日々早々バックナンバー

2016年上期の各月バックナンバー：1月、2月、 3月　 4月 5月　　6月

フロント頁：”日々早々”のバックナンバー

2016年5月

＜＜5月タイトル＞
05/31 ドライブする楽しみ 05/30 止まらない増産 05/27 ギリシャの切り売り 05/26 爆発とその終息 05/25 最終ではない最終 05/24 同時はセーフかアウトか 05/23 第三者の調査にゆだねたい 05/20 ああ、よかった！ 05/19 情状証人 05/18 なかったことに 05/17 回転寿司会議 05/13 和風の名前 05/12 やめたい拍手 05/11 小さい、小さい 05/10 唐人町の親切 05/09 アウンサンスーチー

2016年5月31日

ドライブする楽しみ

飲酒運転防止装置としてエンジン始動の際に運転者の呼気からアルコールを検知したらエンジンがかからない装置（アルコールインターロック）の研究が自動車各社で進んでいるという。

飲酒運転の罰則強化がはかられ飲酒運転で死傷事故を起こした場合、個人であれば重い刑事罰、それに多額の損害賠償、あるいはサラリーマンであれば雇用先からの解雇処分といった重罰を受けることが広く知られるようになったし、運送会社などの場合には自社のドライバーが飲酒運転事故をおこせば、その企業全体が信用を失って最悪、倒産といったことも起きうることを考えれば、このアルコールインターロックがもっともっと普及してもよさそうに思うが、未だに日本全国でこれをそなえつけている車は数千台に過ぎないというのは、この装置が一台数十万円とまだまだコストが高すぎること、いくらこの装置をつけても飲酒運転の常習者の中には、この装置を解除してしまう者もいる（すなわち、解除できるという欠点をもったシステムである）からだと言われている。

要はいくらこういったシステムを開発しても、あるいは設置を義務付けたところで、人間という信用のならない者が運転する以上は、やはり飲酒運転事故が起きる可能性は排除できないということなのだ。

自動車の運転といえば、今、アルコールインターロックなどよりもはるかに大がかりな研究が進んでいるのがAI（人工知能）を駆使しての自動運転だ。今年に入ってからは毎週というか毎日単位で自動運転の話題がニュースを賑わせていて、路上実証実験も行われていて中々の好成績を上げているようだ。ただ、まだこの自動運転の信頼性に対する人々の同意が中々得られない状況だし、もし自動運転中に事故を起きた場合、その事故の責任は誰がとるのか―――自動運転を指令した所有者なのか、あるいは自動運転装置のメーカーなのかといった―――法律問題などがクリアーになっていないことで自動運転の実用化（街中を自動運転車が走りまわるといった）がいつ頃になるかは見通せない状況だが、世の中は車の自動運転化に着実に向かっていることだけはたしかなようだ。

すなわち、免許を取り立ての女性とか、老齢によって運転能力が低下している人間よりも、AIの方がよほど信頼できる―――と世の中が認知するような時代が、5年後なのか10年後なのかわからないが必ず来るのではないかと思える。（最近のAIの進歩速度から考えたらひょっとしたら3年後かもしれない）

そんな時代（自動運転車が街中を走っている時代）が更に進めば、こんどは場合によっては罰則がどんなにきびしかろうが、飲酒運転をしてしまう信用のならない人間よりも、絶対的に安全な人口知能による自動運転の方がはるかに信頼が置ける―――という時代がくるだろうし、そうなると、自動運転ではなく逆に「人間が運転する車」を全面的に禁止する！という時代がくるかもしれない。（いや、きっと来る！）

自動車事故がゼロになる未来がくると思えばまさに夢の時代がもう間近に迫っているとも考えるが―――その時、いま我々が享受している「ドライブする楽しみ」は、どうなっているのだろうか？

（05/30/16 10:00pm）

2016年5月30日

止まらない増産

先日発表された中国の4月の粗鋼生産量はその前月の粗鋼生産量7065万トンという15カ月振りの月間最高更新であった数字の更に0.5％増だった。3月の粗鋼生産量もその前月の前月比2.8％であったことを考えると、何のことはない中国の鉄鋼生産は昨年の習近平の「粗鋼生産量を適正水準に戻すために減産せよ！」という大号令と真逆の事態が進んでいることになる。

4月の粗鋼生産量（7100万トン）を単純に一年分（12カ月）に換算すると8億52百万トンという巨大な数字になる。これは世界の総生産量16億7千万トンの50％を超す数字である。（世界第二位の生産量を誇る日本のそれでさえ中国の1/7に満たない1億2千万トンだ）

もちろん、世界の年間鉄鋼需要がこれに近い数字ならなんの問題もないが、世界の現在の鉄鋼需要は粗鋼ベースで年間12億
ンが目一杯だともいわれていることを考えれば、習近平が号令をかけたように世界の半分を生産する中国が年間1億トン程度は減産しなければ、中国のみならず世界の鉄鋼メーカーが破綻しかねないという状況であることは明らかだった。

確かに一時期世界的な減産ムードが漂い、中央の司令に従った一部の省政府支配下にある鉄鋼メーカーなどが減産体制に入ったことが、それを好感した鉄鋼マーケットが瞬間的に回復、中国では一時期250ドルにまで低下していた熱延コイルの国際価格が400ドル台にまで回復、そうなると中央の司令もものかわ地方製鉄所は我先にと閉鎖していた生産ラインを再開、再び8億トンというキチガイじみた生産量となりこのままでいけば年内に中国での粗鋼生産は年間9億トンペースになるとも危惧されている。

この間、世界各国の鉄鋼需要が急回復しているという兆候は一切なく、あまり中国製品と品種が重ならないといわれている日本の鉄鋼メーカーでさえ需要の伸び悩み（一つには中国向けの高級品の輸出量がおちていることもあって）、この3月期の最終決算では前年比3割から5割の減益を発表している。

一時期回復したかにみえた市場価格もここに来て中国企業が余剰生産の在庫の投げ売りにはしりはじめているために急落状況にあり、中国と製品分野で競合するインドやブラジルの製鉄所の経営危機の噂もではじめているという。

もちろん、中国の各社ともに中央の指示にしたがってできれば減産をしたいのだろうが、減産による合理化で従業員を大幅に合理化しなければならず、そうなればクビになった大量の従業員やその家族による暴動なども危惧され、共産党政権自身が揺らぐ---となれば鉄鋼会社同士で生き残りをかけた無茶な大増産競争をやりつづけるしかない。（相手が潰れるまでやらなければ自分が潰れる）

1940年にミッキーマウスのアニメのデビュー作として発表された「ファンタジア〜魔法使いの弟子」で、ミッキーが命じられた水汲みをほうきに魔法をかけてやらせたらほうき達がどんどん水を汲み入れて止まらなくなり、ミッキーが溺れてしまう―――なんていうのがあったけれど、今の中国の鉄鋼生産はまさにこれと同じで、もう皆が溺れるまで止まらない！ということなのかもしれない。

（05/29/16 10:00pm）

2016年5月27日

ギリシャの切り売り

現在のアメリカ、ルイジアナ州は元々フランス領だったが、1803年にアメリカがフランスから買収した土地である。（ルイジアナやテキサスなど現在のアメリカ15州を1500万ドルで買収している）

テキサス州はメキシコとの戦争（米墨戦争）によって取ったものだが、戦争による領土取得となるとコストがかかり過ぎることを反省したのか、カリフォルニアやニューメキシコ、アリゾナに至る広大な地域は戦争ではなくメキシコから金銭で買収したものだ。

戦争によって占領したとか、勝手に領土宣言をして得たという土地だと後々「返せ！」などという声が起き、いくら領土の先取権を主張しても「不法に占拠された」という相手国の主張を打ち消すことは困難だが、売買契約書があればそれはある意味、未来永劫、その土地（領土）に対する占有権を相手にも（有無を言わせず）認めさせる効果がある。

アメリカの領土買収の中でももっとも、クリーンヒットといわれているのがロシアから買収したアラスカである。カナダという国によって米国本土から分断されているアラスカだが、1867というから今からわずか150年程前、750万ドルでロシアから買い取ったものであり、当時の両国政府による売買契約書もちゃんと存在している以上は、もう誰も（カナダにせよロシアにせよ）文句の言えない立派なアメリカの領土である。（買収当時、「なんの役にも立たない巨大冷凍庫を何で750万ドルも出して買うのか」という政府批判の声が米国内でも高かったという）後に発見された巨大なエネルギー資源、木材資源をはじめ軍事的な価値等々からすれば、これほど巨額の利益をアメリカにもたらした投資は空前絶後といえるだろう）

財政破たんに瀕しているギリシャがギリシャ最大の商業港でありアジアと中東、欧州の物流の要にあるピレウス港の全体の権益を中国に売り渡す契約を結んでいる。この重要なキーストーン（要石）ともいえる港を中国に抑えられては自分達の物流権益のみならず軍事的権益も大きく侵害されることを怖れるEU各国やアメリカ、そしてロシアといった国々が、ギリシャに働きかけこの買収契約に難癖をつけていることもあって、このピレウス港売却の実現は今、足踏み状態にあるともいわれるが、遅かれ早かれ「ギリシャの港が中国の支配下に入る」時代がくるのだろう。（それがいやなら、EUは中国以上の金でギリシャへの財政支援をせよ！と迫るギリシャ政府にアメリカもEUも頭を痛めている）

中国は習近平の「一帯一路」構想を着々と進めており、その地中海への出口としてギリシャをターゲットにしていることは明らかで、このピレウス港買収ばかりではなく、ギリシャ国内の多くの遺跡の買収話も進んでいるという。（パルテノン神殿にいったら巨大な毛沢東の肖像画が掲げられている―――等という時代がくるのかもしれない）

財政破たんに至るほどの散財を続けた挙句に、ついには自国の領土、そして文化財までも他国に売り払わざるを得なくなっているギリシャを見ていると哀れに思うと同時に、このまま巨大な財政赤字を膨らませ続け、その一方では消費税を上げることすらできないところ追い込まれている我が国の将来に、大いなる不安を持たないではないのだが---。

（05/26/16 10:00pm）

2016年5月26日

爆発とその終息

厚労省が発表した2015年の人口動態統計によると、下がり続けていた合計特殊出生率が1.46と、２年ぶりに上昇し1994年の1.50以来の高い水準になったのだとか。

まあ、減り続けているのに比べればはるかに良いニュースだとはいえるし、各新聞はここのところ何十年も続いている「日本の人口減少！」というニュースの暗い雲行きを変えたいからだろうが、この「合計特殊出生率の回復！」を見出しの前面に打ち出してはいるものの、厚労省の発表を詳細にみればその内実は見出しとは正反対の現状を突き付けていることが分かる。

すなわち、絶対数でいうと15年に生まれた赤ちゃんの数は、100万5000人とギリギリ100万人を上回った程度であり、一方、15年の死亡者数は130万1000人と前年比さらに増えており、このため日本の人口の一年間での減少幅は、29万4000人で過去最大になっているのだ。

子供を産む年代の男女人口が減り続けることは既に今後20年程度に亘る分は着実に分かっており（現在20歳以下の年齢層の歳別人口は既に分かっているから）、これから推計すれば20年後程度までの年毎の出生数は確実に分かるが、これによると合計特殊出生率が突然、2とか3、あるいは4に跳ね上がらない限り（まずあり得ない）、2020年の日本の新生児の数は約85万、2030年で75万、2040年では67万人にまで減少する。

一方、一年間の死亡者数もこれも平均寿命が突然、10年とか20年延びる---等という奇蹟でも起きない限り着実に増え続ける（今、増え続けている高齢者層が順次、死亡していくだろうから）。推計によれば2020年の死亡者数は116万、2030年138万、2040年では年間161万人が死ぬ、というのだ。

どうせタカさんが生きていない時代の事だから―――とは思うものの、確かに日本の将来人口がこの先、毎年100万人ずつ減る時が来る！となると―――やっぱり大変なことのように思えてくる。

ちなみに日本の総人口（15年速報値で1億27百万人）は、この人口将来予測によれば2047年に1億を割り（すなわちわずか30年の間に、人口が27百万人減る――ということだ）更に、2060年（今から44年後）には8700万人になるのだとか―――。

もっとも日本の人口が1億人を超したのは今からわずか50年前の1967年のことであり、8400万人を突破したのは1950年（いまから66年前）であることを考えると―――長い日本の歴史の上ではほんの100年ほどの人口爆発そして終息の時代だったということかもしれない。

（05/25/16 10:00pm）

2016年5月25日

最終ではない最終

テレビ番組表や、そのテレビ局による番宣（番組宣伝）でやたらと目につく惹句に「最終予選！」というのがある。

ワールドカップサッカーなどになると本大会へ出場できるかどうかが決まる「最終予選」の前にやたらと長い期間の「アジア最終予選」とかなんとかいう試合が延々とくりかえされる。あまりサッカーに熱心ではなく、4年に一度のワールドカップの時位は少し盛り上がろうか、という程度のタカさんにとってこの「最終予選！」という惹句にはいつも何だか騙されたような気になってしまう。

というのも「最終予選」に首の皮一枚でつながって残っていると思っていた日本チームがその試合を落とし、「ああ、これでもう本大会にはでられないのか！」なんて思っていると、その内、「いよいよ、最後のチャンス！」などといわれる試合が組まれ、再び「最終予選！」の惹句が踊るテレビ中継の番宣が華々しく（大げさに）始まる。

気の短いタカさんは、「ええい、もうこうなったら本大会までサッカー中継は見るのはよそう！」なんて思ってしまうからますますサッカーに疎い、流行遅れのオジサンになってしまうのだ。

多分、サッカーの試合の仕組みやらなにやらに詳しい大多数のファンにとってはどうということもない話なのかもしれないが－－－なにしろ、中途半端な興味しかないタカさんにとってはこの「最終予選」は、鬼門ともいえる言葉だ。

先日、女子バレーボールでも似たようなことがあった。イタリアとの最終戦で「勝てばリオ決定！」という宣伝文句だったので中継を見ていたが結局、日本はイタリアにフルセットの末負けたが、「2セット取ったのでリオ出場！」と選手達がコートで飛び跳ねて喜び、次の日の新聞にも大はしゃぎの記事が出ていたけれど―――なんだか「負けて五輪出場決定！」というのには違和感だらけだった。

後から解説を見るとこの日、最初から日本が2セット取れば、勝っても負けても五輪出場権を確保できることになっていたらしい。「そうであれば最初からそう言っておいてよ〜」となんだか夜店のタンカバイの「安いよ！安いよ！」を思いだしてあまり良い気分はしなかった。

それに、もし、このイタリア戦で2セット取れずに負けていても、尚、次のオランダ戦という「最終予選！」が残っていたと聞いて、「な〜んだ、結局テレビ局に騙されてチャンネルを合わせてしまったのか」と、少々後味は悪かった。

話はこれで終わらない。今朝の新聞を見たら、実はバレーボール女子のリオデジャネイロ五輪世界最終予選は今回、日本開催以外にプエルトリコでも開かれており、こちらの「最終予選」からも勝ち抜いたプエルトリコがリオ五輪の出場権を得たと書かれていた。

すなわち、だれもが東京大会が統一の「最終予選」だと思っていたかもしれないが、実は最終予選は2か所で行われていたというのだから―――。

「最終予選！」と名打った大会があっちでもこっちでも行われていたとなると―――これって本当に「最終」という冠をつけてよかったのだろうか―――。

かつての「アマチュアスポーツの祭典」とはまったくかけ離れた商業主義、見世物と化してしまった五輪に、なんだか嫌気が差してきているのはタカさんだけだろうか。

（05/24/16 10:00pm）

2016年5月24日

同時はセーフかアウトか

チームに所属してそろいのユニホームにヘルメットはもちろんスパイクだのバッティンググローブなどの本格的ないでたちで野球をやっている最近の小学生たちとは比べものにならないが、タカさんも、小学生時代、学校から帰ったらランドセルを放り投げて公園に走り子供同士のにわかチーム同士で野球に熱中していたものだった。

今の子供たちの野球の試合には、ちゃんと審判が4人ついているのに比べれば、タカさん時代はもちろん審判などは一人だって付はしないストライク、ボールの判定、塁審によるアウト、セーフの判定は、両チームのベンチ選手が交替々々でやっていた。

あの頃、いつももめたのが、打者が一塁に駆け込むのと、守備から一塁に投げられたボールが一塁手のグラブに納まるのがほぼ同時に見えた場合だ。「セーフ！」の判定が出るとおさまらないのは守備側だ、「絶対にアウトだ！」と叫び始める。どうにかその場は納まるものの今度攻守が交代した時に、同じような場面になるとさっきは「同時はセーフ！」と主張したチームが今度は「同時はアウト！」と叫び、再びもめる。結局、お互いの理屈は「同時はアウトか、同時はセーフか」というところに行きつくのだが、小学生同士だから誰も野球のルールブックなんて読んだこともないから、「俺の父さんが同時はアウトだと言っていた！」とか「いや、○○先生が同時はセーフだといっていた！」なんていう水掛け論になってしまったものだった。

随分、大きくなってから野球規則では「同一塁上における同時の場合はセーフ」だときめられていることを知り子供時代に、タイムスリップして当時の子供たち（自分を含めて）に教えてやりたいものだと思ったものだったが――。

もっとも、厳密にいえば「同時」とはほとんどあり得ない事例であることは、競馬の写真判定では二頭の馬のゴールでの差が1ｃｍまでは判定したことがあり（理論上は5ミリ差まで判定可能らしいが）、それ以下の差の場合やっと「同着」という判定となるぐらい厳密であることからも分かる。それだけに、野球の審判の判定はそんなに厳密なものではあるわけもなく、人間の審判による判定は厳密に検証すれば、かなりの場合「誤審」である可能性は高い。（実際、ビデオをみると誤審といえる場合が結構ある）誤審の言い訳に「同時はセーフ」のフレーズが使われる場合も多いようだ。

近年、ビデオの採用によって例えばHRなのかどうかあるいはファールかフェアかといった判定にはチャレンジ制度が設けられ人間の審判の判断がひっくり返る場合も多くなってきているが、それでもまだ、塁上に於けるアウト、セーフには「塁審の判定がファイナル」（「俺がルールブックだ！」と言った二出川審判を思いだす）だったのだが---今年から採用されることになった本塁上のクロスプレーに適用されるコリジョンルールによって、ここのところ数試合で、本塁における走者と、捕手のタッチかの差がビデオであきらかになり、判定が覆るケースが続出している。

これが嵩じると、「本塁上では人間の審判はいらない――0.5ミリの差までビデオで判定すればよい！」という時代が近づきつつあるようにも思える。

韓国の囲碁の名人も、そして日本では将棋の名人が人工知能に完敗した。野球も各塁上に小型ロボット審判が立つ時代がくるのもそう先の話ではないのかもしれない。

ああ、タカさんが子供の頃の「同時セーフ、同時アウト」のいさかいの時代がなんとも愛おしく思える。

（05/23/16 10:00pm）

2016年5月23日

第三者の調査にゆだねたい

逃れられない浮気の証拠を妻につきつけられた夫が、あるいは机の引き出しに隠していた零点のテスト答案を母親に見つけられた小学生が、「どうするつもりなのよ！」と詰め寄る妻や母親に対して「その件については第三者の調査にゆだねたい！」と逃げ回り、結局自分の口からは責任を認めなかったとしたら―――。

素直にとまでいわないが渋々でも自分の非を認め、謝ってしまうのに比べて事態は益々悪化、最悪の事態に陥るであろうことはあきらかだが―――都知事の場合はそうでもなさそうな気配だ。

家族での回転寿司やらファミレスでの食事代まで「会議費」だと偽り政治資金から落としていたとか、国に返還すべき解散した政党への交付金を、ふところにいれて２台の自家用車を買ったとか、まあ、あきれるほどセコイことをやった舛添都知事が先週金曜日の定例記者会見をこの「第三者の調査にゆだねたい！」の一言で逃げ切ろうとしたあまりの醜さに、ほとほと嫌気がさした都民、いや国民が大多数だったのではないだろうか。

かつてロッキード事件の国会喚問で次々に突きつけられる逃れられぬ証拠を「記憶にございません」を繰り返した証人がいて、これがこの後数年（いや、今も）言い逃れの為の最善の回答として使われたものだが（否定しても肯定しても責任を問われるが、「記憶にない」と言われては、「そんな訳はないだろう！」と言って更にせまってももうどうしようもない）―――これからは「第三者の調査にゆだねたい！」がしばらくは流行するのではないだろうか。

一般的にいえば会社の不祥事やら事故原因などの調査の場合に使われる「第三者」とは、本人とは直接関係のないまっさらな意味でのまさに「第三者」を意味するが、舛添さんの場合、彼が言っている第三者とはどうも舛添さんの知人とか身内の弁護士達のようで、舛添さんのいわば「自薦」のメンバーのようだ。

すなわち、第三者とはいうものの、実はその正体は、舛添さんの仲間の弁護士（お友達ではないかもしれないが、同じ穴のむじな）であり、そんな彼等が舛添さんから「あの回転寿司屋で食事したのは誰と誰なのか」を聞いて、その結果を「第三者の調査によると、あの回転寿司で食事したのは事務所のスタッフでした！」という「調査結果」を発表した場合（きっとそうなると思うが）、その第三者の調査結果に納得し、舛添さんにこのまま東京都知事を務めて欲しいという都民が一体何パーセントいるだろうか？

「頭がいい」といわれる舛添さんのやったこの一連のセコイ金の使い方は、モラル上は問題があるけれど法律上では追及できない物ばかりだというし、今、都知事選をやると丁度オリンピックの時に次の知事選をやらなければならなくなるので―――と都議会も舛添さんの追求には及び腰だとか―――。

結局、甘利さんや、民政党の山尾政調会長のように、舛添さんもこの疑惑、そしてモラル問題については、逃げ切りが濃厚だとも聞く。

「第三者の調査にゆだねたい！」の威力たるや恐るべし、だ。

（05/22/16 10:00pm）

2016年5月20日

ああ、よかった！

フェイスブックやアップルのデータ共有サービス「iCloud」に不正アクセスし、有名女優などの個人情報をのぞき見していた男29歳の男が、不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕されたが、容疑者は容疑を認め、押収された容疑者のパソコンからは芸能人100人余りを含む主に若い女性約1000人のIDなどが見つかったという。この男、2012年ごろから不正接続を始め、おもにFBやiCloud上で交わされるチャットやメールなどののぞき見をしていたらしい。

タレントのベッキーが不倫相手の男と交わしていた「センテンススプリング（文春）」、ありがとう！」などの一連のLineの内容が週刊誌にスクープされた時、「一体誰が、どういう方法で本来秘密であるはずの個人の私信を盗み見て、外部に漏らしたのだろうか―――？」と疑問に思ったし、こういった個人の親書の秘密さえも暴露し記事にしてしまう週刊誌メディアのモラルの無さに首をひねったものだったが－－－。長崎で逮捕されたこの男の供述などを聞いていると、むしろSNSで交わした会話の内容等は、あたかも公表したのと同じように大っぴらにのぞき見（盗み聞き）されているもの！と覚悟しておいた方がよさそうだ―――と思える。

職場の同僚同士が居酒屋でぼやきあった上司の悪口、あるいはママ友同士でお茶を飲みながら話したママ仲間の誰かの悪口、といった内容が、知らぬ間に第三者の手で、その上司やらママ仲間、あるいは会社全員やら幼稚園の全ママ達に流れてしまった―――なんていうこともこれからは（ひょっとしたら今までも）十分起こり得るかもしれない。

逮捕された男は、のぞき見したい相手の名前や誕生日といった公開情報を手掛かりに手あたり次第にパスワードを作り、それを根気よく試してみることでパスワードを探り当てていたというが、こんな手口で1000人もの女性のパスワードがいつの間にかこの男に握られていたというのだから恐ろしい。

ネットバンキングなどのIDやパスワードだと頻繁に変更するとか誕生日やペットの名前などは使わない、といった気の使いようをする人は多いが（なにせ金に絡むことだけに）、FBやiCloudといったSNSなどのパスワードには余り気を使わない人も多いようで、こういった被害は案外、今回だけが特殊というわけではなく、結構広範囲に広がっているのかもしれない。

ケイタイのメールを盗み見され浮気がバレて離婚になった―――なんていう話は聞いたことがあるが、そんな浮気が配偶者だけではなく、第三者に知られ、週刊誌ネタになって―――等ということになると、社会的信用からなにからガタガタになってしまう―――いやはや、大変な時代になってきたものだ！！！　と思ったが、よくよく考えてみたら、タカさんはそもそもケイタイをもっていないし―――心配する必要は全くなかった。

ああ、よかった！

（05/19/16 10:00pm）

2016年5月19日

情状証人

昨日のニュース番組は覚醒剤取締法違反に問われた元プロ野球選手で清原和博被告の初公判でもちきりだったが、特に注目されたのは、唯一の情状証人である「ハマの大魔神」こと佐々木主浩元投手であった。

刑事事件の裁判で実刑になるか執行猶予がつくかの場合、「執行猶予付き判決」を求めて弁護側が情状証人を申請する場合がある。裁判官に対して「情状」を求める為の証言だからその内容は「被告が深く反省していること、そして被告は本件を除いては真面目に生活していたこと」等を訴え、更に「今後、私はよく本人を見守り、二度と同じような事件を起こさせないようにします」と述べることで、裁判官に「この情状証人自身も信用できそうだし、その証人がこれだけ具体的に（二度と罪を犯させない）と言うだから、ここは信用して執行猶予付きにしとくか―」思って貰おう、という訳だ。

通常、情状証人として出廷して来るのは、被告の親族、特に親とか配偶者、兄弟姉妹、といった例が多くハマの大魔神のような「友人」といったケースは稀なような気がする。というのも、執行猶予付きとなった場合、情状証人が訴えたように「この被告が二度と罪を犯さないように証人は本当に監督できるのか？」ということを裁判官が確信できるかどうかが問題になるからだ。親や配偶者ならば、常日頃被告を見守ることも、あるいは注意することもできるだろうし、被告と生活を共にする親なり、配偶者なりを裏切ってまで被告も再度罪を犯す可能性は低いだろうと――（裁判官が）思えるからだ。

そういう意味では、清原被告の親族などに情状証人を引き受けてくれる人物がいなかった訳で、それは、被告が近親者もサジを投げるような行状を繰り返してきた可能性をうかがわせるし、裁判官の心証はあまりよくないように思う。身よりからもサジを投げられた清原被告の証人を敢えて引き受けた大魔神の「男気」は、中々立派なものだとは思うが---。

ただ、日頃生活を共にしている訳でもなく、定期的に清原被告の行状を監視、監督する立場にない大魔神がいくら「二度と罪を犯させないようにする」と証言しても、果たして裁判官がその言葉を信用するかどうか――となると――結構微妙なところがあるように思うのだが―――。

日本の裁判では「3人殺すと死刑、しかしそれ以下なら無期懲役」とか、「初犯の覚せい剤使用ならば執行猶予」といったいわゆる「量刑の相場」といわれるようなものがあるとよく言われるが、その相場からいけば清原被告の判決では執行猶予がつく可能性が高いとは思うが－－－。

その一方では検察側求刑が「2年以下」であった場合は執行猶予付き判決、3年以上の場合、実刑判決が多い―――、という相場もあるらしい。昨日の検察求刑は「懲役二年半」だったからまさに執行猶予が付くか付かないか、極めて微妙なところのようだ。

判決は5月31日に言い渡されるというが---（野次馬的に）ちょっと注目している。

（05/18/16 10:00pm）

2016年5月18日

なかったことに

ヒトラーのナチスによる（強制収容所などでの）虐殺や処刑による犠牲者の総数は1700万人（内、ガス室に送られた犠牲者だけでも600万人）といわれていて、今も世界中で繰り返し非難されているし、欧州各国の多くでは「ナチス禁止法」さえある。

史上2番目の虐殺者といえばソ連の独裁者スターリンで、彼の「血の粛清」による犠牲者は彼の死後既に60年が経過してもその実数は明らかにならない程膨大だが、1700万人から2300万人の間ではないかといわれている。スターリンを礼賛する勢力は、旧ソビエト共産党系の人々の中にはまだいることはいるけれど、共産党がかつての力を失い政体が「ロシア」に変わって以降は、称賛の声は少数派になっている。

しかし、ヒトラー、スターリンなどの虐殺犠牲者数が少なく見えてしまうほどの史上最悪の虐殺者といえばそれはもう何といっても中国共産党の毛沢東にとどめを刺す。彼の「大躍進政策」による犠牲者（誤った政策による餓死者等）の数は3000万人、そしてこの大躍進政策の責任を問われて中央から外れていたにもかかわらず再び権力の座に復帰、彼が指導した「文化大革命」による粛清、虐殺、そして混乱による犠牲者は少なく見積もっても5000万人といわれる。すなわち、毛沢東と中国共産党による犠牲者数は8000万人、人によっては1億人以上という調査結果まで出ている。

毛沢東こそが史上最悪の虐殺者であるが、ヒトラー、スターリンに対する称賛が今やなく、むしろ唾棄すべき歴史として国民から、そして後継者たちからも否定されているのに比べれば、未だに存続し毛沢東時代と変わらない「一党独裁」政治を行っている中国共産党にとっては、毛沢東を否定し批判することが結局自分達への非難につながる――ということもあってその批判はタブー視されている。（良い例がこの8000万人もの死者を出した虐殺の張本人の大肖像画が、あの天安門広場に掲げられている）今もブランデンブルグ門にヒトラーの肖像が掲げられ、あるいはモスクワの赤の広場にスターリンの肖像が掲げられているようなものであって、中国という国、そしてこの国の共産党の常識はずれの恐ろしさには、身の毛がよだつ思いするする。

ヒトラー、スターリンによる虐殺はタカさんが生まれる前、あるいは幼い頃の事なので歴史書で知るしかなかったが、毛沢東の文化大革命はタカさんが大学に入った頃のことでありその過酷さは、遠い日本でも恐ろしい思いで見ていたものだが、忘れもしないのは今から50年前の、文化大革命の当初、日本のマスコミ各社は中国から支局追放処分を受けたが、親中を任じていた朝日新聞は唯一北京に支局を置き、文化大革命を「新たなる革命」として礼賛していたこと、そして多くの「進歩的文化人」といわれる人達が、毛沢東万歳を叫んでいたことだ。（その多くが、大虐殺があきらかになった後でも反省の弁すら述べずに、知らん振りを通していることだ）

今週、文革発生50年を期して、中国共産党中央が「文革に触れるべからず」という布告を出したことを伝える朝日新聞だが、彼等自身のかつての文革称賛（天安門事件でも共産党批判は行わなかった）の過去には一切触れていないし、その反省もない。

文革を「なかったこと」にしてしまおうという中国共産党、そしてかつての自らの文革礼賛の過ちを「なかったこと」にしてしまおうという朝日新聞、ともに虐殺者毛沢東の共犯者とすら言ってもよいのではないだろうか。1億人の虐殺がなかったことになるなんて―――。いや、恐ろしい！

（05/17/16 10:00pm）

2016年5月17日

回転寿司会議

現役時代の記憶では、法人企業であれば「交際費」は、規定上限金額の90％まで「経費」として認められているはずだ。「経費」として認められる範囲ならば税法上の控除の対象になり、交際費（まあ、飲み食いに使った費用）が、経費として落とせるから、経費と認められない費用と違って法人税負担が大きく違ってくる。

「交際費」と（確か？）別項目で「会議費」というのがあるが、これは取引先、あるいは社内で昼食などを供しての会議を行った場合でも（確か一人頭5000円を上限として）計上でき、これは、文句なしで控除の対象となっていた。

上限のある交際費でビクビク落とすぐらいなら、一人頭5000円以下にとどめての「会議費」で落とす方が経理部からいつも嫌味を言われる営業部としては気楽だった。但し、会議費の名目は、「スナックxx」だとか「居酒屋○○」などの領収書では「酒を飲みながらの会議なんてある訳ないだろう！」と経理や税務署から言われそうでちょっとハードルは高かった。

舛添さんが自宅近くの天ぷら屋で3回（各1万8050円、1万7700円、1万6800円）の会食をして「家族での私的な食事の経費だったのでは？」と追及され、又同じく家族でもよく利用する湯河原の開店寿司店での食事（3件、各1万6560円、1万5560円、1万5190円）の政治資金としての支出についても疑惑を投げかけられて「いや、家族でも使っている店ではあるが、この時は政治活動の会議で使っていた――」と言い逃れしているのを聞いて、タカさんの現役時代の経理部にはこの説明が通っただろうか？と考えた。まともな会社の経理部なら、まあ間違いなく「スナックxx」「居酒屋○○」同様に回転寿司やイタリアンレストラン、天ぷら屋の領収書、しかもこの程度の金額での「会議」を信じてはくれないと思う。

「回らない」寿司屋の座敷でなら法事やらちょっとした寄合（まあ、会議といえなくもない）をしたことがあるとか、やっているのを見たことがある、という人は多いかもしれないが、回転寿司店で（しかも総額が1万円ちょっと）で「会議」をやっているのを見た人がいるだろうか。タカさんも、孫二人を連れて回転寿司に行くことがあるけれど、それを敢えて「会議費」だとして経費で落とすとか、政治資金として政党助成金から落とす―――なんていうセコいことはまず考えもつかないと思う。まして湯河原に別荘を持ち、毎週末公用車でその別荘に通っておられる世界一のGDPを誇る大都市東京の知事さんが、回転寿司で会議をやっているなんて―――とてもじゃないが信じられないのだが－－－。

「東京という大都市の知事としての体面を保つために――――」と海外出張の際の飛行機はファーストクラス、ホテルは一流ホテルの特別室宿泊は「当然で何の問題もない」と言っている一方でこんなにセコイ回転寿司会議をやっているというのでは都知事（あるいはなる前の大臣や国会議員時代の）「体面」はどう保っていたのだろうか？

要するに舛添さんという人、公金や他人の金なら湯水のように使うけれど、自分の金ならびた一文出したくない！という超ケチ、守銭奴なのではないかと思えてくる。

言い訳すればするほど恥の上塗りになるばかりだ。この際、舛添さん責任をとって都知事の身を引いてはどうだろう。今辞めれば、衆参同時選挙と都知事選のトリプル選挙もできて選挙費用という経費も安く済むだろうから。

（05/16/16 10:00pm）

2016年5月13日

和風の名前

生まれてくる子供の名前には、その時代、時代の流行があることはどこの国でも、いつの時代でも変わりがないようだ。

昭和の初期に生まれた現在ならばもう90才にはなろうという世代の男性には、昭和の「昭」の字をとった名前、「昭（あきら）」「昭一」といった名前が多く、女性にも「昭子」さん「和子」さんが多いのは当然だろう。

昭和の10年代になると「八紘一宇」のスローガンからだろうか「紘」の字をつかった名前、「勇」「勝」の字も多くなるのはやはり戦争の影響だろうか。

タカさんの年代（戦後のベビーブーマー世代）になると平和日本とか豊かさ、といったことが祈念されたからだろうか「実」「豊」「茂」「博」「誠」の字だらけといってよいような時代になる。

そして80年代の「大輔」ブーム、90年代の「翔太」「大輝」「拓哉」君ブーム、2000年代の「大翔」「蓮」「陸」君時代は、やはりアニメなどの影響だろう。

タカさんの同級生の女性には「子」がつかない名前の人は珍しい位だったが、90年代になると女の子の名前ベスト50からは「子」のつく名前が消えた。そうそう、その後には、女の子の名前には（男の子も）中々読めないような漢字をつかった名前とか、いわゆるキラキラネームといわれる名前が多くなっていったが、そのキラキラネームの流行も最近はちょっと変わってきているのだとか―――最近は、ふたたび昔のような和風の名前、あるいは「子」のつく名前が多くなってきているらしい。

ちなみに2015年生まれの女の子の名前第一位は、「さくら」と「莉子（りこ）」3位が「葵(あおい)」と「和奏(わかな)」だそうで、5年10年前に流行った（？）「きらら」ちゃん、「まりあ」ちゃん、「れいか」ちゃん、はベストテン圏内にはみあたらないのだとか。

この名前の変遷はアメリカでも全く同じのようだ。100年前のアメリカ女性の名前ベスト3は、メリー、ヘレン、ドロシー、50年前だとリサ、ミッシェル、ジェニファー、20年前だと、エミ―、ジェシカ、アシュリーだが、先日発表された2015年の新生児の女の子の名前ベスト3はエマ、オリビア、アバ、となり20年前はもちろんのこと10年前とも様変わりしているらしい。

ナンバー1になった名前である「エマ」といえば、ジェーン・オースティンの長編小説「エマ」を思いだすが、たしかあの作品が書かれたのは18世紀後半だったと思うが---――二百数十年前に流行った名前が、復活することをかんがえると―――日本でもその内に近松門左衛門の小説にでてくる女性の名前、例えば「曽根崎心中」の「お初」なんていう名前が女の子名前のナンバー1になる日がくるかもしれないなぁ〜。

（05/12/16 10:00pm）

2016年5月12日

やめたい拍手

ソルジェニンツィンの「収容所群島」は、旧ソ連で反革命分子とみなされて強制収容所に投獄され拷問の後、強制労働を強いられ、あるいは処刑された人々の姿を描いたルポ的な小説であるが、この大作の冒頭部分に、これこそが独裁恐怖政治の実態であると思わせる戦慄すべき場面がある。

モスクワのある地区で党代表者会議が行われている。議事進行は最近任命されたばかりの地区委員会書記が務めているが、会議の最後に彼は、同志スターリンに宛てた忠誠のメッセージを読み上げると、もちろんそのメッセージは万雷の拍手の下に採択されるのだが、採択の為に立ちあがって拍手をつづけている出席者全員が、その拍手を止めるわけにはいかなくなってしまう―――という場面が描かれている。というのも首にされて強制収容所送りになった前地区員会書記の罪といえば、前大会の同様な場面で最初に拍手を止め、席に着いたことだと誰もが知っているからだ。新書記はもちろん、誰一人として拍手を止めようとしない。小さな会議室に「嵐のような大喝采」がいつまでも続く―――三分、四分、五分、誰もが息を切らし手がしびれているのに拍手は続く。八分！九分！十分！---皆がお互いの気配を探るが、それでも誰も拍手を止めようとしない―――。そして遂に十一分目、ある製紙工場の工場長がさりげないふうを装い、幹部席の自分の席に腰をおろした―――すると、奇蹟！―――次の瞬間、出席者全員が拍手をやめ、やはり腰をおろした―――そして、この工場長は翌日逮捕され、反革命分子として十年の強制収容所送りになるのだった―――。

1940年代から50年前半に、ソ連で実際に起きたことを基にソルジェニンツィンが書いたこのエピソードと同じようなことが実際、スターリン独裁時代のソ連では頻繁に行われていたことが記録ではあきらかになっており、スターリンの粛清の犠牲者は、100万人が処刑され、3000万人が強制収容所送りとなっているという。

そして同じく文化大革命という思想弾圧の時代、中国では毛沢東は、2000万人を反革命の名の下に処刑し、「下放」という名の強制収容所送りの犠牲者はなんと1億人に達するといわれている。

昨日まで開かれていた36年振りという北朝鮮労働党大会でも、金正恩を労働党委員長に選んだ際の会場に鳴り響く拍手は、あの「収容所群島」と同じようにテレビ映像にある限りでは鳴りやむことがなかった―――（一体、誰が最初に拍手を止め、席に腰を下ろしたのだろう？？彼はまだ生きているのだろうか？）

独裁とは、そして共産党とは、かくも恐ろしいということは誰もが知っていると思っていたが、中国では今、習近平は毛沢東の文化大革命路線の復活とみずからの独裁を目指しているし、文化大革命を知らない若い世代は、毛沢東賛歌、文革賛歌を高らかに歌い始めているというし、元KGBという名の秘密警察で反革命を取り締まっていたプーチンの強権政治も益々強まってきている――――。

安倍政権に、ナチスのレッテル貼りをしている民進党だけれども、なんのことはない「政権を担当する首相には一種の独裁が許される」と明言したのは、当時政権の座にあった民主党の菅直人首相である。　民主党のゾンビ政党である民進党は、今や、ソ連共産党、中国共産党、そして北朝鮮労働党と友党関係にあった日本共産党と、野党連合を組もうといる。日本にも、やめたい拍手をやめられない時代がくるのだろうか。

（05/11/16 10:00pm）

2016年5月11日

小さい、小さい

舛添都知事がほとんど毎週末湯河原の別荘に公用車で出かけている！打ち続く外国都市訪問にはファーストクラスを使いお供の数も多く一回毎の外国訪問の費用は億単位という莫大なものである！―――もし、都知事が不在の週3日間（週末金曜の2時半には都庁を出て月曜の朝に湯河原から都庁へ登庁していたとか）に東京が直下型地震に襲われたとしたら―――最高司令者がいない大都市は大変な混乱におちいるだろう！都知事の危機管理に関する無責任さは許しがたい！---大名行列でもあるまいし何でこんなに海外出張に金（都民の血税！）を使うのか―――！等々、週刊文春が火をつけた舛添包囲網に、最初は強気だった（「別荘通いは全く問題ない」「外国訪問でこれぐらいの費用をかけるは儀礼上当然だ」といったぐあいに）舛添さんも、あまりの非難囂々の渦に「これからの海外出張経費は3割削減する」「週末の湯河原行は数を減らす」と随分神妙になってきている。（それでも今週号の文春は手をゆるめず、「舛添知事は、正月の家族旅行の費用を2年連続で政治団体の会議費として計上している。これは政治資金規正法違反では？」というスクープを連打するようだ）

圧倒的に「舛添さん不利、文春こそ庶民の味方」といった趨勢で、舛添さんがいい訳、言い逃れをすればするほど、「庶民感覚からズレている！」といった類のいわゆる「庶民の声」が更に燃え盛り、舛添さんに批判的な政治学者、知事経験者といったところも加わっての（やっかみ含みもあるのだろうが）批判の炎は燃え盛るばかりだ。

たしかに、金曜の2時半には退庁し、公用車で豪邸の別荘に出向きゆったりできる大きな浴槽で温泉に浸かり、金土日の３晩を楽しく過ごして月曜朝に公用車で仕事場へ―――なんていう豪華な週末を年48回も送れるほどめぐまれた人は日本中探してもそうはいないだろうから、「庶民感覚とズレている」だの「都知事という公職を何と心得るのか！」といった批判はやむをえないところはあるし、天皇の外国訪問でもあるまいに、大デレゲーションを組み、しかもウン百万円もするファーストクラスでの外国旅行とはいかに都知事といえケシカラン、といわれればそうかもしれないが---。

1兆5千億ドルという都市としては世界一のGDPを誇る（このGDPはインドネシア、オランダを上回り、韓国、メキシコのGDPと同規模だ）大都市東京の首長が、週末近所のスーパー銭湯の湯船に浸かり、LCCで外国出張し、ドライブインモーテルに泊まって―――という訳にもいくまい。（まあ、「庶民」代表を名乗る人達ならば「それでこそ庶民派だ！」なんてあらぬことを叫ぶかもしれないが---）

別に舛添さんが好きな訳ではないし（感覚的に言えばむしろ嫌いなタイプに属するが---）擁護する気などさらさらないけれど、どうもこのところの「庶民」の旗を掲げたかのような、ある意味ではセコイというかヤッカミ風の「公用車使用はけしからん！」「ファーストクラスを使うな！」といった正義面をした「大衆による追及」とやらになんとなく「さもしさ」「うさんくささ」を感じてしまう。

「不正追及キャンペーン」を政敵抹殺の武器に使い権力の独占をはかりながら、パナマ文書で身内の巨額不正が暴露されるや報道統制を行っているどこかの国の主席に比べれば、都知事のやっていることなんて「小さい、小さい」と思うのだが---- 。

（05/10/16 10:00pm）

2016年5月10日

唐人町の親切

先月福岡ヤフオク―ドームでの千葉ロッテ対ソフトバンク3連戦の応援に出かけた（もちろん千葉ロッテの応援の為―――）。ヤフオクドームでの応援は初めてだったので、第一戦目は、試合開始の随分前にヤフオクドームの最寄り駅である地下鉄唐人町駅に到着し球場に向かおうとした。駅の改札で駅員さんに｛ヤフオクドームには何番出口で出たらいいですか？｝と尋ねていたら、たまたまそれを聞きつけたのだろうか大学生位の若者が「僕も同じ方向に行くので案内してあげますよ」と言ってくれた。

有り難い申し出なのでお願いすることにして、彼と一緒に歩きはじめた。まだ試合開始の相当前だったので明らかに球場に向かっていると思える人通りはなく、この青年が案内してくれなかったら方向音痴のタカさんのことだから結構道に迷っていたかもしれない。（まして、タカさんはケイタイをもっていないから今時風に歩きながらナビを見る、という手がつかえないし）

道すがらこの青年と千葉ロッテの応援にはじめてヤフオクに来たことなどを話すと同時に彼のことを差し障りのない程度に聞いてみた。それによると、彼は大学生で今日はヤフオク近くのバイト先にこれから行くところなのだとか。（どうも、ヤフオクで売るビールの配送所でバイトしているらしかった）唐人町駅から15分ほどの距離だったがヤフオクドームが見えてくるところまでわざわざついて来てくれた彼には感謝の言葉しかなかったが、よく外国人が「日本人は親切だ、道案内をしてくれた」という体験を語っているが、自分自身もそれを体験して、あらためてなんだか日本人としてほこらしい気分にさえなったものだった。

思い返してみると、一昨年、冬の最中に函館を旅して市電からおりて五稜郭に向かう時も偶々道を尋ねた中年のご婦人が、「方向は同じですから〜」とわざわざ五稜郭の入口近くまで案内してくれた。（雪道をスタスタと歩くこの女性に、雪道歩きに慣れていないタカさんは付いていくのが結構大変だったが---）そう考えると、やっぱり日本全国どこでも「日本人は親切だ」というのは本当のようだ。

（エジプトでは人に道を尋ねると彼等は「知らない」というのを恥と感じるので適当なことを教えるので、決して道を尋ねてはいけない！なんて教わったものだったが---）

東北大震災の時、世界各国から日本人はあんな災害の時でも商店街の襲撃事件などがおきないし暴動も起きないのは信じられない！日本人の公徳心は世界一高い！なんていわれていたことを思いだす。（92年のロスアンゼルス暴動の時なんて、頻発する商店街の襲撃事件や放火が頻発し軍隊まで出動し、タカさん一家も随分身構えた覚えがある）

そんなことを考えると、いつまでもこの日本人が生まれつきもっている公徳心の高さとか、親切心、優しさ、というものをいつまでも持ち続けて欲しいと心から思うが---。

ケイタイナビが発達し、人に道を尋ねる人も減っているし、引き続き避難生活が続く熊本では、このところ空き巣被害が頻発しているという嫌なニュースも伝わっているが―――日本社会も少しずつとはいえ変容しつつあるのだろうか―――？

（05/09/16 10:00pm）

2016年5月9日

アウンサンスーチー

「良心の囚人」と呼ばれ軍事政権下で民主化の為に戦い続けた英雄と欧米でもてはやされてきたアウンサンスーチー女史だが、ついに総選挙において彼女が主導する政党NLDが勝利し、彼女はミャンマーの最高指導者的立場に立つことになった。30年近くに及ぶ国外追放、自宅軟禁といった迫害にもめげず遂に民主主義の女神が勝利した！と欧米のメディアは狂気し、世界中の国々のミャンマー詣でが賑やかだ。

彼女のこの間の不屈の戦いぶりは映画『The Lady アウンサンスーチーひき裂かれた愛』でも美しく描かれ、世の人々に感動を与えたこともあるから彼女が頂点を極めたことに人々はまさに「ハッピーエンド」の実現と喝采しているのかもしれないが---。

しかし、総選挙に勝利する前からも、そして勝利して以降の彼女の様々な振舞に関しては、「ちょっと待てよ！何かおかしいぞ――」という論調もちらほら出始めている。

民主主義の守護神を自認する欧米にとっては許しがたい軍事政権下で民主化の為に戦い続けてきた彼女のすることなら多少のことならば目をつむってきた国際社会ではあるが、ミャンマーの少数民族であるロヒギャン族（人口80万人）が国籍も認められず、いまや世界でもっとも危ぶまれる「民族虐殺」の瀬戸際にあることは良く知られているが、イスラム教徒であるロヒギャンを迫害し続けている仏教勢力の支援をうけているアウンサンスーチーは、この現在進行形の民族浄化に無関心の姿勢をとりつづけている。このアウンサンスーチーの虐殺加担とすら受け取れる無作為に対して、人権団体をはじめ国際世論は憤りはじめており、先日も「ロヒギャン問題について彼女が彼等の人権擁護をやらない、もしくはできないというなら、彼女のノーベル平和賞を剥奪すべきだ」という署名運動をはじめているという。（それでも尚、彼女がこの問題に相変わらずかかわろうとする気配はない）このロヒギャンに対する冷淡な姿勢と、「良心の囚人」と言われ称えられてきたことの整合性はどう考えるべきなのだろうか。

ミャンマーが軍事政権下にあった今から20年程前、ミャンマーの民間インフラ（水道等の）無償援助を行っていた日本に対して彼女は、「軍事政権に加担している！」と激しい非難の声を浴びせた。外務省をはじめとする関連の商社、建設会社にしてみれば「水道や道路といった民生に寄与する無償の援助さえ、政敵に利するものだから止めろ！ミャンマー国民が不便であっても構わない」というのは身勝手な権力亡者過ぎはしないか！という疑問の声が上がったことも思いだす。

現在のミャンマーの憲法では外国籍の親族がいる人物は大統領に就任できないとなっている。アウサンの亡き夫、そして息子も英国籍だ。しかしどうしても大統領になりたい彼女は、傀儡の大統領を立て「彼には、なんの権限もない。全ては私が決める」と宣言、大統領を操り人形のように操縦しはじめている。

権力の二重構造どころではないこんな政体のどこが「民主主義」といえるだろうか。

40年近くまえ白人支配への抵抗の星、民主主義の闘士とまで欧米各国が称えたジンバブエのムガベ大統領は、700万人が飢餓状態にある国で贅沢三昧を続ける「世界最悪の独裁者」として尚、大統領に君臨しつづけている。

アウサンスーチーがムガベと二重写しに見えてしょうがないが---。

（参照「ビルマとミャンマー」10/2/07）

（05/08/16 10:00pm）

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