人用の各種のたんぱく質に構成しなおすのだから、スッポンのコラーゲンを摂ったら、その一部は人体でコラーゲンに再構成される部分もあるが、その比率はほんのわずかでしかないという。
即ち、コラーゲン鍋を食べたからといって翌朝、「お肌がツルツル」になる訳ではなく、プラセボ効果（偽薬効果）で、お肌がツルツルになったような「気」がするだけ、あるいは前夜シャワーも浴びなかったために、肌が脂ぎっただけ－－－だろう。（夜更かしによる肌のむくみ、なんていうのも考えられる）
ましてコラーゲンを配合した美容クリームを肌に塗っても、そのクリームが乾くまでの間、ちょっとの間、肌がツルツルするのは、オロナインを塗った直後に肌がべたべたするのと同じだ。（コラーゲンは肌から吸収されない）
男12人、女6人の子供を作ったという徳川家康は精力剤としてオットセイ（強いオスは、ハーレムにメスを何十頭も抱えている）の睾丸の黒焼きを用いていたというが、これもスッポンの生血と同じような、「凄そう！」というプラセボに過ぎず、医学的には全く根拠がない。（それにしても家康は凄いとは思うが）
バナナダイエットだとか、リンゴダイエットなどにしても、テレビをみた10万人の中には何人か、実際に体重が落ちる人もいるだろうが（便秘が治っただけかもしれない）、同時に、効果がなかった多くの人はわざわざ「私は何を試してももやせない！」とは恥ずかしくて告白する訳がない。
コラーゲンのみならず、ヒアルロン酸だのなんだのの健康サプリの効果は、「医学的には証明されていない」ものが大半だ。健康食品は、「遊びのつもり」位の気持ちで摂るのがよいようだ。
（02/25/14 10:00pm）
2014年2月25日
三百代言
司法ドラマは「権威の側に立って冷酷な検察」と、「弱い被告の側にたった優しい弁護士」といったイメージがベースになっている。弁護士は基本的には「弱い者の味方、正義の味方」というのが庶民的イメージだ。
徳洲会による選挙違反事件、昨年末には「裁判で徹底的に争う」と強気の姿勢を示していた徳田ファミリーだがここに来て全面降伏、被告達は全員起訴事実を認めるとともに強い自省の意をあらわして謝罪し刑の軽減を歎願、徳田毅衆議院議員も、ファミリーの全面降伏に合わせて議員辞職の意向を発表したという。
強気の闘争姿勢から、一転しての罪を認めての謝罪－－－の動きの中で、徳田ファミリーが昨年末までに雇った「無罪請負人」とも言われる敏腕弁護団は、解任された。弁護人の守秘義務規定もあって、どのような経緯があって彼らがなぜ解任に到ったのかの理由は、明らかになってはいないが、一般的に弁護人の解任、辞任は依頼者と弁護側が相互に「信頼関係が築けない」場合、とされているが、今後も弁護士を職業として続けていかなければならない弁護側にとっては裁判所や司法界における自らの評判を傷つけることにもなり易いだけに避けたいだろうし、被告側からしても「弁護士を解任しなければならないほど、この被告は弁護士の弁護方針が気に入らないのか－－－」と裁判官の心証が悪くなるかもしれないと考えれば、解任、辞任は決して度々あることではない。
全聾の作曲家を詐称していたという佐村河内学氏も、「実は3年前から耳は聞こえていた」と白状し「いずれ記者会見で真実を明らかにしゃべります」と言って以来、弁護人が辞任している。一部報道の推測によると今後の訴訟を考えれば「3年前から聞こえていた」などというべきではないし、更に何のプラスにもならない記者会見などするべきではない、と主張する代理人(弁護士）と佐村河内氏との意見の相違が解任につながったのではないか、とも言われる。もしこの推理が正しいとすると弁護士は、佐村河内という詐欺師に「真実なんかしゃべる必要はない」とアドバイスした、ということになる。
刑事裁判で争われるのは、実は「何が真実であるのか」ではなく、「被告人を有罪だと断定できるだけの確たる証拠があるか」である。
弁護士というのは、「無実の罪にとわれた被告人を冤罪から救う正義の味方」といったイメージで語られるが、実は刑事裁判とは、検察官の主張が正しいかどうか裁判官が判断する場であり真実追求の場ではない。裁判における弁護士の役割とは、検察の前では圧倒的に力が弱い被告人の立場に立って検察官の主張の不備を指摘し、「被告人を有罪とは断定できないではないか」と被告人を擁護することである。
もし、被告が「私が間違いなく殺しました」と弁護士に明かした場合、裁判で真実を述べさせて「素直に自白し、反省しているから情状酌量して欲しい」と訴えるか、あるいは「そうは言っても、検察側の証拠は不十分だから、こちらから殺した！と言ってしまうのはよした方がいい」という弁護方針をとるかは、弁護士次第ということもできる。
勿論、弁護人には「真実義務」という「ウソや捏造はしない」という倫理義務があるから、被告人の告白を聞いているのに、「彼は殺していない、真犯人は他にいる！」などという裁判所を欺くような弁護はすべきではないから、こういう場合、弁護士としてできることは、あくまでも「出てきた証拠では有罪は認定できないではないか」という主張に徹するべきで、真相を知ってしまった以上、これ以上弁護するのは、自分の良心に反するからと辞任することは許されない、というのが一応「模範的正解」とされているが、弁護人の守秘義務の壁に阻まれ、実態は藪の中である。
光の母子殺人事件における弁護士の「母を慕う気持ちからの殺害」という論理展開、OJシンプソン事件を無罪にした三百代言的なスター弁護士の例などを見ていると、弁護士といえども決して「正義の味方」ではなく、むしろ「悪人の味方」ではないか、とも思えるケースが多々あるが、これが人間が作った「司法」という仕組みの実態なのだ。
政治家の収賄事件での大弁護団の活躍、ヤクザや詐欺集団の弁護団、無茶苦茶な論理で冤罪を主張して結局、何十年かの時の経過とともにクロをシロに言いくるめてしまった事件等々、「百の有罪を逃すことがあったとしても、一つの冤罪をも作ってはならない」という司法の鉄則を守るためには必要なコストなのだということを我々は納得しなければならないとはいうものの、彼等を「三百代言！」と貶めたくなることもないではない。
（02/24/14 10:00pm）
2014年2月24日
レジェントになるには
子供の頃、祖父からよく日露戦争の話を聞いた。「二百三高地と乃木将軍」とか、「奉天開戦」「日本海海戦」「広瀬中佐と杉野兵曹長」「水師営の会見」といった話は、祖父から聞いたのか、司馬遼太郎の「坂の上の雲」で読んだのか今となってははっきりとは思い出さないけれど、この話は間違いなく祖父が語ってくれたのだと鮮明に覚えているのは、祖父自身の実体験に基づく話だ。「戦勝祝賀の時には、提灯行列が出て、この辺り（駒込）にも花電車が走った」という話などは、「坂の上の雲」にも、あるいは他の歴史物にもまず出ていない小エピソードだけに、今もタカさんにとって「うちのおじいちゃんと言う人は、日露戦争などという大昔の歴史上の出来事の同時代を生きてきた凄い人なのだ！」という鮮やかな記憶として残っている。タカさんにとってのおじいちゃんは、間違いなくレジェントである。
ソチオリンピックのスキージャンプラージヒルで銀メダルをとった葛西紀明選手は、1972年生まれの41歳というから、たしかにスポーツ界においてこの歳で、これだけの活躍が出来るという驚異的な体力と意思の強さには驚かされた。92年のアルベールビルに19歳で出場以来、冬季オリンピックに連続7回出場、7回目には銀メダルというのだから「レジェント」と呼ばれるのも当然だとは思うが－－－。（8回目となる次の韓国でのオリンピックにも挑戦するというから今度こそ金をとって真のレジェントになって欲しいものだと思う）
選手生命の短いスポーツの世界では葛西選手の活躍は確かに凄いことは確かだが、60代半ばを過ぎたタカさんにとっては、「41歳」の彼がはやくも「レジェント」と言われることに、なんとない戸惑いのようなものを感じるのは事実だ。
葛西選手が生まれという1972年といえば、たかさんは就職して二年目、札幌オリンピックが開かれた年である。札幌オリンピックの記憶があるのは恐らく50代以上の世代だろうが、タカさんの世代ともなれば、「日の丸飛行隊」の三人が金銀銅のメダルを独占したこととか、アメリカの女子フィギアの選手ジャネット・リンが「札幌の恋人」などと呼ばれ大人気だったことなどは、つい最近の出来事であったかのように鮮明な記憶のあるオリンピックだ。あれから40年を経て、例えば「ジャネット・リンがホームシックになったと聞いて、当時札幌には店のなかったマクドナルドが、彼女の為にわざわざ東京からハンバーガーを飛行機輸送した」なんていうエピソードをまるで知らないであろうわずか41歳の葛西選手が「レジェント」といわれても－－－という気がしてしまうのだ。一体レジェントになるならないは、どういう基準に基づくのだろうか。
ジャネット・リンが選手村の自室の壁に大書した落書は、いまも記念の為に残されているそうだし、安倍首相は彼女にファンレターを送り、貰った返事を今も大切な「記念品」としてもっている、とも言っていた。そういう話からすれば、ジャネット・リン（確か、金はとれなかったはずだが）は、間違いなくレジェントだが－－－。つい最近まで首相をやっていたのに今はもうまるで世間から忘れられている元首相経験者は、ごまんといるし―――「レジェント」という称号、結構難しいもののようだ。
（2/23/14 10:00pm）
2014年2月21日
ジンクピリジオン効果
2006年ごろまで30年余り続いた花王メリットシャンプーのCMを覚えておられるだろうか。「ジンクピリチオン配合！」というフレーズを聞くと、ジンクピリジオンなるものが一体何なのかも全く分からないのになんだか「メリットシャンプーは凄そう！」という印象があり、このCMのお蔭で、メリットは30年間、シャンプー市場でシェアートップを走り続けた。
「ジンクピリジオン」という語感だけで消費者は、「なんだか、すごくよいシャンプーのようだ！」と信じてしまったというのも何とも不思議な話ではあるが、与えられた情報の詳細を全く知らないのに、鵜呑みで信用してしまうケースは世の中結構よくあることだ。
ギリシャ時代、アリストテレスが「ヤナギの樹皮には鎮痛効果がある」という民間療法を広めて以来、鎮痛解熱剤としてヤナギの樹皮がよく用いられてきたという。19世紀になってからヤナギの樹皮からサリチル酸が分離され第一次大戦の負傷兵などにこのサリチル酸がもちいられるようになったが、サリチル酸には強い胃腸障害を起こす副作用があることがわかり、その後、この副作用を押さえたアセチルサリチル酸が開発され「アスピリン」として発売されるようになったという。2000年以上前の民間療法からはじまった鎮痛解熱剤のアスピリンだが、いまだもって何故、鎮痛解熱効果があるのかの詳しい薬の効能の仕組（作用機序）は、未解明というのが実情だという。(血栓ができるのを防ぐ効果とか、大腸がんの死亡リスクを半減させた、といった新しい用途も学界で発表されたりもしているがこれも「何故」なのかよく分かってはいないのだとか)
作用機序は分からないが、「風邪を引いて熱がある」とか、「歯が痛くてたまらない」といった患者が服用した場合、実際に効果がある（ように思われる）例が多いこともあって、世界的に、医者が、何かというとアスピリンを処方することは多いし、大衆薬としても販売されていることから、アスピリン大国とも言われるアメリカでは年間なんと16000トン、200億錠が消費されているという。
「何故利くかよくわからないけれど、症状が良くなると人々が信じているのだし別にそれほどの悪い副作用がある訳でもないから、発売してもいいではないか」というのが、今の医学界、薬品業界のコンセンサスだという。
アスピリンの例をあげるまでもなく、クスリとその効能については、その因果関係が必ずしも明確に証明されていないものも多い。そもそも、同じクスリを同じ量のんだからといって、その効果は人によって千差万別であることは我々も体感的に知っているところだ。（歯磨き粉を「胃薬だ」と偽って飲ませても実際に効果がでるという「プラセボ効果」の例などが有名だが）
新薬などの治験データの解析も、実際には「効いたか、効かなかったか」を調べるのではなく、プラセボに比べて「有意の」効果が認められたかどうか(二重盲研法などによる)を調べているに過ぎない、すなわち「患者全員に効くかどうか」を判定している訳ではない、ということを我々は知っておく必要がある。
高血圧治療薬「ディオパン」の治験データを改ざんして「脳卒中や狭心症を予防する効果がある」とし医療向けの広告記事で引用するなどして年間1000億円以上を不当に売り上げていたノバルティスが、事件発覚後1年を経て漸く家宅捜査というのだから、既に証拠は全部隠滅されているだろうし、薬事当局、治験を行なった研究機関や大学研究室とノバルティスがグルで働いたデータ改ざんだったことを、図らずも捜査当局自身がバラしてしまったようなものだが、このディオパン事件も、結局はジンクピリジオン効果、アスピリン効果と同じように、「だからと言って別に人が死んだ訳でもないし、医学界も儲かったのだからいいではないか」と患者達が騙されただけという話で終わりそうだ。
「長生きしたければ肉を食え」という健康本があって、一方では「長生きしたければ肉を食うな」という健康本がある。ともに、監修は医学博士だ。100歳近くまで元気な人で肉が大好きだという人もいるし、肉はほとんど食べないという100歳過ぎのおばあちゃんもいるとなれば、どちらも間違いでもないともいえる訳だが―――。(肉ばかり食べて早死にした人とか、肉を食べないで早死にした人は、長寿者のリストからはとっくの昔に除外されている－－－ということは両医学博士は触れない）
医療技術は進んでいるとはいうものの、まだまだ呪術で病を治していた時代と変わらないことも山ほどあると言ってよいのではないだろうか。
（02/20/14 10:00pm）
2014年2月20日
正気か？
「集団的自衛権行使」が憲法上できるかどうか、が国会で論議されている。本来、憲法上可能かどうかの解釈は、三権分立の原則から言って司法が行なうべきもので、例えば日米合同演習で日米の艦船が共同訓練を行なっている際に米軍の艦船が他国ミサイルによって攻撃を受けたら自衛隊の艦船は、米国艦を守るためにこのミサイルを打ち落としてよいかどうかの憲法解釈はどうなのかは、最高裁が憲法判断をすべきではあるが、最終判断までに5年も10年もかかる司法の判断を待つような悠長なことを言っていられないとなれば、まず行政が事前にこのケーススタディーをしておくべきだという現内閣の方針は、まっとうだといえる。
いままでの歴代内閣は、内閣としての解釈をあきらかにせず、内閣法制局という行政の一機関の解釈をそのまま鵜呑みにして内閣としての判断は避けるという極めて無責任な姿勢をとってきた。
しかし、内閣法制局というのはあくまでも内閣に属する一部局であり、その長（内閣法制局長）といえども、内閣に属する一事務局でしかなく、内閣法制局長の集団的自衛権に関する解釈が、内閣なり首相を拘束する―――などという、部下が上司を引っ張りまわし、しかも憲法判断まで行なうようなことが今まで行なわれてきたことこそ間違いなのだ。
先日の衆院予算委員会で安倍首相が、集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更をめぐり「（政府の）最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」と述べたことに関し一部のマスコミは、歴代の内閣法制局の議論を否定するかのような首相の考えは問題である」としているが、彼等のこの言い方こそ、「法律を自分たちにとって都合のよい解釈によって捻じ曲げるもの」と言ってよい。
もし、内閣法制局長の集団的自衛権に関する解釈が、内閣の最高責任者のそれに優先するものであるとすれば、それはすなわち国民による選挙で選ばれた政治よりも、役人の方が上位にある、ということになるし、内閣法制局長の見解があれば、司法による憲法裁判も必要ない、ということになってしまう。
最近の「左寄り」といわれる一部マスコミの論調は、全く支離滅裂になってきている。
本当に彼等は正気なのだろうか。
（02/19/14 10:00pm）
2014年2月19日
ソチの暖冬と東京の大雪
家から数分の距離にコンビニが何軒かあるまあ都会といってよいところに住んでいるとなれば、雪がちらほらでも降ってくれば、あえて車を出して食料品を買いに出る必要もないし（そもそも老夫婦の二人暮らしなら食べる量もたいしたものではないし）、リタイアードの身分であれば出勤や通学の為にいつ停まるかも分からない電車を心配しながら外出する必要もない、という訳で2月に入ってからの2回の大雪の際には、只ひたすら冬眠の熊のように巣篭もり状態であった。
それにしても先週末からのどか雪は凄かった。テレビであちらの村、こちらの村で何百人、何千人が雪に閉じ込められた、この峠では車が何百台立ち往生してもう既にxx日が経過した―――などというニュースを見ては、「いやぁ～、自然の力っていう奴はたいしたものだねぇ～」とか「気象庁は何で警報を出さなかったのだろう―――本当に頼りにならない奴等だねぇ～」などと勝手なコメントをつぶやいているだけで済んだのだから―――まあラッキーだったということなのだろう。
それでも全く体を動かさなかった訳ではない。昨年だか、一昨年だったか、気象庁の「大雪警報」が、大空振りした際に、慌てて買っておいた長ぐつと、雪かき用のスコップを倉庫からひっぱりだして、玄関や、駐車場から道路まで、車が出せる程度の雪かきを2日続きでやったけれど、特に今回の大雪は水気が多く、もの凄く重いこともあってすっかり腰痛を再発させてしまった。(別に車を動かす訳ではないのだから、雪かきなんかしないでも、その内に溶けるだろうと思ったが、ご近所のほとんどの家が、一家総出で雪かきをし始めた音を聞いていると、さすがに我家の前だけ雪かきをしないで済ませる訳にもいかなかった―――この世の義理を果たすために腰痛になったと考えると、漱石ではないが、「とかくこの世は住みにくい」と思ったものだ。
更には、いつになく重い雪がどかっと降った為に庭の植木の枝が、その重みに耐えかねたのか大きく折れてしまい、その折れた枝の整理も結構大変だった。つくづく思ったのは、自然の力っていう奴はたいしたものだという極めて月並みな感想なのだけれど―――同じ日に、テレビでソチオリンピックを見ていたら、ノルディックスキー距離女子10キロ競技では、選手たちの大半がノースリーブ、あるいは半そでで滑っているではないか。ソチは今年は異常な暖冬で、当日競技コースの気温は15度から20度にもなっており、前夜徹夜でまいた人口雪も、競技の時間にはかなり溶け始めていて滑った跡はベチャベチャの水が浮いていたという。冬のオリンピックで寒さ対策ではなく、暑さ対策をしなければいけなかったというのだから、これも、月並みな言い方になるが、「天気のことだから、なにが起きるか予想がつかない」ということなのだろう。
それにしても、国家的威信をかけてソチオリンピックを開催しているロシアは、今回のソチにかけたコストは昨年から溜めておいた雪の貯蔵費用やら、数千台といわれる人工降雪機の費用などを全て含めると5兆3000億円にも上るのだとか。自然の脅威に抗う為には、タカさんの長靴代やスコップ代（そして多分、腰痛治療の為のサロンパス代も含めて全世界では、一体何十兆円の金がかかっているのだろうか。
（02/18/14 10:00pm）
2014年2月18日
教育委員会制度改革
現在衆議院で議論されている教育委員会制度改革だが、大津市のいじめ問題における教育委員会の独善、学校関係者と地域の有力者たちの馴れ合いによる身内のかばいあいが、いじめに悩む一人の中学生を自殺に追い込んでしまったという反省が、一つの契機になってはじまったものだ。以前、本欄でも書いたが(参照：「先生の出世コース」7/20/12)、教育委員会制度は、戦後、連合軍によって持ち込まれ押付けられた制度という点では、憲法と似たいわば外来品種といってもよい制度である。
しかしさすがに外来の物をそれなりに作り変えて日本風の物に仕立てあげる能力に優れた日本のことだけに（たら子スパゲティーやらカレーなどがいい例だが）この70年余りの間にこの教育委員会制度を、本家本元のアメリカの制度とは似ても似つかない日本風の精度に換骨奪胎してきた。一例をあげれば、全国に数千はある教育委員会の委員長は、その七割が、教員出身者でありその、教育委員長を互選で選ぶ教育委員も同じくやく八割が教員出身者だ。すなわち教育委員会は、昔ながらのムラのボス達による談合によって選ばれてきたことなどがそうだ。
大津市の場合でも、いじめ加害者の父兄、学校関係者などの地域名士たちにとっては、いじめ被害を防ぐことよりも、身内である教育委員長や校長などの責任逃れに加担することの方がはるかに大事だったのだ。事件があれだけ全国規模で騒がれても、教育長を中心にして担任教師、校長、副校長がその責任逃れに汲々とした卑劣な姿は、実に醜態だった。
そんな、教育委員会制度の欠陥を是正しようとはじまった制度改革の検討だが、この2年余りの間にそもそもの制度改革のきっかけは忘れ去られ、なんだか話は朝三暮四のようなことになってきている。すなわち、本当に改めるべきだったのは、教育委員会というムラ社会の解体であるべきなのにもかかわらず、結局与党が合意に達したといわれる改革案なるものは、これまで、首長が選任した教育委員の中から互選で決める仕組みだった教育委員長と教育長の2ポストを、首長が直接、「代表教育委員」を任免する仕組みに変更し、教育行政の最終決定権（執行機関）は教委に残し、教育が政治的な影響を過大に受けないよう配慮するという程度のものだ。
にわかに、地方ボスと教員組合などの身内による支配を打破し、馴れ合いによる教育ポストのたらい回しを改善する、という点は忘れられ、「教育の中立」などという問題が最重要であるかのような話になっている。これは、本筋をめくらましした弥縫策でしかない。
「教科書採用」や「竹島問題の見方」「歴史解釈」など、たしかに政治的に一方に偏った教育委員長の排除などは大切だとは思うが、今までとさほど変わらない教育委員長や教育長の選び方（教育に詳しくない首長は、地方有力者や組合に顔をたてて、かれらの推薦する人物を代表教育委員に選ぶことは目に見えている）で選ばれた「代表教育長」ならば、大津事件のようなことが避けられるという補償は全くないと言ってよい。そもそも、多くの県では校長になるためには、教員組合の同意が必要だ。日教組のお気に入りの校長が、政治的に「中立」などということがあり得るだろうか？
なんともがっかりする「教育委員会制度改革」である。
（02/17/14 10:00pm）
2014年2月17日
安心という主観
生きていく上で常に何らかのリスクは避けられない。リスクはおもいがけないところにもある。家の中が安全かといえば、隕石が家の屋根に当たりそこに住む住人が死なないとはかぎらないし、北の国から突然核ミサイルが飛んでこないとも限らない。
極力リスクを減らそうとあらゆる予防対策をとるにしても、我家を要塞化して地下核シェルターに住んだところでそれでも尚リスクはゼロどころか、運動不足による心筋梗塞や脳内出血の為に地下核シェルターで孤独死を遂げる、等と言うリスクは却って増えるかもしれないし、なにせそのリスク回避にかかるコストたるや莫大なものにならざるを得ない。
そんなことを考えれば、人が生きていく上ではある程度のリスクの見極めはどうしても必要だ。高速道路を自転車で走るような無謀な行為を避けるのは当然にせよ、交通事故が怖いからといって家から一歩も出ない等というこれまた極端なリスク回避も無益であることは、やはり知っておくべきだろう。
こんな当たり前のことが、あの東日本大震災以来、日本人の頭の中から失われてしまったのではないかと思うような事例がいくつもある。
10mの高さの津波防潮堤が破壊されたからといって、今度は高さ25メートルの津波防潮堤を数十キロにわたって海岸に築こうという市町村がある。何十年、何百年に一度の大津波のリスクを考えれば、何千億円のコストがかかろうが、見渡す限りの海岸線から白砂青松の景観が奪われ、人々が刑務所の塀の中のような環境で暮すことすら厭わない、というのだから、やはりどう考えても「おいおい、一体日本人はどうなってしまったのだ！」といわざるを得ない。
25メートルの防潮堤を築いたところで、心配性の人ならば「もし、前回の最高津波高である40ｍが襲ったとしたら、25メートルの防潮堤でも安心できない！」ということになる。要するに「絶対の安心」を求める限りにおいては、満足の行くレベルには到達しえないということなのに－－－。
先の都知事選でも、候補によっては「原発即廃止」によって「原発のリスクゼロ」を実現すべきだという主張をした者がいて、それなりの票を集めたという事実はあったが、まさか「原発即ゼロ候補」が勝つとは思えないから、この際、からかい半分にこの手の候補に投票しておこうという人達の票は集めたものの、まともな数にはならなかったのは、やはりいくらなんでも「絶対の安全」などという見果てぬ夢をおいかけても仕方がない！と考える、常識人が一定程度の比率でいたからだと思う。
安全性にはある程度の科学的客観性を求めることはできても、「安心」とは、極めて主観的なものでありこれを「保障」することなど誰にもできないと言ってよい。しかし、人は、往々にして人は客観的数字より主観的な思い込みを優先しがちだ。(参照：「安全と安心」1/30/14)
先日、我が町の自治会に出ていた時の雑談で、「この街の津波最大予測は2mらしい」という話が出た。東日本大震災の津波の高さの記憶(6mだとか8mだといった)からすれば、「2mならたいしたことはなさそう」という意見の人が大勢だったが、津波の高さ50cmなら人は立っていられないし、1mで木造家屋は半壊、2mで全壊、ということを考えると、皆の「2mなら安心」という判定がなぜでてくるのか不思議でならなかった。
見えない原発の放射能に対しては何しろ不安を感じ、テレビで見た東日本大震災の津波に比べれば、1mや2mの津波ならなんとなく「大丈夫」と思ってしまうという人間のリスク判断は、いかにいい加減なものかということを思い知った気がしたが、要するに「危ない！」も「まあ、安心！」も結局、だれもが根拠のない、勝手な主観によって判断しているに過ぎない、ということなのだろう。
原発再稼動にせよ、原発停止にせよ、なにしろ皆が勝手な主観的価値判断に走ってしまっている今、まともな安全、安心の議論は暫くの間は、できないということなのではないだろうか。
（02/16/14 10:00pm）
2014年2月14日
松井臨時コーチ
プロ野球12球団がキュンプインしているとは言ってもオープン戦開始までにはまだ随分と時間があるし、公式戦開幕までには未だ2ヶ月以上あるとなるとよほどのプロ野球ファンでもなければまだまだ「プロ野球キャンプ情報」に興味を示す人も多くはない。スポーツ新聞をはじめマスコミ各社にとってはこの時期は毎年、ネタ埋めに苦労する時期だという。
今年は幸い、この時期、ソチオリンピックがあるのでどうにかこちらの話題で紙面を埋めよう、と各紙とも必死な様子だが、上村だ、笠谷だ、高梨だ、誰其だ、とメダル候補に挙げて大騒ぎした選手の多くが案の定というか「悔いはない」「清々しい気持ちで一杯」といった「残念談話」ばかりでは今一つ盛り上がらないことこの上ない。
全98種目あるというからメダルの数なら、294個あるというのだから、あれだけの大選手団を送ったのなら少なくとも10個やそこらのメダルはとって欲しいけれど、この調子でいくと、各マスコミの事前の（大げさな）大言壮語に比較すると、いつもの五輪同様、結構期待はずれに終わりそうな気配もただよいつつある。そんな最中、今、各スポーツ紙とっての救世主的存在といえば巨人軍キャンプの「臨時コーチ」とやらに就任（？）した、松井秀喜だろう。
引退セレモニーをやった昨年までは「松井秀喜」「松井選手」と呼ばれていたのに、急に「松井秀喜氏」「松井さん」になったことにかなり違和感はあるけれど、それでも国民栄誉賞受賞の39歳は、国民的な人気者であるし、その一挙手一投足が現役のだれよりも（ひょっとしたら、田中マー君よりも）注目を集める野球人と言ってよいのではないだろうか。
未だに家族をニューヨークに残し、ひょっとしたら日本嫌いなのではないかと思われるほどに、昨年は、日本には中々帰ってこなかった松井だけれども、巨人軍臨時コーチを引き受けるに至ったのには、巨人軍の札束攻勢があったのか、はたまた松井自身に、ゆくゆくは巨人の監督になろうという野望が湧いてきたからなのかは分からないけれど、まあ、キャンプ序盤における彼の、スタンドに放り込んだとか、ノックで空振りしたとかいった活躍には、マスコミは、大感謝！していることだろう。
ただ、なんとなく気の毒な感じがするのは、巨人軍の原監督と、サムライジャパンの小久保監督だ。今のマスコミの騒ぎ方を見る限り「あれ！巨人の監督は、まだ原がやっているの！」とか、「小久保も監督になった途端に、早々と交代させられるのでは？」などという噂もチラホラしているのだから、ご本人たちは気が気ではないのではないだろうか。
ベテランの敏腕営業部長の下に、海外留学から帰ったばかりのオーナー社長の息子が副部長として入ってきたようなもので、営業部員のみならず、専務や常務までもが、一斉にこの副部長の方を向いてしまい、部長の下には誰も来なくなってしまったようなものなのだから。
大型補強だ、トレードだと金に糸目をつけずに戦力補強した巨人軍のことだから、来シーズンもほとんどのマスコミが首位予想をしている。このまま、巨人優勝となれば、「あれだけの金を使って補強したのだから優勝して当然だ！」という評価になるだろうから、「原監督の手柄」とは中々言われ難いかもしれない。そうなれば、「もうそろそろ、目先を変えて松井に監督の座を禅譲しては？」なんていう声も出てくるかもしれないし、ましてや昨年のように女性問題やら暴力団問題が起きたりすれば、巨人軍もここぞとばかりに、原監督勇退を迫り、一昨年のようにかばってはくれないかもしれない。
原監督といえば成績不振で石もて追われるごとくに去った堀内前監督のあとを引き継いだ時には、今の松井臨時コーチ同様にマスコミには随分チヤホヤされたものだったが8年も経ってみると賞味期限切れになってしまった感がある。監督稼業も人気商売とはいうものの、なんだか物のあわれのようなものを感じてしまうのは、日本人ならではの判官贔屓ゆえだろうか。
（02/04/14 10:00pm）
2014年2月13日
Winner takes All
アマゾンの奥地に住む原住民ヤノマミ族の社会は基本的にはいわゆる原始共産制だ。男たちが狩りに出かける、あるいは女達が野生のイモを採取しに行く場合は、共同作業として行い、それによって得た獲物や収穫物は集落に持ち帰り、集落全員で分け合う。アフリカの原野で、あるいは南太平洋の島々で、今も狩猟採集生活を営む人達の多くもヤノマミと同様の原始共産制に近い生活形態を営んでいる。
乏しい食料を皆で分け合わない限り、一部の強者だけが生き残るに過ぎず、強い者だけが構成する社会は、集団としての力を失って結局早晩崩壊するしかないからだ。
「人は皆で助け合って生きていかなければならない」という言葉が、ヤノマミの原始共産制の原点にあると言ってよい。
しかし、現代社会ではこの原則は必ずしも当てはまらない。自分が働いて得た物は、できる限り自分、もしくは自分の家族のものにしたがるのが一般的だ。自分の取り分までも全て他人に譲ってしまったのでは、その内に自分は餓死してしまうかもしれないし、私有財産制が基本の現代社会では、他人よりより良い家に住みたい、より良い食べ物を食べたい、といった風に他人よりも豊かでありたいという個人の欲望こそが、社会全体を進化させる原動力である、と皆が信じている。
そもそも、原始共産制を行なおうとしても、社会全体がその制度に対して賛同していない限り、必ずや「ただ乗り」をしようとする者が出るし、そういう「ただ乗り」が増えれば増えるほど、人々は原始共産制に対する信頼をなくし、より私有制にこだわるようになる。
経済学に「共有地（コモンズ）の悲劇」という言葉がある。村の共有地である牧草地があったばあい。村の複数の農民が牛を放牧しようとするだろう。農民は利益の最大化を求めてより多くの牛を放牧するだろう。村人個人の所有地であれば、牛が牧草を食べ尽くさないように数を調整するだろうが、共有地では、自分が牛を増やさないと他の農民が牛を増やしてしまい、自身の取り分が減ってしまうので、皆が、牛を無尽蔵に増やし続ける結果になる。こうして農民が共有地を自由に利用する限り、資源である牧草地は荒れ果て、結果としてすべての農民が被害を受けることになる―――という悲劇である。
ヤノマミの社会でももし狩の獲物や、収穫したイモを私有財産制にしたとしたら、力の強いものが、森中の獲物を取り尽くし（干し肉などにして自分用に、貯蔵しようとするかも知れない)結局、ヤノマミ族が滅びるようなことになるかもしれない。自分達が数日間、食べることが出来ればそれで十分だと、獲物を取りつくしたり、一人で溜め込んだりしない、という集団のルールを守っているからこそ、数千年、彼等は食糧の乏しいアマゾンで生延びてきたのだ。
人類の共有物である化石燃料、共有地である海洋からとれる水産資源、この先、数十年の内に枯渇する可能性が高まっているという。個人の家の庭は綺麗にしているのに、共有地である公園や道路には、人々は平気でゴミのポイ捨てをする。
「共有地の悲劇」を解消する知恵は、私有財産制を更に強化して「強者が全てをとる（Winner takes All）」しかないのだろうか。
（02/12/14 10:00pm）
2014年2月10日
騙され好き
都知事選が行なわれたとか、東日本大震災が起きた、等という当然誰もが知っているような事件があっても、世の中には「えっ！全然知らなかった！」などという人がかならず一握りはいるものだ。
まして、オレオレ詐欺程度の事ならば、「世の中であれだけ大騒ぎになっているのだから、まさかもう騙される人はいないだろうに」などと思うが、とんでもない、いまだに被害額が増え続けているのは、「まさか自分が詐欺に合う訳はない」と思う人が多いからというよりは、そもそも世の中でオレオレ詐欺被害が増えている、ということ自身を知らない人が多いからだろう。
「情報リテラシー」というのだそうだが、新聞も読まなければテレビもバカ騒ぎバラエティーしか見ない、なんていう人が益々増えているそうだから、皆がスマホを持っているからと言って、世の中の情勢に詳しい訳でもないようだ。オレオレ詐欺の手口なんていうものは、普通に新聞を読み、テレビラジオのニュースや情報番組を一度でも見た人なら知っていて当然だと思うが、被害者が増える一方ということは、そういう世の中の動きに興味をまったく持たない人が少なからずいるということなのだろう。
この数十年、オレオレ詐欺がこれだけ騒動になっているというのに、まだ騙される人がいると聞くと、過酷な言い方になるが、騙す奴が悪いのは当然として、騙される方も何らかの責任はあるようにも思ってしまうのだが―――相手はプロの詐欺師だから、意外と騙されてしまうものなのだ―――という被害者に同情的な意見もよく聞くけれど、この手の詐欺防止の為には、被害者に対する多少は厳しい叱責も(広い意味で世の中の為には)必要なのではないかとも思う。
「世の中に美味い話なんてある訳ない」｢人はまず疑ってかかれ｣等という言葉が、詐欺防止の心得として言われるが、最初からだれでもかれでも疑ってかかるなどというのは、中々気が進まないし、ある程度、人に信頼をおくから世の中が和気藹々とするのだし、それが日本社会のいいところだ！ということも言えるけれど、どうも最近の世知辛い世の中ではそうそう気楽なことを言っている訳にも行かないようだ。少なくとも、詐欺に対する世の中の厳しい目は必要だ。
佐村河内守なる「全聾の作曲家」が、なんとまっかなウソ、彼は楽譜もかけなければ、楽器の演奏もできないどころか、全聾というのも真っ赤なウソ、彼が作曲したという「交響曲第一番HIROSHIMA」も、その他の曲も全て他人が作った物だったという詐欺事件、佐村河内氏一人の詐欺というよりは、代作者、その回りにいて彼を持ち上げてきた関係者、「奇蹟の旋律」などというドキュメンタリー番組を作って彼をヨイショしたNHK等々までもがグルになって世の中を騙した、集団詐欺事件と考えていい。
十数年も代作をして佐村河内氏の片棒を担いでいた御仁に対して「穏便な処置を」という声が上がっているというが、佐村河内氏が身障者を偽り続けてきたとしたら、この代作者は社会福祉詐欺の共犯でもあり、本当に「穏便な処置」でいいのだろうか。詐欺に対する妙な寛容さこそが詐欺の温床になってはいないだろうか。
30分のドキュメンタリー番組を作るとなると、そのコンタクト時間は相当なものだっただろうに、本当にNHKの番組スタッフはこの男が実は耳が聞こえているし、作曲などしていない！ことに気づかなかったのだろうか。
詐欺というのは「別に人が死んだ訳ではないし」という寛容さがどうしても拭えない犯罪だが、それだからこそ、いつまでも被害が減らない、ということはないだろうか。
（02/11/14 10:00pm）
2014年2月7日
儒教道徳を捨ててから
敗戦までの日本の道徳観と、戦後教育による道徳観とでは正反対と言ってよいほど変わったといってよいのではないだろうか。善が悪に、悪が善になったという意味ではないが、かつて価値があったものが、無価値に、かつて重要視されなかった価値が最重要になったという意味での大転換だ。
明治以来の儒教に基づく道徳観を持つ両親から教わった儒教的道徳観の影響をかなり受けているタカさんと、そういう戦前の道徳観こそ悪だというGHQや日教組などの教育によって洗脳された世代とのギャップを感じることがある。
儒教道徳といえばいわゆる八徳、仁，義，礼，智，忠，信，孝，悌、を根底に置く道徳観だ。親子関係においては孝，法律や契約においては義，兄弟間や師弟においては悌，部下上司関係においては忠，論理的対話においては智，目上との関係においては礼，友達関係や恋愛関係においては信，そして，他者一般との関係においては仁を旨とすべしということだ。
しかし、今、もっとも重要だといわれる価値観、たとえば｢人権｣とか「平等」が最優先だ！という考え方に立つと、親子関係も、兄弟や師弟（先生と生徒）も、目上や部下も、友達や恋人同士も皆、「平等」が第一の価値観になってしまい、それこそ孝も忠も悌も信も、皆いらない、ということになってしまうし、やはり戦後持ち込まれた「個」とか｢私｣が重んじられるべきだという価値観に立つと、儒教的な道徳である「公」の価値観、例えば義や、礼、忠、といった道徳は二の次、三の次になってしまう。
皆が皆、「まず自分が大切」と言う個人主義に陥ってしまえば究極のところでは社会を守る、郷土を守る、国を守り、他人を愛する、といったことさえ社会規範から失われてしまうかもしれない。
2000年以上に亘って東洋の価値観の要であった儒教道徳が忘れ去られるようになった現代を生きている我々は、人間として果たして進歩しているのだろうか、と思わず考え込まざるを得ない。
（02/06/14 10:00pm）
2014年2月6日
儒教道徳を捨ててから
敗戦までの日本の道徳観と、戦後教育による道徳観とでは正反対と言ってよいほど変わったといってよいのではないだろうか。善が悪に、悪が善になったという意味ではないが、かつて価値があったものが、無価値に、かつて重要視されなかった価値が最重要になったという意味での大転換だ。
明治以来の儒教に基づく道徳観を持つ両親から教わった儒教的道徳観の影響をかなり受けているタカさんと、そういう戦前の道徳観こそ悪だというGHQや日教組などの教育によって洗脳された世代とのギャップを感じることがある。
儒教道徳といえばいわゆる八徳、仁，義，礼，智，忠，信，孝，悌、を根底に置く道徳観だ。親子関係においては孝，法律や契約においては義，兄弟間や師弟においては悌，部下上司関係においては忠，論理的対話においては智，目上との関係においては礼，友達関係や恋愛関係においては信，そして，他者一般との関係においては仁を旨とすべしということだ。
しかし、今、もっとも重要だといわれる価値観、たとえば｢人権｣とか「平等」が最優先だ！という考え方に立つと、親子関係も、兄弟や師弟（先生と生徒）も、目上や部下も、友達や恋人同士も皆、「平等」が第一の価値観になってしまい、それこそ孝も忠も悌も信も、皆いらない、ということになってしまうし、やはり戦後持ち込まれた「個」とか｢私｣が重んじられるべきだという価値観に立つと、儒教的な道徳である「公」の価値観、例えば義や、礼、忠、といった道徳は二の次、三の次になってしまう。
皆が皆、「まず自分が大切」と言う個人主義に陥ってしまえば究極のところでは社会を守る、郷土を守る、国を守り、他人を愛する、といったことさえ社会規範から失われてしまうかもしれない。
2000年以上に亘って東洋の価値観の要であった儒教道徳が忘れ去られるようになった現代を生きている我々は、人間として果たして進歩しているのだろうか、と思わず考え込まざるを得ない。
（02/06/14 10:00pm）
2014年2月5日
暴走老人Ⅱ
先週のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」では、20代の官兵衛に家督を譲った父の職隆が、隠居の身となってゆっくりと囲碁を楽しんでいる場面があった。家老として仕えていた殿様に、互角の勝負を挑みながら最期は巧みに勝ちを譲る、という「接待囲碁？」を打たなくてよくなり思う存分囲碁が楽しめるのが嬉しい－－－と言いながらのんびり囲碁を打つ場面があり、「隠居って優雅だなぁ～」と思ったものだ。
職隆の隠居は彼がまだ40代半ば、息子の官兵衛がいくら優秀で跡を継がせても心配なかったとはいえ、いくらなんでも早いように思ったのだが－－－。
もっとも、黒田家はやたらと隠居が早い家系だったようで、官兵衛自身も、長男長政に家督を譲ったのは40代半ば(長政が21歳の時)だ。優秀な次世代が、どんどん入れ替わることによって黒田家は、戦国時代からその後400年近く政権の中枢にあって栄えた、ということかもしれない。世代交代は早い方がよいようだ。
元首相連合、というのだそうだが、都知事選には細川元首相と、小泉元首相連合がチャレンジしている。「反原発」のシングルイッシューで都知事選の台風の目となる、ともいわれたが、選挙戦が進むに連れ、一向に吹かないようで、一部下馬評では二番手も危ういのではなどともいわれている。
細川さんが現在76歳、佐川問題で首相の座を追われてから20年、伊豆でろくろを回して静かな隠居生活を過ごしておられたと思ったら、なにを思ったか「日本の為に自分が立たねば－－－」と突然目覚められたようで、老体に鞭打っての選挙活動をはじめられたのだからびっくりである。
この細川さんを「全面的に」応援しているのが、これまた政界引退して、オペラ三昧の日を送っていたはずの小泉さんだ。彼も当年とって72歳、落選して引退を余儀なくされた訳ではなく、むしろ惜しまれながらの引退だったのは事実だが、引退から既に8年、「過去の人」になりつつある今再び、政争の場に顔を出すというのは、よほどオベラに飽きたか、人々から段々忘れられていくのが淋しかったのだろう。
黒田官兵衛も、黒田長政も、早くに引退したことでその名を後世に残した。細川さんは、引退のきっかけが1億円の不正献金という不名誉な事件だったが、政界から身を引いて20年も、ろくろを回していたことで不名誉な記録も人々の記憶から折角、わすれられつつあったというのに、今回の出馬で、再びその辺りを引っかきまわされた挙句、落選ということにでもなれば「元首相の知事選落選」という前代未聞の不名誉記録となり一生その傷は残るだろうし、小泉さんにしても「政界には珍しい、潔い出処進退」などといわれた身の引き方が、今回のお騒がせで、台無しになったのではないだろうか。前の前の都知事同様に、細川さんも、小泉さんも、今や完全に「暴走老人」の仲間入りである。
そういえば、小泉さんは首相時代、元首相の宮沢さんや、中曽根さんを「自民党の議員定年制にひっかかるから」という理由で、党公認を拒否したことがあったが、あの時の定年規定は確か、73歳だったと思うが、ご自分も既にこの年代に近づき、細川さんに至っては既に定年オーバーとなっている事実は、今、ご本人の中ではどのように、整理が付いているのか――― 一度、伺ってみたい気がする。
（02/04/14 10:00pm）
2014年2月4日
STAP細胞のミーハー
ES細胞、iPS細胞に次ぐ第三の万能細胞というべきものが30歳の女性研究員をリーダーとする理研の研究チームによって発見されたという。
各紙朝刊にこの記事が踊った1月30日、新聞やらテレビでこのSTAP細胞とは一体なになのだろうかと色々調べてみたが、「細胞に強い刺激を与えることで、組織や臓器に変化する万能細胞」という程度のきわめて簡単な解説以外に詳細はふれられていないので、正直未だに「なにがどうすごい｣のかは、今一つわかってはいないのだが―――ES細胞、iPS細胞が遺伝子操作などの複雑な作成過程が必要なのに比べて、STAP細胞と呼ばれるこの万能細胞は、生物の細胞にもともと備わった能力を生かして作られるもので作成が比較的簡単である上に、ガン化のリスクも他の2つの万能細胞に比べて低い―――などという記事もあったからたしかに｢すごそう!｣ではあるのだが―――。
新聞には、科学記事としての情報は、ほとんどないのはヒッグス粒子発見の時も同じで、やはり一般紙というのは、なんだかんだ言って「社会ネタ」「ゴシップネタ」で持っている、というのがその本質なのだろう。
STAP細胞発見の記事が踊った先週以来、各新聞テレビは発見者、小保方晴子さんという30歳のリケジョの、研究成果とは関係ないエピソードやらゴシップ的ネタで大変な盛り上がりを見せている。
確かに、世紀の大発見がわずか30歳、の女性によって成し遂げられたということだけでも読者の興味を引くのは間違いないが、しかも、小保方さんが、従来の女性化学者のイメージ（例えばキューリー夫人など）に比べれば、まったく違うタイプ―――現代日本にはどこにでもいるタイプの可愛い)の子である点も、科学記者はそっちのけに、社会部記者や芸能（？）記者が大活躍している理由のようだ。
確かに、早稲田の理工を卒業後、ハーバードに留学、理研で研究に携わるなど彼女がエリート道を歩んでいることは確かだが、研究室で着ているのは白衣ではなく、おばあちゃんがくれた「割ぽう着」だといった「小ネタ」を聞くと、山中信伸教授が、解剖図を書くのが下手すぎて、臨床の道を諦めて研究に進んだ―――といったエピソード同様、この結構難しそうな世紀のノーベル賞級の大発見！に対する親しみが湧く。
(ちなみに、割ぽう着は、今、売り切れ続出だというから、日本人のミーハー度も相当なものだ。
コペルニクスも、ガリレオも、そしてダーウィンや、ヒッグスも、最初にその理論を提唱した時には、全く理解されず、むしろ社会から大非難されたというが、小保方さんも、一昨年、科学誌にSTAP細胞の論文を初投稿した時は「細胞生物学の歴史を愚弄している」と突き返されたという。そんな困難を乗り越えて遂にその成果が認められるに至った訳だが―――彼女の論文を理解できる能力など全くないが、それこそ、もう少し噛み砕いたSTAP細胞の知識は得ないと思う。「NEWTON」などの科学雑誌の臨時増刊が楽しみだ。
（2/03/14 10:00pm S.T.）
2014年2月3日
明日ママがいない
熊本の慈恵病院が設置している赤ちゃんを匿名で受け入れる施設は、通称である「赤ちゃんポスト」の名前でよく知られている。
赤ちゃんポストが設置された07年当時は、子供を育てるのが親の絶対的な義務であり、どうしても育てられない理由がある場合でも、様々な乳児院や養護施設など受け入れ施設も全国に多くあるのだから、匿名での捨て子を助長するような施設には反対、という批判が多かった。
当時(06年)首相の座にあった安倍晋三首相も、記者団の質問に対して「まずポストという名前に大変抵抗感がある」「子どもを産むからには親として責任を持ってもらうことが大切で、そういうお子さんに対応する施設もあるし、匿名で子どもを置いていけるものを作るのには大変抵抗を感じる」と慎重論を唱えていた。
しかし、「育児を放棄する親に問題があるにせよ、赤ん坊には罪はないのだから」といった有無を言わせぬキリスト教的価値観に押しまくられて「赤ちゃんポスト」は発足、11年度までの4年間で既に100人近くの赤ちゃん、幼児がこの施設に預けられいまや、すっかり定着した感がある。
しかし、赤ちゃんポスト設立時、施設側が開設の理由としてあげた「新生児の殺害・虐待・育児放棄を防止する為」という点については、預けられた子供に虐待の痕跡はなく、「このポストの開設で命が救われた事例は認められない」と報告されている。寧ろ、赤ちゃんポスト開設以来、全国の乳児院、養護施設に親による育児放棄によって預けられる子供の数が急激に増えていることなどもあて、「赤ちゃんポストが育児放棄を助長しているのではないか」という当初の懸念が的中しているのは事実のようだ。
勿論、開設から8年、既にこの施設が広く認知されており、当初言われたとおり「赤ん坊には罪はないのだから」という点に立てば、今後も施設運営を続けていくべきだが、同時に「安易に育児放棄すべきではない」という人としての倫理感の回復に対する努力を今以上にはかっていくべきだ。
何しろ、この施設に預けられた子供たちの身になって、温かく見守ることがなによりも大切だ。
そんな、赤ちゃんポストを巡る様々な状況を考えるべきである最中、日本テレビが製作放映中のドラマ「明日ママがいない」は、あまりに無神経というかあざとすぎる。このドラマの中で「赤ちゃんポスト」に預けられた主人公の女児には「ポスト」というあだ名が付けられている。（07年に安倍首相がいみじくも、「まずポストという名前に大変抵抗感がある」といった言葉を、わざわざ引っ張り出して施設の女の子のあだなにしたとしか思えない）
その他にも施設の職員が預けられた子供に暴言を吐き、泣くことを教養するシーンなど、余りに子供達に配慮を欠いた描写は、いかにセンセーショナルなドラマ作りで視聴率を稼ぎたかったにせよ、度を越しているとしかいえない。
慈恵病院や全国の養護施設団体からの「預けられた子どもを傷つけ、精神的な虐待、人権侵害になる」という抗議にも既に3回放送を終えた時点でも日テレは頑として応じていない。
秀作と言われ人々を心から感動させ、あるいは社会啓発となった素晴らしいテレビドラマは数多くあった。しかし、今やテレビドラマは、センセーションな話題作りになればよい、人を傷つけることに平気だというのだから―――。
（2/02/14 10:00pm S.T.）
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