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2015年4月
＜＜4月タイトル＞
04/28 小さいことからコツコツと 04/27 民生用と軍事用 04/24 一帯一路 04/23 大丈夫か？ 04/22 日本人はまじめ 04/21
ヒラリー 04/20 笑って済ませろ 04/17 自由と自由の争い 04/16 AIIBへのスタンス 04/15 外国人観光客専用 04/14
インターナショナルスクール 04/13 うまい話 04/10 神の怒りは 04/09 LCCは伸びるか 04/08 もっとも卑劣な犯罪 04/07
大使呼びつけ 04/06 インチキ診断書 04/03 介護で儲ける 04/02 明治翻訳語 04/01 逆噴射を思い出す
2015年4月28日
小さいことからコツコツと
8000メートル級の山々が連なるヒマラヤ山脈は、北上を続けるインド・オーストラリアプレートがユーラシアプレートとぶつかって長い時間をかけてできたいわばヒダのようなものだ。(ヒマラヤ造山運動という)
インド・オーストラリアプレートの北上速度は年間67
mmであり、この巨大な圧力の内、年間20 mm分は、ヒマラヤの南の正面を圧縮によって吸収され、その横方向に加えられた圧力の一部は、ヒマラヤ山脈は今も年間5
mmずつ上方向に押し上げている。
3000人近い死者を出した、ネパールの首都カトマンズの北西77キロを震源とするマグニチュード7.8の巨大地震は、このプレート同士の押し合いに起因するヒマラヤ造山運動のひずみによって起こったもので、東日本大震災と同じいわゆる「プレート境界型地震」といわれるものだ。
4万キロある地球の円周から見れば、インド・オーストラリアプレートの移動距離年間67mmとか、8000メートル級のヒマラヤ山脈が年間5
mmずつ高くなっているといっても、余りにわずかなものではないかとも思うが、1000年でそれぞれ「大陸が67メートル北上した」、あるいは「エベレストが5メートル高くなった」となると確かに、大変な地殻変動だ！という気がする。（記録が残る人類の歴史は、せいぜい5000年だが、例えばピラミッドが建設されていた頃、インド大陸は今より300メートル以上南にあったとか、エベレストは今より25メートルも低かったと想像すると、その力の巨大さに圧倒されてしまう）
そういえば、毎年、春と秋にヒマラヤの8000メートルの高さを超えて渡りをするアネハヅルの優れた飛行能力は、一体どうして備わったのか？を何かの本で読んだことがあるが、それによると、アネハヅルの祖先は、まだヒマラヤ山脈ができる前から、蒙古側からシベリアへの渡りをしていたが、ヒマラヤ山脈が徐々に高さを増すにつれてその障害を飛び越えるように進化を続け、遂には現在のように8000メートルを越えて渡りをするようになったのだという。すなわち、今から150万年程前には、ヒマラヤ山脈は無く（あってもせいぜい小高い丘位だった）アネハヅルも平原を低空で飛ぶにすぎなかったが、そのころからアネハヅルは、「小さいことからコツコツと」(西川きよし)を数百万年続け、遂には8000メートルの山脈を飛び越える能力を身につけたというのだから、確かに凄い。
ネパール地震の報を聞き、悠久の時間の中で蓄積される地球の余りに驚異的な力と、生命進化の驚異にあらためて圧倒された次第だ。
(04/27/15
10:00pm)
2015年4月27日
民生用と軍事用
イラン・イラク戦争時、日本のブルドーザとピックアップトラックが中東によく売れていた。何で、何千台、何万台単位で売れるのかといえばこれらが軍事転用されていたからだという話は、武器輸出三原則を掲げていた日本にとってはある意味、タブーといってよいものだった。
ブルドーザは、鋼鉄製のブレードを立てて横一列にならべて弾除けとし、そのブルドーザの後から部隊が進撃することで、敵の防御網を突破するという作戦に使われたし、ピックアップトラックは、その荷台に軽機関銃を載せて疾走させれば、機動力抜群の小型攻撃型戦車として使える。（いまも中東ではこうやって使われている）
高性能で価格も安い、日本のブルドーザやピックアップトラックは、民間平和利用目的として輸出契約されている。（もし「軍事目的」であると申告されれば、日本政府は輸出許可を出さないし、メーカーも契約には応じる訳もないの－－－）
かつて、日本製の金属研磨機が、ソ連で潜水艦のスクリュー制作に使われていて問題になったこともあったし、魚群探知機や遠心分離機が同じく外国では軍事転用されていた例もあるように、我々が使っているごくありふれた機器にしても、使い方次第で軍用になってしまうこともある。（その逆に、コンピューターやインターネットのように軍事用に開発されたものが、民生用として大きく普及した技術も多いが）
人工衛星を飛ばすロケット技術は、ロケットの頭に核を載せればこれは核ミサイルであり、気象衛星といいながら、その衛星から敵国の軍事施設などの偵察をおこなえば、それはまさに軍事スパイ衛星となる。
軍事と民生用の境目なんて、その最終用途次第でどうにでもなってしまうものなのだ。
先週、首相官邸の屋上で、小型無人飛行機ドローンが発見された。逮捕された犯人によれば、実際に飛ばしたのは4月9日だったというから、官邸の屋上に2週間もあった訳で、まして、このドローンには放射性物質が仕込まれていたというのだから、官邸をはじめ主要省庁のセキュリティーは一体どうなっているのか！という非難の声が殺到するのも当然だ。（まあ、なんのいい訳にもならないが、ホワイトハウスにも、あるいはドイツの首相府にも同じように、ドローンが墜落していることを考えれば、日本の公安だけが、メチャダメという訳でもないようだ）
ドローンはインターネットのショッピングサイトを見れば官邸に落ちたのと同じ型の物が、10万円ちょっとで買える。もっと小型のものなら数千円の物もあり、竹とんぼ並のおもちゃ扱いだが、いずれも「空中撮影など色々な用途に使えます！」と書いてある。民生用の汎用品として売り出されているが、これも使い方一つではテロ攻撃、あるいは軍事攻撃に使えることが、実証されたこと訳で、「プアマンズ、ウェポン」（貧乏人の兵器）と言えるかもしれない。
折から、完全自動運転の車の開発も進んでいると聞けば、将来、便利になるなぁ〜と楽しみにもなるけれど、この車に爆弾やサリンを積んでテロ攻撃を仕掛けよう、等と考える不届き者も出て来はしないかと心配にもなる。
便利な世の中になればなるほど、心配事も増えるということなのだろうか。
(04/26/15 10:00pm)
2015年4月24日
一帯一路
「全ての道はローマに通ず」という言葉は、「目的を達するための方法は幾通りもある」という意味で使われることが多いが、元々は、あの繁栄を誇ったローマ帝国が世界を支配していたことに因んで作られた言葉だ。
AIIB（アジアインフラ投資銀行）を強力に推し進めようとしている習近平が、このAIIBによって何を成し遂げようとしているかという構想の中で掲げている「一帯一路」とは、「全ての道はローマに通ず」の中国版と言ってよいだろう。
今年3月「人民日報」は、習近平による「一帯一路」構想とは、中国主導により、中国から中央アジアを経て欧州に達する「シルクロード経済ベルト」と、中国沿岸部から東南アジア、南アジア、中東・東アフリカを経て欧州に至る「２１世紀海上シルクロード」を整備することであると公表した。この構想実現の為のツールとして中国にとって都合のよい銀行というか金庫こそがAIIBだ。
欧州から中央アジアに至るユーラシア大陸の内陸部と、東南アジアから南アジア、中東、アフリカに至る海洋国群といえばまさに、ユーラシア大陸とアフリカ大陸、そして太平洋と大西洋の大半を中国を盟主といただく属国群にしてしまうという構想こそ、「一帯一路」であり、その本当の意味は、中華帝国世界支配の下、「全ての道は、北京に通ず」を実現するということなのだ。
日本と米国を除くG7の国々をはじめ、この中華帝国構の属国」になるであろう50数か国が、AIIBに参加を表明しているのは、今参加しておかないと、将来、中華帝国が成立した場合、「いじめられそう」という恐怖感からなのだろう。
日本とアメリカは、いまのところ、AIIBの運営に不透明性が懸念されること等を挙げて参加していないのに対して、中国は自分達が、AIIBを恣意的に運営することはないと言っているが、自分の気にいらない、台湾や香港の参加を拒否するなど、発足前から、AIIB運営における独裁色を出していることを思えば、日本がこんな信用のならない、私的な頼母子講のようなAIIBに参加しないという決断は、正解だと思う。
いやいや、「一帯一路」は、大経済圏を作って世界経済を更に発展させようという中国の夢を語ったものであり、参加しないのは、殊更中国との対立を計ろうとする反動勢力の策謀だ等という批判もあるが、折から三原じゅん子参議院議員が国会質問で持ち出した「八紘一宇」というスローガンの元々の意味は、「世界の人々は、皆一つ屋根の下にいる仲間である」という意味であるにもかかわらず、戦時中には日本の戦争へのスローガンになってしまったのと同じで、やはり、スローガンは美しくとも、そこに秘められた裏の意図を汲み取ることが必要だ。
(04/23/15
10:00pm)
2015年4月23日
大丈夫か？
実験中の日本のリニアが、鉄道の世界最高速度となる時速603キロを記録した。2027年のリニア中央新幹線の開業に向けて又一歩あらたな段階に入ったといえる。
日本の新幹線は、現在は営業速度200キロ以上（Max300キロ）でありながら、通勤電車並の3-5分間隔での運転で遅れを出さないという驚異的な運行をつづけているが、これに更に世界最高速のリニアが加わることで、日本の技術が世界各地で更に引っ張りだこになると期待されている。
確かに、新幹線技術において、早さ、正確さ、は大きな魅力だが、なんといっても日本が世界に誇るのはその「安全性」である。
新幹線は営業開始から50年を迎えたが、乗客の死亡事故ゼロという記録を打ち立てている。世界各国は、それぞれ高速鉄道技術を誇るが、日本の新幹線の安全性は群をぬいている。（中国の新幹線では、大きな事故をおこしながら、事故を隠蔽しようと事故車両を埋めてしまった等というとんでもないことがあったことの記憶も新しい）
リニア実験線もその実験走行をはじめてから既に20年を経過、さらに、今後12年をかけて安全性の確認作業を進めるというから、新幹線一家の技術陣が安全にかける努力は並大抵のものではない。
そんな、安全にかける日本からみると、本当に大丈夫かなぁ〜と思わせる韓国の新幹線に関する記事が新聞に載っていた。
韓国の新幹線（KTX）は、日本のリニアが達成した最高時速とおなじ時速600キロを実現させるという計画を発表し、その第一段階として、ソウル・釜山間を時速370キロで走らせるという実験に着手したというのだ。しかし、いかに実験とは言え、新幹線を従来線の線路で走らせるという大胆な話は、いってみれば、新幹線「はやぶさ」を旧東海道線で走らせるようなもので、よくもそんな無茶な実験が許可されたものだとびっくりした。
リニアの場合、実験線を一から作り30年以上かけて安全性を確認している日本と、従来線の線路でいきなり時速370キロに挑戦させてしまう韓国とでは、「安全」へのスタンスがあまりに違うと思ったからだ。
11月に行われたこの第一回の実験走行では、平均速度は２１９キロに留まったというが、なにはともあれ無事故で終わったというのは何よりだ。
そういえば、この韓国の新幹線、07年には高速鉄道車両として世界初の正面衝突事故を起こしているし、昨年は三重衝突事故を起こしている。老婆心ながらいわせて貰えば、スピード記録を目指す前に、「安全」に対する心構えについて一から考え直すべきではないかとも思う。
そんな最中、昨日の新聞には、龍山発光州行きの韓国新幹線(KTX)で、先頭車両のウォッシャー液の注入口の蓋が閉まらなくなり、なんと、粘着テープを蓋に貼って走行する姿がのっていた。
安全を無視した改造や過積載などで大惨事を起こしたセオウル号の例をみても、このガムテイプで補修して走る新幹線にしても、なんとも不安にかられる韓国の交通機関である。本当に大丈夫か？
(04/22/15 10:00pm)
2015年4月22日
日本人はまじめ
大震災で、市の面積の7割以上が液状化被害に見舞われたタカさんの街だが、震災発生から4年が過ぎ、今年の3月末で市内のあらかたの道路復旧工事が終わった。
幹線道路からタカさんの町内の住宅道路のようなところまで、液状化被害の大小にかかわらず、上下水道やガス管工事なども含めて全部やり直したのではないかという位に、徹底した復旧工事を行ったようで震災の傷跡（モニュメントとして残してある一部を除けば）をうかがわせるものはなくなり、街は、以前よりもずっと綺麗になった。
タカさんの町内も、この3月まで徹底的な道路工事が行われていた。湾岸の埋め立て地に開発された住宅街ということもあって、道路は碁盤の目になっているが、その住宅道路を全て付け替えるように掘り返すという工事だけに、相当の費用もかかったのではないかと思うが、なによりも感心したのはその工事の進め方の手際のよさだった。
碁盤の目の道路に沿って住宅があり多くの住民が住んでいるのだから、住民の日々の生活に支障がないように工事を進めるのは随分と難しい作業だったとおもう。
家の前の道路を掘り返されて人も車も出入りができないということになっては困るとなれば、重機が入っている間の仮通路や仮駐車場が必要になるし、工事していない夜間は、毎日、工事個所を一旦覆工板などで蓋をしておく必要がある等々、タカさんは土木の専門家ではないが、想像するだに大変な手間のかかる仕事であった。
そんな複雑な工事が、ワンブロックの道路をせいぜい1週間か10日位で、掘り返し下水道を付け替え、きれいに舗装しなおして―――工事完了にもっていったのだから、かつてシカゴの家の前の道路工事（何の工事をやっていたのかもよく分からなかったが）で、掘り返されたまま半年以上そのままだったのとのあまりの違いに驚いた。
それと道路工事を見ていてもう一つ改めて感心したことがある。それは、日本人が実にまじめに働くということだ。例えば、まず古い道路コンクリート舗装をはがすという工事にしても削岩機の操作をする人と、その剥がしコンクリート片を重機で掬いとりダンプに積み込む人などの数人の連携が必要だが、その連携が見ているだけでも胸のすくように実に見事なのだ。さらには、下水道の付け替え、土砂を入れて、地盤固め、アスファルトやコンクリートを流しての再舗装―――と、大変な作業量だ。
そんな作業が進める一方で仮通路を通ろうとする歩行者の誘導、歩行者が来ていることを作業中の重機に知らせる等の誘導員も、工事作業員達と実によく連携している。
しかも、年配の誘導員のおじさん達も、歩行者が来ない時には、道路の周辺に散らかった小石などを掃き集めるなどの作業をしているではないか。要は、工事に携わっている人たちが、誰一人としてサボっていないのだ。こんな工事現場は日本以外ではみたことはない。海外では工事現場に十人いれば、その大半は何もしないで見ているか、サボっている（ように見える）。
思い出してみると、小さい頃から道路工事や、建築現場を覗くのが好きだったのは、この外国にはない日本ならではの、効率的でスピーディーな現場作業の小気味のよさに、快感をえていたからかもしれない。
震災から4年が過ぎて、まだまだ復興には遠いといわれている所も多いとも聞くが、なあに、日本人がやるのだから、もうそんなに時間はかからないで復興する！と思う。
(04/21/15 10:00pm)
2015年4月21日
ヒラリー
ヒラリー・クリントンが来年2016年の大統領選挙への立候補の意思を表明した。
夫のビル・クリントンがジョン・F・ケネディーに次ぐ二番目の若さでアメリカ大統領に就任したのは彼が46歳の時だったが、ビルと同い年のヒラリーが来年、もし大統領選に勝利して第45代大統領に就任するとすれば、ドナルド・レーガン（69歳349日）に次ぐ2番目の年長大統領ということになるという。
ビル・クリントンが大統領になった年、タカさんはアメリカにいたが、自分と同い年の大統領誕生と聞いてなんだか元気になったものだったが、今度は、同い年のヒラリーが、歴代2番目の年寄り大統領になるかも！などと聞くと、ちょっと複雑な思いにもかられる。
そういえば、思い出すのは93年に、ファーストレディー（大統領夫人）となって夫を影で支えるものだと皆が思っていたヒラリーが、ビルの要請もあって政権の中枢に入って保険改革などを陣頭指揮したのには当時、アメリカでは随分と驚かれたことを思い出す。当時既に、全米を代表する有能弁護士として活躍していたヒラリーだっただけに、夫のビル・クリントンよりも優秀だとの評判もあり、大統領の名前は‘ビラリー・クリントン’等ともいわれたものだ。
かつて、イギリスのサッチャー首相が、「料理や育児や掃除だけじゃなく、人生にはもっと大切なことがある。私は食器を洗って一生を送りたくない」と言ってフォークランド紛争の陣頭指揮をとって喝采を浴びたことを真似たからだろうか、ヒラリーも政権中枢入りする際に「わたしは家庭にいてクッキーを焼くような女性にはなりたくない」と言って、サッチャーとは正反対に、全米の主婦層から「エリートを鼻にかけて、専業主婦や母親を侮辱している」と猛反発を喰ったこともあった。
08年の大統領選にも立候補したヒラリーだったが、あの時は民主党の予備選でオバマに敗退したのも、93年のあの「クッキーを焼くような女性にはなりたくない」発言が響いたともいわれた。どこの国でも「政治家は、女性の反発を喰うと致命傷になる」ということと、「女性政治家の敵は女性」というのは本当なのかもしれない。
但し、今回は（まだ1年半も先のことだが）今のところ、世論調査では、民主党支持層の6割以上の支持を集めていて、二番手以降に大きく差をつけているというから、共和党の候補次第（今のところ、41代大統領の次男で、43代大統領の弟であるジェフ・ブッシュが最有力といわれるが、本命不在ともいわれている）とはいうものの順調にいけば、アメリカで初めての女性大統領が誕生する可能性がかなり高いともいわれているようだ。
中東政策、ISISの台頭、あるいは中国のアジア進出を許すなど、外交面での失政続きのオバマ政権だが、オバマの中東政策（特にシリア侵攻をためらったこと）などを批判して国務長官を辞任したヒラリーには、共和党の一部からも支持があるというから、今の、アメリカはオバマの優柔不断さにイラつき、この際敏腕で、クッキーを焼くことには飽き足らない強い女に期待する-――ようになっているのかもしれない。
これからの1年半、彼女の動静からは目が離せない。
(04/20/15 10:00pm)
2015年4月20日
笑って済ませろ
厳粛なるアメリカ上院の財政政策委員会公聴会の場で、真剣な討議が行われている最中、質問中の議員のケイタイ着信音が突然鳴りだした。その曲は、なんともその場にはそぐわない（まあ、どんな曲でも上院での審議の場ではそぐわないだろうが）あの「アナと雪の女王」の主題歌「レット・イット・ゴー ～ありのままに～」だった。
議場は一瞬凍り付き、着信音を鳴らしてしまったパット・ロバーツ上院議員は、慌てて着信音をOFFにした慌てぶりに、質問に答えていた農務長官も思わず苦笑、ロバーツ議員は、Just Let it go!(気にしないで下さい)と言って切り抜けたという。
「上院で起きたハプニング映像」としてのこの場面をテレビニュースで見て思わず笑ってしまったが、これが日本の国会で起きたら一体どうなっていただろうかと思った。多分、ロバーツ上院議員は何らかの懲罰を受け、場合によっては上院財政委員会メンバーからの辞任を求められことになるかもしれないし、マスコミはここぞとばかりロバーツ上院議員が「議会を冒涜している！」等と嵩にかかって批判を始めるかもしれない。まあとても、「笑って済ませる」等という決着にはならなかったのではないかと思ったのだ。
というのも、先月末、参議院の外交防衛委員会理事懇談会に片山さつき委員長が２分間遅刻した事に、野党側がいきり立ち、委員長の交代要求を出すなどして混乱、翌日に予定されていた委員会審議がキャンセルされる大事になったことを思い出したからだ。
「参議院外交防衛委員会理事」の肩書をもっておられる議員先生方にしてみれば、「委員長に2分間！も待たされた」ということは、自分たちがコケにされたようでプライドが傷き激怒したのかもしれないが、片山さんの遅刻の理由が、外務省の依頼を受けて、外交防衛委員長として出席していたEU関係者との面会が長引き、連絡ミスなどもあって、切り上げられなかった為だというし、しかも遅れたといってもわずか２分であることを考えると、果たして野党理事たちが息巻いて翌日の正式な委員会開催まで吹っ飛ばしてしまうほどのことだっただろうかと思う。
外国からの賓客との公的な面談が長引いてしまった時に、相手に対して失礼にならないように、即座に面談を打ち切って懇談会に駆けつけるのは中々大変だっただろうと、片山議員の遅刻にはいささか同情の余地はあると思うし、本人が平身低頭して謝っているというならば、それこそアメリカ上院公聴会での「苦笑」程度で済ませJust
Let it go!という訳にはいかなかったのだろうか。2分間の遅刻がけしからんといって、翌日の正式な外交防衛委員会の審議会を丸々キャンセルしてしまったことは、税金の無駄遣いとしてけしからぬことではないのだろうか。
そもそも参議院の委員会、いや参議院そのものが、ちゃんとまともな仕事をしているのならともかく、例えば参議院の予算委員会では5W1Hのない質問を繰り返し首相に「何を言っておられるのか意味がよくわかりませんが」といわれた民主党の田中直紀議員や、「元気ですかっ！」とお決まりのセリフがいいたかっただけのアントニオ猪木議員などで全く無駄としか言いようのない時間と金が浪費されている中で、要職についた女性議員に対するやっかみからか、あるいは女性委員長に対する、いじめか嫌がらせの目的としかおもえない「2分間遅刻問題」で翌日の委員会審議を吹っ飛ばしてしまった野党にこそ、国民に対して謝って欲しい気持ちだ。
(04/20/15 10:00pm)
2015年4月17日
自由と自由の争い
歴史上起きた多くの市民革命といわれるもので人々が求めたものは「自由」であった。
そういう意味では多くの血が自由の為に流され、その血の代償として人々が得たものこそ「自由」であったということもできる。そうやって、やっと手にした「自由」の中でも、最重要なものの一つが「信教の自由（宗教の自由）」である。
ただ、宗教そのものが教義や戒律によって人々を束縛し「自由の阻害要因」という一面をもっているから、人々が求めた広い意味での「自由」と「信教の自由」の間で齟齬、葛藤が起きるということはよくある。
例えばイスラム法では棄教を禁じている。他宗教からイスラムに改宗することは奨励されているが、逆にイスラム教徒が他宗教に改宗する（イスラムを棄教する）場合は、これを厳しく罰する戒律があり、いくつかのイスラム国は現にこれを罰する法律も存在する。（実際、ISISやボコハラムなどでは棄教者のみならず異教徒を殺すことは、神の意思に従うこととしてむしろ奨励されている）
すなわち、これらの国のイスラム教徒には近代の人権社会では当然みとめられている「信教の自由」は無いし、イスラムのみならず、ユダヤ教やキリスト教などの他の一神教でもその原理的な教えは、教徒の棄教すなわち信教の自由を許してはいない。（現実的な罰則はないにせよ、原理主義的な傾向の強い狭い宗教コミュニティーの中では、棄教者や異教徒が、生活していくことは極めて難しいだろう）
アメリカのインディアナ州で先月「宗教の自由回復法」が成立した。この法成立に動いたのは、アメリカで進む同性愛者に対する差別撤廃の動きに反発する保守層を形成するキリスト教徒たちだ。
キリスト教では同性愛を禁じている。しかし、彼等に言わせれば最近アメリカ社会では、「神の教えに背く同性愛者」を奨励するかのように同性愛差別を禁じる法律や、彼等を侮蔑する言動を禁じる法律が次々と成立しており、あまつさえ自分達が払った税金が、同性愛者保護の為に使われており、それはすなわち自分達の「信教の自由」が侵されていることに他ならないという訳だ。「宗教の自由回復法」は、かれら宗教が教える「同性愛撲滅！」を叫ぶ自由を回復するための法律だ、というのだ。
一方、このインディアナ州の法律には同性愛者の権利を求める多くの人権派リベラルが激怒しておりインディアナから本社機能を撤退させる企業が続出しているとか。
同州では、以前、ヤギを生贄として備えるために住宅街で殺すことを禁じる法律は、かれらの「宗教の自由」の侵害にあたると訴えた裁判があり、この「ヤギの生贄」の権利は、実際裁判で争われ勝訴している。しかし、ヤギの生贄屠畜には、動物愛護運動の連中は黙っていない。まさに、自由と自由の訴訟合戦の様相を呈している。
同性愛者同士の結婚が認められる方向になっていることに対しては、理解する声も多くなっているアメリカだが、さてその同性愛カップルが養子を育てる権利については、「そんな異常なカップルの下で育った子供はどうなるのだ！」という保守派と、同性愛カップルにもノーマルな異性同士のカップルと同じように子供を育てる「自由」があるはずだとするリベラルの間で喧々諤々の争いが起きている。
そういう意味では、世界からは「宗教的に緩すぎ」などといわれる現代の日本こそが、「信教の自由」がもっとも達成されている国ということができるようにも思う。
(04/16/15
10:00pm)
2015年4月16日
AIIBへのスタンス
ブスで性格も悪い女に、からかい半分で交際を申し込んだもて男が「私の趣味じゃないから！」と思いっきりフラれたような物ではないかと思わず笑ってしまった。
中国主導で設立準備中のアジアインフラ投資銀行（AIIB）に参加申請した台湾が、中国から創設メンバー入りを断られたという話である。
アメリカに対抗する覇権を求めるという意図の下に中国が進めているAIIBへの参加申請については、台湾では学生などを中心にして「将来的に台湾の民意が、中国によって踏みにじられる可能性が高い」と反対論が激しいが、中国寄りというよりは媚中政策を強行する馬英九総統は、民意を無視し申し込んだ。
台湾にとっての元親分の米国の頼りなさが目立つ昨今だけに、新興の親分が回してきた奉加帳に名前を入れておこうとしたら断わられたとなると、元の親分の機嫌は損ねるは、すり寄った新興親分には恥をかかせられるはで、馬英九のメンツも台湾の実利も、ハチャメチャだ。
イギリス、ドイツ、フランスといった欧州のアメリカの同盟国たちまで、AIIBになびいている中で、昔からの親分米国に義理立てしてAIIB参加を見送ったのは、G7メンバーでは日本だけであり、そんな政府の決定には、日本国内からでさえ「参加すべきだった」という批判もあるけれど、中国の台湾に対するこういった冷たい仕打ちをみれば、やっぱり「参加する」といった形の媚を売らないでおいて良かったと政府は胸をなでおろしているのではないだろうか。
中国と米国を両てんびんにかけて上手く立ち回ろうとした韓国も、AIIB参加申し込みをしたことで、これからはアメリカからはそれなりに厳しい仕打ちをされる可能性がある上に、台湾に対する中国の仕打ちをみれば、これまた中国からも、決してよい待遇を受けられるとも思えなくなってきたわけで、色々悩ましいのではないだろうか。
AIIBは、米国が主導する世銀体制に対抗するものだという呼び声が高いようだが、その資本金は500億ドルと世銀の2232億ドルの1/4以下に過ぎないし、常任理事会も置かないというから、融資決定の過程は極めて不透明なままだ。
となれば、AIIBとは言ってみれば、中国という田舎のお金持ちが作った個人の信用金庫のようなものであり、融資基準も不透明（おそらく、理事長の中国の独断で融資先や融資額の決定がなされるのだろう）となれば、さしあたっては参加しないで様子見をするという日本の決定は、間違ってはいないといってよいだろう。
もし将来、AIIBが透明性を増し運営が軌道に乗ったとなり親分アメリカまでもが参加しそうだとなったら、あらためて参加の可否を考える---そんなスタンスでよいと思う。
(04/15/15 10:00pm)
2015年4月15日
外国人観光客専用
世界各地からスイスを訪れる観光客は多い。ヨーロッパの中央に位置する人口800万人の小国だが、観光客数は毎年人口を上回る900万人にも上る。
人口より多い観光客が訪れるということは、日本に引き直せば、毎年1億3千万人以上の外国人観光客が訪れているのと同じだ。
人口の1/13の年間1000万人の外国人観光客が訪れただけで―――特に中国人観光客の爆買いツアーやら爆花見ツアーに―――喜んだり、戸惑ったりと大騒ぎしている日本人からみると、スイスの住民は、押し寄せる観光客と自分達の生活を一体どのように折り合わせているのだろうかとちょっと参考にしたくなる。
エジプト駐在立った時、夏休み休暇を使ってスイス旅行をしたことがある。首都であるベルンを訪れたが、観光のベストシーズンでもあったから、世界遺産にもなっているベルンの旧市街は、スイス人の何倍もの外国人観光客でごったがえしていた。
11世紀から続く、美しい山々に囲まれた中世からの「古都」の佇まいはまるでおとぎの国でもあるようだし、歴史を感じさせる教会や時計塔は素晴らしかった。
夜のベルンの街も、ライトアップして美しいと聞いていたので夕食後に出かけてみた。昼に散策した表通りの店を覗き、ライトアップした時計塔や噴水を見て回った後、ちょっと表通りから入った小道の方はどうなっているのかと思い足を向けたのだが、小道という小道はすべて柵によって通行止めとなっておりどこの柵にも「住民以外立ち入り禁止」と書いてあるではないか。
表通りだけは外国人に開放されているが、それ以外の地域はすべて住民の静かな暮らしを守るために観光客シャットアウトになっているのだ。なるほどこれならば、人口とほぼ同数の観光客が訪れても住民の日常生活が乱されることはない。
この観光地区と住民地区の完全な分離措置は、ある意味では外国人差別ともとれなくはないが、観光客にとっては、スイスの美しい山々と、美しい中世からの歴史的建物などを思い存分に楽しめればよい訳だし、スイス人にとっては大きな観光収入が稼げるのだから、この分離策は、両者にとってメリットのある対策だと思ったものだ。
今年の花見では、昨年まではほとんど見かけなかった外国人花見客が目立った。いわゆる「爆花見」といわれる中国からの観光客がこれだけ増えると、あの靖国神社や、千鳥ヶ淵の花見の雰囲気も昨年までのものと随分違ってみえたし、春節時の銀座も、なんだか外国人の爆買いツアーに占領されたような感じでどうにも落ち着かなかったことを考えると、あのベルンで見たそれとはない分離策は、急激に増えた外国人観光客にまだ十分慣れていない日本人と外国人観光客両方にとっても使えるような気がしないではない。
今月、秋葉原に外国人観光客用の全館免税店ばかりというビルがオープンした。この他にもロッテなどが、免税専門ビルを続々と開店予定というから、来年からは銀座のデパートでの「爆買い」は少し減るかもしれない。
日本人にとっても、日本を訪れてくれる外国人観光客にとってもこの種の、観光客専用施設の建設は、悪い話ではないように思うがどうだろう。
(04/14/15 10:00pm)
2015年4月14日
インターナショナルスクール
学習指導要領の改訂作業が進められており、これによると小学校では、5・6年生から年間36時間の英語教育が取り入れられることになるという。かつては中学からだったものが2年も繰り上げられるとなれば、日本人の英語力のレベルアップがいくらかでも図れることになるのだろうか。
今年小学校に入学した孫娘は、2歳の時から英語を習いに行っていた（行かされていた）ように、確かに今、世の中の英語教育熱は、随分と盛り上がっているようだ。
中には、外国人の子弟が通ういわゆるインターナショナルスクールに子弟を通わせて英語力をつけさせようとする日本人もいる。実際、文科省が各種学校として認可している英語系のインターナショナルスクール26校の幼稚園、小中高生徒総数の36％（約3400人は）は日本人の子弟だというから、年間200万円以上といわれる授業料を考えるとその英語熱は大変なものだ。
インターナショナルスクールはあくまでも各種学校の一つである為に、日本では、インターナショナルの小学校、中学校、あるいは高校を卒業しても教育基本法が定める日本の教育過程を終了したことにはならないという点には留意する必要がある。例えば、インターナショナルの中学を卒業しても、日本の公立高校の受験資格はないという問題があり（私立の高校で受け入れるところはあるらしいが）、その子供が、卒業後、生活拠点を日本に置こうとすると、色々な不便もあるということは知っておくべきだとも聞く。
国際化が叫ばれ、「国際化、即英語力」と考えがちな親たちにとっては、それでも、子供の内から英語に慣れさせておけば何かと役立つはずと考え、高い授業料も、あるいは日本の学校の卒業資格がないことも（高校位からアメリカに留学させるなどの方法もある）さほど気にならないということもあるようだが―――。（芸能人などの場合、「子供をインターナショナルに通わせている」という、セレブっぽさが虚栄心をくすぐるといった効果もあるようだが）
ただ、ここでちょっと思い出すのが、かつてロスに駐在していた時代、多くの日本人留学生が英語の勉強の為にロスに来ていて、こういった日本からの留学生を受け入れる現地の高校や短大があったけれど、そういった学校ではあまりに日本人が多くて、結局、英語は全く身につかないは、日本の教育を受けていないから日本人としての常識にちょっと欠けている－－－といった中途半端な学生が一杯いたことだ。
日本のインターナショナルには36％もの日本人生徒がいて、学校での友達は結局日本人同士ということになってしまい、家に帰れば日本人の親と日本語で話をして―――という環境は、ロスの日本人専門受入校とあまりかわらない環境なのではないか―――ちゃんとした国際人が育つだろうかという懸念がふっと頭をよぎる。
父親の海外勤務に帯同して何年か海外で過ごした、いわゆる帰国子女たちの中には、英語はネイティブ並だが、日本人ならば常識ともいえる諺や、歴史上の人物や地理などの常識に欠けていて日本社会では結構苦労しているといった例もあるとか――。
これから英語熱が益々高くなっていく日本で、孫娘の英語力と日本人としての教養の両方を、娘夫婦はどうやってつけさせていくつもりなのだろうかと、祖父であるタカさんとしてはちょっとやきもきしている。
(04/13/15 10:00pm)
2015年4月13日
うまい話
九州大学のグループが、線虫がガン患者の尿に集まり、逆に健康な人の尿は避ける反応を示すことを発見し、米科学誌に、この研究グループが、線虫を使ったガンの簡易検査法の実用化を目指すことが掲載されたという。
研究グループが実際にこの線虫による検査を実施したのは、ガン患者24人、健康な人218人の総数242人であり、ガン患者23人（95.8％）、健康な人207人(95％)から、この「線虫が尿に集まればガン、避ければ健康」という結果が得られたという。
医学研究について詳しい訳ではないが、増やすことが簡単で費用もさしてかからない線虫を使うだけで、95％もの確度で「ガンか、ガンでないか」が分かるし、しかも検査費用が一回わずか数百円でできるとなれば、確かにこれはガン治療に於ける革命的な発見といえるのかもしれない。
いまのところこの線虫検査は、「ガンかガンでないかが分かる」というレベルであり、どこの部位がガンなのか（肝臓か、腎臓か、といった）については分からないために、即実用というところまでは来ていないらしいが、素人考えでは、何しろあれこれと時間と費用のかかる精密検査をするかしないかの入り口の検査法としては、線虫と患者の尿さえあれば出来るというこの方法は、患者の苦痛はほぼゼロだし、夢のような検査方法としてすぐにでも取り入れてもよいようにも思う。
又、将来的にはガン毎にその臭いを好む線虫を特定できるようになる可能性があるともいうから（既に、大腸がんの臭いを好む線虫というのが特定されているとも聞く）将来は、ガン検診の方法も費用も大きく変わってくる可能性があると思う。
さて、ここまでの新聞記事を読んで、ふと心配になったことがある。
現代の医学界に於ける最大の難問であるガン治療が、大幅に簡単にしかも安い費用でできるということになった時、巨大産業（？）となっているガン治療関連の関係者のメシのタネが大幅に減ってしまいはしないだろうかということだ。
ガンの検査装置のメーカー、それらの装置を備えるために何億、何十億の投資をした病院、ガン検査薬（？）で大きな売り上げを挙げている医薬品業界、それよりもなによりもガン検査や治療に従事している医師たち等々は、検査一回数百円で済む線虫の登場によって、経済的には大打撃ということにならないだろうか―――。
既に、この線虫検査法に対して「95％の確度とは5％も外れるということであり、有為の結果とは言えない」といった批判も出ているとも聞く―――。
スギ花粉症を無くすために「杉の木を伐れ！」とタカさんのみならず患者の多くが幾ら叫んでも、花粉症対策関連の医療や薬品業界が巨大になっている所為で（？）一向にそういう動きが出てこないのと同じことにならないだろうか―――。
「世の中にはうまい話はない」というのは、投資詐欺話などに対してよく言われる話だが、「線虫でガン検診ができる」といううまい話は、この先、認知されていくのだろうか―――。
(04/12/15 10:00pm)
2015年4月10日
神の怒りは
堕落しきった人間どもに怒った神は、ただ一人神を敬い、行いの正しかったノアに命じて、地上にいるあらゆる生き物一つがいずつの乗れる方舟を作ることを命じ、その方舟の準備ができてから40日間雨を降らせ続けて大洪水を起こした―――あの名高い「ノアの方舟」の逸話である。
洪水から唯一逃れることができたノアの一族が神の指示に従って作った方舟の大きさは一体どれ位だったのだろうかと古くから色々な推定がなされてきたが、いずれの説も、現代の豪華客船の半分程度全長150メートル程度と結論付けているという。
全長150メートルのたらい型の船とは、近代までは「考えられない程巨大な船」というイメージであり、それはすなわち「神の偉大さ」を表現する手段としても十分意味をなしていたのだが―――今、世界最大級の船といえば、全長は500メートル弱の大型タンカーであり世界の海で数十隻運行している。巨大タンカーの甲板面積は、サッカーの競技場が4つ並べられる広さというから、ノアの方舟ですら3つ乗せることができるほどデカいという訳であり、今、ノアの方舟の逸話では神の威厳を表現することは難しいかもしれない。
時とともにノアの子孫は増えはじめたが、かつての神の怒りを忘れ、中には「かつて自分達人間を洪水で滅ぼそうとした神はけしからんじゃないか」と考える者もではじめ「天にも届く塔を作りあのけしからん神をぎゃふんといわせようじゃないか」と思いはじめる。同じく旧約聖書の「バベルの塔」の逸話である。
驚いた神は、人間の話す言葉を混乱させるなどの妨害工作をおこなったために、結局この塔は完成せずに崩れ去ったという。
この「バベルの塔」は、16世紀の画家ブリューゲルの大作にも描かれ今も人々に感銘を与え続けているが、ある人があの「人間の不遜な挑戦」であるバベルの塔の高さはどれ位だったのだろうかと、ブリューゲルの絵に描かれている人々の身長などから推定したところその高さは、わずか地上100メートルでしかなかったという。
今現在、世界で一番高い建物は、ドバイにあるブルジュ・ドバイだが、その高さは地上830メートルだ。わずか100メートルのバベルの塔に怒った神にしてみれば、最近の高層ビルラッシュでは、人間に完全にコケにされたことにならないだろうか―――。
タカさんが若い頃、衝撃を受けた映画「大いなる野望」（助演のキャロル・ベーカーの大ファンだった）のモデルである、アメリカの大富豪ハワード・ヒューズが当時の5000万ドルというから今なら何千億円にもなる資金を注ぎ込んで制作したスプルース・グースという飛行機を、かつてロングビーチの展示館で見学したことがあるが、その全長66.8m、全幅99.8mという現在最大といわれる航空機エアバスA380（全長73m、全幅79.8m）に比べても一回り巨大なものだ。しかし、このスプルース・グースは、初飛行で地上25メートルのところをわずか2キロ弱飛んだというか、ふわりと浮いただけで二度と飛ぶことはなかったという。巨大飛行機を作って神に挑戦しようとしたハワード・ヒューズが神の怒りに触れた為だともいわれているが－－－。
今、イギリスでこのスプルース・グースを上回る巨大航空機の計画があるという。さて、果たして神は今どう考えているだろうか。
興味を持って見つめていきたい。
(04/09/15
10:00pm)
2015年4月9日
LCCは伸びるか
成田空港にLCC（格安航空会社）専用の第3旅客ターミナルビルが開業した。成田での新ターミナル開業は22年振りだという。
2010年の羽田の国際線ターミナル開業によって国際線旅客の多くを奪われ凋落激しい成田にとって、このLCC専用ターミナル開業は、東南アジア方面などからの観光客を中心に、年間550万人の利用客増という起死回生の一手になるかもしれないという。
日本では昨年の国内便のLCC利用率は、まだ15.8％にすぎないが、東南アジア域内ではLCC利用率は既に50％を超えており、欧州でも30％に達していることを考えれば、確かに日本でもLCC市場が伸びる余地はまだまだありそうにも思える。（先月のジャーマンエアーのアルプス墜落事故や、スカイマークの経営破綻といったネガティブな印象はあるものの―――）
つくづく思うのだが最近の航空運賃には、古典経済学でいう「一物一価の法則」は、全くと言ってよいほど成り立たない。
航空運賃を払う事によって客が得られる利得といえば、基本的には「A地点からB地点に行く」ということだ。同じ航空航路を通り、同じ時間をかけて「A地点からB地点に行く」にもかかわらずエコノミークラスとビジネスクラス、そしてファーストクラスの航空運賃の違いは驚くほどある。機内サービスの質が断然違うのだからそれ位の違いがあるのは当然だ、というのが需要側、供給側の共通認識なのだろうが、回転寿司の一皿100円の寿司と、たしかに少しはネタの違いはあるだろうが、その100倍もする高級寿司店の違いにどうにも納得できないタカさんにとってはこの航空運賃の差はどうも納得しがたいところがある。
まして、同じエコノミークラス同士であるにもかかわらず、LCCとメジャーといわれる航空会社の運賃の差は、なんとも理解しがたいものがある。
今シーズン、千葉ロッテマリーンズの応援の為に、札幌か福岡に遠征を考えている。
タカさんの家から成田はそんなに遠くない。車でいけば精々40分位だ。成田に24時間オープンのLCCターミナルができたことで、LCCの早朝便の利用も可能になったわけだが、最安値をしらべてみたところ、成田――新千歳はなんとLCCでは4190円である。ANAやJALだと希望の金曜日の便だと通常でも19000円程度、最安値でも12000円もすることを考えるとこれはどう考えても、「ここは、LCCでしょー」と思う。
どうせ、札幌ドームの野球応援が終わった後に寝るだけと思えば、ホテルだって「朝食付き」で一泊数千円のビジネスホテルがあるとなれば、一夏に二回位は札幌応援ツアーにいけるではないか！
―――ところが、ここで一つ問題がある。「なにかとLCCの事故とかなんとかが問題になっている時に、お金を惜しんでもしものことがあったら恥ずかしいじゃない」という身内からの反対だ―――。
う〜ん、やっぱり日本でLCCが欧米並みに増えるには、しばらく時間がかかるかもしれないなぁ〜。
(04/08/15 10:00pm)
2015年4月8日
もっとも卑劣な犯罪
犯罪はすべて卑劣なものではあるが、アメリカの刑務所の中では、そんな犯罪の中にも序列があるのだとか。強い者相手に堂々と挑み（？）戦ったとか、一般市民を巻き添えにしない組織暴力同士の抗争での殺人といった罪は、囚人仲間から一目置かれることもあるらしいが、その一方、反撃される怖れのない弱い相手、無抵抗な者に対する犯罪（老女や幼女に対するレイプといった）には、囚人仲間の目は厳しいという。
「もっとも卑劣な犯罪」と蔑まれているような罪で刑をうけた収監者は、暴力が横行しているといわれるアメリカの刑務所の場合、他の囚人たちからのリンチを受ける可能性が高く、又、そういった卑劣な犯罪を行った受刑者に対するリンチは、看守たちも見てみぬフリをすることもあるらしく、こういう受刑者にとっては「収監」すなわち「死刑執行」と同じだとまで言われているのだとか。（実際、19人もの売春婦を自宅アパートで殺し、死体をバラバラにした上、人肉食までやっていたといわれるジェフリー・ダーマーが、収監直後に、受刑者仲間に撲殺された事件があった）
大恐慌期の銀行強盗、ジョン・デリンジャーのように、貧乏人を襲わず、金持や、銀行などだけを襲い、警察を手玉にとって「義賊」などという人気を博した犯罪や、あるいは、腐敗警官を殺したとか、腐敗権力に対して歯向かったといった罪を犯したものは、アンチヒーローとして映画などでもよく取り上げられていてそれなりの人気があったりするし(タカさんも、ボニーとクライドが銃撃を受けた車を見にわざわざネバタに行ったこともある)、その逆の、無抵抗な弱き者に対する卑劣な犯罪に対してはおおいに侮蔑するのは、日本もある程度同じだ。（鼠小僧や石川五右衛門が義賊として人気がある一方、女湯を覗いて歩いたという、出っ歯の亀さん（デバガメ）が今もサイテーの人間として蔑まされているではないか）
アメリカで、この手の弱き者、無抵抗の者に対する卑劣な犯罪の一つに挙げられているのが、‛Acid Attack’といわれる犯罪だ。これは、女性に酸などの液体を浴びせるという物で、女性にとっては（もちろん男性にとっても）大切な顔などにやけどを負わされると、被害者は、その傷を一生負っていかなければならず、被害者の人生をめちゃくちゃにしてしまうというものであり、「卑劣このうえない」としてもっとも憎まれる犯罪の一つなのだ。
群馬県で今月はじめから、20代から40代の女性4人に、硫酸を浴びせた男が逮捕された。駅の防犯ビデオなどに写ったこの男の画像が公開されたこともあって、スピード逮捕となった訳だが、逮捕がおくれていれば、被害者はさらに増えていたことだろうから、プライバシーがどうのこうのなどといわず、間髪をいれずこういった画像を公開したことは、極めて適切だったといえよう。（この男、女性たちに背後から近づき硫酸を浴びせて知らぬ顔で立ち去っていたというからその卑劣度は際立っている）
本人は容疑を否認しているというが、刑務所に入ると日本でもアメリカ並に、囚人仲間に「卑劣野郎」としてリンチされることを恐れているのかもしれない。
(04/06/15 10:00pm)
2015年4月7日
大使呼びつけ
文科省が、来春から中学校で使われる教科書の検定結果を公表したが、社会科では初めて地理、歴史、公民の全教科書が竹島と尖閣諸島を「日本固有の領土」として明記するなど、領土に関する記述が大幅に増えたという。
竹島も尖閣も歴史的に「日本固有の領土」であるにもかかわらず、改めて教科書に強調して書かねばならなくなったのは、韓国の竹島不法占拠や、中国の尖閣に対する領土的野心があまりにも増長しすぎてきてきたからという理由からではあるが、彼等がここまで図々しくなるまで放っておいたのは、日本政府の落ち度でもある。
その意味では、今回の教科書検定の改定は、「もう黙って看過しておくわけにはいかない！」と、日本側の堪忍袋の緒が切れたことを示したと言ってよいとおもう。
従軍慰安婦問題のように、虚偽事実の拡散を、長く放置していたが為に、取り返しのつかないほどに、そのウソが世界に信じられるようになってしまったことを考えれば、これからの日本を背負っていく小中学生にきっちりと日本の領土を教えることは絶対必要だし、今回の教科書改定も、むしろ遅すぎたといってもよい位だ。
ところで、竹島を不法占拠している韓国政府は、教科書改定を、日本政府による「挑発」であると猛反発、早速、駐韓国日本大使をソウルの外務省に呼んで抗議したという。
いままでもことあるごとに、日本の教科書検定について散々理不尽なイチャモンをつけてきた韓国だから、国内世論向けには、日本に抗議もしないという訳にはいかないという事情はあるのだろうが－－－。それにしても、他国の領土を不法占拠していながら、日本の大使を呼びつけて抗議するとは―――他人の土地に勝手にバラックを建てたホームレスが、その土地の持ち主に立ち退きを迫られたからといって抗議しているようなもので、盗人猛々しいにも程があるというものだ。
昨年11月にAPECの開会式で習近平と安倍首相がはじめて会った時、仏頂面をしている習近平に安倍首相が笑顔で近づき下から目線で握手を求めた写真が中国国内に大量にばら撒かれたという。あの写真だけをみれば、習近平が、卑屈な態度でへりくだってすり寄る日本の首相に嫌々会ってやった―――という風に受け取った中国人は多かったという例もある、韓国外務省に出向いた日本大使は、変に笑顔を見せたり、目線を下げたりせず、先方の抗議に対して、堂々と反論してくれただろうか―――。
かつて、媚中的言動によって日本の国益を大きく損なった、民主党時代の民間出身の駐日日本大使の例もあるだけに、ちょっと心配だ。
ところで韓国が、産経新聞の元ソウル支局長を、もうかれこれ8カ月も不当に出国禁止という拘留状態においていることとか、ソウルの日本大使館前に従軍慰安婦像を作り連日反日デモによって日本大使館の日常業務が妨害していることに対して、日本の外務省は、駐日韓国大使を外務省に連日でも、呼び出し厳重抗議するといったことをちゃんとやっているのだろうか。
同じ価値を共有しているとは全く思えない国に対しては、これからは、大使を呼び出し、ビシバシと抗議すべきことは抗議していくべきだ。
(04/06/15 10:00pm)
2015年4月6日
インチキ診断書
国会議員としてもっとも重要な責務といわれている予算案の本会議採決を欠席するために、その前日に、医者から「急性ウィルス性腸炎」という診断書を入手したものの、その日の夜には同僚議員と、六本木のショーバブなど３軒を梯子、翌日の本会議は診断書を理由に欠席しながらも、午後には新幹線で大阪に移動、更に翌日からは、男性秘書と不倫旅行に出かけていたというのだから、維新の党の上西小百合衆議院議員が、大阪維新の会から除籍処分になったのも当然といえば当然かもしれない。
大阪維新の上西議員除名理由書にはこの数日の行動を「極めて不可解」と指摘するにとどまらず、さらに「被処分者の日頃の言動については問題が多く、現在大阪維新の会府議団預かりとして指導を受けているところであるが改善の見込みは全くなく―――」とまで書かれている。
所属会派から「改善の見込みはまったくない」とまで糾弾された不品行なネエチャンだが、それでも、議員辞職を拒否、「これからも無所属で国政に邁進する」との談話を発表したというから、こんな議員を推薦し国会に送った維新の党という政党がネットなどで「オワタ」などと書かれているのもこれまた当然かもしれない。
このトンデモ議員の行動については、週刊誌や今週のテレビワイドショーなどで根堀葉ほり調べられて、上西さんはいずれにっちもさっちも行かなくなると思うので、これ以上、タカさんがここで面白おかしく書くこともないとは思うのでこの辺りで止めておくが、一言言いたいのは、「医者の出す診断書という奴はそんなにいい加減なものなのか？」という疑問である。
下痢で翌日の本会議にはでられそうもないから診断書を書いて欲しいという上西さんの要請に「急性ウィルス性腸炎」という診断書を書いた医師はだれだったのか、是非とも明らかにして欲しいと思う。というのも、その医師が診断書を書いた当日、上西さんは、元気にショーパブを三軒梯子した―――というのだから、この診断書がいかにインチキであったかが分かろうというものだ。
ノロウィルスで下痢が続いている患者が、その日、三軒もの梯子をした、というだけでも非常識だが、(ウィルスをばら撒く恐れが当然ある)上西議員に付き合ったといわれる自民党議員の職業は医者だというのだから---「診断書」も「医者」といわれる連中も、いかにインチキでいい加減かということではないだろうか。
路チュウ事件で国会に呼ばれるのを逃げるために「うつ症状」という診断書を盾に病院に逃げ込み、その挙句、病院でスパスパ喫煙していたが為に、強制退院一歩手前までいった中川郁子先生の例をみても、国会議員が提出する「診断書」なるものの信用度はゼロといってよい。
生活保護者の医療費がタダであることに付け込んで、向精神薬のアンフェタミンなどを大量に処方して貰い、それを闇市場で流している連中がいるが、そんな不正の裏にいるのは安易にあるいは意図的に「うつ病診断書」を出している精神科医がいることが、度々話題になっているが、このことによって「本当に」うつ病を患って向精神薬を必要としている患者たちが冷たい社会の目にさらされていることを、上西先生や、中川先生の主治医たちは、一体どう考えているのだろう。
(04/05/15 10:00pm)
2015年4月3日
介護で儲ける
個人病院経営者とか学校経営者といった世間一般にセレブといわれる人の一家で、ご主人がベンツ（しかも２台）、奥様はBMV、大学生の娘さんはアウディーで、息子さんはポルシェに乗っている－－－と聞いても、世間は「まあ、そんなもんか」とさしてやっかんだりはしないが、これがもし「介護事業経営者」となると「介護でそんなにもうけるなんて―――！」と世間の目は非難調になる、と以前ある事業者から聞いたことがある。
病院経営でも学校経営でもまあ「世の為、人の為」の仕事であるという世間の認知があるから、同じ金持でも、パチンコチェーンや風俗チェーンの経営で儲けたとか、競輪選手やお笑い芸人で随分稼いでいるという金持に比べるとセレブ度も高いし、金を何に使おうと、世間から非難の目で見られるようなこともないのに、同じ「世の為、人の為」の仕事であっても「介護」となると、そうもいかないのはなぜだろう。
今から10年ほどまえ介護事業大手コムスンが数々の介護報酬不正請求などの事件を起こし廃業に追い込まれた際、親会社の会長が40数億円もする自家用ジェットを乗りまわしていたことがニュースになり、「介護事業者は従業員を薄給でこき使い、介護保険報酬をちょろまかすなどして阿漕に稼いで、介護を食い物にしている！」等という悪いイメージがついてしまったことも原因の一つかもしれないが――――。
今や市場規模は4兆円ともいわれる介護福祉事業だが2000年に介護保険制度が始まるまでは、介護は基本的には被介護者の家族(娘や息子、嫁といった)が家庭内労働としてタダで行っていたものであり、病院経営や学校経営に比べて歴史が浅いということも、介護事業者に対する厳しい目の要因になっているかもしれない。(昔はタダだったのに、今はカネを取るのか！という偏見があるのでは―――)
病院にしても学校にしても、社会事業とはいうものの、事業者は何も無料奉仕の精神だけでそれを営んでいる訳ではない。資本主義自由経済の社会では何事においても、自由競争の下、それぞれが利潤の追求をすることがその仕組みを動かす最大の原動力になっている。
病院ならば、他の病院よりも設備を高度化し、何しろ治療成績を挙げなければ経営が成り立たないし、学校ならば、同じく学業成績なり運動なりで、他校に抜きんでる必要がある。そういう競争をすることによって、医学界も教育界も進歩していくし、その結果経営者のみならず関係者全員が仕組みをスムースに動かすことができるのだ。
介護事業も「儲かる事業」だということになれば、事業者間で激しい競争が行われるだろうから、事業そのものの内容は充実し、利用者に対するサービスも更に充実していくだろう。介護も、「儲かる」事業であるべきだし、介護従事者の収入は、他産業から羨ましがられるほどである方が、日本の介護福祉はずっと充実することだろう。
若者が高賃金を求めて介護産業に競って就職Jし、介護事業経営者の奥様が、病院長の奥様と同じ位の外車に乗るようになれば―――とは思うが―――。中々、難しそうだ。
(04/02/15
10:00pm)
2015年4月2日
明治翻訳語
目にごみが入ってしまったようで目に妙な違和感がある、という状態を一言で表現しようとしてもどうも適当な言葉が見つからない―――「痛い」ではないし「かゆい」でもないからまあ正確に伝えようとすれば、たとえば「目がしょぼしょぼする」とか「目がいがいがする」などという説明にならざるを得ない。ところが、東北地方（宮城県辺り）だと、こういう状態を表す場合「いずい」という言葉を使うのだとか。
Wikipediaにも、「いずい」の語彙の説明の最後に―――
そのニュアンスは、共通語では完全に表現することは難しい―――と書いてある位で、共通語には「いずい」という言葉も、「いずい」という感覚の概念もないのだ。
冬場にマイナス20度とか30度といった極寒になる北海道には「しばれる」という言葉がある。「しばれる」は「寒い」を通り越して「痛い」ようにも感じられる寒さを表す言葉だが、もちろんそんな極寒になることもなければ、そんな寒さを経験したこともない本州以南の人々にとっては、「しばれる」という言葉も、「しばれる」という概念も必要ないし、必要が無い物を知る必要もないということになる。
「いずい」や「しばれる」の例が示すように、ことばがなければその言葉が表す概念もないということになる。
これと同じような例が明治期にどっと入ってきた西洋文化、西洋思想の中にもたくさんあった。その言葉を日本語に翻訳しようと思っても明治以前の日本社会にはそういった概念がなかった言葉がたくさんあったのだ。
よく知られている例としてはLoveがある。キリスト教のもっとも重要な概念はLoveであるが、これを日本語に訳そうとしてもそれに該当する言葉がなかったのだから困った明治の先人は、Loveに日本語の古語である「愛し（かなし）」という字をあてた。「かなし」の本来の意味は、「かわいい」とか「いとおしい」であって英語のLoveとは意味が違うのだが、この余りなじみのない古語を持ち出したことにより、それ以降、Loveという西欧の概念が日本人にも徐々に理解されるようになったのだ。（その後、この愛あるいは恋愛という便利な和製の翻訳語は、中国にも輸出されかの地でもこの言葉がつかわれるようになったという）
「愛する」という翻訳語が定着する以前にある小説を訳していた文豪二葉亭四迷は
‘I love
you.’を「死んでもいい」と訳したというし、今でも日本人の男女が「あなたを愛しています」などと囁く事にいささか違和感を持つのは、日本人には本来「好きだよ」とか「惚れたんだ」などという言葉や概念はあっても「愛する」という概念がなかったし、その概念が持ちこまれてからせいぜい150年しかたっておらず、まだそれほどは定着していない所為でもある。
そうそう、「自由」「憲法」「民主主義」という言葉と概念も、明治時代に誕生したいわゆる「明治翻訳語」である。これらの思想なり概念が、中々日本には定着しない理由は、やはり「愛」と同じように日本人にはまだなじめない歴史の浅い概念だからなのかもしれない。
そうそう、「品性」とか「人格」も明治翻訳語だというから日本人に品性や人格が定着するにはもう少し時間がかかるのかもしれない。
(04/01/15
10:00pm)
2015年4月1日
逆噴射を思い出す
自分の乗っている飛行機で、機長がトイレに行って不在の間、操縦席に一人残った副操縦士が出入口のドアをロック、機を急降下させアルプスに激突させる―――一瞬の内に命を失った150人の乗客、乗員の副操縦士を除いた誰一人として想像すらしていなかったことが起きてしまった。
名のある公立医大病院や、県立のがんセンターで手術を受けた患者が次々と未熟な医師の手によって死亡させられたというか、はっきり言えば殺された事件にしても、まさか、そんな有名病院で、倫理審査もないままにいわば無茶苦茶な手術が施されているとは、患者やその家族の誰一人として想定していなかったに違いない。
飛行機に搭乗することや、ガンの手術を受けることに何らかのリスクが伴うことはだれでも理解しているであろうし、極めて不幸な巡り合わせによっては命を失う可能性が全くゼロではないことは覚悟はしていても、まさか自殺願望のある操縦士が機体を山に激突させる巻き添えを食うこととか、手術前にも後にも一切の検証が行われないようなでたらめな手順によって手術が行われる可能性等というものまで考えておかなければならないとは―――世の中、何も信用できないということではないか―――。
アルプス山中に墜落した機が、ジャーマンウィングスというLCC（格安航空会社）所属であったことで、マスコミ各社は、LCCの安全に問題がある可能性などをにおわせたりもしており、この事故によって、欧州では既に市場の40%近くを占めるLCCが日本では今後、頭打ちになる可能性なども言われているが－－－。
「LCCだったからこんなとんでもない事故が起きた」といえるか、「メジャーの航空会社ならば安心」と言えるのかとなると、昨年、精神状態に問題があったといわれるマレーシア航空機が行方不明になった事故や、かつて「心神症」を患っている機長が逆噴射によって日航機を羽田沖で墜落させた事故などを思い出せば、どうも「LCCでない大手なら安心」という訳でもなさそうだ。
たった一つしかない命なのだから、手術を受けるならなるべく名のある大学病院や、公立の「xxガンセンター」などといった有名そうなところで受けたいと思う患者が多いのは当然だが、そういう大病院が実は、小さな名もない病院ですら当然行っている基本的なことを一切やっていなかったとは――一体、何を信じてよいのやら―――。
現代社会は昔に比べれば、あらゆる面で進歩していると考えがちだが、実は一昔前に比べたら社会の基礎にあるべき信頼という根っ子が、大分腐ってきているような気がしてならない。
(03／31／15 10:00pm)
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