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2013年3月
＜＜3月タイトル＞
03/29 堤防は決壊するか 03/27 32%の多数決 03/26 再発防止に努めたい 03/25 白から黒へ 03/22 素数という神秘 03/19 八百長試算 03/18 非自民という旗 03/15 みどりの券売機 03/14 安く売って！シェールガス 03/13 消費税還元セール禁止 03/12 復興を考える 03/11 良くやっているなぁ～ 03/08 事情判決の法理 03/07 原則、関税撤廃？ 03/06 猪瀬知事の英語 03/05 捨てる勇気 03/04 ベンサムとブキャナン 03/01 外国語がしゃべれたら
2013年3月28日
堤防は決壊するか
堤防が決壊するメカニズムについて聞いたことがある。一つは、一般的にいう「アリの一穴」のような小さな部分からの｢漏水｣が徐々に大きくなりその一穴から一気に決壊につながってしまうケース、第二は、激流が堤防の側壁に強く当たることで一部側壁が細く削られ決壊に至る「側方侵食」、そして堤防の上縁を超えた流れが奔流となってその堤防全体をあっというまに決壊させる「越流」という三つがあるという。
あの巨大な渓谷グランドキャニオンは一般的な学説では、数億年をかけて河の流れが谷を削り続けた結果だといわれているが、数千万年前、上流にあった巨大な湖の一部から越流が起こり一気にその巨大湖の水が流れ出たことで大部分が出来、その後又何百万年かの河の流れが仕上げを行い現在の渓谷になったという異説もあると言う。果たしてこの説が正しいかどうかは知りようがないけれど、子供の頃に海辺の砂浜で砂の土手で囲った小さな池が決壊する時に、まさにこの越流によって一気に池（というか水溜り）が壊れる様子を見た記憶があっただけに「ウムなるほど」と妙にグランドキャニオン越流起源説（？）に納得したものだった。
グランドキャニオンの起源についてはともかく、どうにかそれまで耐えに耐えてきたのだけれど、もうこれ以上は耐えられない！といういわゆる「我慢の限界」を超えてしまうと、物事は一気に崩壊するという例は越流やバネの弾性限界の例のような物理的な世界だけではなく人間の心理、社会の仕組み等々でもよく見られる。
先の衆議院選挙の一票の格差を巡り全国16ヶ所で起こされた選挙無効を求める行政訴訟の高裁判決が全て出揃ったが「違憲状態」とするものが2件、「違憲だが選挙は有効」とするものが12件と14件は従来同様の事情判決（参照「事情判決の法理」03/08/13）だったが広島と岡山の高裁が出した「違憲、無効」の判決はまさに国会の不作為に対して「司法の我慢も限界を越えた！」という判決だったように見える―――。
いやいや、たった2件の無効判決なら「アリの一穴」に過ぎないから他の14高裁の選挙「有効判決」というぼろ布を突っ込んでふさいでおけば大事には至らないだろうとか、あるいは「0増5減」という微調整によって格差の大きな選挙区の定数だけをいじることで「側方侵食」を回避すればいいだろう等といった与野党の楽観論も聞かれるが、なんとなくこの2件の無効判決はグランドキャニオンを作ったような大規模決壊にもつながる越流判決ではないかという気がしないではない。
この16の高裁判決は全て上告され、最高裁はこの16件を一括審理するという。原則として最高裁は100日以内に判決を出すことになっているというから場合によっては年内に「選挙無効」という前代未聞の判決が確定する可能性もないではない。
司法の最高権威といわれる最高裁だが、その判事15人はすべて内閣によって任命されており、内閣に恩義のある最高裁の判事たちがその任命権者にたいして反旗を翻すなどということも考え難く、「上告審では再び事情判決が出て選挙無効にまではならない｣という予想が専らだが―――。まあ、｢予想と褌は向こうから外れる｣ともいうからひょっとしたら「昨年の衆議院選挙は無効」という大混乱もあるかもしれない。そうなれば安倍内閣も正統性を失い何もかも「皆、やり直し！」なんていうことにもなりかねない。
根が野次馬なのか、この2件の高裁無効判決が越流効果を表し最高裁でも無効判決が出たら面白いのに――などとも夢想するのだが――。
（03/26/13 9:00pm S.T.）
2013年3月27日
32%の多数決
先日千葉県知事選挙が行なわれ現職の森田健作氏が再選を果たした。同氏の得票数は123万票余りだったが、2位の共産党推薦候補が29万票、3位の候補の得票に至ってはわずか4万7千票に留まった。
元タレントで知名度も高い現職知事を自公両党が全面支援、民主党は独自候補擁立もできず(千葉県は野田前首相の出身地であるにもかかわらず)、選挙を「赤旗」の宣伝ツールにしている共産党が元大学教授を立てただけ、3人目の候補は選挙運動一切なし、選挙公報には政見どころか顔写真も載せないという、全くなんの為の立候補かわからない変り種というのだから、この選挙、開票前から結果は分かっていたというなんともバカバカしい、選挙費用の無駄遣い選挙であった。（もっとも、第3位の候補は、なんの運動もしないのに4万7千人が投票したというのだから、これはこれで凄いとは思うが）多くの県民が投票所に足を運ぶだけムダでバカバカしいと思ったのだろう、投票率は32％弱と、前回を更に13％も下回ってしまった。
民主主義の根本原則は「多数決」だといわれる。100人中49人が反対しても、51人が賛成ならその意見が通る－－－ということなのだが、100人中、32人が投票に行き、内25人が投票した人物が「民主主義的に選ばれた」といわれると、果たしてこれって本当に民主主義なのかなぁ～と思わないではない。即ち、投票に行かなかった68人の中には「黙っていても森田になるのだろうから」と投票所に行かなかった「隠れ森田支持」もいただろうし、「共産党支持だけれども、投票に行ったところで受かりっこないから行くだけムダ」という隠れ共産党支持者もいるだろう。しかし、大半の知事選挙棄権者は、「別に知事なんて、どうでもいいや！」という無関心派、あるいは「森田も共産党も嫌だ！」「録な候補がいないから投票に行く気がしない」という知事選不満派だったかもしれない。
千葉の知事選投票率32％だと驚いてはいけない。2011年には埼玉の知事選で投票率何と25％という記録もあるし、今後続く、全国各地の知事選では低投票率どころか、立候補者が一人しかいないという「無投票」が続出するといわれている。「無投票」なら億単位の費用（ポスターや、看板、要員の確保といった）をかけないで済むという利点はあるものの、それで本当にこの先「日本は民主主義国」と胸をはれるのかという気もする。
台湾で反原発運動が盛んに行なわれている！と日本の反原発派が羨ましそうに叫んでいるが、いままで台湾では7回も反原発の住民投票が行なわれたものの、原発の差し止めは成立していないという。これは住民投票規定に「投票率が50％を上回ること」と規定されているのに、まだ一度も50％に達したことがないからだという。反対派はこの「50％という規定を外せ！」と主張しているようだが、例えば投票率25％（埼玉知事選と同じ程度の）でその過半数、すなわち国民の13％が原発差し止めに賛成したらOK！というのでは、それで国のエネルギー政策を決めるのはいささか乱暴だとも思う。特に、今まで住民投票にいかなかった75％が「原発？別にどうでもいいや」と思っているとしたら―――。
民主主義とは、多数決原理とは、一体、正確には何を意味しているのだろう。
（03/26/13 9:00pm S.T.）
2013年3月26日
再発防止に努めたい
「謝罪」しなければならない状況などというものはできれば避けて通りたいものだ。どうしても謝らなければならないところに追い詰められていても自分が悪い訳ではなく、真の原因は別のところにある―――と誰か他人の所為にするとか、自分としてはベストを尽くしたが運が悪かった、仕方がなかった、という「言い訳」で逃れる(逃れようとする)手も考えられる。あるいは、「確かに自分が悪かった、その点は謝ります！でも、あなただって何よ！」と言った「居直り、逆襲」という手もある。
「なにはともあれ先ず謝っておけ」というのが古くからの日本人の考え方ではあるが、鎖国時代ならともかくこういった日本の常識は「世界の非常識」でもあると知って様子が大分変わってきた。‘Sorry’と一言いったが為に、交通事故の被害者であるにも係わらず裁判で負けた、といった米国での例やら、菅前首相の不用意な発言が、対馬から盗んだ仏像を返さない、という某国のような無茶苦茶を許すことにもつながるとなれば、今や「謝罪はしない」そして「言い訳、あるいは居直りで対処する！」のが正しいということになるのかもしれない。
そんな、現代社会に於いては、模範的謝罪法となると、政治家とか役人、警察、企業といった責任主体がはっきりしない団体のものが大いに参考になる。マスコミが押しかけてどうしても頭を下げなければ済まないような状況下では、まず最高責任者は顔を出さないのが鉄則だ。広報室長だとか、副何々といった肩書の人物が出てきて「皆様には多大なご心配、ご迷惑をおかけして－－－」という常套句を発する。そもそも、これを言っているご本人が、別に「ご心配」をしている人はいない(怒っている人はいても)だから、実は全く謝っている訳ではない－－－ほぼ無意味な発言だ。
それに加えて「再発防止に努めたいと思います」といえばほぼ完璧だ。「この件の責任は誰々にある」とか、「再発防止策はこうだ！」という具体策には一切コミットせず、「努める」とか「思います」と言うだけなら、それは要するに、今後又同様な不祥事が起こったとしても「あの時も、再発しなければいいなぁ～と思ったのですがねぇ～また、起きちゃいましたねぇ～」で済む。(広報室長の責任とは誰もいわない)
被害者から訴えが起こされ、再びマスコミが押しかけてきたら「訴状を見ていないのでコメントを差し控える」とか「責任者が不在なのでよく分からない」と答えておけば、記者たちももう次の日には来ないだろうしその内事件はうやむやになる。
もっともこの手の謝罪は個人がやるとケンカになる場合もあるので要注意だ。奥さんに浮気がバレたからといって「多大なご心配と、ご迷惑をかけ－－－」とか「再発防止に努めたい－－」などといったらタダではすまないし、離婚訴訟になったらいつまでも「訴状が届いていないので－－－」という訳にもいくまい。
そうそう、今朝、新聞に、徳島の警察署が、路上で見つかった変死体を棺にいれたとばかり思って親族の依頼で、火葬場で焼いたら遺骨がなくびっくりして調べてみたら、遺体はまだ警察の霊安室に安置されたままだった－－－という珍妙な「事件」が出ていたが、その記事の最後に、『県警の担当者は「再発防止に努めたい」と話している』とあったのには大いに笑った―――いかに不祥事慣れしている警察の常套句とはいえ、遺体の入っていない空の棺を荼毘に伏すなどということは、もう二度と起きないと思いますよ。
（03/24/13 9:00pm S.T.）
2013年3月25日
白から黒へ
日銀の総裁が白川さんから黒田さんへと変わった。総裁の名前が「白から黒へ」へと180度の変わったように、中央銀行としての日銀の役割、あるいは中央銀行と政治との関係もこれからは大きく変わっていくことを予感させる交替劇である。
景気低迷の原因はデフレである、デフレの原因は日銀の金融緩和が生温いからだ、という子供じみたアベノミクス理論に提灯をつけるリフレ派の黒田総裁誕生に、株式などの先行指標が反応していることで、新総裁誕生は好感されているが、黒田さん歓迎ムードが高まれば高まるほど、去り行く白川さんへの評価が相対的に悪くなるのは気の毒な感じがしないではない。
デフレはあくまでも実体経済の「結果」である。金利やインフレ率という、経済を計る温度計の目盛りを人為的にいじくればデフレからの脱却が可能！等ということは断じてありえない。その証拠に、この5年間だけではなく以前にも度々「ゼロ金利政策」「量的緩和策」がとられたにもかかわらずデフレから脱却できなかったではないか。しかし、リフレ派の黒田さんはその就任会見で、「金利引き下げ余地が乏しい中では、（日銀）が市場の期待に働きかけることが不可欠」と日銀が積極的に市場に介入し市場を動かすかのような姿勢を示している。そもそも「物価の番人」であり市場という経済の動きの中で行事役を務めるべき日銀が、マワシをつけて相撲を取ろうというのは問題だ。
民主党政権の余りの不甲斐なさに先の衆議院選での大勝した自民党政権は、この先、暫くは続きそうだという状況下、いつまでも「日銀の独立性」などといっていても始まらないだろうとばかり、日銀は自らその独立性を放棄して政権に迎合しようとしている。そういう迎合姿勢を見せる黒田さんのような人物でなければ、日銀総裁の座につけない－－－という現在の中央銀行と政治の関係も危険だ。
司法が政権に迎合している国の政治が堕落していった例は多いが、中央銀行もある意味司法と似たところがある。黒田総裁になった日銀の政治との「蜜月」には何か非常に危険な臭いがする。
なんだかデフレの全責任を負わされ、石もて追われるが如く退任した白川さんがその退任会見で「マネタリーベースの増加と物価上昇は、相関関係が断ち切れている。（マネタリーベースを操作することだけではなく）高齢化に伴って経済の仕組みを見直すなど、デフレの根本原因に対応する必要がある」と2％の物価上昇目標設定を無理やり政権に飲まされた悔しさ紛れの発言（？）をしたのは、イタチの最後っ屁とばかりは言えない。もう一度噛締めておく必要があるのではないだろうか。
アベノミクスの「三本の矢」とは「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」だというが、金融政策とはこうやって日銀をおどしつけることであり、財政政策とはなんのことはない公共事業のばら撒きであり、もっとも重要な成長戦略は、未だにその形が全く見えてきていない。このまま野放図な金融政策と、公共投資のばら撒きだけが先行しつづければ、早晩日本の借金は増え続け、財政破綻への速度は早まるばかりではないか－－－と、不安でならないのだが。
（03/24/13 9:00pm S.T.）
2013年3月22日
素数という神秘
今から1万年前に最後の氷河期が終わるまで、現在の北米五大湖地域は厚い氷河に覆われており昆虫類が生きるには極めて厳しい環境であった。氷河期が終わってからも、メキシコ湾という大きな海洋にさえぎられている所為もあって北米には昆虫の飛来も少なく、その為にこの地域に住む昆虫の種は今もかなり限られている。虫の種類が少ないから、五大湖周辺に住む人たちは当然、あまり虫になじみがない。アメリカ北西部の人たちが、虫の名前を余り知らず（というか関心がなく）ゴギブリもコオロギもセミも皆一言‘Bug'で片付けてしまうことは、虫には中々詳しい日本人にとっては、ちょっと滑稽なくらいだ。
虫にあまり縁のない五大湖地域だけれどもここには13年と17年という素数の発生周期を持つセミがいる。吉村仁氏の「素数ゼミの秘密に迫る」によれば、この二種のセミ（13年ゼミと17年ゼミ）は、素数という神秘の数の周期を持つからこそ氷河期を生き抜いて今も繁栄を続けているのだという。この地域の化石からは、かつて17年ゼミと13年ゼミの他に12年ゼミ、14年ゼミ、15年ゼミ、16年ゼミ、18年ゼミなどがいたという、しかし、素数の周期を持つ種だけが生き残っている理由は、一言でいえば「素因数分解が難しい」という現在も暗号技術などに生かされている数学上のメカニズムが働いているからだ。
例えば13年ゼミと17年ゼミの大量発生が同じ年に起きるのは13と17の最小公倍数である221年に一回だからこの二種の交雑は起き難い。しかし、例えば偶数年ゼミ同士であれば、ほとんど毎年、何種かのセミの同時発生が起こってしまい、同種の種族維持が難しくなってしまうし、又、天敵の発生周期ともあってしまうことによって更に種族維持が困難になるというのが同書の解説だったが－－－。
京都大の研究グループが今週この13年ゼミと17年ゼミのDNA解析から、これらのセミがその発生周期を得たのは氷河期であったという解析結果を発表したという新聞記事があった。やはり、これらの「周期ゼミ」が、氷河期という過酷な環境を生き抜く為に素数を利用したことが裏付けられた訳で、あらためて90年にシカゴ在住時に見たあの赤い目をした17年ゼミがもつ神秘的ともいえる数学能力に感心した。
それにしても素数は不思議だ。この100年以上に亘って研究されている数学の超難問といわれる問題の中で、フェルマーの定理、4色問題、ポアンカレ予想などはそれぞれ天才ともいえる数学者達によって遂に解かれたが、素数に関する難問、リーマン予想はまだである。リーマン予想をわかり易い言葉で言い換えてみると「素数の出現には、ある規則性がある」ということなのだが、2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43,---という素数には何らかの規則性があるようにも思えるが、いまだにその規則を解明した者はいない。リーマンはこの規則性についてのある提案（予想）を述べているのだが、そのリーマンの提示した「素数出現の規則性」が果たして正しいのか、間違っているのかさえこの100年、多くの数学者が挑戦したものの解答が得られていないという訳だ。
もっとも、リーマン予想が解決してしまうと、現在の情報社会のセキュリティーを支えているRSA暗号が破られることにもなる訳で、社会に破滅的なダメージを与える可能性もあるという。
セミが氷河期を生きのびるために使った素数が、現代の情報社会が今後も生き延びられるかどうかのカギを握っているというのだから―――。
素数は―――やはり永遠に神秘のままであって欲しい―――とも思うのだが―――。
（03/21/13 9:00pm S.T.）
2013年3月19日
八百長試算
高速道路を作るとか橋を架けるという大型公共事業の計画時、将来の交通量予測だとか経済効果等々の「試算」が発表されてきたが、この手の数字のいい加減さはよく知られたところだ。
例えば東京湾アクアラインの場合、「供用開始時一日25000台、20年後64000台」と計画時発表されていた推定交通量だが、97年に開通以来今年で既に16年経つが交通量は未だに一日12000台に過ぎない。1兆5千億円の総工費をかけ再三にわたる通行料金値下げをした上でのこの数字というのだから「昭和の三大バカ査定」の一つに入れてもよいのではないかとすら思えるものだ。（戦艦大和、伊勢湾干拓、青函トンネルというのがオリジナルらしいが）
「何が何でも大型公共工事をやりたい！」という土建利権とそれに癒着した政治家、役人が作った「推定将来交通量」が信用ならないこと等最初からわかっているはずだが、別段、文句いう人もいないという状況ではこんな八百長数字が罷り通るのもいたし方ない。（生徒自身が書いた成績表を信じる親はいない）
既に建設から16年が過ぎ、1兆5千億円の金がかかった上に毎年500億円ともいわれる維持費がかかり続けていることから考えれば、あのでたらめ交通量試算を出した「責任者出て来い！」という声が上がってもよいはずだが、今となっては誰が責任者なのかも曖昧だし（もう今頃は皆死ぬか、辞めているだろうし）、「もう済んだこと」といわれればそれまでの話だ。
要は、この手の「生徒が書いた成績表」どうような試算を信用するのが間違いであり、そんな試算をおおまじめに取り上げた計画などやるべきではなかったということだ。
政府は15日、日本のTPP参加による経済効果の政府統一試算なるものを発表した。TPPに反対する農業関係は農水省、賛成する産業界関係は経産省といったそれぞれのお役所の顔を立てて「統一」したものだというご都合主義の数字である。というのも、安い農産品などの流入が国内の農林水産業に与える打撃を2.9兆円と見積もって後々の農業への補助金ばら撒きの下地を作り、関税撤廃で輸入が増えることによる消費の拡大効果が3兆円、関税撤廃で日本の工業品等の輸出が増える効果が2.6兆円などと経済界を嬉しがらせ、結局なんだかんだで「TPPに参加すればトータル3.2兆円のプラスですよ！」という「TPPに参加したい！参加したい！」という安倍さんの意向に沿った（？）「試算」になっているからだ。
例えば「安い農産品の流入」の打撃が本当に2.9兆円になるのかどうかとなるとオレンジやいちご、牛肉等の輸入自由化の際に農業団体などは「国内産は全滅する！」と叫んでいたのに実際は輸入自由化前より今や国内生産は増えていることなどを考えると、どうも信用ならないし、農水産業のマイナスはとりもなおさず、消費者のプラスになるのだとしたら（高い国内産に代わって安い輸入品費が手にはいるとすれば）2.9兆円を「国にとってのマイナス」と試算するのはインチキだ。
TPPへの参加は大賛成だが、政府は、なにもこんなインチキ試算などでごまかすのではなく、堂々と正論を持って国民の説得に当たるべきだと思う－－－。
（03/18/13 9:00pm S.T.）
2013年3月18日
非自民という旗
押せ押せムードの政権与党に比べてやること為すことジリ貧に火をつけている感じの民主党だが、日銀人事でも自公政権に一矢報いようとすれば「抵抗野党」だと選挙民の反発を招くだろう等と最後の最後まで同意人事への賛否の結論がでなかった。挙句の果てに、「不同意」という党議拘束をかけてはみたものの、野党側との共闘体制も整わず、ましてや党内からは造反者まで出るに至っては恥じの上塗りをしただけに終わってしまった。こんな状態では夏の参議院選挙での民主党の大敗は避けられそうもない感じになっている。そもそも日銀人事にしても「これこれの理由で反対・賛成」という訳ではなく、「どうやったら党の存在感をよりアピールできるか」という基準で賛否を決めようというのだから支離滅裂になってしまうのは至極当然の成行きだ。
選挙区選挙で落選して漸く比例復活した優柔不断の海江田さんが大将というのではこの政党の復活など到底叶わないことなどとっくの昔からわかっていたことではないか。一部のタブロイド紙には「前原元代表グループ、政党助成金をつかんで維新に合流か？」なんていう推測記事を書かれるぐらいだから党のまとまりなんていう物が丸でない上に、所属議員さんたちがいかに浮き足立っているかということがあまりにもあからさまだ。
野党の盟主になりたいという民主党の願いを他所に、橋下共同代表と維新国会議員団との不仲でひょっとしたら分裂もあるのではないかと言われている維新、ますます目立ちたがりぶりばかりが際立つ代表の暴走で分解気味の「みんな」からでさえ、民主党は「今更、沈み行く泥舟の党とは一緒にやりたくない」と嫌われているようでは、野党共闘ヘゲモニーも握れないどころか、「野党の鼻つまみ」といわれても仕方がない状況だ。
そんな最中、ダメ民主党の元凶であったあの生活の党の小沢代表が、夏の参院選について「非自民の考え方を持つ者が力を合わせることが、勝利を得るために必要だ」と述べたという三行記事が出ていた。消滅寸前の「小沢一派」の最後の悪あがきなのだろうが、かつての「政界の黒幕」小沢一郎の哀れさがこの記事の軽い扱いにもあらわれており、涙を誘うではないか。
そもそも野党統一の旗印が「非自民」というのが政局好きというか「政策なしの政局だけ」で政界を渡り歩いてきた彼らしい。本来「これこれをやりたい」というスローガンの下に集まるべき政党が、只単に「自民ではない」というなんとも無意味なスローガンだけで集まろうという発想が今の時代に通じる訳もない。国民はそこまでアホではない。「改憲派」も「護憲派」も非自民なので一緒にやりましょう！消費増税賛成も反対も、非自民なら一緒にやりましょう！ クソもミソも非自民なら一緒にやりましょう！というだけなら、そんな野党など、いない方が世の中よほどすっきりする。
もっとも、維新に取り入った（あるいは取り込まれた）元太陽なんたら党の石原さんたち暴走老人連中なら、「政策抜きで寄り合い所帯の野党で国会をひっかき回そう」という小沢さんに賛同するかもしれないが―――。
もうそんな時代は過ぎた―――と彼らは学ぶべきなのに―――。
（03/17/13 9:00pm S.T.）
2013年3月15日
みどりの券売機
駅に券売機が導入されたのはいつ頃からだっただろうか。確か最初の頃は投入できるのも硬貨だけ、購入できる切符の金額も少額の近場の駅までのものだけだったような気がする。ちょっとした遠出の場合は駅員がいる窓口で「xx迄大人二枚」などと言って購入するしかなかったし硬貨の手持ちがなければやはり窓口で購入しお釣りを貰うという方式だったように思う。（改札で駅員が切符にパンチを入れていたのはいつ頃までだっただろうか）
その後、窓口の数はどんどん減る一方、特急券なども含めたあらゆる種類の切符が自動券売機で買えるようになり――というか券売機で買うしかなくなってきて――「券売機の前でオロオロしているお年寄り」が、古代の遺物のような扱いをうけるなどという時代もあった。
しかし、そんな状況もSUICAなどの電子マネー式の乗車カードが導入されるに至って自動券売機でさえそんなにいらなくなり数は大幅に減少、改札付近には駅員さえ見かけないといった状況になったことで「券売機の前でオロオロしているお年寄り」はさっぱり見なくなった―――と思っていたのだが―――。
今全国のJRの駅から券売機に続いて「みどりの窓口」がどんどん無くなっているという。例えば思い立って京都に遊びに行こうと最寄りの駅に行って切符を買う場合「今日、日帰り往復で京都、行きは、これから東京駅に行って間に合う「のぞみ」の指定席、帰りは指定席だが、時間は京都であらためて決めたい」などという買い方を、今までは最寄り駅のみどりの窓口（窓口の駅員は女性の場合が多かった）でやっていたのだが、みどりの窓口が次々と閉鎖され、「みどりの券売機」（？）のような機械を相手にしないといけないとなってきている。新幹線の切符位なら、説明をよく読んで使ってみれば、みどりの券売機も便利にできており思った程には操作は難しい訳でもないからどうということはないのだが－－－。
もう少し複雑な切符を買うとなるとこれが中々の難物だ。機械という奴は、一度途中で間違ってしまうと中々元に戻せないから慌ててしまうしそんなことが重なると「もし万一、操作ミスをしたら－－－」と多少ビビる気持ちが隠せない。「ああ、やっぱりみどりの窓口のお姉さんが懐かしい！」という気持ちになる。
例えばタカさんの自宅近くの駅から房総半島の突先の館山に行こうという場合、今までならみどりの窓口で、「この駅から京葉線快速で曽我に出て乗換えて館山まで行くのと、一旦、東京駅まで戻って特急に乗るのとでは、時間的にそして料金的にどちらが得か」などといった相談をお姉さん駅員は親切に答えてくれていたが、これからは「みどりの券売機」相手ではそんな注文も中々できそうもない―――となると「昨年も行ったことだし、別に菜の花を観に館山くんだり迄行くこともないか」となってしまう―――。
あれっ、これって結局、いつの間にかタカさんも「券売機の前でオロオロしているお年寄り」になってしまったという事なのだろうか。
（03/14/13 9:00pm S.T.）
2013年3月14日
安く売って！シェールガス
大量に埋蔵していることは分かっていながら長い間、採掘は困難だといわれていたシェールガスだが、2000年代に入ってから地中深くに1000メートルにも及ぶ横穴を掘りそこに高圧の水を注入してガスを回収するという水圧粉砕法という新技術が開発されアメリカのエネルギー供給の地図を塗り替えつつある。
シェールガスの生産は年々バイバイゲームで増加しておりこの勢いでいけば2020年にはシェールガスを含めた天然ガスがアメリカのエネルギー需要の40％（現在は20％）を占めるだろうという予測もある。
「新しいエネルギー源」といえばなにしろ「コストが高い」というネックが付きまとうものだがシェールガスの場合、現在その米国内価格は100万BTU当たり3ドルと、日本が輸入している天然ガスの価格15ドルの何と1/5という安さであり、しかもその採掘可能埋蔵量は200年分もある等という話を聞くと、もうこれでアメリカのエネルギー問題は解決済みか！とさえ思えてくるし「シェールガス革命！」という惹句も本物らしく聞こえてくる。（実体経済をともなっていないのに只「アベノミクス！」という掛け声だけで上昇を見せている日本の株式に比べて、アメリカの株式の上昇にはこのシェールガスという「実体」が影響しているのかも―――ちょっと本物っぽいなぁ―――などとも思えてくる。
原発停止もあって石油、天然ガスなどの輸入が急増、折からの資源価格高騰と円安も重なって日本の経常収支は今年5兆円以上の赤字になると予想されている。にっちもさっちもいかない日本のエネルギー事情を考えればこのアメリカの「シェールガス革命」がなんとも羨ましく思えてくる。
もっとも今は湧き立っているシェールガスだが不安材料がないではない。天然ガスと違ってシェールガスの場合、一本の井戸の寿命が極端に短く3－4年しかないという点だ。井戸を掘って枯れたら次に又掘って－－－という繰り返しだが、地下深くに高圧の水を注入するというこのかなり乱暴な採掘法によって地下水などの自然環境が破壊されるという問題も全米各地でおきているという。化石燃料の採掘には環境問題が必ず付き纏うという石油や石炭が辿った道を、シェールガスも避けては通れないようだ。
先週、日本では周辺の海底に大量に眠っているといわれるメタンハイドレードの試掘に世界ではじめて成功した、と大々的に報じられている。シェールガスと違って海にあるメタンハイドレードなら環境問題はなさそうだが、海底1000メートル下に眠る資源の採掘となると技術的にはもちろんなにしろコスト的には将来的にもとても採算に合わないだろうともいわれている。夢を語るのはよいが過大な期待はよしておいた方がよさそうだ。
風力、太陽光、バイオといったエネルギーが精々、気休め程度の量にしかならないし、核融合などの超新技術の開発の目処もたっていないとなると、今日本が直面しているエネルギー問題の解決策は中々見当たらない。
くやしいけれど、やっぱりアメリカに揉み手でお願いして、シェールガスを安く分けてもらうしかない－－－のだろうか。
（03/13/13 9:00pm S.T.）
2013年3月13日
消費税還元セール禁止
「消費税還元セール禁止」というなんとも馬鹿げた法案が3月中に国会に提出され10月からの施行ということになりそうだという。民間があの手この手と知恵を絞っているのを何かというとお上が邪魔をするという典型だ。
14年4月から8％、15年10月から10％へのアップが決まっている消費税だが、実際の消費税上げの局面では世論の反発は避けられまい。（税金が上がると聞いて喜ぶ人はいないから、来年の4月前には「消費税を上げやがって！」といった罵声が少なからず上がるだろうし、そうなれば与党の支持率も下がることは避けられそうもない）
そんな政治にとって困った状況の中で、大手スーパーなどが「消費税還元」と名打った安売りキャンペーンで「当店が消費税分上昇分を負担します」あるいは、「消費税税上昇分のポイントを付けます！」といった広告・宣伝を行なえば消費者は「消費税を上げる政府・与党は庶民の敵だが、その値上げ分を自己努力によって吸収してまで安売りをしようというXXスーパーは庶民の味方だ！」と思うのではないかという懸念が政府・与党にはあるようだし、そもそもなるべく騒ぎを大きくしない内に税率アップしてしまおうとしていた消費税なのに、やたらと「消費税」だの「消費税還元」だの騒がれたのではたまらない、こうなったら流通業界に「消費税」という言葉を使うのを禁じてしまえ！というのがお上の考えのようだ。
政府は法案の理由として「消費税還元セールを行なう為の、大手スーパーなどによる下請け・納入業者に対する買い叩きや、無理な値下げ要求を防止する為」だとか、「大手の安売りによって、それに対抗できない中小の小売店が苦しむことになる」などと言っているが、なあに不当な買い叩きや無理な値下げ要求、あるいは不当廉売に対しては不正競争防止法や独占禁止法などの既存の法律で取り締まればよいことでありわざわざ「消費税還元セールという名前での安売りは禁止」などという特措法を作る必要など全くない。
スーパーの肉や野菜の売り方に一々政府が「こういう宣伝はダメだ」「こういう売り方をせよ！」などと口出しするとは全く笑止千万ではないか。（非合法な商売であるならばそれを禁じる法律－－たとえば麻薬の場合、麻薬取締法といったような法律で対処すればよいことだ）
そもそも、政府が市場における真っ当な商売にあれこれ干渉するのは、自由主義、資本主義の原則に反しているし、「政府にそんな権限はない！」ということに何故皆が文句を言わないのだろうか。
日本で「消費税還元セール禁止」などという馬鹿な法律が成立しようとしている最中、ニューヨーク市が肥満防止策として今月12日から導入する予定だった「Lサイズ甘味飲料の販売禁止措置」に対して、ニューヨーク州裁は、炭酸飲料などの販売方法について「市当局に法的権限はなく、決定は－－独断的で衝動的－－であり無効」との判断を下した。このニューヨーク州裁の「民間の商売の仕方に一々公が口出しすることは消費者の自由を奪うことであり、又自由な商業活動に対する妨害である」という判断は実に真っ当なものだと思う。
日本の消費税還元セール禁止といい、ニューヨークのLサイズ販売禁止といい、自由主義、資本主義を標榜する国でありながら、日米両国の「お上による民間への干渉、いやがらせ」が多くなってきている風潮は、なんだか全体主義的な嫌な風が吹き始めているようにも思える。
我々日本の市民も、ニューヨーク州裁の示したようなまっとうな良識をアピールすべき時期に来ているように思うのだが。
（03/12/13 9:00pm S.T.）
2013年3月12日
復興を考える
震災から早くも2年が過ぎた。多くの失われた命への追悼の思いは2年が過ぎてもますますつのるばかりであり、一向に捗らない復興への足取りに2年という歳月の短さを痛感するばかりだが、逆にわずか2年という時間の間にあっという間に我々が忘れてしまったのは、あの震災と津波によって見せ付けられた大自然の圧倒的な力、人間の力の弱さの記憶ではないだろうか。
大津波で1500人以上もの犠牲者を出した岩手県の陸前高田市で昨年9月、防潮堤の工事がはじまった。陸前高田では震災前には海岸を覆い尽くす高さ5.5mの防潮堤があったが、推定で18.5mという津波の前に防潮堤は押し流され実に甚大な人的、物的被害が出た。防潮堤という人造物では圧倒的な自然の力はとても防ぎきれるものではないし、むしろ「防潮堤がある」という安心感が人々の避難を遅らせ被害が拡大した可能性すらあるのではないかといった議論が震災直後には盛んに行なわれたが、結局、昨年9月には、高さ12.5m（4階建てのビルの高さに相当）という巨大な防潮堤工事が始まった。
それでも、白砂青松の海岸を覆いつくすコンクリート防潮堤によって陸前高田の人々と町の安全が守られるというならよいのだが、工事前の岩手県の説明でも12.5mの防潮堤では、2年前と同規模の津波が襲えば、ほぼ同じ範囲の浸水が起きるというのだから一体、何の為の防潮堤か――となる。日本社会の宿痾ともいえる「無駄な公共事業の為｣としか思えない!という声が地元からでさえ起こっているという。
コンクリートで作られた防潮堤の耐用年数はわずか50年だ。100年に一度、500年に一度の津波（必ず来ると考えるべきだという）に備えるにはまだこの高さでも足りない。前回と同規模を想定すれば少なくとも20mの高さの防潮堤が必要ということになるがこの高さ(ビルならば6－7階建てに相当するらしい）となると基礎部分などの厚みや深さも相当なものになり技術的には不可能（できなくはないがバカげている）なものだという。50年毎にピラミッドや万里の長城のような「無意味な建造物」を作り続けるほどの余裕が少子化に向かう日本にあるものだろうか。
ギネスブックに「世界最深」の防波堤として載っていた釜石市の全長約 2 km、海上からの高さは約 8 m、厚さは約 20 m防波堤も、あの震災で根こそぎ破壊されてしまった。「計算上は津波の到来を5分間遅らせる効果はあった」などという言い訳めいた話も県や土木関係者からは聞こえるものの、数千億円という資金のみならず、防潮堤に対する「信頼感」の為に避難が遅れ失われていった命を考えると、やはり「無駄だった」といわざるを得ないのではないだろうか。
「津波がきたら危険な地区には住宅を作らないで高台移転を図るべきだ」「津波は防御するのではなく、津波からの避難を最優先に考えるべきだ」という議論は震災直後にはかなり真剣に語られていたが、今やそんな議論も聞かなくなり、いつの間にか、復興に名を借りたその種の無駄と思える工事が始まっている。
津波で破壊された漁港は320にも及ぶという。これだけの漁港の沈下した地盤を全て嵩上げし、破壊された埠頭を全て修復する－－－のではなく、漁港の集約化、大規模化を図る方がよほど合理的だという話もあったけれど、これも個々の漁協などの利害関係が絡んで全く進んでいないし、震災前には「跡継ぎがいなくて高齢化が進んでいる」とか「耕作放棄が拡がっている！」といわれていた農業は、膨大な量の瓦礫を除去し徐塩したうえで地盤沈下分を元通りに嵩上げするという。その費用は数千億円といわれているが、そうやって復旧した農地を20年後、一体誰が耕作しているというのだろうかと思う。
「復興」とは必ずしも原状復帰を意味するものではないはずだ。あれから2年が過ぎた今、もう一度、立ち止まって復興を考えるべきではないだろうか。
（03/11/13 9:00pm S.T.）
2013年3月11日
良くやっているなぁ～
ラスベガスではレンタカーをすることが多い。市内での買物や食事の際にも車があると行動範囲が広がり時間の束縛もないし、レッドロックキャニオンやデスバレーなどへの半日がかりの遠出などには車は必須と言ってよい。レンタカーは日本出発前にネットで予約ができるし、料金も極めてリーズナブル（ぶっちゃけた話、随分安い）だ。
只、予約の際にアメ車と日本車ではそのサイズが随分違うことに留意する必要がある。レンタカー予約の際には先ず車種を選択するのだが、乗用車の場合、車種は大まかに言ってエコノミー、コンパクト、ミッドサイズ、フルサイズそれにラグジュアリーの5つのクラスがある。（その他に特殊車として、ミニバン、スポーツユティリティークラスがあるが）いずれも2ドアタイプと4ドアタイプがあるが、エコノミー、コンパクトは4人乗り、それ以上のクラスは5人乗りだ。（ミニバンは7人乗りと表示されている）
ベガスに行く時はいつも家内と2人だけなのでそんなに大きな車は必要ないのだが、それでも日本ではいわゆる「中型車」（ちなみに現在乗っているのはマークⅡ）に乗っているのだからエコノミーやコンパクトではちょっと小さいだろうと思い、ミッドサイズを予約するのだが、現地に行ってミッドサイズに乗ってみるとこれがやたらとデカイ。例えば、ミッドサイズ車とされているダッジのアベンジャーに乗ってみると、これは日本の中型車よりはるかに大きいように思う。排気量は3000CC位なのだろうが、日本車の3000CCクラスに比べると鉄板が随分分厚く、かなり頑丈に見える。そう思って乗ってみると気のせいか車幅もいやに広い。(小柄な妻が運転席に座ると対向車からは無人車に見えるかもしれない) アメリカの道路は広いから、日本では大型車にも見える車でも直ぐにその大きさには慣れてしまうのだけれど－－－。
日本で「エコノミークラス」といえば何となくヴィッツクラスの1000ccとか、あるはワゴンRのような軽自動車といわれる車を思い浮かべてしまうが、そもそも、あの軽自動車というのは道の狭い日本独自の規格でありアメリカにはない車種だという。そこに「エコノミー」とか「コンパクト」に対する日米の認識の差が生まれてしまう原因があるようだ。
あらためて、日本の新車販売台数の統計をみていたら、昨年度、軽が占める割合は全体の1/3を越えていた。それほど日本で人気がある軽がアメリカでは売れないし、逆にもっとも売れている車種がスポーツユティリティーといわれる日本の公道で走るにはでかすぎる車種だというのだから―――。
日本では右ハンドルの方が運転し易いということが分かっているにも係わらずアメリカを始め外国の自動車メーカーは日本向けに右ハンドルを作ろうなどという気はさらさらない。それに比べて日本のメーカーは国内向けには右ハンドル、海外向けには左ハンドル、国内向けには軽自動車、アメリカ向けにはデカイ、スポーツユティリティーやピックアップトラック、といった具合に需要に合わせてきめ細かい供給をしている－－－。
補助金にしがみついて国際競争力を自ら失おうとしている農業にくらべたら、日本の製造業は、数々の政治からのいじめを受けながら良くやっているなぁ～と思う。
（03/10/13 9:00pm S.T.）
2013年3月8日
事情判決の法理
昨年12月の衆議院選挙における一票の格差を巡る訴訟で、昨日(3月6日)には東京高裁、今日は札幌高裁が「違憲」だが「選挙そのものは有効」という判決を出した。
「違憲だけれど有効って--- 一体どっちやねん！」といった突っ込みが入りそうな話ではあるが、これがいわゆる「事情判決の法理」という奴だ。
「事情判決」の判例を調べてみた。ある土地改良組合が、組合員百数十人が所有する合計約60町歩の農地を対象とした大規模な土地改良及び区画整理事業を実施した。ところがこの事業は、わずか10日余りの短期の公示後に開始したために、一部の組合員などへの十分な説明がなされておらず「違法」であり「事業は無効」であるとの訴えがなされた。第一審、第二審ともに訴えを認め「違法」であるとの判決を出したが、その時点で既に巨額の費用を投じた土地改良、区画整理は終わっており、既に百数十人の組合員がこの事業による恩恵を得ていた為に、この事業をすべて「無効」とするのは著しく公共の利益に反する、として「事情判決の法理」を適用して「違法であるが、無効請求は棄却」という判決が出たというのだ。
今回の衆議院選挙の違憲判決も「一票の格差が大きく今回の衆議院選挙は違憲ではあるが、選挙を無効にしてしまうと国会が大混乱してしまうから無効にはしない！」というものでまさに「事情判決の法理」そのものと言ってよい。
確かに、今後続くであろう十数件の「一票の格差訴訟」のいずれもが「違憲」となると予想されてはいるものの、だからと言って「今の国会議員は全員失格！」という荒療治をする訳にはいかないというのも確かだ。（野次馬的には、一度やってみたら面白いとは思うものの）
「事情判決の法理」という奴、いつまで経っても確たる理論が確立しない経済学に比べたら、「法律ってぇ奴は、中々面白いじゃないか！」と思わせるものだと思う。
会津の什の教えの「ならぬことは、ならぬものです」みたいな固いことはいわず、「ダメといったって、今更、元に戻す訳にもいかないのだから、まあ、いいことにしよう」というのだから－－－。
世の中には｢ダメといわれても今更－－－」という類のことはたくさんある。奥さんが幾ら「夫の不貞だ！」と騒いだところで、夫が浮気して子供を作ったとしたら「婚姻関係における契約違反であり、子供は無効！」という訳にはいかない。―――まあ、これは「事情判決の法理」とは全く関係ないけれど。
「事情判決の法理」が、法律の杓子定規な適用ばかりを是とするのではなく、現実の社会生活と法律とにあるていどの整合性を持たせるものとして優れた（とはいわないまでも合理的な）法概念－－－とも思える。
もっとも、今回の一票の格差訴訟では国会議員達が、どうも「どうせ選挙無効にはならない事情判決がでるだろうから、定数是正は、別に急ぐ必要はないや」とサボり続けてきた要因になった節も伺えるけれど。
どんな法律でも制度でもかならず悪用する奴が出てくる！というのが「人の世のならい」であるようだ。
（03/07/13 9:00pm S.T.）
2013年3月7日
原則、関税撤廃？
TPPは「環太平洋戦略的経済連携協定」の略語である。なにも日米二国間の貿易協定ではない。その名の通り環太平洋各国が｢お互いに全物品の関税撤廃目指そう｣という多国間の枠組みだ。
もっとも「多国間の枠組」とはいうもののTPP参加予定10ヶ国のトータルGDPの67％がアメリカ、24％が日本 (2ヶ国で91％)なのだから実質、日米の二国間貿易協定と考えることもできるが―――。（韓国は既に米国との間で二国間協定であるFTAを結んでいるので、今更TPPに参加する意味はないと不参加だ）
世界各国がFTAのような二国間、あるいはTPPなどのような多国間協定によってゆくゆくは「世界中で自由貿易を行なうようにしよう」という動きが着々と進んでいる訳で、エネルギーや原材料、そして食糧などの多くを輸入し、工業製品などの輸出、海外投資による資本輸出などで国の経済が成り立っている日本がこのような自由貿易への動きにいつまでもそっぽを向いている訳にいかないことは、政府のみならず農業者を含めた国民は、実はよく分かっていると言ってもよいだろう。
ところが｢総論では分かっていても、各論ではそうもいかない｣というのが今までの日本がTPPにとってきた姿勢だ。「農産物輸入によって、今までの利権が失われてしまう」という農業利権者たち、そしてその農業票を失いたくない政治家達は、「交渉参加」とさえ言い出すことができなかったのだ。
そうこうしている内に、タイムリミットが迫っている。漸く、自公政権は「TPPに参加したからと言って、農産物の関税自由化はしませんから～」とか「もし、輸入することになっても、その分、補助金や所得保障で穴埋めしますから～」などというTPPの最終目標である「全物品の関税完全自由化」とは矛盾する「甘い話」で反対派を懐柔、交渉参加に漕ぎつけようとしている。
先週、日米の事務局がTPP交渉の事前協議を行った。アメリカ側から「日本からの自動車輸出に対する関税撤廃を延期してくれるなら、日本が農産物への関税を撤廃しないことを認めてよいけれど、どう？」という話があり日本側はそれで手を打ったという。お互いに国内に反対する強力なロビー（日本は農業票、アメリカは自動車産業票）を抱えている日米両政府が、お互いの反対論の頭をなでながら、TPP交渉を進められる一番よい方法―――として、この自動車関税と農産物関税の八百長的バーターで手を打ったという訳だ。
例えば、日本のコメには778％（778％ですぞっ～）の関税がかかっているが、アメリカで生産されジャポニカ米短粒種は全部日本に輸出したとしても年間30万トン、それに対して日本のコメ消費量は800万トンである。一方、現在、アメリカで35％の関税がかけられている日本製のピックアップトラックだが、現地生産がほとんどであり日本からの輸出台数はそれを大幅に下回る。要するに、お互いに「農産物と自動車」のバーターをしたところで大して実害はないという訳だ。
日本のピックアップトラックの関税がゼロになったらアメリカの消費者は喜ぶだろうし、農産物の関税が段階的にでも低くなれば、消費者にとっても朗報のはずだが―――やっぱりそう簡単には「関税撤廃」など実現しないということのようだ。
（03/06/13 9:00pm S.T.）
2013年3月6日
猪瀬知事の英語
いつもしかめっ面（？）をしていてどことなく固い感じのする東京都の猪瀬知事だが、IOC評価委員会の視察団の前でみせたテニスラリーのサプライズ演出や、いかにも「日本人の英語」丸出しの発音でのスピーチなどで見せたオリンピック東京招致にむけた真剣さには好感を持った。（評価委員達がどう思ったかは知らないが）
安倍首相も原稿棒読み風の英語だったけれどスピーチしてみせた上に、歌まで歌うパフォーマンスを見せるなど、前回の招致失敗の時に比べたら今回みせた日本側の「おもてなし」演出は、随分と進化しているように思う。
日本人は英語の読み書きができる人でも会話は苦手という人が多い。実はしゃべれるのに、「発音が下手だから人前でしゃべるのが恥ずかしい！」とばかりあえて人前で英語をしゃべらないという人も多かったけれど、猪瀬さんや安倍さんのように臆せず「日本英語」をしゃべる人が増えてきたことは、日本も徐々に国際化（？）しはじめているのかなぁ～とも思う。
人は10歳の時にしゃべっていた言葉がその人の母語になるという。10歳の時、英語をしゃべっていた人は英語のネイティブスピーカーになるし、東北のズーズー弁をしゃべていた人は、一生その訛りやイントネーションを消すことができない－－－というのだが－－－。確かに、思い当たる節がないではない。
日本人以上に日本の文学に詳しく在日半世紀以上にもなるドナルド･キーンさんにしても、その日本語会話がまちがいなく「外人の日本語」であるのは、やはりキーンさんが10歳の時には日本語をしゃべっていなかったからなのかも知れない。
逆に、海外で見るNHKワールド（NHKの外国向け放送）に出てくる日本人のアナウンサーやタレントの多くが英語のネイティブスピーカーと変わらない見事な発音をしているのは、多分、彼や彼女たちは帰国子女などの「10歳の時に英語環境で暮らした人たち」だからではないかと思う。（中に数人、あきらかに「ああ、間違いなく日本育ち！」と思える出演者もいる）
そうそう、その国の言葉が上手い理由としては、もう一つ「その国のツバを飲んで暮らしたことがある」というちょっと下世話な話もある。その国の異性と一緒に暮らした経験があれば、自然とその国の言葉が上達するというのだ。（但し、中国語や日本語のように、「女ことば」のある国では注意が必要だとか。かつて紅衛兵が暴れていた時代、ある日本人が「お前はその中国語を何処で覚えたのか！けしからん！」と吊るし上げを食ったという話もある。）そういえば、日本人女性と暮らしている外人男性の日本語が妙にオカマっぽいしゃべり方になっている例もよく耳にする。
最近は、石川遼選手やダルビッシュ選手が使っていると宣伝している「スピードラーニング」などという会話上達方もあるようだが、本当に「聞くだけ」で英語がスラスラしゃべれるようになるかの真偽の程は、Novaの例もあるから定かではない。
まあ、そういう点から考えると、どうも猪瀬さんも安倍さんも、10歳の時には英語圏にいなかったし、英語をしゃべる女性との同棲経験もない―――と思われる。スピードラーニングもまだなかった世代だから、おそらく二人とも、中学、高校以来、日本人英語教師の下でまじめに英語を「お勉強」された方なのだろう。
（03/05/13 9:00pm S.T.）
2013年3月5日
捨てる勇気
笹子トンネルの天井板崩落事故で明らかになったのは建設以来半世紀近くになる全国各地のインフラの経年劣化が進んでいるという恐怖の実態だ。
トンネル、橋、一般道路、高速道路、上下水道、ガス管等々、いずれも事故が起きれば多くの人命が失われる可能性が高く又、笹子トンネルの復旧までに2ヶ月を要したように長期に亘る修理復旧の間に失われる経済的損失は莫大なものになるであろう。
昨年、内閣府では、これらインフラの修理、更新にかかる費用は、年額8兆円、50年間で総額400兆円になるという試算も発表されている。アベノミクスとやらの中でぶちあげられている国土強靭化計画なるものでは「今後、10年間で200兆円の公共事業を行なう」となっているのが金額的には昨年の内閣府の試算額とほぼぴったり合致するところからすると、なんとなく、笹子トンネル事故を口実にして役人や政治家が結託しての公共事業利権の復活という臭いがしなくもないが－－－。
もちろん必要なインフラのメンテ、更新は必要であり、それに反対する気はさらさらないけれども、ここで一度立ち止まって考えて欲しいと思うのは、50年前からそれこそキツネやタヌキしか通らない高速道路、一軒の炭焼き小屋しかない山奥に通じる豪華な鉄橋、といった無駄に作ってきたインフラまでもメンテすべきかという問題だ。これからますます少子高齢化が進み人口減少社会となるのだからインフラもそれに合わせて縮小した方がよいのではないか－－－と思うのだが－－－。
白神には、自然環境保護運動の為に中断されて、結局行き止まりになっているスーパー林道があったが、偶に観光客が来るだけの行き止まりの道路でも、舗装やガードレールなどのメンテにかなりの費用がかかるとの話だった。この例のように、「これって一体誰の為にやっているの？」と思うようなメンテは意外と多い。
都市部においても同じようなことがある。列島改造ブームなどで野放図に開発された郊外の工業用地、住宅用地の中には、わずか数軒の建物があるのみ、あるいは空地のままになっているところがたくさんあるが、これらの用地には下水道からガス管まで整備されているところも多い。こういうところに高い費用をかけて整備した、例えば下水道にしても、だれも使わぬままに劣化し、設備更新する必要に迫られるところもあるという。
津波で塩害を受けた農地を除染、徐塩して再び米作をできるようにしようと数千億円が投じられているが、「平均年齢65歳、農業の後継者がいない！」と言っていた話とこの新たに投じられる数千億円の資金との関連性が今一つよくわからない。こういった農地は20年後、一体誰が米作りをしているのだろう。
震災直後にあった、再び津波の危険のある地域には住宅地などにせず、高台などに街ごと移転という話もあったが、この案はなにも震災復興ばかりではなく、過疎化に悩む多くの市町村にまで広げることはできないものだろうか。
郊外に住宅地や集客施設が点在する一方、市街地はシャッター通り、空き家だらけという拡散型の都市をこの際、公共交通機関やインフラの維持コスト低減を考えて、できる限り「集約化」を進めてはどうだろうか。
それにしても、物理学の「エントロピー増大の法則」どおり「あらゆる物は、時間とともに劣化する」ということを、高度経済成長期の日本人は知らなかったのだろうかと不思議に思う。
インフラも農地もそろそろ人口減にあわせて「捨てる勇気」を持つべき時期が来ているような気がする。
（03/04/13 9:00pm S.T.）
2013年3月4日
ベンサムとブキャナン
18世紀の英国の哲学者ジェレミー・ベンサムは人間行動や政治においての正しい行いとはすなわち「最大多数の最大幸福をもたらすものであるべきだ」と説いた。結果的にトータルで社会的にプラスとなるのであればそれは「正しい行い」であるというのだ。（彼の理論によれば、当時タブーとされていた同性愛も、誰に迷惑をかける訳ではないし、当人たちには快楽をもたらすものであるから、最大多数の最大幸福という観点に立てば善である－－という）
ベンサムのこの考え方は「功利主義」と呼ばれているように、神だとか正義といった物指しとして分かり難いものを持ち出すのではなくぶっちゃけた話、どっちが社会全体にとって「得か」でものごとの善悪を決めてしまおうというのだから一見、分かり易そうだし「最大多数の最大幸福」などという理想的とも思えるキャッチフレーズに彩られているだけに人道主義者、民主主義者、あるいは多くの宗教家たちでさえ賛同してやまない理論でもあった。
実際問題、一見対立しているようにさえ見えるアダム・スミスの古典派経済学も、ケインズの近代経済学も、共に経済の基本原動力は「人間の善意」と規定している点で、ベンサムの「最大多数の最大幸福」理論というお釈迦様の掌での争いに過ぎないともいえる。
ところが、1986年にノーベル経済学賞をとったジェームス・ブキャナンが提唱した「公共選択論」は、このベンサム流の楽天的な人間性善説に冷水を浴びせるものであった。すなわちブキャナンは、政治家や公務員を含むあらゆる人間の行動の原理は、「自己利益の最大化」すなわち人間の動物的本能である「欲望」なのだと喝破したのだ。
役人も政治家も表面的には「社会の為」「最大多数の為」といいつつも、結局は自分の地位の確保とその地位から得る権益の最大化を図るのは―――いたし方ないことなのだ―――という、夢も希望もない話なのだが、現実の社会や政治を見た時に、あまりにもこのブキャナン説にぴったりの事柄ばかりが起きていることに人々は気付いてしまった。
人間性善説に基づく経済理論も、ベンサム流の功利主義も、その夢が一旦覚めてしまった後では、もう信じる人は少なくなってしまった―――というのが現在の世界を支配するなんとも淋しい現実である。
例えば、グローバル化を善悪で捉えた場合どうだろうか。今、世界には豊かな国があり一方では貧しい国がある。グローバル化の過程においては、貧しい国が益々貧しくなり、富の更なる偏在が起きるという事態も起きうるが、そのようなことが起きないように調整しながらグローバル化を進める方法はあるはずだし、グローバル化がすすめば、貧しい国の雇用が移転され人々が豊かさを享受できるようになることはあきらかだ。すなわち国境を無くし、貿易の障壁を取り除く方向にすすむことは長い眼でみた「最大多数の細大幸福」への道につながるはずなのだが―――。
しかし、今TPPという自由貿易化への一つのステップを政策課題とするときでさえ、ここで繰り広げられているのは、例えば農業保護政策という利権に守られている人達の「絶対反対論」であり、片や自由化推進によって利得が期待できると考える輸出産業者などの賛成論であるが、いずれにも「最大多数の最大幸福」などという悠長な理想論はかけらもないといってよいだろう。
こうなると、いずれの側の「欲望」をも満足させうる手段に訴えるしかないわけだが―――。TPP参加を進める一方、農業利権者を更に満足させうる「農業者保護策」「所得保障」といったばら撒きを行なうことでいずれの側の「欲望」を満たしてやる以外には政策者の選ぶべき道はない。
悲しいかな日本ほどブキャナンの公共選択理論がぴったり当てはまる国はないとさえ言えるのではないだろうか。
（03/03/13 9:00pm S.T.）
2013年3月1日
外国語がしゃべれたら
海外に行くといつもその国の言葉がしゃべれたらなぁ～と思う。
「おはよう」「こんにちは」「ありがとう」「さようなら」といった程度のほんの一言、二言でもその国の人の言葉で声をかけたときに相手がみせるちょっとした驚きの表情や、その後にみせる嬉しそうな表情は、おおげさに言えば自分が少しだけでも日本人として国際交流の一翼を担ったような気さえするし、逆に日本を訪れている外国人に「オハヨーゴザイマス」等と声をかけられ嬉しくなったりもする。
ほんの一言、二言のあいさつならばその地に数日もいればどうにか使えるようになるけれど、滞在がそれよりも長くなるとか、その地に数ヶ月、数年滞在するとなれば、やはり日常生活を送るのには、その国の言葉がある程度使えるようになりたいものだ。英語があれば、多くの国や地域で現地語がしゃべれなくても不自由しないということもあるけれど、国際会議に出るとか、文学論をその国の人と戦わせようという訳ではない、いわゆる日常においては、やはり片言でもよいから、現地の言葉で話しかけるのと、英語で話しかけるのとでは相手の反応がまるで違う。現地の言葉でのその地の人々との交わりは、すなわちその国の文化に触れたのと同じような意味合いを持つようにさえ思える。
随分、昔の話だけれどポルトガルを旅行していた時、一日現地のタクシーをチャーターしたことがあった。観光タクシーをチャーターした訳ではなく、現地のホテルで客待ちをしていたタクシーを交渉して雇ったのだが、その運転手さんは、英語が全くダメだった。(ポルトガルでは、他のヨーロッパ各国ほどには英語が中々通じない)
こちらのポルトガル語も、にわか仕込みの「促成ポルトガル日常会話」程度のものだったので最初の内はこちらももの凄く不安で、中々意思疎通もできなかったけれど、そこはそれお互いが「会話が成立しないとどうしようもない」という状況に追い込まれているだけに、地図や観光案内パンフレットを見ながらの身振り手振りをやっている内に、不思議と会話が成り立つようになってきた。
午前中はリスボンの市内観光、午後は、その運転手さんが、お勧めの郊外にある中世の城や教会、さらにはローマ時代の遺跡にまで連れて行ってくれた。そればかりではなく運転手さんから「ポルトガルは中世から優秀な人材ほど海外に出ていってしまい、今残っているのは海外に出ていく能力のない奴の子孫ばかりだ」とか、「ポルトガルとスペインは、昔から何度もとったりとられたりをくり返してきたので仲が悪い」などという旅行ガイドには絶対にのっていないようなトレビアまで教わり（ウソかホントかはさだかではないが）、最後にはリスボンで運転手さんのなじみのバル（バー）まで教えてもらった。このバルには当日だったか、翌日でかけてみたが観光客などほとんどいない地元の人たちの憩いのバルのようで料金も安くて最高の雰囲気だったことを思い出す。あの日の観光こそが、ポルトガルでの最高の思い出だ。それも、これもやはりあの時、片言のポルトガル語で運転手さんと「友達」になれたからだ。
サッカーや野球などで外国人の選手や監督、コーチが多く来日しているけれど、日本語で意思疎通をしようとしないパートタイマー気分の連中の成績は今一だけれども、白鵬やDeNAのラミレスなどのように日本語を使いこなしている外国人の成績がよいのは、やはり「言葉の力」がかなりあるようにも思うのだが。
（02/28/13 9:00pm S.T.）
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