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2018年下期の各月バックナンバー： 7月 ８月 9月 10月 11月 12月
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2018年7月
＜＜7月タイトル＞
07/31 自動翻訳機 07/30 中国台湾 07/27 坂道の家 07/26 完全脱落 07/25 命にかかわる 07/24 夕立 07/23
昔はあったけれど 07/20 人生100年時代 07/19 依存症予備軍 07/18 ウソつかれている 07/17 異常高温注意報 07/13
言葉の必要十分条件 07/12 コーランに書いてある 07/11 野ネズミの心地 07/10 真の姿 07/09 野廻り 07/06 お手伝い
07/05 難民問題に思う 07/04 暗闇恐怖症 07/03 あんたも悪い！ 07/02 思い当たる節
2018年7月31日
自動翻訳機
一高で英語の教鞭をとっていた漱石がある恋愛物語の中の台詞‘’I love you.’
を「私はあなたを愛します」と訳した生徒に、「日本人はそういう無粋なことはいわないものだ、日本語では『星がとってもきれいだね』と訳すのだ」と言ったというエピソードは有名だし、小説「三四郎」の中にも‘Pity's
akin to
love’の訳として「可哀想だ、は惚れたつて事よ」と訳すかどうかの論争の挿話がでてくる。年頃の青年が女性に対して「可哀相だ」と感じるということは、要するにその娘さんに惚れてしまったからに他ならない－－－というのだからけだし名訳というべきだとほとほと感心したことを思い出す－－。
AIの目覚ましい能力向上によって我々一般人も高まる期待の一つにAIを活用した自動翻訳システムがある。
それが実現すればもう苦手な語学を勉強する必要なんかなくなり、世界のあらゆる人々とウエアラブルな自動翻訳装置を着けていさえすれば、自由自在に意思疎通ができて、あわよくば世界の美女たちと愛を語り合うことも可能になるかもしれない――というのだから―――期待は膨らむのも当然だが－－－。
しかし、その自動翻訳機能が、‘I
love
you.’を「私はあなたを愛します」などという味もそっけもない言葉ではなくて「星がとってもきれいだね」と臨機応変に訳してくれるようになるとは思えないし、もし、星のない夜だったら「あっ、蛍が－－－」だとか「風鈴の音がすずやかですね」位の女性がぐっとくる言葉に訳してくれるとは―――とても思えないし、そもそも娘さんが蛍や風鈴を知らない国のひとだったら－－－なんて考えると、どんなにA1が進化しても恋愛を語るにはその場の状況や、二人の感情を細やかに読みとった結果、最適の訳をOut
putしてくれる自動翻訳機の実現というのには、無理があるように思うのだが－－－。
「吾輩は猫である」の英訳本を読んだことがあるが、タイトルはやっぱり‘I
am a
cat.’であり本文も確かに意味は原文の通りに訳してあったものの、漱石の原作の味がよく訳されていたかというと――原作とは似ても似つかないものになっているような気がしたものだった――。
いや、そうはいってもAIは自己学習によってどんどんその能力を高めており、倍々ゲームで増えていくそのデータ量をもってすれば10年、20年もすればその内にAI自動翻訳機が臨機応変に男女の愛の言葉を自動翻訳するようになるに違いない－－－と信じる人も多いし、そう期待する声も高いけれど―――時々刻々、人それぞれに移り変わる男女の恋愛感情を、いかにAI万能の時代になっても機械が翻訳できるようになるとは－－－とても思えないのだが－－－。
（7/31/18
10:00pm）
2018年7月30日
中国台湾
台湾は「中華民国」が正式名称だ。しかし、国連は「一つの中国」の原則を掲げる「中華人民共和国」を本家として承認し、かつて国連代表であった「中華民国」を国連のメンバーから外した。
「一つの中国」を主張していたのは「中華民国」も同じで、「どちらが本家か？」の争いはこの二つの中国が相並びはじめてからかれこれ70年近く決着していない。しかし、結局のところ世界第二の経済大国にまでなり、人口も14億にもなる中華人民共和国の方が声が大きく、力も強いから、結局はここのところChinaといえば、大陸の中国を指すことで世界の趨勢はおさまりつつあるように観えるが、小さい方の中国、すなわち台湾にしてみれば、こんな理不尽なことはない。
社会体制も社会主義と自由主義とまったく違うし、方や一党独裁、方や民主主義と根本的に違うのに、何故、自分達（台湾）が国として認められずにいるのか―――特に70年前の歴史を知らない台湾の人達にとって納得がいかないであろうことは、よく理解できる。
反日を体制維持のスローガンに掲げている大陸中国は、世界経済や日本経済において占める役割が大きく、台湾はそれに比べればはるかに小さいから、どちらかを選べといわれれば、利にさとい人にとっては、まあ、「いやな奴だけれども商売上は大事だから〜」と、中国の方の肩を持ちがちだ。
国連もしかり、国連分担金の負担額が遂に日本を抜いてアメリカに次ぐ第二位になったというから、大スポンサーである大陸中国のご機嫌を損ねまいと、国連が「台湾」という呼称を認めず、この地域を「中国台湾」等という呼称で呼ぶのも、国連が「ほっぺたを札束ではたかれている」と思えば当然のことなのかもしれないが――。
JALとANAが機内誌に乗せる地図の台湾の表記に「中国台湾」と記載したことで、台湾当局は両社に厳重抗議し、訂正を申し入れているという。
韓国、中国とちがって親日家が国民の大半を占めるといわれるアジアで、特に親日家が多いといわれる台湾の人達が、その好意を寄せている日本が自分達の国の名前を大陸中国の横紙破りに負けて「中国台湾」などと表記しているというのだから－－－がっかりして抗議するのも当然だ。
商売が大切だというのもわからないではないが、義理のある相手を裏切ってまで大切にしなければいけない商売で儲けて何になるのか！という気概をもてないものなのだろうか。
もしそういう義の気概もなくしているというなら随分と日本もだらしない国に成り下がったものだと思う。
（7/29/18 10:00pm）
2018年7月27日
坂道の家
松本清張に「坂道の家」という名作がある。清張小説の魅力的なところは、本筋は推理小説なのだがそこに流れるストーリーがどろどろとした人間の性（さが）を描いていて、殺人のトリックなんかどうでもよいと思わせるところにあるがこの「坂道の家」でも、中年までまじめ一方で仕事にはげんでいた男が、ひょんな切っ掛けで年下の女性にのめり込み段々破滅していって―――店も家族も失って―――女とその愛人に殺されて行くという物語だが、高校生の時に読んでその衝撃は今も鮮明に残っている。
あの小説で何となく学んだことはいくつかあるが、若い時に知らなかった「飲む、打つ、買う」を中年以降になって覚えると身の破滅になるまでのめり込んでしまうものだ――ということだ。
幸いにして（？）タカさんの場合、酒を飲むことと、小さいかけ事をやることは、結構早い時期に覚え、その頃はそんなに金もなかった所為もあって依存症になるほどの、大酒もギャンブルも出来なかったし、その内に結婚もして段々大人の自覚が芽生えてきて「そんなにバカはやれないなぁ〜」という自制ができるようになり―――、年を取るとともに体力も落ちるから大酒も飲めなくなって－－という経過をたどって今日にいたっている。
元々、体力がそんなにある方ではないから、酒を飲んだら酒に体力を奪われ余分な体力がなく、あちらの方には全然興味がもてなかった－－－ということだったので、まあ、今日まで、何の依存症にもならず、すんだのかもしれない。
「坂道の家」とタカさん自身の経験からすると、やっぱり、若い時から品行方正、石部金吉だった－－－という人はアブナイと思う？
最近、子供の頃から優等生で、石部金吉といわれた高級官僚が、彼等にしてみれば、はした金に過ぎない金額の接待やら賄賂を貰ってお縄になっているのを見るにつけ、若い時から多少の酒とギャンブル（競馬とパチンコ）をやっていたおかげで今に至るもまだ身の破滅を呼んではいないタカさんの方が勝ちかなぁ――なんて思う。
（7/2718
10:00pm）
2018年7月26日
完全脱落
権力を持つものはその地位を譲りたがらない物だが、譲るにしてもその地位にあった自分をないがしろにせず移譲した後でも、自分を重んじてくれるであろう者に後継を托したがるものだ。
「自分は地位に恋々としない」なんていう大見得を切りながらいつまでも辞めない権力者が多い中で、自ら地位を去っていくという潔さを理想としながらも、それができないのが人間というものなのだろう。
制度的には世襲が難しそうなアメリカの大統領や、日本の首相といった地位でさえも、むしろ「世襲」なのではないかと思うような人物が後継者となる場合も近年多いから、ある権力の座に着きたいと思えば、権力をもつものに取り入って、その信頼を勝ち得て後継者に選んでもらう――という方法が、近道ということになるかもしれない。
9月の自民党総裁選へ、出馬するのかどうかが注目されていた岸田政調会長が昨日、不出馬を宣言し、安倍首相を支持する旨を発表した。しかし、この不出馬宣言、総裁選まで2ケ月を切って議員票の大勢が安倍圧勝に傾いている今頃行うことには、タイミングが遅すぎてマスコミも大した反応をみせず、その扱いは小さい。
第2次安倍内閣発足から外相としてそれなりの実績を残して首相の信任も厚かった岸田氏だが、前回の総裁選でも安倍首相からの禅譲を期待して不出馬、そのお礼の意味もあってか安倍首相からは政調会長という重職を与えられて、これもそれなりに無事務めてきたのに、森友、加計問題などで内閣の支持率が落ちていた時期に、麻生派、二階派といった派閥が安倍三選出馬支持を逸早く宣言したにも関わらず、その態度を明らかにせず、安倍首相も態度を硬化させ「出馬してもらった方が却って総裁選が賑やかになっていい」とまで言いだしていたというから、今更の「不出馬、安倍支持」宣言では遅きに失した感はいなめないし、前回の総裁選以来目指していたといわれる「禅譲」などは、「夢の又夢」になってしまったといえるのではないだろうか。
いつの時代も、禅譲を待つというのは中々難しく、自民党史などを見ると歴代の権力者は、後継を期待するNO2に禅定をほのめかしながら、最後の土壇場では盟約を裏切ってきた例が多くあり、自民党には「禅譲を期待するな」という政治格言まであるといわれるが、たとえば近いところでは安倍首相自身が小泉首相から禅定をうけて首相の座を射止め、今や押しも押されもしない権力者の地位にあるわけで、一概に禅定を待つのは間違い、という訳でもない。
まあ、いずれにせよ岸田さんという人、以前から余り目立たないタイプで今現在でも「首相になって欲しい人」等というランキングでは8位とか9位といった小沢一郎と同レベルの人気しかないご仁だけに、安倍首相の怒りをかった今回の優柔不断さからすると、小泉進次郎などの若手の台頭もあって、次期首相候補からは完全脱落といってよいのではないだろうか。
（7/25/18 10:00pm）
2018年7月25日
命にかかわる
あのローマのコロッセオが建造された頃（西暦80年頃）といえば日本はまだ弥生時代、文字も未だ使われておらず（最古の文字は4世紀頃といわれている）その頃の遺跡といえば吉野ヶ里程度というのだから彼我の文化の格差は大変なものだった。
そんな桁違いの社会、文化を誇ったローマだったが、その後、没落していった歴史は、ギボンの「ローマ帝国衰亡史」など多くの資料に詳しいが、そんなに昔にあんな巨大な競技場を作り市民が戦車競技や剣闘士同士の殺し合いに熱狂していたというのだから、やはりその差に驚くばかりだ。
しかし、そんなローマ社会だが、衰退に至る世相を揶揄した言葉として有名な「パンとサーカス」によってあらわされているように、ローマ市民が為政者によって与えられるパン(食事)とサーカス（娯楽）によって政治的盲目に陥り愚民化してしまっていた為に、結局は衰退を招いてしまった、ということを我々はこの古代の偉大な文明から学ばなければならないのではないだろうか。
すなわち、いつの世も、市民（国民）というものは、食糧（パン）とサーカス（娯楽）さえ与えておけば、為政者にとって好都合な愚民として手なずけることができる－－－という事実は、ローマ時代から2000年が経った今でも世界の政治においては不変の真理ともいえるものであり、又、いかに栄えた国であっても国民が愚民化していくと、結局は衰退していくという事だ。
アメリカを見ているとトランプという、とんでも大統領を選び、その大統領がいままで営々としてアメリカが築いてきた「偉大なるアメリカ」を、没落へのがけっぷちに追い込んでいるが―――日本だって他人事ではない。
世界一の財政赤字を抱え、「伸び続ける年金、医療、介護の費用をどうやって抑制していくのか」様々な改革が必要なのに、政権の安定という命題の前ではかつて言われたような「痛みを伴う改革」案などは与野党ともに恐ろしくて言いだせないばかりか、最近は選挙目的からとしか思えない「なんでもかんでも無償化」の話がまかり通り、「無償化」政策をだされると与党のいうことには何でもケチをつける野党でさえも、選挙での不人気を怖れて反対はしない、というまさに出来レースばかりだ。
さあ、そして東京オリンピックという「大サーカス」である。気象庁が「命にかかわる暑さ」とまでいっている今日（7月24日）が、二年後の東京オリンピックの開会日である。まだまだ「命にかかわる暑さ」が続くという二年後のこの時期に、走り出した電車とおなじで止める訳にいかない－－と本当に二年後には開会するのだろうか。
こんな暑い時期に今、ジャカルタよりもバンコクよりも暑いといわれる東京でオリンピックをやろうなんて、日本という国全体が、「パンとサーカス」の愚民化におちいっているとしかおもえないし、そんな時期の開催を承認したIOCも、もし開催中に大きな「命にかかわる」事故がおきたら、どうするつもりなのだろうか。
（7/25/18 10:00pm）
2018年7月24日
夕立
連日続く猛暑は、「異常高温」とやらで例年とは違う暑さだといわれている。
確かに「50年に一度」だとか、「100年に一度」、あるいは「今までに経験したことのない〜」といった枕詞のつく天候が続くから、昔にはなかったような天気になっているのだとは思うが－－－。
タカさんがここのところの暑さで、「昔とはちがうなぁ〜」と思うのは「夕立」である。昔はこんなに猛暑の日の午後、夕方には必ずといってよいほど夕立があったような気がする。夏の盛りの猛暑の日には「夕方近くになって一天にわかに掻き曇り一陣の風とともにザッと夕立がきて」―――となったのに－－－。
雷が鳴り、夕立が来ると気温が5度位は急に下がるから、子供の頃は半ズボンだけでいたりすると母から「雷さんにおへそをとられるわよ」などと注意され夏用の腹巻なぞをさせられた思い出がある。
30分も降った夕立だったが、それが過ぎ去るとさわやかな涼風が吹きはじめ、その涼風に軒に吊るした風鈴がなって――蚊取り線香の匂いがして－－－なんていう日本の夏の夕方らしい風情があったことをおもいだすが－－－。
ところが、このところの猛暑続きの間には、まだ一度も夕立というものにお目にかかったことはない。西日本の方ではそれこそ「今までに経験したことのない豪雨」というのがあり各地で甚大な被害が出と思ったら、その後は猛暑が続き災害復旧に当る人々は熱中症に苦しむ－－－という事態が続いているが、「夕立」があって涼風が吹いて――などという風情が全くなくなってしまったのは何とも残念だ。
タカさんは、小さいころから暑いのは嫌いだったが（冬生まれの所為らしい――）夏の夕立は大好きだった。
縁側から物凄い勢いで降る夕立を飽かずに眺めていたものだが―――。
暑い国では午後に「スコール」という定期的に短時間、激しい雨があって、おかげで夕方からは比較的しのぎやすい涼しさになったものだが、そうなってから夕方、人々は出かけて露店や屋台を楽しむなんていうことをしていた。
夏に出張でインドネシア等に出かけた時には、夕方からプラプラ町に出かけていって夏の夜を楽しんだものだったが－－－。
猛暑に耐える日々を送っていると、あの幼い頃の夕立や、出張先でのスコールがなんとも懐かしく思い出されるのだが－－－。
最近、夕立にめったにお目にかかれないのは何故なのだろうか？
（7/23/18
10:00pm）
2018年7月23日
昔はあったけれど
「昔はあったけれど、今はもうない」と思われていた「裏口入学」だが、文科省の現役局長が補助金認可の見返りに息子の裏口入学を依頼し、実際合格していたという問題が発覚、その後、この大学から何年も前からの「裏口入学者リスト」なるものが発見されたとの報道が連日なされるにいたって、「やっぱり今も裏口入学はあるんだ」と世間は確信するに至っている。
「ゴキブリを一匹みつけたら家には三百匹匹はいるということなんですって！」というゴキブリホイホイのCMフレーズからいくと、裏口入学が一つあったということは少なくとも複数の裏口入学があったという事だろうし、まして一つの私大医学部に裏口入学リストがあったということは、他にも複数の私大医学部に、裏口入学リストがあり、ゴキブリの数ほど（失礼！）の数の裏口入学者がいる！ということがではないか－－というのが世間の見方になってしまったから私大医学部はいい迷惑だろう。
私大の一部では、試験前に父兄に幾ら寄付できるかを尋ね、その額によって合格通知を出す！なんていうことが、昔はよくあったといわれていたし、「私学といえども所詮、経営者も商売でやっていることなのだから――」なんてあまり目くじらを立てないで来たという面はあるのだろうが、さすがに「合格倍率16倍！の難関」といわれる医学部に「親のコネや札束の力で合格した」と聞いては、「まじめに勉強してきて不合格になった受験生がかわいそう！」という義憤にかられるのが世論というものだろう。
私立の医大に入れば自動的に医者になって将来人の命を預かる身になるという訳ではないが、入口のところで不正を働いたものがまかり間違って医者になってしまった－－－なんていうことにでもならないとも限らないなどと思われては、「国民の命と健康を守る」という医療制度の根幹が揺らぐから、世論が怒るのは無理もない。
医学部を卒業したからといって医師免許国家試験に合格する保証はないし、医学部で勉強もせず、天ぷら学生を続けていれば、医師国家試験には当然合格せず、医者にはなれないはずだから、国家試験が厳格に実施されさえすれば私大の裏口入学もさほど問題にならないのかもしれないが、10年ほど前、医師国家試験問題がダダ洩れしていたことで大問題になったことがあったがあったし、試験問題作成にあたった医大の教授が試験問題を漏洩した－－－などという事件もあったばかりとなると、その辺りの疑念も湧いてきてしまう。
今時の開業医ともなると病院の設備に数億円の機器をそろえなければならず、とても一代ではその資金を賄えないから、子や孫に継がせてその資金回収を図る必要も出てくるというから、例え、バカ息子、バカ孫といえどもどうにか医大にいれて跡を継がせようという手合いも出てくるとも言われているが－－。
はからずも表沙汰になった文部省役人の子息の裏口入学だけれども、その裏には官界の腐敗、医療業界の闇等々、どす黒い巨悪が横たわっていることが明らかになったように思うが－－－果たして50年後に裏口入学が、「昔はあったけれど、今はもうない」といいきれるようになっているだろうか―――なんだか難しそうにも思うのだが。
（7/22/18 10:00pm）
2018年7月20日
人生100年時代
落語にでてくる長屋の大家さんというのは、表通りの大店のご隠居さん、というのが定番の設定になっているが年齢的には幾つぐらいだったのだろう。
代々大店を継いでいるにせよ、一代で店を大きくしたにせよ、家督を譲る息子が「若旦那」と呼ばれ、店の手伝いをしながら仕事を覚え同業者仲間にも跡継ぎとして認めて貰えるほどになり、嫁も貰って三代目も生まれていて――という歳になっている必要があるとなると、結婚年齢が今よりは随分と早い江戸時代でも早くても40代後半、少なくとも50代にはなっていたのではないだろうか。
幼年時死亡率が高かった時代ではあるが、20歳まで育った人々の平均死亡年齢は60歳、61歳というところであったらしいから、それから逆算するとご隠居さん、といわれるのは大体50歳から60歳までの10年程ということになる。
ご隠居さんは、大体、家督を譲った店の裏庭にある、隠居所に引っ込み長屋の家賃やら、息子から払われる月々の生活費などで、連れ合い（落語ではばあさん、などとよばれている）とつつましいながら不自由のない趣味人としての生活を送っている―――等という状況が目にうかぶ－－－。
働き詰めの半生をおくり一家を為し、引退、引退後はのんびりと趣味を楽しみながらおばあさんと老後の人生を楽しむ―――何とも、羨ましくなる生活だが―――その期間というのが10年程というのは、短いようではあるが、丁度良い頃合い、ということもできるような気もする。
現代に生きる我々はどうだろう。世襲でもないサラリーマンならば仕事を含めた家督を譲る――なんていうこともないし、住まいだって2世帯住宅にすることぐらいはどうにかできたにせよ、次男坊、三男坊のことを考えたらそれも簡単ではない。
そもそも、結婚年齢が遅くなっている現代では60歳、65歳にまで定年が延びていたとしても、まだ子供たちは、一人前になっていない―――という状況だって珍しくはないだろう。
隠居してから10年程度の寿命と思えばまだ自分の老後だってあれこれ心づもりは出来るが、「人生100年時代」なんていわれるようになってくると引退後の人生は、30年から40年にもなる。自分が20歳の時に50歳、60歳の時の自分が想像すらできなかったのと同様で、とてもじゃないけれど老後の心づもりなんてできないのではないだろうか。
老後も楽しめる趣味を持て、なんていわれるがゴルフにしたって釣りにしたって毎日やっているプロゴルファーだって漁師だってある程度の歳になったら「引退したい！」と思いながら日々やっていることだと思うと、偶にならいいけれど、ゴルフや釣りを40年も50年も、毎日やりたい－－－なんて素人が思うのはなんだかとんでもない勘違いではないかという気がする。
「人生100年時代」は、もちろん幸せなことであるのだろうが、嬉しい反面、深くは考えたくない未来、になっているのではないだろうか。
（7/19/18
10:00pm）
2018年7月19日
依存症予備軍
昔は「アル中」などといわれたアルコール中毒は、多分に差別用語的な響きがあるからだろうか、最近は「アルコール依存症」と名前が変わり、精神障害の一種としての区分けがされるようになって、昔に比べたら社会の見る目も、多少は同情的なところもあるようだが、やっぱり「依存症」というからには、薬物依存症や、タイガー・ウッズが患ったセックス依存症同様、世間の見る目は厳しいのではないだろうか。
以前、「アルコールへの依存度合い」を計る基準というのを聞いたことがあるが、「時には、酒を飲みたいと思うことがある」という程度で「アルコール依存症予備軍」に分類されると書いてあったから、この基準で計れば、日本中には2000万人や3000万人の予備軍がいることになるのではないだろうか。
国民の健康という面からいえば、こんなに多くの依存症予備軍がいて中には症状が進行して、体を壊すような重症の患者も出ているとなれば、少しは「依存症対策」なんていうものがあってもよさそうなものだが－－－。
酒は、薬物などのように法律で禁じられている訳ではないどころか、世の中には酒の宣伝が溢れているし、それどころか酒から得られる酒税収入は国の重要な財源になっているし、酒絡みの産業は製造販売から流通、そして飲食店等々はそれこそ国の経済の重要な部分をなしているのだから、いまさら「国民の健康を考えての依存症対策」なんていうものを国会なんかで語られることなど絶対にない、といってよいだろう。
通称のカジノ法案という名ではいかにも露骨だからだろうが、「カジノを中心に宿泊施設、会議施設、テーマパーク、商業施設などを一体的に整備する統合型リゾート推進法案」を「IR推進法案」などと言い換えて与党が成立を図っているが、会期末を迎える国会の終盤でいよいよ成立の運びとなってきた。
その法案の中身はともかく、今国会で何の見せ場もなかった野党にとっては、最後にすくなくとも「野党も、何か見せ場を作らなければ」という訳で、IR推進法案成立阻止をかかげ日程闘争の嫌がらせをやっているようだ。
但し、その反対理由が「ギャンブル依存症対策が十分ではない！」というのが、いかにもとってつけたみたいで、そのやる気のなさがうかがえる。
日本には、既に、年間3兆円を売り上げる公営ギャンブルがあり、更に年間23兆円を上回る売り上げを誇るパチンコというれっきとしたギャンブルが存在する。
野党の先生方の中にも馬主や競馬愛好者はいるだろうし、競馬はれっきとした農水省管轄、競輪は通産省管轄であり、パチンコは言わずと知れた警察の最大の天下り先だ。
依存症問題も古くからいわれていながらこういったギャンブルの依存症対策に国会が本腰をいれたこともないのに、それらの既存のギャンブルでは全くやらなかった依存症対策とやらをIR法にだけを野党が急に言いだすとは、どうも、多々単に、国会会期末でのいやがらせパフォーマンス」としか思えないのだが―――。
そういえば、野党先生方の大先輩にあたる故土井たか子先生は、趣味がパチンコだったが―――「ストレス解消に時々パチンコに行きたくなる」と語っておられたから、ギャンブル依存症予備軍だった――なんていうことはないだろうか。
（7/18/18 10:00pm）
2018年7月18日
ウソつかれている
先日訪朝したアメリカのポンペオ国務長官は会談相手の金英哲朝鮮労働党副委員長に、「秘密のウラン濃縮施設を稼働させているではないか！」と北朝鮮を追及したという。
金正恩がトランプ大統領とシンガポールで会談し「完全非核化の意思を表明した」といわれているが、今までの数十年間「非核化」だの「核の放棄」だのと言っただけでその見返りの援助やら原子炉をせしめ、ウラでは全ての約束を反故にしてきた北朝鮮だけにいままで何度も「だまされた！」と臍を噛んできた日本の世論の8割近くが「やっぱりウソをつかれている！」とさして驚きもしない反応を示しているのは、朝日などの北朝鮮びいきのメディアにはどう写っているのだろうか。
ポンペオ長官の発言の根拠は米国が張り巡らした諜報網や、軍事衛星からの情報に基づいているというからそれなりのというか、かなりの確証があってのものだとおもわれ、韓国情報部なども同意しているといわれる。
泡を喰った金英哲氏がポンペオ氏の追及に答えていったという「施設を拡張しているのではなく、梅雨の大雨に備えた補強工事をしているだけ」という話は、笑い話としては面白いが（各施設の大規模雨漏り工事だって！）、言い逃れとしては出来が悪すぎる。
そもそも、トランプ・金正恩会談で合意した事項とやらは「北朝鮮の完全非核化」という何の具体策もない口約束に過ぎないわけで、二人が「非核化を実現したら〜」「そだねぇ〜」と言い合っただけの話で、それを聞いただけで「経済制裁の緩和」だの「一部援助の再開」等ということを言い出すのは、これまでの北朝鮮の何十年にも亘る「ウソつき振り」「裏切り」の歴史を思えば、とんでもない勘違いであることは明らかだった。
「仏の顔も三度」ともいうが、三度どころではなく繰り返し毎回ウソをつかれっぱなしで騙されてきた日本や西側諸国は、こんどこそ北朝鮮に対して甘い顔を見せるべきではない。
イソップの「オオカミが来た」のウソつき少年は、最後にはオオカミに食べられてしまったではないか。
拉致被害者の帰還についても結局ナシのツブテだしそれどころか「解決済みなのに、日本は、しつこい！」なんて言われながら、再びウソをつかれているというのに、援助だの緩和だの言いだす訳にはいくまい。
「拉致被害者の全員帰国」と「検証可能な完全な非核化」が具体的に実現されるまで、北朝鮮には日本は勿論のこと米国も、甘い顔を見せるべきではない。
（7/17/18 10:00pm）
2018年7月17日
異常高温警報
大雨とか台風の注意報を発表する気象庁の会見がニュースで流れることがあるが、「異常高温警報」なんていう聞きなれない言葉を気象庁のおじさんが深刻そうに発表している姿を見た記憶がなかったからとギョッとしてしまった。
気象注意報というのは風雪、強風、大雨、大雪などに際して発表されるが、その中でも重大な災害の起こるおそれのある気象現象が予測される場合、「警報」に格上げして発表されることになっているらしいが、まさかその中に「異常高温」などという項目があるとは思わなかった。
ここ数日、37度だとか38度の予報が出ており、ところによっては39度越えとなり、日なたでの体感温度は更にその5度上だというから、ここまでの高温となれば確かに「異常高温」と言ってよいだろうし、「こまめに水分補給を」なんて繰り返しいわれると、自分も注意しなければいけないのかなぁ〜等とちょっとビビリもするが―――。
「不要不急の外出は控えるように」などとテレビ、ラジオは呼びかけているが、世の中の大半の人は、「不要不急」なのにプラプラと出かけているわけではないだろうし（まあ、一部にはいるだろうが）、気温が異常に高いからといって休む訳にはいかない人達が大半であり、まして大雨の被災地でのボランティア活動をしている人達などは今ボランティアに出ることが必要な訳で、「不要不急」とは対極にある人達だ。
まあそれはともかく、「異常高温」といわれても、何せ天の配剤である天気のことだから、誰に文句をつけるわけにもいかないし、個人に出来ることといえば、できる限り自衛してこまめに水や塩分をとるとかそれこそ「不要不急」の際にプラプラと出かけたりしない、ということ位だろう。
そう考えると、二年後のこの時期、東京という極暑の地でオリンピックを本当にやるのか？とおもわないではない。オリンピックは「不要不急」と言えないのだろうか。
「不要不急」とは「要らず、急がず」という意味だから、すなわち「べつに今やらなければ、あるいは急いでやらなければ、という訳でもないこと」であり、世界各地から集まってくるアスリート達にとっては、気温38度、39度すなわち体感温度でいう43度、44度のところで力を振り絞ることは、一生にかかわる重大事だから多分、「不要不急」ではないのかもしれないが―――。
オリンピックともなれば日本人ばかりではなく多くの外国人も観客として訪れるだろうが、中にはある程度、高齢の人もいるだろうし、この日本の暑さには高齢者でなくても慣れないだけに熱中症で倒れる外国人も多いのではないかと心配だ。
オリンピックの応援の為にわざわざこんなに暑く、「高温警報」が出ている時の日本を訪れ競技観戦中に熱中症で倒れる－－－なんていうことになったら―――、世界からは「こんな異常高温なのに、オリンピックを強行して多くの熱中症患者を出すなんて、日本というのは何と非常識な国だろう！」なんてあらぬ国際的非難をうけはしないかと－－－心配だ。
（7/16/18 10:00pm）
2018年7月13日
言葉の必要十分条件
4半世紀前に封切られた映画「ジュラシックパーク」は、6500万年前に絶滅したといわれる恐竜を現代に蘇らせる―――という荒唐無稽とも思える設定だったが、その方法というのが、琥珀の中に閉じ込められている蚊から、その蚊が吸った恐竜の血を採取して更にその血の中から恐竜のDNAを取り出して―――というもので、山中教授のIPS細胞（万能細胞）からあらゆる臓器や器官が作れるようになるという話が現実に近づいている今なら、ジュラシックパークの設定も満更荒唐無稽ともいえないのではないか－－とさえ思えてくるようになってはいるが－－－。
もっとも、6500万年前のDNAが実際に残っているとは思えないしやっぱり設定には無理があるような気もするが、人類の祖先の骨の化石からはDNAが採取できている（古い物だと300万年前の人類）ということを考えると、20万年前から3万年前まで生きていたというネアンデルタール人や、約10万年前に出現したといわれる我々の祖先ホモサピエンスの化石からDNAが採取できているという事実から考えれば、そのうちネアンデルタール人や、初期のホモサピエンスをそのDNAから蘇らせることができるかもしれない－－－なんていうことを想像してしまう。
もし、そうやって蘇らせることができたとしたら－－－タカさんが是非知りたいのは彼等には言葉をしゃべる能力があるかどうかということだ。
DNAとか化石といった「物的証拠」によってネアンデルタール人と我々ホモサピエンスとの違い、あるいは共通点が分かるという話には説得力を感じるが、それはあくまでも彼等の物理的、身体的特徴についてであり、「ネアンデルタールは言葉が話せなかった」とか「ホモサピエンスが言語能力を持ったのは7万年前」というような、学説、すなわち彼等の言語能力については何の物的証拠も残っていないだけに、どうも眉唾っぽくも思えてしまうのだ。
ネアンデルタール人の遺跡からは、例えば岩絵のようなものが一切見つかっていないということから、ゴリラやチンパンジーが絵を書かないし、言葉をしゃべらないのと同じで、ネアンデルタールも言葉をしゃべらなかっただろう〜という説は、今一つ説得力に欠けるように思う。
近縁の人類であるホモサピエンスは喋れた－－－という説も7万年前の彼等の遺跡には岩絵や洞窟壁画が残っているからという根拠が掲げられているが、では絵がかけるとどうして言葉が喋れたといえるのか－－－となると今一つ釈然としない。
ホモサピエンスの脳の重さは体重の2％を占めるに過ぎないが、その脳が消費するエネルギーは体全体の消費量の20％にも達し、これはどの哺乳類の中でも群を抜いて高い比率であり、この高い比率は、ホモサピエンスが言語を使って思考と会話というエネルギーを高消費する機能をフルに使っている為だ－－－といわれるが、これだって、「言語能力があるから脳のエネルギーを使っている」ということを言っているだけであって、「ホモサピエンスは脳で多くのエネルギーを使っているから言葉をしゃべるようになった」という事の証拠ではないと思う。
人間が人間であることは「言語を使う」ことだと言われているが、それでは人間がなぜ言葉を使うようになったのか――の必要十分条件とは一体何なのだろうか。
（7/12/18
10:00pm）
2018年7月12日
コーランに書いてある
厳格なイスラム教国であるサウジアラビアで、女性の自動車運転が解禁されたという。「サウド家のアラビア」という意味の「サウジアラビア」という国名を名乗るこの国だから、いかなる改革も支配者（サウド家）の指示がなければ行われないが、この解禁も、改革派の皇太子が父親である国王の許可を得て行ったものだという。
石油資源で世界トップクラスの金持ち国であるサウジだけに新たな運転免許取得者の女性達が一斉に購入するであろう車は、当然高級車であるから欧米、それに日本などからもこの新規需要を狙っての猛烈な売り込みが始まっているという。
サウジの人口は3200万人程というからこの日本での女性免許保有者割合（65％程度）の1/4が免許を取って新車を購入すれば、400万台の需要が起きることになる訳だ。
これに加えて今までは外国人女性（1000万人いるといわれる）もサウジ国内では車を運転できなかったのでこの女性達もサウジ国内で運転するために、新車購入すると仮定すれば、更に数百万台の需要が生まれる－－－ということになる。
トランプ大統領の輸入車に対する関税引き上げで困っているドイツ車などが、このサウジの新規需要狙いで目の色を変えているというのも当然だ。
商社勤務時代、タカさんもサウジには何回か行ったが、厳格なイスラムということでこの国の不自由さ、異様さ、には日本人のタカさんは、閉口したものだが、その一つが女性が人前で働けない（従って、運転などもってのほか）ということだった。
車の運転手は勿論、ホテルの従業員、事務所のお茶くみといった仕事も、全員、インパキといわれるインドやパキスタンからの出稼ぎ労働者だから、街中、国中がなんとも殺風景だった。
偶に、町のモールなどで女性（らしき）姿を見ることはあっても、これが又、全身をすっぽりアバヤと呼ばれるベールというかフードで覆われた黒い衣服をつけており、目の部分だけが辛うじて出ているという代物で、これは完全にカラス天狗のようなものであって却って薄気味がわるかった。
最近はこのアバヤにも豪華な飾りのついたものとか、デザインが斬新なものもあるようだが、それでもやっぱりギョッとする姿だ。
もっとも、運転免許同様、女性達からこのアバヤの風習を解放せよ！という声は起きないという。その理由は風邪も流行らないのに日本の若い女性が大きなマスクをしているのと同じで、スッピンで出かけられるし、しかもアバヤの下のお洒落に気を使わなくてよい－－というズボラな理由もあるというから――なるほどという気もする。
さまざまに進むサウジでの改革だが、この国に入ったら外国人でさえ一切酒が飲めないという厳格な禁酒の掟だけは、解禁される可能性はゼロだ。
理由は、神の言葉だといわれる「コーランにそう書いてあるから」だ。コーランが書かれた時代にはまだなかった車の運転を女性がしてよいか、どうか、等と違って禁酒は未来永劫、変えてはいけないルールなのだ。
まあ、そんな訳でタカさんも、今更、イスラム圏の国に出かけて行こうという気には―――なれない。
（7/11/18
10:00pm）
2018年7月11日
野ネズミの心地
大型カジノのオーナであったトランプ大統領らしい、これまでの外交交渉手法―――例えば武力行使をも辞さない姿勢で金正恩を交渉のテーブルに引っ張りだすとか、初期の経済問題では中国に対する硬軟取り混ぜた姿勢で大幅な譲歩を引き出す―――といった、ギャンブル的ともいえるやり方は、こういった手法になれない各国の常識的な政治家（金正恩や習近平でさえトランプに比べればまだ予測がつき易いから常識的といえるのではないか）は、面食らって、トランプトリックにひっかかってきたようなところがあるが－－－。
強く出て相手をびっくりさせておいた後で、少し譲歩の姿勢をみせてやれば、相手が勝手に「大幅譲歩をしてくれた」と思い込んでこちらの思い通りのところで手打ちに持ち込める――といういわゆるブラフ手法も、あまりにも毎回続くと相手もその手にはのらなくなってくる―――というのはイソップの「狼がきた」の寓話と同じだ。
いつも倍の値段を吹っかけてくる店では、なれたお客なら当然、その頃合いになれてしまい客の方から「半値なら買う！」なんていうことをいってくるだろう。
トランプさんが最初に吹っかけてきた「貿易戦争」だけれども、そろそろ例のブラフ戦法の神通力もなくなってきた感じで、特にEUではアメリカの仕掛けたタカビーな通商政策に対し、「欧州は団結して立ち向かう！」と宣言し、仕掛けた側のトランプ大統領も、振り上げた拳の下ろしどころを無くしている感じだ。
いままでだったらブラフをかければ相手がどうにか交渉の糸口を求めてすり寄ってきたのに、この頃は「やるならやってみろ！」と強気に出てきて全く思惑がはずれ、今更、アメリカの方から少し譲歩の姿勢を見せる－－－という手もつかえなくなってトランプさんとしても意地にならざるを得なくなった――いわゆるチキンゲームの最悪ケースになってしまっている。
中国に仕掛けた関税戦争も、おなじで就任直後には対中国にある程度有効だったブラフ手法がこの頃は、全く通じなくなってきて、逆に中国から同額の報復関税を課せられ、トランプ大統領の支持基盤の一つであったはずの大豆生産者たちが一気に苦境に陥っている状況だ。
同じくトランプの支持基盤だった自動車産業の中でも、オートバイのハーレーダビットソン社などはヨーロッパの強硬姿勢に音を上げているというのに、トランプとしては引っ込みがつかなくなっている。
現代の国際貿易において重要なのは「市場」である。とくにその大きさが武器になるが、EU全体とか中国という巨大な市場を敵に回しては、いかにアメリカが巨大な市場をもっているといってもそうそう勝ち目はないと思う。
トランプの鉄鋼関税でアメリカの鉄鋼労働者の一部は喜んでいるかもしれないが、EUや中国という市場を敵に回すことになれば、IT企業や農業関係者は干上がってしまい悲鳴を上げるだろう。
こういう時、一番困るのが日本のように中途半端な国だ。トランプを敵に回して中国やEUの側についたらそれこそアメリカにオンブにダッコの安全保障がどうなるか、対米の鉄鋼や自動車はどうなるか――ただ、EUや中国、そして米国という巨象同士の争いを見守るしかない野ネズミの心地だろうか－－－。
（7/10/18 10:00pm）
2018年7月10日
真の姿
輝きながら昇っていく朝陽、お昼近くに天空で燦燦と輝く太陽、そして真っ赤に燃えるように沈んでいく夕陽、そのどれもが同じ大きさであることは、理屈としては理解できるが、どう見ても朝夕は大きく、日中はそれほどでもないように見える。
満月にしても同じで、夕方上って行く月と、天空にある月とではその大きさは倍ほども、時には倍以上も違って見える。
手に5円玉をもって腕を伸ばして5円玉の穴を覗く満月は、地平線近くにある時も、天空にある時も、その穴の中にピッタリ入ってしまうことから大きさは変わらないことを実感することもできるのだが―――。
太陽を見る時も、月を見る時も人は周囲のもの（水平線や地平線、あるいは回りの山々とか建物といった）との相対的な比較でその対象物の大きさを理解しようとするから、脳が勝手にその大きさを違って理解してしまう－－－すなわち錯覚を起こしてしまうためにこういった勘違いが起こるのだそうだ。
まあ、それはそうだが―――とタカさんは思う。人が大きな夕陽を見て、なんと大きくて美しいな夕陽だ！と思うのを「単に錯視を起こしているだけだ！」と身も蓋もないことをいう方が―――間違いともいえるような気もしないではない。
現代は夜でも人工の光に溢れていて、都会などでは星空は殆ど見えない。しかし、デジタル技術を使えばニューヨークでも東京でも人工の光の影響を全てデジタル処理で消し去って星明りだけの夜空の映像を作ることができるが―――この映像を見た時、これこそが、人工の手の加わらない「自然の夜空」だと感激するけれど、同時に、ふっと「でも、これって本当に自然の姿といえるのだろうか？」とも思った。
そうそう、モスキート音というのがある。これは高周波の音で、若者、特に20歳以下の人々には聞こえるけれど、20歳を過ぎた人々には聞こえない音だそうで、このモスキート音を、深夜に公園で流したところ、公園に夜な夜な集まって悪さをする若者が大幅に減った―――という実験を足立区でやって成果をあげたらしいが――、この場合でも、果たして若者達が聞いているモスキート音が騒がしい深夜の公園の音が「自然」なのか、それとも我々年長者が感じている静寂につつまれた公園の音こそが「自然」なのかは―――どちらとも言えないような気がする。
我々は常に世の中の真の姿とは何かを求めてはいるけれど―――世の中にはこれこそが真の姿等と言える姿などはないのだ－－－という気がしないではない。
（7/09/18
10:00pm）
2018年7月9日
野廻り
農村に住んでいれば当たり前のことでもコメ作りの作業などを見ることもない都会育ちには想像もつかないことが数限りなくある。
たとえば、雨の日が続く今頃の季節だと農家にとっては用水路が詰まって水があふれだし、田んぼが水を被ってしまい折角育っているイネが水浸しになってしまう－－－等という被害にあわない為にと、雨が降り続き用水路の水かさがましている最中に水路を見回り、もし水路に草や木の葉がたまっていたらそれをこまめに取り除く－－－という作業は欠かせなくなってくる。
農業用水路というものは、大体どれも幅は1メートルに満たないもので普段だと水深は30㎝そこそこといったいわゆる「小川」といってよいものが多いが、幅が狭いだけあって雨が降り続くと意外と水の勢いがまし、どこかで詰まりだすとたちまちの内に水があふれだす－－－なんていうことがある。
こういうことが起きないように、雨合羽を着た農家のおじさんがこまめに水路を見回って、もし少しでも木の葉や草が詰まっているようならこれを取り除く作業が不可欠だ。どこの農村でもこういった雨の季節の作業は必須ではあるが、この作業のことを「野廻り」というのだと聞いたことがある。
西日本を中心として豪雨による被害が出ており、多数の死者が報告されているが、そういう報道の中に、よく「用水路で流されて――」という事故の例を見かけるが、これがいわゆる「野廻り」に出た人、特に高齢者が多いことにお気づきだろうか。
今、農業人口の高齢化が進んでおり、その為に「野廻り」に出る人の年齢も当然あがっている。人は歳をとると当然体力が衰えていくが、特に倒れてから起き上がる動作が急に衰えてくることは、人は歳をとると頻繁に「どっこいしょ！」と掛け声をかけないと瞬時にはできないようになることで身近でも感じるところだ。（若い人が立ち上がるのに、やたらと「どっこいしょ！」を連発している――なんていう光景は余り見ない）
わずか30㎝ほどの深さの水路に顔からつんのめった時、体力がある人なら瞬間に腕をついて顔を上げることも、出来るだろうが、65歳を過ぎると突っ伏した状態から上半身、だけを30㎝でも上げるということが、胸廻りの筋肉が衰えて、とっさに出来ない－－－という事があるのだという。（そういわれると、タカさんもそんなに瞬間にはできないかもしれない）
顔が水に浸かっていて呼吸ができない――という状況に突然陥ると、人はパニックに陥りがちで、おもわず水を呑んでしまい益々状況が悪くなって－－－というのが、この「用水路の見回りにいった高齢者が流されて―――」という事故の原因だと聞いたことがある。
そういえば、赤ちゃんや高齢者が浅く水をはったお風呂で溺れて－－－なんていう事故の記事を時々みることがあるが、これも「首を水面より上に持ち上げる－－－」という成人にとっては簡単な動作がとっさには、できなかったことが原因だという－－。
タカさんは、野廻りをやったことはないし、これからやる事もないだろうが、もう70を過ぎたことを考えると―――余り若い人ぶって無理をしたりしないように－－－と思う。
（7/08/18 10:00pm）
2018年7月6日
お手伝い
娘夫婦の家に食事に招かれることがあるけれど、料理を作る娘のお手伝いを孫娘がしきりにしたがるのをみて、「ああ、やっぱり女の子は小さい時からちがうなぁ〜」と妙に感心して、おもわず頬が緩んだ。
夕食のお手伝いといってもまだ小学校の4年生だと母親としても娘にやってもらう事といえば、包丁を持たせるなんていうことは（母親の方がビビッて）とてもやらせられず、せいぜい餃子の餡をつめて形を整えるとか、サラダをサラダボウルから皿に取り分けて並べる、といった本当に初歩的なお手伝いなのだが、孫娘は実に喜々としてやっているし－－－それを見ている、招かれたおじいちゃん、おばあちゃんも「まあ！えらいわねぇ〜」「えらいねぇ〜！」を連発するから孫娘も益々張り切ってお手伝いに励む！という訳だ。
この頃の小学生は早い内から、ピアノだ英語だ、お習字だと習い事も多いし、高学年になると受験の為の塾通いなんていうのも忙しくなることもあるから、お手伝いを子供にさせなくなっているらしい。（その間に勉強しなさい！なんていうことになるのだろう）
それだけにタカさんが子供の頃に比べて今時の子供の「お手伝い」というのは極端に少なくなっているように思う。
あんまりお手伝いをするタイプの良い子ではなかったタカさんだが、鹿児島にいた小学生高学年の頃は、毎日のお風呂の掃除、焚きつけなんていうのは、タカさんの「当番」といわれて必ずやっていたから、その頃の経験から、タカさんは今でも「火おこし、「火つけ」は大得意だ。（マッチ一本から薪に火をつけ、風呂を沸かすなんていう芸当ができる人が今日本に何人いるだろうか）
孫娘がそうであるように、「お手伝い」というのは、やってみると意外と楽しいもので、当時のタカさんも母に褒められ、「ありがとう！」「たすかるわ！」といわれることが快感で、冬の最中に外の焚きつけ口で寒風に晒されての風呂焚き等は、辛かったと思うが、今になって思いだすと「楽しかった！」思い出しかない。
それにしても、料理を作るにしても下ごしらえされた材料とか、温めるだけ、並べるだけでよいお惣菜が溢れている現代では、昔ほど料理に手間も時間もかからなくなっているから、勢い、子供がやるお手伝いの量も少なくなっているのではないだろうか。
孫娘が娘の料理を手伝っているところを見ると、あれが結構この二人にとっては「母と娘」の楽しい思い出として一生残る貴重な時間なのではないか〜という気がする。
そういえば、タカさんもよく母の毛糸の巻き取りの手伝いをした思い出があるが、陽だまりの縁側で二本の腕に渡した毛糸を、母が毛糸玉に巻き取るのに合わせて腕を左右にリズミカルに動かすのだが、そういう時に限って鼻の頭がかゆくなって困ったことも、幼い頃の母との思い出として懐かしく思い出す。
最近は、家で手編みのセーターを編むお母さんも皆無で、セーターなどは、皆、既成のものが豊富にあるから手編みなんていうのは、流行らないのだとか－－－。
孫娘が包んだ餃子は、数個に過ぎなかったので、お兄ちゃんとパパに－－とのことでタカさんはごちそうになれなかったのだけれど―――きっとどこの餃子よりも美味かったことだろうと思う。
（7/05/18
10:00pm）
2018年7月5日
難民問題に思う
欧州に押し寄せる難民のほとんどが中東地域、あるいは北アフリカからの人々だ。すなわち地中海を渡って地中海沿岸諸国に辿り着く。
戦争を逃れて――という国連の「難民」の定義に当てはまる人々だけではなく、経済的困窮から逃れより豊かな欧州を目指してくるいわゆる「経済難民」も多い。近年はどの国も地域も「経済難民」を強制送還することも多いから皆が皆、自分達は「政治難民」であると主張してその認定を得ようといわゆる「難民申請」を行い、その審査中の者を含めるその数は夥しい物に達する。
かつての植民地経営のツケで自国人口に占める移民（あるいはその子孫）の割合が高いといわれる英、独、仏の三国では、この比率が既に20％に迫ろうとしているが、それに加えて毎年、数万人単位で流入するこの「難民」たちが自国の人口増加率をはるかに上回る勢いで伸び続ければ、あと数十年も経てば自分達がマイノリティーになってしまうのではないか－－－という不安感からこれらの3国を始めEU各国ではでは移民の受け入れに寛容だった政権の基盤がどこもぐらついている。
それでも移民受け入れに寛容であり続けEUを主導してきたメルケル政権まで、ここにきて政権がぐらついており、先月やっと成立した連立政権では、さすがのメルケルさんも、受け入れ反対を唱える連立相手と妥協せざるを得なくなり、「他のEU域内の国で第一次難民登録をした難民が、ドイツに移民してくることを拒否する」という合意文書にサインしたという。
勿論、中東、アフリカの難民がまず到着するのはイタリアやスペインといった地中海沿岸国である。それらの沿岸国は命からがらボートで辿り着いたいわゆるボートピープルを追い返す訳にもいかず一時受け入れをして彼等の難民審査を行っているのだが、正直言ってこの難民たちもヨーロッパの中では比較的貧しいイタリアやスペイン沿岸国である。それらの沿岸国は命からがらボートで辿り着いたいわゆるボートピープルを追い返す訳にもいかず一時受け入れをして彼等の難民審査を行っているのだが、正直言ってこの難民たちもヨーロッパの中では比較的貧しいイタリアやスペインに移民したい訳ではなくゆくゆくはドイツなり北欧など福祉も手厚い国に行くのが目的であることをイタリアやスペインもわかっているから「どうせこの連中は出ていくのだから〜」と難民の受け入れもこれまでは結構鷹揚だったのだが―――突然、「難民の第一次受け入れ国が、ずっと面倒みるべきだ」といわんばかりのこのドイツの決定には「冗談じゃないよ！」と怒り心頭である。
ドイツやフランスの国内でも右派といわれる人達に限らず比較的移民に寛容だった人々まで、自分の仕事がなくなるとか、難民負担の為の税金が上がる〜となると最近は移民に対する視線も厳しくなっているとか。
「人権」に関してははるかに先進国だといわれる欧州で広まる移民拒否だが、移民となるとまるで他人事だった日本人だが、人口の2割近く（2千600万人近く）の中国や北朝鮮の移民、難民が住む国になったとした―今と同じように「人権が第一」と鷹揚なこと言っていられだろうか―？とも思う。
（7/04/18 10:00pm）
2018年7月4日
暗闇恐怖症
小学校の3年生位の時だったとおもうが、父に石井桃子訳の少年少女向け「トム ソーヤの冒険」を買ってもらいそれまで読みなれたいわゆる「良い子向け」の物語と違う、勉強嫌いで悪戯好きの少年の話に夢中になったものだった。（参照：「トム
ソーヤーの冒険」）
その思い出があったものだから後にシカゴに赴任してから、このトム
ソーヤの冒険のモデルになった町であるミシシッピー河沿いのミズリー州ハンニバルを訪れて物語の舞台となったあのトムがポリ—伯母さんから罰として命じられたペンキ塗りをやらされた塀とか、町沿いに流れる大河ミシシッピーやそして河に浮かぶ島などを見て回ったが、何と言ってもハイライトだったのはトムが女友達のベッキーと二人で迷い込んだという洞窟へのツアーだった。
迷い込んだら二度と出られないという洞窟へのツアーは、今でもガイドの案内なしでは入れないのだが、確かに一歩踏み入れば迷路のように入り組んでおり、灯りがあっても案内人なしでは入口に戻ることさえ難しいのではないかと思われて、一歩奥に進むごとに恐怖心がました。（勿論、物語の中でこの洞窟の中でトムとベッキーが道に迷いベッキーが泣き出すし、トムも必死に出口を探す－－－という逸話がありそれを覚えていた所為もあるが―――それに、確か悪者の人殺しインジャン・ジョーもこの洞窟から出られなくなって白骨死体で見つかるというエピソードもあったし――）
洞窟ツアー中、ガイドが「それでは、これから真の暗闇を体験してもらいましょう！」と言って自分のもっている案内灯や、洞窟のガイド灯のスイッチを切ったのだが、その間のⅠ－2分の体験は、それ以前にもそれ以降にも全く経験することのなかった性質のものでまさに「真の暗闇」と呼ぶに相応しいものだったことを今でもまざまざと思いだす。
どんな闇夜でもなにがしかの（星明りなり蛍の光なりの）うっすらとした明かりはあるもので、映画館だって非常灯の灯りやら、階段の段差を示す蛍光塗料の光などの薄明かりがあるものだし、日本の鍾乳洞などでは夜光虫やヒカリゴケの光などがあるものだが－－－あの、トムソーヤの洞窟の中の暗闇こそ真の暗闇だった。
若い頃、友人のアパートに酔っぱらって泊めてもらったことがあるが、その友人は夜中テレビと明かりをつけっぱなしなので「消してもいいか？」といったら彼は暗闇恐怖症なので消さないで欲しい、といわれタカさんは中々眠れなかったことがあるけれど、彼の暗闇恐怖症があのハンニバルの洞窟に行った時には、何となく理解できたような気がしたしたものだ。
タイの鍾乳洞に迷い込んだ少年達13人が10日ぶりに無事発見されたという。洞窟の大半が水没しており彼等が避難している洞窟内の高台から救助するにはあと幾日か掛かるらしい。
命は助かったのがなによりではあるが、10日間もの間、暗闇に閉じ込められていた恐怖感はいかばかりのものだったろうか、タカさんとしては想像するだけでも身の毛がよだつのだが―――。
日本のJAICの排水専門家も加わった1000人規模の国際編成の救助隊が13人の救助にむかっているということだが―――、一刻も早く彼等が灯りの中でご家族との再会を果たせるようにと切に願うばかりだ。
（7/03/18
10:00pm）
2018年7月3日
あんたも悪い
どの家に入ろうかと住宅街をうろついている空き巣が、「この家だ！」と選ぶ家はどんな家だろうか。空き巣だって捕まって刑務所に入りたくないから、捕まるリスクを避けようと、戸締りが厳重で「猛犬注意！」の貼り紙が出ているとかセコムやALSOKのような警備会社との契約シールが入口付近にこれ見よがしに出ている－－－といったいかにも警戒厳重そうな家はまず入ろうとは思わないだろう。
すなわち、空き巣に狙われ易い家というのは、その逆に戸締りもしていない、何の防犯対策もしていないような家である－－－とは昔、警察OBの方に聞いた話だ。
「国を守る」ということも、その基本は「家を守る」ことと同じだ。特に日本の場合、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して－武器を持たないと」というノー天気な憲法の制約があるから、国を守るための最低限の防衛力しか持ちえない以上、周辺に虎視眈々と日本を狙うすきを窺っている複数の国がいることを考えれば、せめて「戸締りを厳重に」することが、国民の安全を守るために出来る数少ない手段の一つであることは間違いない。
北朝鮮のミサイルが幾度となく日本の領空を飛び、そして彼等が核実験を繰り返し、核ミサイル攻撃の脅しをかけていた昨年から、日本はミサイル防衛網の整備をはかってきた。このイージスアショアといわれるシステムは秋田と山口に大陸から飛んでくるミサイルを撃墜する迎撃システムだ。まさに、専守防衛の為のシステムだ。
ところが、この防衛システムでさえ一部マスコミは異論をさしはさみはじめている。
その根拠は先の米朝会談で北朝鮮の金正恩が「核の放棄」に合意する旨のリップサービスを行ったことを称えてここで反対論の言うと「折角、核放棄の約束をしている北朝鮮に水をさすことになる―――」ということらしいのだが―――。
しかし、この米朝核合意なるものまったく「口約束をした」という程度のものであり、一応見せかけに「核実験場」と称する洞穴の入り口と北朝鮮が言う所を爆破している写真をこれ見よがしに発表しただけで、第三者の検証も全くなされていない代物だ。
北朝鮮は思い当たるだけでも90年代から数回に亘り欧米各国や国連を騙し「核開発を凍結する」といっては見返りに重油や食料の援助を受け、2005年の日米韓と中国、ロシア相手の６カ国協議では核放棄を約束する共同声明の見返りとして各国からの経済援助を引き出したが、常に裏では核開発を進めてきたという裏切りの実績（？）が山ほどある。要するにいままでの北朝鮮の核に関する約束は全てウソだったのだ。
これまでの4半世紀にわたる一連の詐欺の結果が、一昨年来の度重なる核実験でありミサイル発射なのだという事実を、北朝鮮の隣国として経験していながら、又も日本のマスコミは、こんないい加減な「核合意の口約束」に有頂天になり「陸上イージス配備は止めるべきだ」と主張しているのだ。
度々、空き巣に入られた家が、犯人と思しき人物が「今度こそ空巣はやめた」といっているからといって、又も戸締りもしないで外にでかけるようなもので、又空巣被害にあったとしたら、犯人の側だけではなく「戸締りもしなかった家も悪い！」ということになるのではないだろうか。
（7/02/18 10:00pm）
2018年7月2日
思い当たる節
パレスチナ問題といえばあまりに色々な勢力が絡んでいて複雑怪奇すぎてこの地域に余りなじみも、関心もない日本人にとっては興味のない地域（といってはこの地域に住む人々、あるいはルーツを持つ人々にとっては失礼だが）といってもよいだろう。しかし、それでもイスラエルで9年以上にわたる長期政権を維持しているネタニエフ首相、そしてそれに対峙する側のPLO（パレスチナ解放機構）をアラファトの死後継いでいるアッバス議長の名前ぐらいは結構馴染があるのではないだろうか。
PL0は過激な主張でアラブ側の支持を集め（最近はアラブ側といっても一枚岩ではなく利害が輻輳して四分五裂しているが）なにはともあれ第二次大戦後、パレスチナ人の土地を占領してアラブ人を追いだし、アメリカとつるんでアラブ人を抑圧している悪役イスラエルに立ち向かう正義の騎士の代表という見方をする国々や人々が多い陣営でもある。
一方、イスラエルの側は約2000年前に、神に約束された地であるパレスチナから追い出され世界をさまよったユダヤ民族が苦難の末にその神に約束された土地に戻り、独立を果たしアメリカや欧州各国の支援を受けて、周辺のアラブ、あるいはイスラム勢力による侵略を防ぎ続け、神の土地を守り続けている気高い正義（何せ神がパレスチナはユダヤの物だと言っているのだから）の民である－と思う人々も多い側である。
要は、対立する二つの勢力ともに自分たちこそ正義であるという主張を続けており、それぞれの肩を持つ人々も、自分の支持する側こそ「正義」と信じて疑わないのだが―――この問題はなにせどちらの側も「神」が絡んでいる以上、絶対に折り合うことのできない、要は「正義」と「正義」の戦いということになる。
ところで、どちらの側もが主張する「正義」であるが、例えば「汚職」を正義だと主張することは難しいが、どちらの側もここ何十年も汚職問題が蔓延し、しかもそれが余りに根深いこともあって手が付けられなくなっているという事実を知ると――日本人は益々この地域の揉め事に首を突っ込むことを躊躇する。
かつて、パレスチナに対して多額の援助を続けてきた日本だが、フロリダにアラブ人が建てた豪邸が林立し、それが日本の行った経済援助がPLO幹部やその親族の懐に入り豪邸群となっている―――という噂が流され日本政府が慌てたという話があったが、その真偽はともかくPLOのここ数十年に亘る腐敗体質は欧米メディアだけでなく実際にパレスチナ住民の中でも有名でパレスチナ住民の間でもPLO離れが続いているとも聞く。
一方、イスラエルの側でも歴代の首相の汚職問題が度々ニュースを賑わせる。最近も、ネタニエフ首相の夫人が公邸に料理人がいないからと偽り、連日高級レストランのデリバリ―を繰り返し、相当高額な公費をだまし取ったとか、ネタニエフ首相自身も収賄容疑で起訴された－－－というニュースが飛び込んできており、既にネタニエフ首相は完全に国民の支持を失っているのだとか－－－。
２世紀も前のアクトン卿の言葉「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」がやっぱり正しいのか－－－とも思う。
世界の政治、日本の政治、あるいは実業界などをみても（そうそう、日大の例だってそうだ）随分と思い当たる節があるではないか。
（7/01/18 10:00pm）
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