愛情か虐待か

搭乗した飛行機の事故で命を失う確率は、どれ位あるだろうか。事故統計によると、航空機による死亡事故は約500万フライトに１回の確率だというからあなたが１日１往復の飛行機ヘビーユーザーだったとしても、7000年間飛び続けた場合、1回事故に遭う割合だということだ。

相当忙しいビジネスマンやタレントの中に月間20-30回は飛行機を利用しているという人もいるかもしれないが、それほどのヘビーユーザーの場合でも事故に合う確率は1万年から2万年に１回程度ということになる。

確率的に考えれば、残りの寿命が長くても20年程度、飛行機を利用する機会は年数回もないというタカさんにとっては、「航空機事故で死ぬ」確率は限りなくゼロに近いと考えてもよいだろう。

しかし、限りなくゼロに近いとはいってもゼロではない。1人の人間にとって「航空機事故で死ぬか死なないか」は確率の問題ではい100％か0％のいずれかだ。

500万フライトに１回とは言え、その1/500万回目が、生まれてはじめて乗った便であるという人もいるかもしれないし1億年毎日飛行機に乗り続けても事故に遭わない人は遭わないだろう。

500万回に1回とはいうものの、それぞれの航空会社によってその事故率は微妙に異なる。「500万フライに１回」が「1000万フライトに1回」になったとなれば、後者の方が「2倍も安全」ということになるが、果たして個人にとってどれほど意味があるかとなると難しいところだ。もし前者の航空会社の料金の方が後者の半額だとしたらかなりの人が前者を選ぶような気がしないではない。

ちなみに、統計数字を見ると、先進国の航空会社の多くは、300万フライトから500万フライトに一回の事故率だが、途上国の航空会社の中には100万フライトあたり2を上回るものもある。比較的安全な航空会社のフライトの実に10倍近く高い事故率だ。（ヴァージン航空やカンタスは事故ゼロ、エジプト航空やチャイナエアラインは100万フライト当たり7を上回っている）

「アブナイ航空会社」と言われるとなんとも気になるけれど、500万フライトに1回が、50万フライトに1回の確率となったからといって個人が事故に遭うか、遭わないか、という確率で考えるとそれほど差があるようにも思えないし――自動車に乗っていて事故に遭う確率と比べたら50万フライトに1回のアブナイ航空会社の方が数十倍も安全だというのだから「飛行機は落ちるから乗らない」という判断は、必ずしも賢い判断とは言えないようにも思う。

100ミリシーベルトだ、いや10ミリシーベルトだと喧しい残留放射能問題だが、一体この数字がロシアンルーレット並みの「そんな線量を浴び続けたら間違いなくガンになって死ぬ！」という死刑執行令に近いものなのか、1000万フライトいや50万フライトに1回の割合で起きる航空機事故確率と同程度のものなのかが全く分からない状況で、皆が騒いでいるような気がしないでならない。

都内には、「子供を放射能から守るため」と言って子供を一切外出させないで家の中でもサングラスとマスクをつけさせて水も食料もすべて外国産の物をたべさせているという母親がいるという。

子を思う親の愛情からは理解できるなどという声もあるが、タカさんから見るとそんな扱いをされた子供が可哀想だと思うし、ひょっとしたらこれって幼児虐待ではないか――とすら思うのだが。

（01/11/12　9:00pm S.T. ）

再びの失態

アメリカでスピード違反をしてパトカーに停止するように指示されたとしたら、（自分の身を守るために）しなければいけないこと、してはいけないことが幾つかある。

まず、やるべきことは、警官の指示に従ってゆっくりと車を路肩に寄せて停め、運転席側の窓を開け、両手を近づいてくる警官に見えるようにできればハンドルの上に置いて後ろから近づいてくる警官を「車内」で待つことだ。

絶対にしてはいけないことは、日本で捕まった時のように車から出て近づいてくる警官の方に歩いて行くとか、あるいは免許証提示を求められるだろうからと先回りして上着のポケットやグローブボックスなどに手を入れるなどの動きをすることだ。

アメリカの警官は、違反者に近づく際には相手が銃などで反撃してくることを警戒している。もし、あなたが上着のポケットに手を入れながら警官に近づいていったりした場合、警官はあなたが銃をもって撃ってくる可能性を考えて、防御の為に撃ってくるかもしれない。もしそのような不信な行動をしてあなたが警官に撃たれたとしても文句は言えないのだ。「ドライバーズライセンスを見せろ！」と言われた際も、「上着のポケットに入っているから取り出してもいいか」と断ってから警官の許可（恐らく、「右手でゆっくりと」と言った具合に警官が指示するはずだ）を待って取り出すべきで、警戒態勢をとって神経をピリピリさせている警官に不信に思われるような急な動きや、疑わしい動作は絶対にしてはいけない。まるでギャング映画の逮捕シーンではないかなどと思うかもしれないが、人口の倍以上の銃があるアメリカでは、警官は常に銃で襲われることを前提に自身を守っており、そんな警官から間違えて射殺されないためには、これだけのことは「絶対に」守る必要があるのだ。

昨日、台東区のマンションで台湾人女子留学生2人を刺殺した容疑で公開手配されていた容疑者が名古屋で身柄を確保されパトカーで任意同行中に捜査員のすきをみて隠しもっていた刃渡り11cmのナイフで喉を刺し自殺したという事件があった。

身柄確保をしたのは警視庁から名古屋に捜査にでかけていた8人の刑事、任意同行を求め身体検査をしたうえで両脇を刑事が固める形で移送中に、この容疑者は、ズボンの中に隠していたナイフを取り出して自分の首を刺したというのだ。

逮捕前であったので手錠や腰縄はしていなかったとはいうが、パトカーに乗せる前に（おざなりだったのだろうが）身体検査もしたし、屈強な刑事が8人もかかっていたというのに一体、どうしてこんなことが起きるのだろうか。

昨日の日々早々に書いたオウムの平田容疑者での失態に続く首都警察である警視庁の大失態だ。

痴漢や万引き犯だってナイフをもっている可能性はある。まして、確保した男は、二人を「刺殺」した容疑のかかっている男だ。それなのに刑事たちは、なぜナイフを持っている可能性を考えなかったのだろうか。ナイフが自殺に使われたのがまだ救いであり、もし刑事や周りの群集などに向けられていたらと考えれば、「警察の失態」では片付けられない問題だ。

アメリカの警官のように「常に身構える」緊張感が、日本の警察官、刑事には全くといってよいほど無かったということではないだろうか。

なぜこの手の失態が度々繰り返されるのだろう。「反省なき組織に進歩はない」というけれど、日本の警察には「失敗から学ぶ」という姿勢はないのだろうか。

（01/10/12　9:00pm S.T. ）

緊張感持ってる？

凶悪事件の犯人宅近くの住人がインタビューに「とてもそんな人には見えなかったのに〜」と答えることがよくあるけれど、警察官までおなじように「指名手配犯はとても指名手配犯には見えなかった」などと言うのだろうか。

オウム事件で指名手配中の犯人が自首してきたというのに「あっちへ行け！」とばかりに追っ払ってしまった警官やら、「僕、指名手配中の平田です」という名乗りに「ウッソー」といって最初は取り合わなかった丸の内警察署の婦警さんの話を聞いて思った。

二人とも今頃、署内に缶詰され反省文でも書かされているのだろうか。

出頭時の平田容疑者の写真が公表されたが、手配写真と違って「髪を茶色に染め長髪、無精ひげを生やして、眉も細くカットしていた」から−−と二人に同情する声もあるが、身長183�pという1000人に一人もいないであろう長身という手配書に書かれた特徴や、あの紛れも無い目をみたら素人のタカさんでも気付いたと思えるのに、連日手配犯を追っているはずのプロが気付かないなどということがあり得るだろうか。

こんな大柄な指名手配犯が大阪から堂々と新幹線に乗り、品川駅を闊歩し、大崎署の周りをうろつき、山手線に乗り、お堀端を警視庁から丸の内署まで堂々と歩いていたというのに−−−一体日本の警察はどうなっているのだろうか。出頭当日だけの話ではない、出頭までの17年間、平田はずっと国内にいたというし、働いてもいたというのに何故、警察は、気付かなかったのだろうか。

いや、全くウソみたいな話だ。日本の指名手配犯捜査そのものを根本のところから見直す必要がありそうだ。

17年間、警察は平田をわざと泳がしていたのだ−−といった新事実でも出て来ない限り、こんなウソみたいなことが起きる原因は、やはり日本全体が安全とか平和に慣れきってしまい、生きていく上で必要とされる「緊張感」を失っているからではないかとも思う。

例えばアメリカでは、夜、無人の駐車場には車を止めるなとか、白昼でもポシェットなどを身につけて街を歩くなといわれるが、日本では夜道を女性が一人で歩くことはよくあることだし、未だに自転車の前かごにバッグを積んでいかにも「ひったくって下さい」といわんばかりの女性も目立つ。常に緊張を強いられる国と、安全になれきってしまっている日本とでは社会における緊張感がまるで違うようだ。

日本人の緊張感の不足という問題は何も治安に限ったことではない。朝鮮国営放送が「正午から重大発表を行う」と通告していたにもかかわらず、政府は「金正日の死去の発表」の可能性を全く予想できなかった。その為に、野田首相は新橋の街頭演説にのこのこ出かけて慌てて官邸に引き返すという失態を犯している。

3.11以降の震災対応にせよ原発事故対応にせよ、あるいは尖閣問題や北方領土問題にせよ日本の危機対応におけるお粗末さの連続はあきれるばかりだが、あれもこれもやっぱり日本人、そして日本社会全体が安全に慣れきって緊張感を欠いている証左ではないかと思う。

「常に殺るか、殺られるかの緊張感を持って」―――などというつもりはないが、指名手配犯が自分の目の前に現れたら気付く程度の緊張感（？）は持っているべきだと思う。

（01/09/12　9:00pm S.T. ）

松飾り

暴力団の資金源にもなっているといわれたこともあって、警察が事業所や飲食店へのお正月の松飾り売りを徹底的に取り締まったといった理由もあったのだと思うが、近年の正月は街で松飾りを見かけることが少なくなったように思う。

住宅街でも、東日本大震災の影響だと思うが、昨年クリスマスシーズンには、家の回りを電飾で飾る家が突然全くなくなってしまったけれど、お正月の松飾りも余りみかけなくなった。あったにしても全体的に随分と小ぶりになったような気がする。

そうそう、昨年まではフロント部分にミニチュアの注連縄などというなんとなくアンマッチな乗用車を見かけることもあったが、今年は年が明けて以来まだ一台も見ていない。（結構、車で出かけてはいるのだが）

松飾りを見る限り、日本の正月の伝統も徐々に廃れつつあるかのようにも見えるが、どうもそんな訳でもなさそうだ。各神社仏閣への初詣客は例年に比べて減ったという話は聞かないし、正月2日の日、偶々銀座を車で通ったら、各デパートなどの福袋を求める客なのだろうか、とんでもない人出と車の数だった。

松飾りという正月習慣は、淘汰されつつあるもののやはり日本の「正月習慣」として人々が愛着を持つものは残るという自然淘汰が進んでいると考えるべきなのかもしれない。「伝統を残す為には伝統は変わらなければならない」ということが現在進行しているということなのではないだろうか。

半世紀いや四半世紀前の大晦日、主婦たちはお節料理作りで大忙しだった。かまぼこや伊達巻は買ってくるにしても、黒豆を煮て、きんとんを作り、ごまめを煮て、数の子を漬けてといったところは各家庭でやっていた。もちろん、煮しめやなます作りなども年越しそばの際の添え物のてんぷら作りと同時進行で行っていた。いや、あのころの正月準備は一家あげての大騒動だった。

今、各家庭では、果たしてお節料理のどこまでを「手作り」しているだろうか。お節料理を注文で揃えるなどということは半世紀前ならば、よほどのお金持ちしかしなかったように思うが、今や有名料理店やデパートといわず、スーパーやコンビニなどでも豪華なお節セットが手頃な価格で買える様になったのだから、働いている主婦はもちろん、どこの家庭でも「手作り」するのがバカバカしいに違いない。

お餅を近所で寄り合って搗くなどという風習もなくなった。のし餅、切り餅、鏡餅の類も真空パックされたものを買ってくる方がカビも生えないし、余程効率的（？）だ。そもそも、大手スーパーをはじめ正月元旦から開いている店も多いのだから、焦って年末に買い溜めするとか、何日も前に準備をする必要もなくなった。

そうだからと言って年末年始の風景ががらりと変わったという訳ではない。年越しといえば、今も昔も紅白を見て年越しそばを食べ、元旦の祝い膳には豪華なお節を並べ、これまた鯛の塩焼きやら、お雑煮といった日本の伝統的な正月料理が並ぶし、お年玉という子供たちにとっては嬉しい風習もしっかりと残っているのだから、子孫に伝えるべき「日本の正月」は核のところでしっかりと守られているといえる。