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2016年上期の各月バックナンバー：1月、2月、 3月 4月 5月 6月
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2016年3月
＜＜3月タイトル＞
03/28 暗号の追いかけっこ 03/25 金銭授受 03/24 テロの目的 03/23 AI審査員 03/22 負のループ 03/18 バカだねぇ〜
03/17 ゴチバトル 03/16 軟膏入りのマヨネーズ 03/15 AI社会の犯罪 03/14 虚栄という本能 03/11 アルゴリズム取引
03/10 柏そごう閉店 03/08 五年は長い 03/07 なぜ壊してしまったのか！ 03/04 民衆の選択 03/03 党名公募 03/02
会議が好きな人 03/01 日本人の差別意識
2016年3月28日
暗号の追いかけっこ
カリフォルニア州サンベルナンディノで起きた大量射殺事件の捜査に当たっていたFBIは、犯人達が使っていたAPPLEのiPhoneを押収、その通話記録を解読し共犯関係や新たなテロの可能性を探ろうとしたが、犯人がiPhoneに設定した暗証番号を解読できず（5回間違った暗証番号を入れると全データが失われてしまう設定になっているとか）、APPLEに対してiCloud上のデータにアクセスするための、暗号解読コードの提供を要請した。
ところが、APPLEは「自分たちには、iPhone利用者のプライバシーを守る義務を負っており、また、米国憲法も、人々のプライバシーは守られるべきだと定めている以上、『公共の安全』という理由であったにせよ、APPLEはFBIの協力要請を拒否する」と通告した。
これに対してFBIは連邦高裁に対して「テロから国民の安全を保護するためにはAPPLE は、FBIに協力すべきだと命じて欲しい」との訴えを出した。
このFBI対APPLEの争いは、訴訟問題としてのみならずアメリカのマスコミや一般社会でも大きな話題となり議論が沸騰したが、テロに対する人々の恐怖と反感の中では「何をAPPLEはエラソーに！」といった反感を呼んでしまった感がある。
結局、上下院の審査委員会でも、又、連邦高裁もFBIの要請をAPPLEは受け入れるべきだという勧告がだされることになったのだが、それでもAPPLEは尚頑なに協力を拒否、事態は膠着状態に陥っていた。
そんな、最中、先週FBIは突然、訴訟を取り下げたというニュースが伝わった。訴訟取り下げの理由をFBIはあきらかにしていないものの、マスコミではもっぱら「FBIがイスラエルの情報機関の協力を得て、既にAPPLEの暗号技術を破り必要なデータを入手したからではないか」と言われている。
もしそれが事実だとすれば、世界最高水準の暗号技術を誇るAPPLEといえども、世界最高水準のイスラエル情報機関の暗号解読技術に打ち破られてしまった―――ということになる。
さあ、こうなってくると、APPLEもしくは世界の誰かが早晩、世界最高水準のイスラエル情報機関の暗号解読技術でさえ解読できない暗号を開発するだろうし、そうなれば、その暗号技術も又すぐに更にそれを上回る「世界最高水準の暗号解読技術」によって解読されてしまい―――という無限の競争が続くことになるのではないだろうか。
「何でも溶かしてしまう液体」を発明したものの、その液体を納めておく容器がみつからなくてこの発明は日の目を見なかった―――という笑い話のようなことが、今、最先端の暗号技術の分野では起きているのだろうか。
（03/27/16 10:00pm）
2016年3月25日
金銭授受
巨人軍の4投手の野球賭博問題で大揺れのプロ野球界だが、これを契機としてNPBは慌てて全球団の調査を行なったという。
それによれば、巨人軍の4投手以外には「野球賭博参加者はいなかった」という調査結果が発表された。今後、又どこからのリークで新たな参加者が露見しないとも限らないものの、まずは、取り敢えず（プロ野球ファンとしては）このNPBの調査結果を信用したいとは思う。
但し、今一つスッキリしないのはNPBとしては「野球協約違反ではない」という「自らが参加する試合結果を金銭授受の材料にする行為」が12球団中の7球団であったことを認め、こういった金銭授受が球界で横行していたとも認めた点だ。
NPBの熊崎コミッショナーは、これらの金銭授受が「野球賭博の温床になった」と指摘する一方で、「野球賭博の温床になった金銭授受は、野球協約違反ではないが、今後はやらないように指導する」とも言っている。この発言、元検察官という法律専門家らしい「すっと耳に入るがよく考えると、意味が全く不明（言語明瞭意味不明）」の詭弁に聞こえてならない。
以前、当欄でも書いたが（参照：「ゴチバトル」3/17/16）そもそも賭博行為と賭博行為ではない賭け（？）の区分は極めてあいまいだ。（公認の競馬、競輪なら幾ら高額を賭けてもOKだが、非公認の賭けは少額といえども刑法に触れるし、そうはいいながらゴチバトルのように「食べ物のような「消費されるものの賭け」はOKだが、金銭だとダメ―――といった）
NPBが調査して7球団で行われていたことが判明した「金銭授受」、すなわち試合前の声だし、だとかノックでミスした選手に対する罰金といった「野球に関して行われる金銭の授受」が、なぜ野球協約違反ではないのかもまったく理解できない。
またそれらの金銭授受が、「野球賭博の温床」であることを認める一方で「野球賭博ではない」と言い切れるのか二重三重の意味で訳がわからなくなってくる。（熊崎さんは、ヒヨコはニワトリではない、とでも思っておられるのだろうか）
随分前だが、4－5人の同僚と昼休みランチに出かけ食べ終わったあとで、皆でマッチ棒くじをつくって頭のないマッチ棒をひいた一人が全員分の昼飯代を払う―――なんていう賭けをよくやっていたタカさんとしては、高給取りのプロ野球選手がせいぜい1000円とか2000円の罰金を取って、そこでプールした金を年末の打ち上げなどの費用の一部にしていた等という些細なことに目くじらたててNHK辺りまで大騒ぎしている今の状況の方がよほど理解不能だ―――。
タカさんとしては昔やっていた「マッチ棒くじ」は、賭博罪に該当するのかしないのか、あるいは「賭けであるとしても、違反ではない行為なのか―――」熊崎コミッショナーに聞いてみたいような気がする。
（03/24/16
10:00pm）
2016年3月24日
テロの目的
ベルギーは小さな国ではあるがブルッセルにEU本部があるという意味からすれば、「EUの首都」であり、それはすなわち欧州連合のヘソといってよい国であり町である。
ベルギーにEU本部がある理由は、EUの二大国フランスとドイツにはさまれているためという理由にすぎないが（本部をドイツに置いてもフランスに置いても揉めるにきまっている）、そんな理由はともかく欧州連合の象徴的な中心であることに変わりはないベルギーでイスラム国（一時期、日本のマスコミは、「イスラム国」という名称はテロリスト集団を国として認めたかのように受け取られるから、使わずにISILだとかISISという名称を使おうということになったと聞いていたが、最近はまた「イスラム国」を使うようになった理由はどこにあるのだろう―――日本のマスコミは彼等を国として承認したのだろうか）の空港と地下鉄を狙った爆弾テロで、200人近い死者と大量のけが人が出て、今、ベルギーは完全封鎖状態になっていうるという。欧州の中心で多発テロが起きた。
犯人はベルギー在住のイスラム教徒だったということは、今の欧州の移民政策の失敗、そしてテロに対する脆弱さと、混乱を象徴しているようにも見える。
先日、ブルッセルでパリ同時多発テロの犯人として指名手配されていた犯人の一人が逮捕されたことへの報復であるとの犯行声明が「イスラム国」から出ているのだとか。
テロリスト集団というよりは狂信者集団、キチガイの言っているテロ目的なんか知りたくもないが、現在、ベルギーのみならずヨーロッパ全体、いや世界に対して自分達の存在を誇示したい彼等にとっては、右往左往する欧州の状態こそが、テロの目的達成、ということなのかもしれない。
右往左往といえば欧州ばかりではない、今日、日本発の欧州行きツアーの多くがキャンセルとなったというし、パリに続いてベルギーでテロとなれば、これからの旅行シーズン、敢えて欧州旅行を計画する日本人は大きく減るだろう。（イタリア・ポンペイを観にいく計画をしていたタカさんも、家族からシリア行を計画している戦場カメラマン同様の非難にさらされてしばし見送らざるを得ない）
日本でこれぐらい過剰な反応がでているぐらいだから、当事者である欧州での反応は大変なものだろう。
特に、EU離脱の国民投票を6月に控えたイギリスでは、移民排斥の気運が高まるのは避けようがないのではないだろうか。実際、ロンドンの賭け屋の倍率は、「離脱」に賭ける方が本命になってきているという。（タカさんも賭けに加われるなら、配当は悪くても「離脱」に賭けるだろう）
イギリスがEU離脱となれば、日本でも「やっぱり、移民はなるべく受け入れない方がいい」なんていう意見が高まる可能性だって考えられなくはない。
それがイスラム国のテロの真の目的だったのだろうか？
（03/23/16 10:00pm）
2016年3月23日
AI審査員
作家故星新一はショートショート（掌編小説）の盟主として有名だ。彼の名を冠した文学賞である「星新一賞」も、その応募規定をみると「作品は1000O字以内」とあるから、まさに掌編小説に与えられる賞なのだろう。
この星新一賞の大賞は逃したものの、その一次審査にAI（人工知能）が書いた小説が残っていたことがわかり折から、韓国の囲碁名人にAIが勝ったことが大ニュースとなっていた矢先だっただけに各紙が取り上げていて、「いつの日かAIが小説を量産する日」がくるのではというコメントなどが載っている。
一次審査を通過した作品の全部が公開されている訳ではなく、その一部が公開されたに過ぎないので、その作品の良し悪しを判断する材料はないものの、その公開された一部分を読む限り文章的には違和感はないし、中々斬新な小説らしい文章になっているようにも思えるから、「これはAIが書いたものです」と言われない限り、気付く人はいないかもしれない。（生身の人間が書いた文章でも、トンチンカンなものは数多い）
囲碁や将棋のように「正解がある」ものなら、AIの知能が人を上回る日がくる可能性は考えられないではないと思っていたが、小説といった人間的な感性に基づいて書かれるものでは中々AIでは人間の真似は出来まいと高を括っていた。しかし、この文章の断片を見る限りでは、「ひょっとしたら、AIが小説という分野でも、人間に追いつき追い越していく日が来る可能性がないとは言い切れない」という気もしてきた。
文学という分野で、AIが人間を凌駕するようになる、となれば、それこそ、我々人間にとっては、そのアイデンティティーの危機ともいえる事態ではないかという気がしないではない。
かつて、ノーベル賞を受賞された小柴先生が、「アインシュタインとモーツアルトのどちらが天才だと思われますか」と問われて、「アインシュタインの理論は彼が発見しなくてもいずれ誰かが発見しただろうが、モーツアルトの音楽は天才である彼にしか作れない」と答えられたと聞いて、文学やら音楽、美術といった芸術は、人間の領分であり、とてもAIには追いつけないだろう、と考えたものだが、そんな考えも近い将来、修正を迫られるのだろうか？
まだまだ、モーツアルトの交響曲のような感動的な音楽はAIにはつくれてはいないとはいうものの、音楽界では、既にAIによる作曲作品や、ボーカロイドのような「電子音楽」が、いくらでもできているし、最近のニューポップなどのレコーディングの場合などは、既にバックの音楽はすべて「打ちこみ」といわれる電子楽器による合成バンドが使われ、昔のような楽団員多数によるバックバンドは必要なくなっているといった例もあるから、音楽や文学、美術などの分野でも「いつかAIが---」という日が来てもおかしくない。
AIにとって替わられた作家が大量失業する-――といった時代がくるのかもしれないし、そうなるとAI審査員がAIの作った「星新一賞」応募作品を審査する-――ということにもなりかねない―――その時、人間は一体どこにいたらいいのだろう。
（03/22/16 10:00pm）
2016年3月22日
負のループ
国際原油価格の低迷という僥倖（？）はあるものの、原発の再稼働が遅れていることなどもあって3.11以来の5年間における電気料金の値上げが続いている。
とはいうものの、3.11以来の通算で見ると北海道電力の24%や、関西電力の19%といった値上げ率は確かに高いものの、全国平均でみるとその値上げ率は10%に満たないというから、それこそ「ああやっぱり原発ナシでも、たかが10%の値上げで済むなら原発ナシでもいいか！」「金で済むなら原発いらない!」といった世論は強くなるかもしれない。（まあ、原油が又100ドルになったら〜、とか、火力ばかりに頼っているとCO2排出量が下がらず温暖化を招くのでは〜、といった声は、原発再稼働問題に比べれば「考えないことにしよう！」ということになるのだろう）
電力の値上げは、その理由は原油価格だとか、原発といった理由を挙げられれば、たしかに分かり易いとはいえるが、分からないのは電力の全国平均10％を上回る水道料金の値上げが続いているという事だ。震災で水道料金が上がっている？という訳もなさそうだし---と思うのだが―――。
この理由を調べてみて驚いた。もちろん水道料金の値上げ理由はいくつもあり、その中には、「震災による水道管の損傷の補修費用」といったものもないではないが、その費用は、全国規模でみても決して大きい数字ではないという。
主な原因は、特に地方における「人口減」なのだという。
例えば、国が規定する水道管の耐用年数が40年であるにも関わらずその耐用年数を超えて使用されている「古い」水道管からの水漏れ（漏水）によって酷いところでは送水量の約半分が失われており、これが全体の水道コストを上げているのだが、漏水を止めようにもその工事費の負担に人口減によって歳入が落ちている地方自治体ではとても耐えられず、そのままに放置せざるを得ないし、放置しておけば漏水はますますひどくなる―――といったことが起きているという。（自然保護の掛け声の下、節水運動によって皆が水を余り使わないように努力していることも、水道事業体の料金徴収という面からみると、「ありがた迷惑」な話だというから笑ってしまう）
地方毎に大規模な民間経営の企業が運営している電力事業と違って、水道事業は各市町村毎の公営の水道事業体が運営しており、特に過疎化や少子化などによって人口が減少している所では、こういった水道事業運営コストを残った少ない住民で分担していくしかなく、漏水部分の修理費や、古い水道管の交換といった費用も出せない、といったこともあって益々一世帯当たり、一人当たりの水道料金は値上がりしていかざるを得ないのだとか。地方水道事業はまさに「負のループ」に陥っているというのだ。
これもある試算によれば2040年迄に全国の約半数にあたる604カ所の水道事業体で30％超の水道料金値上げが必要になり、中には現在の3倍以上に水道料金が値上がりする地方自治体が10団体もあるという。
かつて「水と安全はタダ」といわれた日本で、本来、山紫水明であるはずの地方（田舎）に行けば行くほど、水が高くなってくるというのだから―――「人口減」という問題は、実に深刻な問題なのだなぁ〜と実感させられる。
（03/21/16 10:00pm）
2016年3月18日
バカだねぇ〜
世の中には、オレオレ詐欺だのM資金、マルタ騎士団だのと数限りないほどの詐欺事件があるけれど、多くの詐欺事件は、あまり人の命が危険にさらされるといったことが無いためか、えてして「騙す奴は悪いけれど、騙される奴も相当アホだねぇ〜」なんていった具合に、笑い話の一つとして受け取られる場合が多いように思う。
あれだけ日々「オレオレ詐欺に注意しましょう！」というキャンペーンが行われ、新聞記事やテレビのニュースでも連日報じられているというのに何で騙されたのか？と、このごろは余り同情の声も集まらないようだし、M資金詐欺やらマルタ騎士団等の「秘密資金」をネタにした巨額詐欺事件などの場合でも、その被害者の多くは分別があるといわれる企業人などのであるだけに、世間は「偉そうにしている企業経営者や有名人も、あんな子供だましの詐欺に騙されてしまうのだから、本当はよほどのバカなのではないか？」なんて笑い者にされがちだ。
毎週のようにスクープを連発している「週刊文春」の今週のスクープは「落ち着いた語り口で人気のテレビコメンテーターで、経営コンサルタントのショーンＫことショーン・マクアードル川上氏の学歴がデタラメだった！」というものだった。
記事によれば、同氏はテレビ朝日系の「報道ステーション」を始め、多くの報道番組に出演しており、アイリッシュ・アメリカンの父と日本人の母の間に生まれたハーフであり、ニューヨーク生まれ、パリ第一大学、アメリカテンプル大学を卒業、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得し、現在、日本をはじめ各国に事務所を持つコンサルタント会社を経営しているという異色の人物ーｰｰｰと紹介されていたという。そんな異色さから、4月からの各局での番組改変では、ニュース番組でのMC起用も決まっていたという人物なのだとか―――。ところが、文春が明らかにしたのは、このショーンＫ氏の履歴の悉くが、真っ赤な偽りだというのだから笑ってしまう。
「文春」によれば、同氏は、生まれも育ちも熊本、両親ともに純粋な日本人であり、パリ第一大学やテンプル大学を卒業した記録どころか、受講した記録すらないし、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA（経営学修士）を取得した記録ももちろんないうえに、同氏の経営するコンサルタント会社のホームページとやらに写真付きで紹介されている「同社の経営パートナー」なる人物2名は、全く同社とは関係のない人物であり、そもそも、「ショーンＫ氏の経営するコンサルタント会社」そのものが実在するかすら怪しいというのだ。文春の報道直後、ショーンＫ氏は自らの経歴に「間違いがあった」ことを認め、各テレビ局に降板を申し入れたという。ショーンＫ氏、まさに、典型的な詐欺男であったことは明らかであるが―――。
さて、ここでタカさんが「バカだねぇ〜」と笑ってしまうのは、もちろんショーンＫ氏自身ではなく、同氏にだまされて、いままで彼を報道番組でコメンテーターとし出演させ、春からはメインMCとして起用しようとしていたというテレビ各局である。
文春がちょっと調べたらバレたような詐欺に騙されたテレビ局のアホさ加減を思えば、これから先彼等が作る「報道番組」なんか、本当に見る人がいるのだろうか―――。もし、いるとしたら―――「バカだねぇ〜」と笑われてしまいそうだ。
（参照：「騙される人」10/23/03）
（03/17/16
10:00pm）
2016年3月17日
ゴチバトル
売春や麻薬、あるいはバクチといった行為には加害者も被害者もいない。
なぜこれらが犯罪になるかといえば、ただ単に「法律が禁じているから」である。
とはいえ「悪法といえども法は法」なのだからと、当事者同士が納得ずくでやっている私的な行為を禁じてしまう、いかにも今流に言う「人権侵害行為」にも思えてくる。
売春にしても、麻薬（たとえばマリファナのようなもの）にしても、多くの国や地域によっては合法化されているし、日本だって競馬、競輪、宝くじ、パチンコ等々合法化されたバクチはいくらでもあることを考えると巨人軍やら阪神、西武がやっていたという試合前の選手同士での「声出し」で金銭のやり取りが行われていた！からと言って何が悪い？と居直ることもできるはずだが、巨人も阪神、西武も「疑惑を招くようだから、今後はやらない」などと慌てふためいている。しかし慌てふためいているということ自身「ああ、やっぱり連中だってこれはバクチだ、と知っていながらやっていたんだなぁ〜」と思えてしまう。
しかも球界の盟主といわれる読売巨人軍でバクチが行われていたことが発覚したからと言って、NPB（日本プロ野球協会）のコミッショナーまで大慌て、巨人軍をかばうように「声出しに金を出していたのは賭博行為ではない」などと逸早く、無罪宣言をだしたのはとんだ逆効果だったようだ。
おかげで、「それはおかしいだろう！」とNPBに反発した弁護士やらスポーツコメンテーターが騒ぎだしており、連中の言っていることの方が、NPBや巨人軍の苦しい言い逃れよりよほど、筋が通っているようにも思える。
そもそも「一体賭博行為とはなにか」「どこまでの賭けが良くて、どこからがダメなのか」となると、実に不明確だ。
野球協約では、「敗退行為」を禁じているが、あの「声出し」では、チームが-負け試合の場合、声出しした選手から各選手が1000円を受け取っていたというから、「敗退」によって利益を得た選手もいることになり、そうだとするとNPBコミッショナーのいう「野球協約の敗退行為には該当しない」という強弁は通用しないのでは？
「小さい金額なら問題ないのではないか」という説もあるが、「小さい金額」とは一体どの位なのか、となると又、難しい問題になってくる。
テレビのバラエティーに「ゴチバトル」」という番組があるけれど、タレント達が数人で高級レストランに行って、食事をしてそのメニューの金額を当てる---というものだが、負けたタレントが全員の食事代を支払うとなると、時にはその総額が50万円に及ぶこともあるからこれは決して「小さい金額」とは思えないが---そうなるとこのテレビ局、堂々と博打番組で視聴率をかせいでいることになる―――。
そうそう、確かに、博打の対象になっている競技の関係者がその博打に参加したのでは敗退行為（八百長）の可能性があるから問題ではあるが、他のスポーツ競技の選手が、公認の博打行為（例えば、公営競馬や競輪、サッカーのTOTO等）をやっても問題にはならない―――等々、突き詰めていくと、「博打はなぜいけないのか？」という問題、一筋縄では理解できないところがある。
（参照：「賭博は犯罪ではない」00/03/17）
（03/16/16 10:00pm）
2016年3月16日
軟膏入りのマヨネーズ
民主と維新の野合（おっと失礼、合流）新党の名前が「民進党」に決まったのだとか。本欄でも以前書いたように（参照：「党名公募」3/3/16）、民主と維新の合流ならばいっそ簡潔に「民主維新党」にでもしたらよかろうという応募でもあったのだろうが、それではあまりに露骨だというので「維新」の「新」の字を「進」に変えただけなのかなぁ〜という気がしないではない。
もともと民主党のベテランの中には「民主」の名前が残った方がよい、という意見も根強かったというから、「民進党」と言う名にするぐらいなら、いっそ「民主進歩党」とした方がよいという意見も多かったらしが、「民主進歩党」は台湾の「民進党」の正式党名であり（「民進党」の方が、略称なのだとか）、台湾から「党名をパクられた！」とのクレームが予想されるので使えなかったらしい。（もっとも、「民進党」であってもオリンピックエンブレムの佐野さん並に、これから色々なところから、パクリ疑惑がささやかれそうだが---）
さて、どうにか付け焼刃的に党名は決まったから、これからは「党の綱領作り」だそうだ。
世の中、何か新製品を出す際に、まず中身の製品を決めてから、その後でその製品に相応しいと思われる「新商品名」を公募するなりして決める、というのが順序だが、新党の場合、まず新商品名を決めてから、それからどんな中身の商品にするかを決めようということらしいから（何しろ新商品名を決めておいてから、さあこれから売り出す新商品は、マヨネーズにしようか、それとも軟膏にしようか決めよう！というだから―――）政党という業界は随分とイレギュラーな業界だという気がする。しかも、民進党という新商品（政党）は、今後、共産主義を信奉する「共産党」とも共闘していく可能性すら残しているとなると、なんだか、「軟膏入りのマヨネーズ」みたいな訳の分からない商品になる可能性まであるのだから、選挙民の多くが「新党に期待しない」と答える（答えざるを得ない）のも分かるような気がする。
もっとも新党は、「党名もきまったし、これから綱領を決める」といっているらしいが、選挙互助会でしかないと言われ続けてきた民主党の場合、結党以来15年以上「綱領なし」のヌエのような政党だったし（綱領が決まったのは2013年の事）、民進党だって同じ道を歩む可能性は高いから、軟膏入りのマヨネーズに更にニンニクペーストが入っているという、何とも訳のわからない「新商品」になる可能性が大だ。
この10年、20年、数十に及ぶ政党が誕生し消えていったが（残っているものはほとんどなく、数名単位の泡沫政党になり下がっている）、発足早々で縁起でもない！と叱られそうだが、民進党も、果たして3年後、5年後、いや来年ですら「民進党」のままで存在しているかどうか――と思わないではない。
（03/15/16 10:00pm）
2016年3月15日
AI社会の犯罪
昨年8月、中野のマンションで当時25歳の劇団員の女性が殺害された事件の、容疑者として逮捕されたのは、女性のマンションから400メートル離れた所に当時住んでいた37歳の男だった。逮捕のきっかけになったのは警察が任意提出を依頼し、男が応じたDNAが被害女性の爪の間に残されていた皮膚のDNAと一致した為だったという。
犯罪捜査にDNAが採用されるようになったのは1980年代からだが、当初はそのDNA検査の精度はせいぜい200人に1人程度の率で違う人物のDNAと一致してしまう可能性があるといわれ、「真犯人ではない」ことを証明するすなわち冤罪事件の証拠として採用されるのがせいぜいで「間違いなくこのDNAの持主が犯人だ！」と特定できるほどの精度ではなかったというが、現在その精度は4兆7千億人に1人を見分けられる迄になっているというから、地球上の全人口が現在でも70億人に過ぎないことからすれば、その670倍もの人口の中から一人を特定できるわけで、二つのサンプルのDNAが「偶然にDNAが一致した！」という確率は二人が一卵性双生児同士でもないかぎり「絶対にない」と言ってよいほどになっている。すなわち、今回の場合「被害者が抵抗する際に容疑者の皮膚を爪で引搔いたが、その皮膚のDNAと容疑者の物とが一致した」と考えてよいだろう。
もっとも、逮捕された当初、この容疑者は「自分は女性の部屋に行ったこともないし、彼女を知らない」と容疑事実を否認していたから、このDNA以外の物的証拠がないとなると今後の裁判においてこの男を有罪に持ちこめるかどうかは、微妙だったともいえるが、その後の報道によればこの男が事件前日の8月24日の日中に、現場マンション周辺を歩く姿が、複数の防犯カメラに写っていたことも判明したというから、「マンションに行ったこともない」という容疑者の供述の信用性は尽き崩れるだろうし、そうなれば、いずれ自供する可能性も強まるだろう。（自供から、被害者の持ち物などが発見されれば新たな物的証拠が得られる可能性は高まる）
被害者の周辺にいた人物など数千人からDNAサンプルを採取し、それをしらみつぶしに検査した結果、容疑者が浮かび上がり、更に数か所に置かれた防犯カメラの映像からも犯人が当日犯行現場周辺をうろついていた画像が見つかる---という今回の捜査手法は、数十年前には考えられなかったもので、未来社会での犯罪捜査の行方を占うもののように思う。
すなわち、全ての個人のDNAを登録しておき、しかもあらゆる人々の全行動の監視記録が残る―――となれば、犯罪が行われれば、それらのデータ（DNAと行動監視記録）を基にAI（人工知能）を使って検索しさえすれば、瞬時にして犯人が分かる―――なんていうことになるかもしれない。
もちろん、DNAがあくまでも個人情報の一部である国民全員のDNAを登録させる―――あるいは、同じく個人のプライバシー論争が起きている「全員の行動監視記録保存」なども容易に実現するとは思えないが、少なくともそういった捜査方法があるということが衆知されれば、「犯罪はその罰則に比べればやるだけ損だ」という認識から、それをかいくぐってでも窃盗なり強盗、殺人などの犯罪を起こそうと試みる者はいなくなる可能性はある。
「AI社会の実現で犯罪がなくなる」そんな考えは、あまりに楽観的過ぎるだろうか。
（03/14/16 10:00pm）
2016年3月14日
虚栄という本能
テレビバラエティーやクイズ番組などに美人女医として出演していた女が、診療報酬詐欺容疑で逮捕された。実際に診察してもいない患者の保険証番号を使い健康保険組合へ虚偽の診療報酬請求を繰り返していたという。
暴力団と繋がった接骨医等が多額の診療報酬詐欺を行い、この金が暴力団組織の資金源になっていた――という事件があったばかりだが、この女医もその背後には暴力団の影があるとも伝えられるから、前から言われていることではあるが、保険制度の運用上そのものに根本的な問題があるのではないか―――とも思うが――さしあたってタカさんが今回取り上げたいのはこの女医の「虚栄心」についてである。
思いがけない逮捕だったようでこの女医のブログがまだ閲覧可能だが、「女医」というイメージとはかけはなれたまるで女性モデルのようなおしゃれなもので、彼女自身のご自慢（？）のポーズ写真やら、食べにいったおしゃれなピザ屋だの牛タン屋だの話題が盛りだくさんだ。そういったページをクリックして詳しく読んでみたりはしなかったけれど、きっと、「こんなおしゃれなお店ばかりに行っている私ってお金持ちの女医だし、すごいでしょ！」という自慢で溢れていることだろう。
新聞によれば、歌舞伎町のホストクラブで一晩900万円の散財をした！という記事もあったが、同じ記事では彼女のクリニックにはほとんど患者が来ていた形跡はないとのことだから、この女医さん、せっせと虚偽の診療報酬請求書を組合に出し、手に入った濡れ手で泡の金額の大半を暴力団にみつぎ、残りのあぶく銭でホストクラブやら高級レストランで浪費していたとも類推できる。
ハラスメント的な発言ととってほしくはないが、女性が横領だとか詐欺などを働くケースの多くで、このような豪遊をしていたというケースが男の場合より多いような気がするが、なぜなのだろう。（男の場合、ギャンブルだとか、女に貢いだ、といったケースが女性の場合よりはるかに多いような気がするが）
なぜ女はこんなバカげた虚栄の為に詐欺といった罪を犯してしまうのか―――？色々考えてみたけれどどうにも理解できない。（犯罪者と同じ心理が分かるようなら、タカさんも犯罪者になる可能性が高いということにもなってしまうが---）
生物学的に言えば人間を含むあらゆる生物は、自分の子孫を残すために生きている、という理論も成り立つらしい。
そうだとすると「下手な鉄砲も数射うちゃ当たる」という諺にある通り、男（オス）にとってはなるべく数多くの交尾の機会を得ることが「自らの遺伝子を残す」為のベストの戦略となるけれど、女（メス）にとっては、数回しかない自分の遺伝子を残すチャンスには、もっとも優れた（生き残る可能性の高い）遺伝子をオスから受け取ることがベストの戦略となる。
すなわち、オスにとって魅力的なメスになろうとする―――というのがメスの持った生物学的な本能ということになる―――のではないか―――。
そう考えると、この女医さんの「私って凄いでしょ！」アピールである虚栄心は、きわめて本能的なものであり理解できるということにもなるが---。
虚栄心というものの恐ろしさと同時に不思議さを感じた事件ではあった。
（03/13/16 10:00pm）
2016年3月11日
アルゴリズム取引
デリバティブ取引の基本にあるのは裁定（アービトラージ）といわれる市場間格差を捉えることによって利益を得ようとする取引だ。
A市場では供給過剰なので安い品物を買って、その品物が供給不足なので高い値がついているB市場で売ればその差額が利益となる―――という至ってシンプルな摂理に基づいているものだが、この取引で儲ける唯一と言ってもよいコツは、何しろ「Aでは安い品が、Bでは高く売れる」という情報を誰よりも早く入手することだ。
もし、この情報が皆の知るところとなってしまえば、たちまちの内に皆が「Aでの買い、Bでの売り」に動いてしまうから、両市場における価格差はあっという間に無くなり、もうけを手にすることができなくなる。
世界にはいくつかのデリバティブ市場がありその市場間での取引も盛んに行われているから、この市場で利益をあげようと思えば誰よりも早く動く必要があるのだが、今やこの手のデリバティブ取引ではその情報の伝達時間は1ミリ/秒単位で行われており、各ディーラーが一秒間に数千回の取引を行う、などということが行われているとなると、他を出し抜く（少なくとも他に遅れをとらない）ことは、至難の業だ。
そうなると、勿論こういった市場で1ミリ/秒単位の取引を一秒間に数千回単位でこなせるのは、すべて超高性能コンピューターということになる。
反応するのに数秒単位、すくなくとも1秒はかかる、人間がマニュアルで対抗しようとしても、それこそ100戦100敗、一秒も経たない内に数億円、数十億円の損失を出してしまうだろう。
このようなコンピューターによる1ミリ/秒単位の取引は「アルゴリズム取引」といわれるもので、コンピューターに「こういう場合には、こう動け」という複雑なアルゴリズム（数式）を設定しておき、このアルゴリズムに基づき（そのアルゴリズムもコンピューターが作っている）コンピューターが瞬時に、取引を成立させるのだが、その取引現場（といっても全てコンピューターの中ということになるが）でみれば人間の手が全く介在しない電脳の世界での出来事であり、こういった電脳世界で日々数十兆ドルの取引が行われているというのだから、想像もつかない世界だ。
この凄まじい金額が瞬時に動いているとなれば、もはやどんな大国であろうが、世界的金融機関（例えばIMFのような）であろうが市場を恣意的にコントロールすることなど全く不可能だ。
デリバティブ市場、広くいえば国際金融の世界では、既に人が介在しない（介在できない）電脳空間による支配が完結しているし、その空間は多分近いうちに、1ミリ/秒単位から1マイクロ（100万分の1）・秒単位、さらには1ナノ（10億分の1）・秒単位の取引へと我々人間からみたらまさに神の世界へと激走を続けていくだろう。
金融の世界で進んでいることが、我々のあらゆる日常の事柄でも進むようになるだろうことは、確実だ。それこそ人間らしいと思われていることがら、たとえば恋愛における男女の微妙な感情の機微、といったことさえすべてアルゴリズムに組み込まれ、コンピューターが人間の感情より早く、結論（これ以上この相手と付き合っていても、無駄だ！といった）を出してしまうようになったら―――。
電脳社会の行きつく先に余り期待する気になれないのは、タカさんだけだろうか。
(03/10/16 10:00pm)
2016年3月10日
柏そごう閉店
もう40年近く前になるけれど、新婚所帯をもったのは、常磐線柏駅から二駅ほど東京寄りの駅の近くだった。
上の娘が生まれた直後など妻は子供の世話に追われ、こちらも（まだ週休2日制ではなかった）休日の朝は疲れ切っていて寝ているのが楽しみ、といった状態だったから、夫婦二人ともに遠出する気力も（金も）なく、楽しみといえば、月何回かの日曜の夕方、電車に乗って柏のデパート巡りをして、そこにあったレストラン街で食事をすることだった。
赤ん坊だった長女を座布団の上で寝かせて食事のできる畳敷きの天ぷらだとかトンカツの店によくいった記憶があるのだが、今思いだすと、実に懐かしい楽しい思い出だ。
あの頃、よく行った柏のデパートの一つである「そごう柏店」が今年9月に閉店するというニュースを朝刊でみた。大型商業施設に押され売り上げはピーク時の半分以下に落ち込んでいることが閉店の大きな理由ではあると書いてあったが、中国人観光客などの爆買いなどもあって都心部のデパートは売り上げを伸ばしている、というのだから皮肉なものだ。
確かに、常磐線とほぼ平行して走るつくばエクスプレスが開業以来、東京近郊の中小都市の駅で乗降客数が落ちているのは唯一柏駅だけということを聞いたことがあったが、そんな事情も重なったのだろうか-。
地方の都市でのデパートが次々と閉店していくニュースはここ10年ほどしばしば耳にしているが、実際に自分が行っていたデパートの閉店のニュースというのははじめてのことだけに、少しショックを受けた。
かつては「デパートに行く｝となればそれこそ一張羅に着替えて出かけるなんていう時代もあったが、今やデパートという業態が現代の生活に合わなくなってきているということはあるのかもしれないし、この先、日本は大きな人口減少社会に向かっていくとしたらその要素も加われば、生き残れるデパートは中国人爆買い御用達デパートだけなんていうことになるのかもしれない。（実際、銀座で一番にぎわっているのは、ラオックス銀座店界隈であり、ラオックス前の道路は中国人客を乗せて押しかける観光バスで大混雑しているとか）
思い出の為に、9月までに一度、柏そごうにいってみようかなぁ〜とも思うけれども、考えてみると柏にわざわざ行くほどの他の用事もないしなぁ〜。（そういえば、そごうの近くに、美味いうなぎ屋があったけれど―――もうやっていないだろうなぁ〜）
（03/09/16
10:00pm）
2016年3月9日
日中友好これから
タカさんがはじめて中国本土に行ったのは80年代の初め、日中国交回復後とはいえまだ中国のビザ条件も厳しく観光目的などというビザは無かった時代だ。
偶々、中国からの鉄鋼原料（銑鉄）の輸入に携わっていたこともあって、北京や天津などを商用ビザで訪ねる機会に恵まれていたのは、まあ曲がりなりにも「バイヤー」の側であったから、割とビザが出やすかった所為だと思う。
（今も、開催されているようだが）その頃から春と秋の年二回、広東で「広州交易会」という貿易の商談会が行われており我が社もこの交易会の期間には「交易団」のようなものを組んでホテルに長期滞在していたが、その一員としてかなりの期間、広州に詰めていたこともあった。（広州には日本からダイレクトフライトがなく香港経由で、飛行機又は汽車で入っていた）
そのころの中国は鄧小平による「経済の改革開放路線」の初期の頃で、まだ随分と貧しく、人々は男も女も人民服（中山服？）を着ており、町中を走る自動車の数は極めて少なく、人々は皆、歩くか自転車に乗っていたものだった。（ホテルの窓から毎朝見る自転車の大洪水は実に圧巻だった）
日本と中国は長い戦争の時期を経てきたこともあって行く際には、彼等の日本人に対する感情は相当悪いことを覚悟して、ある意味ではこわごわと行った中国だったが、当時の中国指導部は、「あの戦争は、日本人全員が悪かった訳ではなく、日本の軍部など当時の指導者が悪かったのだ」という論理で人々を説得していたともいわれ、そんな所為もあったのだろうか、タカさんの経験では、現地で接触する中国人はみな温和で友好的であったことに何だか感動さえしたものだったが、そういう人々に接触すると戦後生まれで戦争を知らないタカさんも、「自分達の世代は、過去の償いの意味も忘れずに、未来にむけて友好的な関係を、（国と国の間ばかりではなく）個人と個人の関係においても結ぶ努力をしていかなければならない！」と思ったものだった。
当時の日中両国の人々の接触はごく限られた少数同士の中で行われていたこともあって、もちろん、日中の大衆レベルでの「日中友好」が進んでいた訳ではなかったのだが、そんな比較的小さな輪であった日中友好のムードが一変したのは、江沢民が主席となり、当時高まりつつあった天安門事件や共産党の強権に対する中国大衆の怒りの矛先を「反日運動」へすり替え始え、その大きなうねりのような反日感情が、ちいさな輪でしかなかった「日中友好」を吹き飛ばしてしまった時期からだ。
日本からの3兆6千億円に上る対中ODAの事実は中国政府は中国国民には一切伝えず、その一方では、「南京大虐殺30万人！」「日本軍による虐殺3500万人｝などといった虚偽の反日宣伝（朝日新聞などの国内の左翼メディアも一緒になっての）による日本の悪業ばかりを教えられた当時の若者達は、優等生であればあるほどほど「反日感情」を高めていってしまったし、そういった中国からの反日、嫌日に嫌気がさした若い世代の日本人が嫌中感情をもってしまったという悪循環が今の日中間にただよっているように思う。
そんな不幸な過去を持つ両国の「日中友好」だが、90年以降に高まった中国側の反日感情も、少しはかわりつつあり少しは、改善方向にうごきだしつつあるようだ。そう聞くと、昔を思いだして何だか少しうれしくなる。
爆買いばかりが話題になる、中国からの大量の訪日客の多くが、「日本のいいところ」に実際に触れ、その印象を母国に帰って周囲に伝えて呉れるようになったことで、20数年来の日中間のもやもやも少しずつではあるが晴れてくる兆しがあるというのだ。
タカさんの経験からも、やはり、お互いが実際に相手の国を訪ねてみて、一般の人々と触れ合ってみれば、案外自分達が教え込まれた恐怖感のようなものは消え、親しみの感情が湧いてくるのだと思う。政府主導ではなく、やはり民間主導、そして個人対個人の関係から日中友好を再構築していくべきなのかもしれない。
銀座や浅草に行くと大挙して押しかけてきている中国人にまるでそこが占拠されてしまったような威圧感を感じない訳でもないが、彼等がそうやって日本を楽しみ、実際に感じ、そして触れてみた日本の印象を、友人知人に語ってくれることによって、いつか再びあの80年代初めのような日中友好ムードが高まればよいのだが－と思う。
（03/08/16
10:00pm）
2016年3月8日
五年は長い
関東大震災が起きたのは大正12年9月1日だ。大正11年生まれの亡くなった母は震災の時、1歳2ケ月だったらしいが震災の記憶は全くないといっていた。只、折から起きた火災から避難する為に、母親に負ぶわれて逃げた際に、風に煽られた火の子が飛んできて、首のところに落ち、つけ根の辺りに小さな火傷を負ったのだという。小さな火傷の後を見せてもらった記憶があるが、祖母は「娘の体に傷を負わせてしまった」と永く悔やんでいたのだとか。
東北大震災から間もなく5年、今一年生の孫娘にとってあの震災の記憶は全くないようだ。地震が起きた直後、関東でも大分揺れていたから、娘は慌てて孫に「こたつの中に入りなさい！」と命じたらしいが孫は「全く言う事をきかなかった！」と今も娘から責められている。孫娘にとっては全く記憶のないことで叱られても―――というところだが。
5年という月日は、タカさんの歳になってもそれなりに長い年月ではあるが、育ち盛りの幼い子供たちにとっては、とんでもなく昔の話だろうし「生まれる前に起きたこと」と変わりはないのではないだろうか。
それは戦後直ぐのベビーブーム時代生まれのタカさんが「戦後派」といわれるのに、昭和19年、20年生まれ、いや疎開の記憶もないような終戦前の数年に生まれた人たちが無理やり「戦中派」と仕分けられ、なんとなく「古い世代」のレッテルを張られているのと同じようなものだ。（もちろん、今やタカさん世代が「新しい世代」なんて呼ばれている訳ではないが）
東北大震災の被災地から避難生活を余儀なくされた人達の帰還が中々進まないことが、五年を迎える最近よく話題になっている。
壊滅的な被害を受けた町のインフラなどの復興が中々進まないとか、土地のかさ上げだとか、高台への移転といった工事がこれまた中々進んでいない、といった問題があり避難生活を余儀なくされている人も多いといわれているし、この五年間の間に、避難先、移転先で新しい仕事につき、それなりの生活基盤を築いた、といった方々、あるいは新しい学校に通いはじめている人達にとって、元の町に戻るという選択が難しくなっているという問題もあるだろう。
確かに、あの震災の時に1歳、2歳だった子供たちにとっては、かつて住んでいた故郷の記憶はほとんどないだろうし、新しい町で通い始めた小学校にいるたくさんの友達と別れ、親たちにとっては故郷かもしれないが、子供たちにとっては異郷の地に戻るということは、随分とつらいことなのかもしれない。
復興工事が進む町では役所などが中心になって大型スーパーやコンビニの誘致を盛んに働きかけているというが、進出しても採算が合うほどの住民がいるか――といった問題があって二の足を踏むところが多いとも聞く。そうなると、故郷に戻るつもりはあっても、住民にとっては、生活基盤を築くための設備などが揃っていることが条件となるから帰還をためらう―――ということにもなる。まさに、ニワトリとタマゴの追いかけっこの悪循環にもなっているようだ。
短いようでもあるが、つくづく五年という月日は長い！とも思う。
（03/07/16 10:00pm）
2016年3月7日
なぜ壊してしまったのか！
3年程前だったかスペインのベニドラムという町で完成間近の47階建ての超高層ビルに最初からエレベーターがないことに関係者が気付き大慌てしている―――というニュースが世界中を駆け巡った。「スペイン人って本当にアホだねぇ〜」なんてひとしきりお笑いネタになっていたが、数日後、このニュース実は全くの誤報だったことが判明、訂正記事も流れたが、今も第一報しか知らない世界の多くの人たちの間ではやっぱり「スペイン人って本当にアホだねぇ〜」と思われているかもしれないから、何とも罪作りな大誤報だった訳だ。
費用がかかり過ぎるだとか、そもそも技術的に建設不能なのではないか等々の問題を指摘されながらも誰も暴走を止められなくなった汽車の如くにズルズルと進められていた新国立競技場計画だったが、ようやく安倍首相のツルの一声で白紙撤回され、当初計画より1年以上遅れながらどうにか新デザインが決定―――という誠にお粗末な経過をたどったことは記憶に新しい。新国立のごたごたに加え、オリンピックのロゴ、エンブレムに選ばれた作品が、パクリだったことを指摘されるなどのドタバタと合わせて「本当に、東京オリンピックは大丈夫なのか？」との人々の不安が募っている折から、またもや「アホだねぇ〜」という大失態が発覚した。
新国立の設計には、オリンピックの象徴である「聖火」を掲げる聖火台が全く織り込まれていないことが今になって判明したというのだ。まさにエレベーターなしの超高層ビルであることがビルの完工間近に判明したようなものだが、この新国立の聖火台の場合、誤報でも冗談でもない正真正銘の「うっかり」だったというのだから―――。
今更、慌てて設計変更、なんていうことをやっていたのでは到底間に合わないだろうし、その一方、オリンピック規定からも「東京オリンピックは聖火なしで」という訳にはいかない――となると―――。（国際オリンピック委員会は「聖火台は原則として競技場の全観客から見える場所に設置すべき」と規定している）
「さあ、どうする！」という大問題を早急に解決しなければならないけれど、何しろ悪い事に、やり直しで選ばれた隈研吾氏設計の新国立競技場は木造を基調とした屋根がついており、屋根下で、聖火を焚けば火災の恐れもあるから、旧国立競技場のように観客席後方に置く訳にはいかないし－－－そこ以外「全観客から見える場所」なんてない！となると―――「どうしようもない！」というのが現状の答えだとか。
こうなったら、IOCに頭を下げて「東京オリンピックでは聖火なし」の特例を認めてもらうとか、これも特例として「場外に聖火台を置く」しかないというが、いずれの場合でも、世界の物笑いのタネになることは避けられそうもない。
こんな大問題を前にして、新国立のデザインやり直しの際のごたごた同様に、またもやJOCやら文科省、東京都やら大会組織委員会といった当事者は、「悪いのはアイツだ！」「俺の責任じゃない！」と責任のなすり合いをやっているという。（組織委員長の森元首相は、「一番悪いのは馳文科相だ！」と言っていると今朝のスポーツ紙に出ていたのには、又々笑ってしまった）
つくづく、第一回の東京オリンピックを成功させた当時の日本人はしっかりしていたなぁ〜とあらためて感心させられるし、半世紀を経た今の日本人の劣化に愕然とさせられる―――なぜ旧国立競技場を壊してしまったのか！と悔いるばかりだ。
（03/06/16 10:00pm）
2016年3月4日
民衆の選択
「イスラム教徒の入国禁止」「移民の流入を阻止するため、メキシコ国境に壁を築く」「すべての不法移民の強制送還」これらは現在、共和党の大統領選候補としてトップを走る不動産王ドナルド・トランプの公約の一部である。
吹き荒れるテロの恐怖、国境を超えて不法に入国してくるヒスパニックを中心とする人々による治安の悪化や社会保障費の増大、といった問題に辟易としている多くのアメリカ人にとっては、なんだか鬱憤の晴れる思いに響く言葉のようだ。
人種や宗教による差別を逃れて欧州から移民してきた人々が建国した国であり南北戦争や、公民権運動などの長い歴史を持つアメリカだけに、トランプがこういった一見、建国の歴史を否定するかのような過激な差別的発言を続けていた予備選の初期段階では、だれもが（おそらくトランプ自身も）、予備選中盤のこの時期共和党トップに彼が躍り出ているとは予想していなかったのではないだろうか。
スーパー・チュースデーが終わった時点でのアメリカCNNでの分析によれば、これでトランプの優位はかなり確定的となったとか。本選において、もし民主党候補クリントンと一騎打ちになった場合、という予想では、まだ、クリントンの方が数ポイントリードという状況だが、選挙というものは「下駄を履くまで分からない」とも良く言うから、トランプ大統領実現の可能性もある、と見ておくべきかもしれない。
それにしても、なんでこんな突拍子もない候補がトップに躍り出てきたのか―――。「民衆というものは常に賢い選択をする」と信じられてきただけに彼の公約には結構一理あるのかもしれない---なんて考えてはみたが－－－とてもそうは思えない。
トランプの公約の一つ「メキシコ国境に壁を築く」を例にとってみよう。約3200キロに亘るメキシコと米国の国境に高さ約6メートル、地面からの深さ約1.5メートル、幅は約3メートルの軽量コンクリートと鉄材の壁を築く予定だというが、その総費用はおそらく1兆円、と試算されている。トランプはこの費用は「メキシコに払わせる！」と言っているが―――。壁の建設も荒唐無稽と思えるし、その費用をメキシコが出す―――となると―――。本当に、トランプ支持者はそんなことが実現すると考えているのだろうか。
「すべての不法移民の強制送還」という公約にしても既に1100万人に上る不法移民の強制送還なんて、ナチスのユダヤ人強制収容所送りの規模の事を、現代アメリカで本気でやろうなどと考えている人が多いとなると―――、アメリカ人は正気なのか！？と思ってしまう。
そういえば、荒唐無稽、到底実現するとは思えない公約を支持してとんでもない目に合う、という経験は日本もつい最近している。「高速道路無料化」だの「普天間を最低でも県外・可能な限り国外に移転」「消費税増税は次の衆院選まで議論すらする必要なし」等々の美辞麗句を並べた民主党の公約を信じて投票し、政権を与えた結果、悉く公約を反故にされた挙句に、経済までメチャクチャにされ、今尚、その傷をいやし切れていないという痛い目にあっていることを思うと、アメリカ人に「用心しろよ！」と教えてやりたくなるが－－－。
「民衆というものは常に賢い選択をする」という言葉を余り信じてはいけないのではないだろうか。
（03/03/16
10:00pm）
2016年3月3日
党名公募
市町村合併にせよ企業合併にせよ合併後の新しい名前を付けるのは難しい。誰が見ても大が小を飲みこむような合併（吸収合併とか救済合併といわれる）の場合の多くは大の側の名前を残す場合が多いが、合併される側のプライドに配慮して合併当初は両者（あるいは三者、四者の）名前を残すなどという方法もよく使われる。（銀行の合併が盛んだったころの「太陽神戸三井銀行」だとか新日鉄住金、国立市と立川市の間にあるから国立市と決めた例等々）
そんな合併後の名前だが、その内に「名前が長すぎてイキではない」「合併前の企業のセクト意識がいつまでも消えない」「実質、大が完全に小をのみこんでしまっている」等々の問題もあって、あるいは心機一転、合併を機に思い切って新しい名前にしてしまおう！なんていう例もある。（第一勧銀と富士銀行、日本興業銀行が合併してみずほ銀行になったとか、ニチメンと日商岩井が合併して双日となった例等々）
もっとも完全なる新組織名の場合、合併前に両社がもっていた知名度を一挙に失うことになりかねないとか、OBやら産業界が持つ愛着などを一気に失う可能性もないではない、といった事もあるだろうから、なにしろ合併後の組織名を決めるのは難しい。
民主党と維新の党の合流が決まり新組織の名前をどうするのか色々もめているようだ。まあ、大である民主党が小である維新を「吸収する」というイメージがあるけれど、維新議員の過半近くを占める出戻り議員にとっては、「元の鞘の民主に頭を下げて戻ってきた」という印象を薄めたいという思いがあるからか「新党名は全く新しい物を！」となるし、落ち目の三度笠状態で復活の兆しも見えない民主党だけれども「20数年間の歴史を持つ」というプライドのあるベテラン議員辺りは「民主党」という名称に愛着もあるから「あんまりコッパヅカシイ名前になるのは嫌だ！」という意識も強かろう。（そもそも、苦しい時に後ろ足で砂をかけるようにして離党していった連中のいう党名変更なんかになぜ迎合する必要があるのか！という議員も多いとか。
新党発足の3月末までには党名を決める必要があるとのことだから、これから、ああだ、こうだと議論が始まるようだけれど―――（党名より何より綱領を決めるとか、政策を明示する、と言った方が先だとは思うけれど―――）
ところで、党名は公募で決めるというアイデアもあるようだけれど、日経の世論調査で「民主、維新の合流に期待する」という意見が25%と、「期待しない」の65％を大きく下回り、夏の参議院選で新党に投票すると答えたのはわずか13％という不人気さを考えると先月マクドナルドが仮称「北海道産ほくほくポテトとチェダーチーズに焦がし醤油風味の特製オニオンソースが効いたジューシービーフバーガー」の名前を賞金140万円で公募して結局、「北のいいとこ牛（ぎゅ）っとバーガー」に決まったように、思い切って賞金をはずむとか、「当選者には次の参議院選での無条件公認（選挙費用全額党持ち）」なんていう餌を出した方がよいのではないだろうか---。
このままタダで公募すると、今、実際、ネットの書き込みのまつり状態のままに「徒党」だとか「悪党」あるいは「七転八党」「維民となかまたち」「まつのおかだ」なんていうお笑いネタばかりが応募してきかねないから。
（03/02/16 10:00pm）
2016年3月2日
会議が好きな人
「お父さんは会社で何をしているの？」と小さい子供に聞かれた若いお父さん、あまり難しい説明をしても息子にはわかってもらえないだろうと思い「会議をしているんだよ」と答えたという笑い話を聞いたことがあり、現役時代確かにそういうこともあるかもしれないなぁ〜と妙に納得したことがあった。
企画だとか業務、調査といった商社の管理部門にいた時期には特に、会議の予定が目白押しだったこともあり、まさに仕事とは「会議」であったこともありうんざりしていたものだった。
会議といってもその種類はピンからキリではあるけれど、例えば役員たちが勢揃いする役員会だとか経営会議なんていう物になると、企画部門は資料作りに徹夜に近い仕事になり、山のような資料を準備しなければならないけれど、会議そのものはいわゆる儀式化しており、進行役が次々に議事を進行し、案件毎の発言者もシナリオ通り、その他大勢のその案件に関係ない役員は黙って資料をめくっているか、次に議題になる自分に関係する案件の資料をめくりつつ「内職」に励んで―――といったものであり、「会議とは壮大な無駄に過ぎないなぁ――」と思ったものだった。
もちろん、課単位、部単位での会議というものも頻繁にある。会議という名がついてはいてもこの種の会議の内実は単なる連絡会、あるいは報告会である。そうであるならば、上位者（往々にして彼等が議長役になる）が一方的に指示を出すとか、報告者から上位者に報告書でも上げれば済むことであり課の全員だとか、部の全員を集めて無駄な時間をかける必要なんて全くないのに――と思ったものだった。
そもそも、世の中に「会議が好きな人」なんているのだろうか。確かに会議を仕切っている人（例えば、役員会ならば会長、部内会議なら部長、といった）ならば、自分の発言を参加者が耳を傾けるし、指示を出すとか、叱りつける、といった自尊心をくすぐられるような場面もあるから会議が好き、ということはあるかもしれないが－－。（そういえば、やたらと時間の長い会議をやりたがる上司がいたなぁ〜）
一時期、「会議の効率化」なんていうことが言われ、アメリカの進んだ会社といわれる企業の会議術なんていうものが日本の経営誌などで盛んに紹介されていたことがあったが、確かその中でよく言われていたのが、「会議の参加者を極力絞り込む」「資料を作らない」「議事録不要」「できれば、スタンドアップ（立ったままで）形式が望ましい」「最長でも10分（30分だったかも）で終わらせる」なんていう項目がならんでおり、つくづく「我が社の会議に対する皮肉か！」と思ったものだった。
テレビをつけたらここのところNHKの総合テレビでは延々と国会中継とやらをやっていて予算委員会審議とやらをやっている。いくら時間がある時でも5分と見続けることができないほどのバカバカしい（失礼！）会議だが、一世一代の晴れ舞台のつもりで勢い込む野党議員の、テレビ目線のパフォーマンス、あげ足をとられまいと、なんとも中身のない閣僚の答弁、これまたそんなことでしか存在を誇示できない陣笠議員たちのウルサイだけのヤジ等々、国権最高の会議とは思えないものだ。
「国会議員ってどういう仕事をしているの？」と小さい子に聞かれたら「会議をしているんだよ」と答えるしかないけれど―――「会議」の頭に「無駄な」という言葉を入れてしまいそうだ。
（03/01/16
10:00pm）
2016年3月1日
日本人の差別意識
肌の色や国籍、あるいはジェンダーや宗教等々至る所に「差別」のタネがあるが、公共の場で男性用トイレと女性用トイレが分かれているのは男女平等に反する差別だ！と言いだす人はいない。これはジェンダーに基づく男女の「区別」（Difference）であって「差別」（Discrimination）とは全く異なるものだからだ。
「差別はよくない」というコンセンサスは、フランス革命前後の人権思想から生まれたものであってその歴史は長い人類史の中でみれば比較的新しいものだ。それ以前の身分社会においては「人は皆平等」とは考えられておらず、それぞれの生まれや身分、ジェンダー（例えば男尊女卑といった）によって差があって当然と考えられてきて身分の高い者も低い者もそれぞれが「分相応」であることが美徳とされてきたのだ。
そういう意味では、まだ歴史の浅い「悪いこととしての差別」の概念は、今一つ人類の中で絶対的な基準とはなっていないのかもしれない。それは、人権の総本山、国連でさえもその定義について「差別には複数の形態が存在するが、その全ては何らかの除外行為や拒否行為である」と定めているものの、「何らかの除外行為」というあいまいな定義に批判（女子トイレに入ってきた男を「除外」するのも差別になってしまいはしないか、といった）があることからも分かる。
国民の98%以上が大和民族に分類されている日本人だから差別意識は少ないかというと、全くそんなことはなく、単一民族であるだけに外国人が日本に住んで感じる差別意識は、他の国にはないほど強いものだという。（青い目、金髪の白人に対する憧れでさえ差別意識の裏返しだし、肌の色が濃い、アフリカ系やアジア系の人達へのアパートの賃貸などの差別は相当酷いものがあるとか）
そうそう、先場所、琴奨菊が優勝したとき日本のマスコミ（もちろん公共放送であるNHKを筆頭に）は一斉に「日本出身力士10年振りに優勝！」と臆面もなくはやし立てていた。「日本人力士」というだけでも「外国人力士」との差別ともとれるが、一番問題なのは琴奨菊が「10年振りの日本‘出身’力士」と ‘出身’を入れている点だ。
その理由は実は、10年前に栃東が優勝して以降、日本人力士としては2012年の5月場所に旭天鵬が優勝しているのだが、彼はモンゴル出身で日本に帰化したいわゆる「帰化日本人」であるから琴奨菊優勝を「10年振り日本人力士優勝！」とはいえないから、そこは「日本‘出身’力士10年振りに優勝！」などと曲がりくどい言い方をしたのだ。そこには「帰化日本人である旭天鵬は、正式な日本人とは言えない！」といった変な差別意識が働いているように思えてならないのだ。
これも昨年だったが、憎らしいほど強いと思われていた白鵬が稀勢の里に敗れた一戦では場内では万歳三唱が唱えられ、日の丸の旗が揺れた。日本人力士以上に相撲道の事を理解し日本を愛している白鵬だが、帰化申請をしないで生まれた国、モンゴル国籍にも愛着を持っているといわれることに対する日本人の一部の「差別」意識が図らずも出たような気がして嫌な思いをしたものだったが---。
今月13日からいよいよ大相撲大阪場所が始まる。日本人力士だとか外国人力士だとかに変にこだわることなく、全力士の奮戦を大いに期待したいと思う。
(02/29/16 10:00pm)
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