「財政の崖」第二幕に思う

昨年末ぎりぎりでどうにか民主共和両党間での一時的妥協が図られて回避した米国の「財政の崖」問題だが、「回避」というよりは「結論の2ヶ月間先送り」でしかなかったこともあり、そのお約束の2ヶ月が過ぎようとする今、再び年末と同じ「財政の崖から落ちるか、留まれるか」の両党間のバトルが続いている。

「財政の崖」については本欄でも触れた通り（参照：「財政の崖」11/08/12）、ブッシュ政権時代に行なわれたいわゆる期限付き減税（ブッシュ減税）の期限切れと、国債発行残高に上限を設けた「財政管理法」に基づく強制的な歳出削減が同時期に始まるという財政運営上のダブルパンチが襲うことを意味している。

12月末、時間切れ寸前でオバマ政権と共和党の妥協が成立、その後共和党に反対の多かった増税については富裕層（年収45万ドル以上）のみ増税、それ以下の層では引き続き減税措置がとられることとなった。

一方、国債発行残高に上限を設け（上限は16兆4千億ドル）それ以上の発行を認めず、強制的な歳出削減を計るという「財政管理法」については、12月の時点では「一応その適用を2ヶ月延期する」というその場逃れの妥協が成り立ったものの結局、今月末には発行残高は上限に達する見込みであり、新規国債発行ができないとなると、差し当たり国内で教職員1万人規模のレイオフ、連邦職員の給与不払い、軍事施設での機能不全といった問題がすぐにでも起きるといわれている。

「社会福祉費」などの削減を要求し「小さな政府」路線を標榜する共和党（下院では多数派を占めている）にとっては、ずるずると大きい政府路線をとりさっぱり財政健全化をはかろうとしないオバマ政権に対しては、これ位の強硬措置をとるしかないと、崖っぷちでの戦いで譲る気配はない。（富裕層を支持層に持つ共和党が、富裕層への増税を受けたのだから、財政削減については民主党、オバマ政権が妥協するのは当然だろうというのが共和党の主張だ）

第一幕にせよ第二幕にせよこの米国での「財政の壁」騒動、あるところでは日本が直面している問題と極めて似ているように思う。そう思うと、不謹慎ではあるが何だか笑ってしまう。

世界の警察として軍隊を世界各地に展開している米国にとって軍事費の削減は容易なことではない。又、社会保障費は、それを要求して止まない層は増える一方となればここに手をつけるのは無理だ。

増える一方の歳出を賄うための国債発行に上限が設けられ、その為に新規発行ができなくなれば、米国債の債務不履行（デフォールト）などということにもなりかねず、基軸通貨ドルの暴落を招き、世界恐慌にまで至るというシナリオはかなりの確率となるだろう。

まさか、民主も共和もそこまでバカではないだろうから、どうにか解決策は見つかるだろう−−−などという楽観論もあるようだが、日本同様に上院と下院では「ねじれ」がある米議会でのチキンレースは、お互いが崖から落ちるまで続く可能性もないではない。

「増税はノー、社会保障費カットもノー」という国民がいて、富裕層をバックに小さな政府を目指す共和党、ヒスパニックや有色人種、中流層をバックに大きな政府を目指す民主党がいるというアメリカの構図は、容易に妥協が成り立つような状況ではないという悲観的な見方が日増しに強くなってきているという。

そんなアメリカを横目に、公共事業や農業保障費のばら撒き継続、国債発行は青天井−−−という日本のアベノミクスが一体、いつまでその化けの皮が剥げずに持ちこたえることができるのだろうか−−−。

（02/26/13 9:00pm S.T.）

嘲られても

新聞の投稿川柳に「今ごろの離党どうでもいい話」が「秀逸」として掲載されていた。

党大会直前に、離党届を出した二人の民主党参議院議員のことを｢どうでもいい話｣と切り捨てた句となってはいるが、多分に「嘲り」の思いがにじんだ正に秀逸な一句だ。

このお二人、名前を聞いてもだれもが「そんな参議院議員がいたの？」と思うほどの陣笠、泡沫議員だが、今年の7月で6年の任期が切れ、このまま民主党に残っていては参議院議員には戻れないので、今の内に−−−という下心がみえみえだ。一人は、首長選に、もう一人は参議院再選を目指したい意向だというが、もはや落目の民主党からでは望みうすだと考えての離党宣言だ。6年前には「民主党候補」という看板で参議院議員に滑り込み、民主党が政権にあった時期には散々、与党議員としての甘い汁を吸っておきながら、残り任期わずかとなった今になって「離党」と言い出すとは−−−あまりにもコスイ下心に呆れるというよりも、蔑むしかない。

先の衆議院選挙前にはこの2人同様に泥舟民主党から早々と逃げ出して他党から立候補、うまい具合に議員の職を確保した変節漢がごろごろいたけれど、参議院選挙前のこれからも、またこの2人同様の変節逃亡者が続々と出てくるのだろう。

民主党だけではない。先週末、国民新党の生き残り3人が議員総会(?) を開き、自民党への合併と3人揃っての自民党入りの方針を固めたという。「郵政民営化の見直しという目的を達した今、ぶれない保守として自民に帰る」などという能書きをたれてはいるが、小泉政権に反対し自民党を追い出され、民主党の政権時代には何があろうが下駄の雪のように与党に迎合してきたものの、いよいよ後がなくなったので、この際｢仇敵｣であった自民に政党助成金を手土産にして復帰要請しようというのだから−−−呆れて物もいえない。3人の内2人は今年で任期が切れる参議院議員だ。2人とも、自民党に復帰し比例候補として公認してもらいもう一度参議院議員の椅子に座りたいという「下衆の極み！」（ハマカーンの決めゼリフ）の下心を隠しもしない。曲りなりにも「センセー」といわれる連中が、ここまで卑劣になれるとは―――これはもう驚異というしかない。

今時の政治家に政治道徳だとか潔さなどといったものを求めるつもりもないが、民主党や国民新党のこの「センセー」たちの厚顔無恥な行動の源は一体何なのだろうかと思う。参議院議員という身分がそれだけの恥をかいてもどうしても欲しいほどの魅力的なものなのだろうか。確かにどこかの党の「比例」の候補となれば、本人の評判はどれだけ悪くても、あわよくば当選することもあり得るが―――生涯「変節者」「狡猾」というレッテルを逃れることはできまい。それでも、欲しい「議員の椅子」とは−−−よほどの利権の塊に違いない。

聞いているだけでも気分が悪くなる離党話、復党要請だが、参議院ではまだ過半数を得ていない自民党、何がなんでも員数合わせをしたい維新やみらい、あるいはすがる思いで彼等を引き戻したい民主党が、こんな卑劣漢を受け入れる可能性もある―――というから、つくづく政治というものが嫌になる。（節操なく数々の党を渡り歩いてきた鳩山邦夫さんは、最近「3度目」の自民党復帰を果たしている―――）

民主の2人や国民新党の3人の破廉恥行動も、不要と言うよりも、寧ろ有害としか言えない参議院があるからだという気もする。

改憲論議もぼちぼち出始め、「まず96条の改正」などという声もあるが、この際最優先すべきは「二院制」を定めた42条を改正し参議院を廃止することだとつくづく思う。