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2018年11月
＜＜11月タイトル＞
11/30 ご老公の印籠 11/29 生命倫理の壁 11/27 夢は見るだけで 11/26 年末ジャンボ10億円 11/21 ウソのマナー 11/20
乃木将軍の母 11/19 アナログの逆種 11/16 ボヘミアン・ラプソディー 11/15 未開の社会 11/14 短命な職業 11/13 心の迷い
11/12 裸の祭典 11/09 ユルユルの宗教 11/08 花相撲 11/07 女性の年齢 11/06 胆力の問題 11/05 得体が知れない 11/02 自然を守るには 11/01 アメリカで生まれた
2018年11月30日
ご老公の印籠
テレビドラマ「水戸黄門」のお約束といえば、ドラマの前半で散々悪の限りを尽くした「お代官様」や「悪徳商人」たちが、遂には正義の味方である黄門様ご一行に悪事を追及され、最初の内は、しらばくれているものの、三つ葉葵の印籠を突きつけられると観念して「ははぁ〜」と平身低頭し一切の罪を認め―――一件落着となる―――といったものだったが、こんなに簡単に罪を認めてしまうなんて―――やっぱりドラマならではのことで、あれだけの悪人ならもっと抵抗してしらばくれるなり黙秘するなりすれば良さそうなものなのに―――といったところだが、まあ、老若男女の普通の視聴者には、あの分かり易い黄門様方式が娯楽作品として最適であり、だからこその長寿人気番組になったのだろう。
勿論、現実の社会ではそんな黄門様方式などはありえない。ちょっと前までは、警察の取り調べには取り調べ側の威圧や、暴力まであったというから、容疑者の側もそれに耐えかねて、やってもいない犯罪を苦し紛れに「ははぁ〜」と認めてしまうなんていうこともあったようで、それが原因で多くの冤罪事件が起きてしまった――という事もあった。そんな反省からか、最近の取り調べの様子は、以前に比べて大分マイルドになっているらしく、被疑者の側も、そう簡単には「ははぁ〜」と恐れ入って犯罪事実を認めたりはしなくなっているようだ。
ほんの数十年前なら「容疑者逮捕」の報道の後には、間を置かずして「容疑者が自供を始めた」といった報が続いたように記憶するが、最近の犯罪の報道をみていると、殺人事件をはじめ窃盗、詐欺犯罪までほとんどの容疑者が「身に覚えがない」と否認するケースが多くなっているような気がする。
「日本の刑事訴訟の有罪率が99.9％もある」すなわち日本の検察当局によって起訴された場合の無罪になる確率は1000件に1件あるかないかであるとなれば、（国際的な基準からみて、日本の刑事訴訟のこの有罪率の高さに対しては批判もあるようだが）、警察に逮捕された場合「身に覚えがない」と言って抵抗してみても、裁判所の心証を悪くするだけで量刑に情状の余地がなくなり、却って損だと思わないではない。
やってもいないことをなにも「ははぁ〜」と認める必要はないしその点はしっかりと否認する必要があるが、あの地面師グループのように、あれだけ証拠を突きつけられても「身に覚えがない」と全否定するのは何か勝算あってのことなのだろうか。
ニッサンのゴーン会長とケリー副社長も、いまのところ取り調べに対して「ははぁ〜」と恐れ入ったわけでもないようで、「身に覚えがない」とまでは言っていないが、一説では120億ともいわれる裏報酬を有価証券報告書に記載していなかった点については「違法ではない」と主張しているのだという。
国際的なビジネスマンであり、その片腕の副社長も国際的な弁護士だというから、かれらの「違法ではない」という主張が不気味にさえ感じられるが―――。やっぱり、あれだけの大ナタによって何万という従業員や下請けの従業員、そしてその家族が泣いたことを思えば、さすがに120億の裏報酬や、大豪邸の経費の付け回しを「違法ではない」と居直られていい気持ちはしない日本人は多いのではないだろうか。
日本の検察には、水戸黄門の三つ葉葵の印籠に相当する手があるのだろうか？
（11/29/18
10:00pm）
2018年11月29日
生命倫理の壁
現在レースで走っている競走馬のほとんどがサラブレット種であるが、サラブレッドとして認められるためには様々な規定がありその一つに「自然交配」によって生まれた馬であること、というのがある。すなわち、人工交配（人工授精）によって生まれた仔馬は、サラブレットではないとされ、例え競争能力が優れていたとしてもほとんどのレースに出走すらできない―――という訳だ。
サラブレッド以外の家畜では今や人工授精が当たり前で、例えば「和牛」の場合、肉質が良く、肉量も多い、優秀な雄牛から採取された精液の人工授精によって生まれた牛の肉が「和牛肉」と称して世界中でもてはやされている。
週何回も精液を採取され、それを何十分割したものが、ストロー状の容器に納められ冷凍保存され「和牛精液」として取引され、全国のメス牛に人工授精される―――という訳で、年間で生産される何万、何十万頭の肉用の和牛の父親は、精々数十頭に限られるという訳だ。
これが同じ哺乳類である人間で行われたとしたら――世界の70億人の父親が、数十人あるいは数百人の父親の精液によって人工授精された天才の子供ばかり――となれば――将来、近親交配による弊害は勿論の事、例えば、あまりに人類が均質化し過ぎてしまい、「社会」といった雑多な人が集まった集団が生まれないかも知れない―――と言った様々な弊害が生まれ、早晩、人類社会は消滅してしまうかもしれない。
人工交配を更に上回るのがクローン技術だ。70年代に出現した「クローン羊ドリー」以来、様々な動物でクローン技術は、今や自由自在に実用化され、「愛するペットのクローン」等というものも、既に作られたりもしているが、その技術からすれば「人間のクローン」を作ることは、すでに技術的には簡単であるといわれている。
しかし、クローンといえどもオリジナルの本人の複製という訳ではなく「一個の人格」であり、人間が「人間を創る」といういわゆる神の領域に踏み出してよいものか―――という倫理的な疑問から、今のところ歯止めがかかってはいるが―――それでは、人工授精はいいのか――という問題にまでさかのぼれば、既に多くの不妊治療で人工授精がおこなわれ、多くの命が生まれていることからすれば-――クローン人間を禁じる論拠もぐらつくようにも思うが――――。
ノーベル賞作家カズオ・イシグロの作品「私を離さないで」は、臓器移植の為に作られたクローン人間を題材にした問題作で、「人間」でありながらいつか原本である人間に臓器移植が必要とされた場合、遺伝子からなにから同じ造りのクローンから必要な臓器を取り出すために、いわばスペア臓器保管庫として生まれた子供たちを主人公にした何とも物悲しい傑作だったが―――。
中国の科学者が今月、ゲノム編集で双子の女児を世界で初めて誕生させた、と報じられている。ゲノムを書き換えて思いのままの人間を誕生させる――果たして倫理的に許されるのかどうか――。
韓国で数年前、ES細胞を作ったという大学教授のニセ論文で大騒ぎになったこともあるし、日本でも小保方さんの事件（？）もあったことだし、まだ、この話の真偽のほどは何ともいえないが、いずれにせよ「薄い倫理の壁」を功名心から破ろうとする科学者は、いつかは出てくるだろうな―――と思わせるニュースである。
（11/28/18
10:00pm）
2018年11月27日
夢は見るだけで
人類に残された未開の地とは、今や宇宙しかないと言ってよい。
宇宙科学技術の発展は目覚ましくこの先、人類があと何百年（あるいは何万年）存在しうるかは分からないが、長い時間軸で見ればいつかは人類が他の惑星に移住してその惑星で栄えている――なんていう夢が叶うこともある――と言えそうだが。
人類が今までに到達し、人が立ったことがある天体といえば地球から38万キロという太陽系の大きさ（太陽系の果てまでの距離は約15兆キロと言われている）からすると極々、近傍にある衛星、月だけだ。
アポロが月に到達した時、確か地球から片道2日位の旅程だったと記憶するが、光速だと1秒強の距離だ。地球から一番近い惑星は火星だがその距離は7800万キロ（これでも太陽系の大きさからすれば極近い距離ということになるが）だから光速でも片道4分20秒、アポロでいったとすると一年弱かかる計算になる。（火星もその軌道上を動いているから、実際上は直線距離で行く訳にはいかず、最も効率よく行けるタイミング――2年2ヶ月に一度しかない―――で行ったとしても1年近くかかり、地球帰還をしようと思えばなんだかんだで最短往復6年はかかる計算になるという。
アポロが月に到達し、人類ではじめて月面に降り立ったアームストロング船長が「これは人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」と言ったのをテレビ中継で見た時（1969年）には人並みに感激したものだが、その後、月に人を送るのは金がかかり過ぎるし、大して役に立つ訳でもない（研究としての成果は大きいにせよ、それが直ぐ資金回収につながるわけではない）という理由からか、この50年余り有人月探査は行われていない。（山本夏彦や佐野洋子に、たしか「あんなところへ行ってどうしようというのだ、バカみたい！」というエッセーがあったが、確かにそうかも知れない。）
ところで2020年に火星探査ローバーを打ち上げる計画が持ち上がっており、着々と準備が進んでいるらしい。23台のカメラと数々のハイテク機器を搭載した無人のローバーだが、これは将来の有人火星探査の為の下準備だという。火星のクレーターの中には水がある可能性があり、薄いながらもかすかに大気もあるというし――火星は35～39億年前は生命の宝庫だった可能性まであるとなれば、将来、人類の移住先として考えられる―――などというSFチックな夢が語られてはいるが―――。
片道、1年、あるいは2年、狭い衛星の中に少人数の仲間と閉じ込められて旅をして、大気も重力も少ない不毛の地に降立って-――タッチエンドゴーで地球へ帰還するとしても最短で往復6年（火星への有人飛行では、基本、行ったきり、が原則らしい）――と聞けば、ヨーコさんではないけれど、「そんな所へ行ってどうするの？バッカじゃないの？」という気がしないではない――。
火星よりさらに遠くの衛星だとか、太陽系外の星への旅、となればそれこそ片道何十年、何万年かかる。
1977年に打ち上げられたボイジャーでさえ40年かけて未だ地球から200億キロのところを飛んでいるに過ぎない。太陽系の果てまでの距離（約15兆キロ）の未だ1/1000を進んだに過ぎないのだ―――やっぱり、夢は見るだけにしておくしかないようだ。
（11/26/18
10:00pm）
2018年11月26日
年末ジャンボ10億円
独裁者といわれる大統領に率いられて東南アジアの二つの国（I国とP国）は、汚職で悪名が高かった。しかし、その独裁も結局民衆の怒りを買って終焉を迎えるのだが、その寿命はI国の方がP国よりずっと長かった。
その寿命の違いは、P国では賄賂を大統領とその一族、そして一部の側近が全部とってしまうのに、I国では、賄賂の末端にいたるまでの配分比率がしっかりできており、小役人にいたるまでその不正の恩恵（？）に預かっているのだからちょっとやそっとのことではこの不正体質が崩れる訳はない！等と言われたものだった。
巨大資金援助によるプロジェクトがある場合、その工事に携わる会社（コンサル等）から工事の許認可などの権限を持つ役所の偉いさんに工事をスムースに終わらせるために賄賂が支払われる場合があったとしよう。
賄賂の交渉やら受け渡しの窓口になるのは、その役所でも２、3番目に偉い役人で、決してその役所のトップだとか、中央省庁の更に偉い役人というのは表面には出て来ないし、まして大統領一族なんていうのは気配も見えないものだったらしいが、賄賂を受け取った役人から上納金の形で一定の比率が上納され、しかも賄賂の受け取り窓口になった役人の下っ端の役人にまでそれぞれにある程度のおこぼれ(といっても、その国の安い役人の給料を上回るぐらいの金額だとか)が回る仕組みが確立しているのだ―――と専らの噂であった。
上から下まで、賄賂の分け前に預かっていて、それぞれがそのシステムで潤っているというのだから、「内部告発者」なんていうのが出てくるわけもないし、もし、外部からその汚職体質などが追及されるようなことにでもなれば、上下一丸となってその告発を抹殺するから、その汚職体質は「盤石」とも言えるものだった。
税関の役人が出入国者から少しずつせしめる袖の下も、その一定割合が税関所長にも支払われている――と言われていたから、そんな噂を聞いているビジネスマン等は、速く税関をパスするために最初から提示するパスポートに紙幣を挟んでおく、なんていうことをしていたというから、ブラックジョークを通りこしていた訳だ。
しかし、P国ではそんなシステムができあがっておらず、大統領やその妻、そしてその一部の側近が、受け取った賄賂を全部ふところに入れてしまい、末端の役人には一切おこぼれなしだったから――下っ端役人や、おこぼれに預かれなかった反大統領派はひがむし、貧しさに喘いでいた民衆の怒りを買って、政権が潰れたという。
日産のゴーン会長の長期独裁ともいえる政権が、潰れたことでI国とP国の話を思い出した。ゴーン政権が、今まで20年近く続いた原因も、ポシャッた原因も何か似ていはしないだろうか。
ゴーン氏の辣腕によって完全に潰れかけていた日産がV字回復したのは事実だ。大ナタのコストカットによって泣いた人や下請けは数知れないが、お陰で生き残り、今やトヨタグループを抜いて世界第二位の自動車メーカーグループの一員となった関係者が、いままで目をつぶっていた「ゴーンさんに払われた超高額の報酬」やら、「世界各地に会社の金で建てた別荘」をひがみ始めたのかも―――。
「ゴーンさんがとっている報酬に比べ、自分達の取り分は少なすぎないか？」「私の住んでいる家に比べて―――」「プライベートジェットなんて――私なんか、一度韓国にパック旅行でいっただけなのに―――」なんていう庶民の「ひがみ」が今や、ゴーンさんの命取りになってしまったような気がしないではない。
まあ、その点、最近は専らトヨタかホンダ車しか乗っていないし、ニッサンやその子会社の株を持っている訳でもないタカさんは、このニュースを野次馬的な目でみながら、「起きて半畳、寝て一畳、たらふく喰っても二合半」だというのに―――人間の欲という奴は－－－なんて、皮肉な目で冷笑しているのだが―――。これも良く考えてみると、「ひがみ」からきている感情かもしれないが―――。
10億円が当たるという年末ジャンボでも買いに行くとしようか。
（11/25/18 10:00pm）
2018年11月22日
ちゃんと並べよ！
カイロからルクソールにいくローカル便のチェックインカウンターで、イギリス人と思しき観光客が‘Stay on the line! ’(ちゃんと並べよ！)
と叫んでいた。搭乗案内があった途端、カウンターに黒山の人だかりができて、それまでカウンター前に並んでいたイギリス人一向を押しのけて、エジプト人の搭乗客たちが、チケットを手に手に我先にとカウンターの係員に手渡そうとしているのだから列のイギリス人達が頭にくるのも当然だ。
しかも、カウンターの職員も、「順番に並んでください」と注意するわけでもなく目の前に突き出されたチケットから手続きをはじめている―――。
要するに、エジプトには「列を作って順番に」という習慣がないのだから、窓口に殺到する彼等にも職員にも悪気がある訳でもないのだ―――と知っていれば、イギリス人のように怒ることもないし、タカさんのように、呆れることもないのだろうに―――すべては、文化の違い、国民性の違いからおきたことだ。
列を作ってちゃんと並ぶという国民性をもっているのは、タカさんの今までの経験では日本人とイギリス人位なもので、東南アジアの国や中東では、まず列に並んで順番を待つなんていうところを見たことがない。
特にタカさんが経験した中でひどかったのが中国本土で、観光で訪れて市内のバスに乗ろうとした時には、バスが停留所に到着するや否や、人を押しのけて乗車口に殺到する老若男女にはじきとばされて結局、乗れずじまいに終わる―――なんていうことばかりだったから、「何が礼節を重んじる儒教の国だ！」思ったものだ。
アメリカでもニューヨークのバス停留所や地下鉄ホームで人々が並んでいるのを見た事がないし、偶々、列のようなものが出来ていても、列に気が付かなかったようなフリをして「横入り」してくる人が沢山いる。
結構、いい歳になってきたタカさんだから、もしこれから外国旅行する場合、若い時のように、現地の交通機関を使って観光して回る―――等ということは止めて、ツアーバスか、精々タクシーにしようと思っている。
いや、本当に、順番待ちとなれば、ちゃんと列を作って並ぶのは日本人だけだ。それこそ、日本が世界に誇ってもいい‘Cool
Japan’
だ。
しかし今朝の新聞に、京都の観光地や繁華街のバス停で、客が列を作らず歩道に広がったりしている、との苦情が絶えず、市の交通局が、一計を案じて、道路と並行に幅約10㎝の白いテープでラインを引いたら、利用客がそのラインに沿って並ぶようになって―――問題が解決したという記事がでていた。
最近の日本では、‘Cool
Japan’の風習が失われつつあるということか―――とちょっと嘆かわしく思うところもあるが、なあによく考えてみれば、素直な日本人は、「ちゃんと並べよ！」と叫ばなくても、白線を一本引きさえすれば、やっぱり、素直に並ぶのだともいえる訳で―――まだまだ、規律正しく優しい国民性を失ってはいないということではないかと－－－少しホッとしたのだった。
（11/21/18
10:00pm）
2018年11月21日
ウソのマナー
日本では、西洋料理レストランに出かけるとコース料理では「パンかライス」のどちらかを選べることが多い。外国ではコメを毎日食べる習慣がないから、黙っていてもパンが出てくるが、日本ならではのサービスと言ってよいのではないだろうか。
あえてどちらかを選べとなれば、パンも良いけれど、やっぱり「日本人」を永くやっているタカさんとしては「ライス」を注文したくなる。只、これをやってしまうと平皿に盛られたライスをフォークで食べるという余り見栄えのよくないことになる。
結婚披露宴などの会場では、「お箸をお願いします」といえばちゃんと持ってきてくれるし、ところによっては、最初からナイフやフォークと一緒にお箸も用意されているところもあるが、お茶碗によそわれたご飯と違って平皿に盛られたライスを、箸を使って食べる！等ということは――どう考えても美しくない。
若い頃に「ライスはフォークの背に乗せて食べるのが正しいマナー」なんて聞いたことがあったが、そんなバカな食べ方を日本男児たる者の沽券にかかわる！とおもっていたら、その内、「ライスをフォークの背に乗せて食べるなんて、日本人だけがやっていることであり、本場でそんな食べ方をしたら笑われる」という話をきいて、ああ、やっぱりねぇ〜と思うと同時に、タカさんにウソのマナーを教えたのは誰だ！と怒るやら苦笑いするやらであった。
そうそう、スパゲティーを食べる時は、スプーンの上で麺をクルクルとフォークに巻き取って口元に運ぶのが本場イタリアのマナーだ、なんていう話を聞いていたし、日本のイタリアンレストランではそんな食べ方をしている女性を何度かみたことがあったので、すっかり信じていたら、ミラノのそれこそ一流レストランでイタリア人がスパゲティーを食べているのを見たら、皆、右手にフォークを持ち換えて皿の上でクルクルと巻いて口に運んでいるではないか―――。後でイタリア在住の長い人に聴いたら、スプーンとフォークを使って食べるのは子供だけだよ！と聞いて、これも変なスパゲティーの食べ方をタカさんに吹き込んだのは誰だ！と憤激したものだった。
和食の作法は小笠原流礼法が一番上品だと聞いていたから、「小笠原流のラーメンの正しい食べ方」なるものは背筋をピンとして、大きなどんぶりを持ち上げて、音を立てずに食べるのだ―――と言っていた友達がいた時には、一瞬、信じかけたが、よく考えてみたら、日本でラーメンというものが食べられ始めたのは、昭和に入ってからだし――小笠原流礼法と時代が合わないことを考えればウソに違いないと騙されずに済んだつもりだが―――小笠原流に詳しい方がおられたら是非、ご教示を。
（11/20/18 10:00pm）
2018年11月20日
乃木将軍の母
今でこそトンカツはヒレよりどちらかというとロースの方が好きだけれど、子供の頃豚肉の脂身は大嫌いだった。食事の時、豚肉が出ると脂身の部分だけを残すと母に「それを食べ終わるまでごちそうさまをしてはダメ」と厳しく叱られ、泣く泣く目をつぶって飲み込んだものだから、大人になってからもしばらくはそれがトラウマになっていて、家内を随分と困らせたと思う。
母の世代の受けた教育といえば、いわゆる戦前の「修身」の教科書に則った教育でその中には、理想の母親像として「乃木将軍の母」なる項目があったらしい。
すなわち、幼い頃、ニンジン（だったかナス）が嫌いだった乃木さんに、「好き嫌いを言っているようでは立派な人間になれません！」と、毎日ニンジンを出し続け、お陰で乃木さんはニンジンをたべられるようになった―――という話を「理想の母親像」として育ったらしい母は、幼いタカさんにそれを「豚の脂身」で再現したらしかったが、乃木将軍のように立派な人間ではなかったタカさんは、「嫌な豚の脂身を無理やり食べさせられた」というトラウマから四十歳近くまで豚肉の脂身嫌いが続いたのだった。（しかし、四十を過ぎてからは、好きとは言えないまでも、豚の脂身も食べられるようになって――今や、ヒレよりもロースを選ぶようになった訳だが）
タカさんの同世代前後の世代は、この「乃木将軍の母」の逸話で教育を受けた親達に育てられた所為もあるのだろう、「お豆腐が嫌いだったが、嫌い、といったら毎食お豆腐を食べさせられた」とか「私はピーマンを食べさせられた」「俺はナスだった」といった思い出話がよくでる。
新聞に一部の小学校で進められる給食の「完食指導」が原因で、不登校になった生徒が続出、「子供たちに、食事を残すな！と強制するな」という運動を行っている団体までできているという記事が出ていた。
「給食の強制は絶対にやめて」というこの団体の主張には、乃木将軍の母や、それを理想として子供の嫌いなものでも完食を強いた、昔の母親たちに、「それは子供の虐待だ」といっていることになる訳で、タカさんとしては断固として「母は間違っていなかった！」と完全弁護したい気分である。
戦後、すぐの日本中が飢えていた時代から、昭和40年頃まで学校給食では、アメリカから放出された脱脂粉乳のミルクという奴が、学校給食で出されたが、アメリカでは牛や豚のエサだったという代物で、確かに日本人の体位向上に役立ったという一面がある一方、臭くて不味くてとても飲めるような代物ではなかったものの、先生の「ミルクを飲み終えないと遊びにいってはいけません！」の指導があったから、泣く泣く鼻をつまんで目をつぶって流し込んだ思い出があるが、これだって、今こんなことをやったら大反政府運動が起きて、政府がひっくり返るような騒ぎになる――と思う。
乃木将軍のお母さんが聞いたら―――今の日本を、どう思うだろうか。
（11/19/18 10:00pm）
2018年11月19日
アナログの逆襲
内閣改造にあたり、首相が与党内の大臣期待病患者の滞留整理の為に任命した新任大臣のスキャンダルや能力不足を野党が、あげつらって国会で追及し、時によってはそれが内閣の寿命を縮めさせるなんていうことが、良く起きるが、「大臣」なんていう奴はどうせ誰がやっても同じだ、と鼻からバカにしているタカさんは、この手の新任閣僚のつるし上げは、他にやる事のない野党の「いじめ」でしかないようにも思えるが、それはそれで面白いイベントにも思えて結構―-悪趣味に――楽しんでいる。
今度の内閣改造で、やり玉にあがっているのが、セコいスキャンダルまみれで都知事を辞めた舛添さんの元妻片山さつきさんと、五輪担当大臣でサイバー法案担当も兼ねている桜田義孝大臣で、桜田さんの場合、ハッキングに使われる可能性があるUSBメモリーについての質問に、USBが何であるのかも知らないご様子で、「専門家に答えさせます」と述べるは、「パソコンを使うのか？」との質問には「パソコンを使うことはない」と発言したことで野党に「不適格だ！」と散々いじめられている。
安倍さんにしても先の総裁選での恩義のある派閥へのお礼の意味から、各派閥の推薦者を任命しただけで、別に彼等が有能だとか適材だという訳で任命した訳ではなく、この二人も彼等の属する二階派の推薦だから大臣にしただけで、任命したことで「義理は果たした」ことになるから、いくら二人が国会でやり玉にあげられようが、「庇うまでの義理はない！」とばかり、助け舟を出す気配すらないのも結構笑える。
ところで、桜田さんというご仁、20年程前、北方領土問題やら北海道の開発案件のスキャンダルで実刑判決を受けた鈴木宗男氏のヨイショ団体「ムネムネ会」の会長だった人で、ムネオ金脈から多額の資金を得ていた方である。あの時、相当世論に叩かれたことを記憶するが、「どっこい生きていた」訳で、USBを知らなくても、パソコンを使えなくても、大臣にまで上りつめたわけで、ある意味では政界遊泳術においては政界トップクラスの能力の持ち主だと推察申しあげる。
昔、小渕首相が自らダイレクトに電話をかけることが有名で（瀬戸内寂聴や山瀬まみにも「もしもし、小渕です」と直接電話がかかってきたという）「ブッチホン」などという流行語にもなって小渕さんの支持率上昇にもつながったが、この「ブッチホン」、当初は「首相たるものが、秘書も通さずに直接電話をかけるなんて！首相の威厳が保てないではないか！」と相当批判もあったというから、二十年近くが経つと秘書にパソコンを打たせている桜田さんが「自分でパソコンも打たないなんて！」という非難を受けるようになるのだから―――世の中、随分と変わったものだ。
そうそう、先日見た映画「ジョニー・イングリシュ アナログの逆襲」では、イギリス諜報部のスパイリストがハッキングにあって全部漏れてしまい、仕方なく既にリタイアしたアナログ時代のスパイ（ローワン・ワトキンス演ずるジョニー・イングリッシュ）を使うのだが、彼がケイタイもパソコンも使わずIT機器にもまったく不慣れ故に、却って現代のハイテク戦で大活躍！！という抱腹絶倒の喜劇だったが、いい社会批判になっていたように思う。
桜田さん！アナログも捨てたものじゃないようですよ。野党のいじめに、滅入らないでこの映画でも観られてはいかが。
（11/18/18 10:00pm）
2018年11月16日
ボヘミアン・ラプソディー
モダンジャズは、チャーリー・パーカーが切り拓いた境地を、コルトレーンやミンガス、といった連中が豊かに耕し、エヴァンスやマイルス・ディヴィスで最高地点に達した―――と言うのが60年代後半からのジャズファン歴のタカさんの見方だが、クラシック音楽がベートーベンで黄金期に到達して以降、今に至るももう二度とその絶頂期を超えることが無いのと同じように、マイルスが絶頂期を迎えてから何かに迷ったように、商業主義的なファンクや、倒錯を起こしたようなフュージョンの世界に迷い込んでしまって以降は、あの60年代後半、そして70年代初期の黄金期を超える境地には達していない―――というのがタカさんのモダンジャズ史だが、ただ一度だけ、たしか70年代の後半に、ひょっとしてこのバンドは、マイルスの境地に達する可能性があるかもしれないと思ったバンドがあった。
それはイギリスのバンドQueen(クイーン)だったが、音楽性の高さは当時人気のバンドの中でも群を抜いている―――と思って密かに期待していたものだが、曲による出來不出来の差が激しく、リーダーのフレディー・マーキュリーのゲイっぽいいでたちやら女装に、なにか媚びたコマーシャリズムのようなものを感じて、次第にがっかり感がましていった記憶がある。
その後、91年に彼がエイズを患っていることを公表し、そして死亡した時に、ああ、彼は決してコマーシャリズムでゲイの真似をしていたわけではなく、本物のゲイだったのか―――と思ったら彼が抱えていたであろう心の悩みをしらずに、偏見ばかりをもっていたことを少し後悔したものだったが―――。
11月第一週に封切りされて以降、興行収益トップを走り続けている映画「ボヘミアン・ラプソディ」は、そのQueenとフレディー・マーキュリーを描いた作品だ。
この映画の封切りを知って当初、そっくりさん俳優たちによる見たらガッカリの再現映画の可能性もあるのでは―――とちょっと躊躇したが、まあ、見るだけ見て見ようと出かけた。
そっくりさん俳優たちが演じている―――という先入観からか最初の内はちょっと違和感があったが、その後、撮影期間中に俳優たちがかなり本物の役柄に憑依していった所為だろうか、途中からは違和感は殆どないし、ＣＧを駆使しているとは思うが、最後のウエンブリーでのあの伝説のライブエイドの場面では、サウンドに本物の録音を使っている所為もあってとても「偽物」とは思えない迫力があり、30年振りぐらいに昔、Queenを聞いた時の「何か新しい音楽のジャンルが拓けるのでは―――」と思った感覚が蘇ってきたような気がした。
フレディー・マーキュリーが生きていた時代のQueenをを知っている年代といえば、もう皆、いい歳になっている筈で（といってもタカさんよりは少し若い世代だが）、今の若い人はタカさんが懐かしむ「音楽性の高かったあの頃」の音楽を聴いてどう感じるかは分からないのだけれど、ぜひ一度、試しに聴いて欲しい気がする。
（11/15/18
10:00pm）
2018年11月15日
未開の社会
政府の圧政で市民の権利が犯されるようなことが起きる可能性がないとは言えないから、市民はそのような場合、権力を持つ側に対して反乱を起こす権利がある。
これは殖民地であった時代のアメリカが宗主国イギリスに対して独立戦争を起こし、武器を持って戦った結果、独立を勝ち取ったという独立の正当性の原点であり彼等の誇りとするところだ。したがってこれは、独立を勝ち取ってからも米国憲法の根源を成す根本思想となっている。
この「政府が圧政の主体となるのを防止するためにその圧政に抵抗する最終手段として市民が武器を所持することは、憲法上も当然の権利として認められる」という考え方は、アメリカの民主主義のそしてアメリカ建国の根本思想であり揺るがないものだ。
秀吉の「刀狩」以来、日本では権力の側だけが武装することができる――という思想が当たり前と思われているが、この考え方はアメリカ人からみれば「飼いならされた羊の論理」ということになってしまう。
毎月といってよい程「銃乱射事件」が起き、何の罪もない人々が何十人、何百人殺されようが、銃を持つ権利という「自由」の大切さにくらべたら犠牲が多少でることも致し方ないと考えるアメリカ人にとって「銃規制」なんてあり得ない事となってしまう。日本で、交通事故で死者がでるからといって自動車を法律で禁じることができないのと同じだ。アメリカで銃の所持が禁じられる等ということは起こりようがないのだ。
この点については、銃規制に積極的な民主党内にさえ銃規制反対派が少なからずいて一定の勢力を保っていることを見ても分かる。
もう一つのアメリカを二分する論争である「妊娠中絶の権利」の問題にしても、「神が授けた命を奪うことは殺人と同じであり絶対に許されない」とするキリスト教教義に基づいた「信仰要件」である以上、「強姦被害者の女性の望まない妊娠」であろうがなんであろうが、女性の自由意志などというものは一顧だにされず「いかに望まない妊娠といえどもしっかりと産まなければならない」という神の言葉に人間ごときが逆らうべきではないと信じる人が大多数となれば、今現在の州によっては中絶が許される場合もあるなどという「神に対する冒涜行為」は許すべきでないとする「敬虔なキリスト教徒」達の支持がほしくて、中絶一律禁止と言いだしたトランプ大統領や、いまや最高裁判事の過半数を占める保守派判事によって、近い内にアメリカでの人工妊娠中絶は出来なくなるだろう。
そんなアメリカから見たら、民間人が銃を持つことができず、年間出生数（100万人程度）の1/5程度（年間20万件）の数の妊娠中絶が行なわれているという日本は―――未開の社会と写っているのだろうかそれとも―――進んだ社会と言えるのだろうか？
（11/14/18 10:00pm）
2018年11月14日
短命な職業
今は違っていると思うが、「平均寿命が低い職業」の一つに昔は、商社の営業部長というのがあった。
確か残りの二つは、相撲取りと詩人だったような気がするが、当時、バリバリ（？）の商社営業マンであったタカさんは、この話を聞いてちょっと鼻白んだものだった。
今でいうなら、広告代理店の営業マンとかIT企業の下請けSEといったところらしいが、確かに当時の商社の営業マンは猛烈に忙しくて、しかも客先の接待やら何やらで、夜は遅くまで接待、土日も接待ゴルフなどでほとんど潰れる―――なんていう生活だったから、まさに過労死寸前のような状況もしばしばで同僚たちとよく「これじゃあ、長生きできる訳ないよなぁ〜」とぼやきあったものだった。
相撲取りも引退後はどうしても運動量が減りその割には、現役時代とは比べものにならないとはいえ食事量や酒の量が多い生活が続くから「短命」にならざるを得ないというのも頷けたし、詩人にいたってはナイーブな神経の持ち主でなければ良い詩はかけない、とばかり天才といわれる詩人のほとんどが夭逝していたからこれも納得がいった。（最近はそうでもないようだが）
タカさんは商社キャリアの後半は、管理部門に移り、企画だとか調査情報といった余り接待のない部署を担当した所為で夜遅くや土日までも狩出されることが比較的少なくなったが、あのまま営業をやっていたら―――とちょっと恐ろしくなる。
今でも、サラリーマンなら商社に限らず自分ではコントロールできない色々な外部からの要請で、体力的にも精神的にもプレッシャーのかかる事が多いし、時間的な束縛も避けられないことも多いから、どうしても「ストレス」が多くなりそれがつもりつもれば「短命」ということに繋がり易いようにも思う。
逆に「平均寿命の長い職業」というのがあり、これは昔から「政治家」「坊主」「噺家」の三つといわれた。
若い政治家、若い僧侶、若い噺家は注目を浴びないし重んじられないが、年を取ってくるに従って回りも「年を取っているから、しっかりしているに違いない」と話しを聞いてくれるようになりちやほやもしてくれるようになる。本人だって回りが注目してくれるとなれば、益々元気になって―という好循環になるからどんどん長生きする――ということのようだ。（親類の法事で、歳をとった大和尚の読経の後の法話は、話自身はありきたりのものだったと思うが皆がありがたがって聞いていたが、何年か後の法要では、大和尚さんが亡くなってその息子の若和尚が法話をしたが、法事に集まった年寄り全員に偉く不評だったのは、話の内容ではなく皆が「何をあの若僧が、偉そうに〜」と思った所為もあったと思う。
政治家と坊主と噺家は年をとれば取るほど皆が何故かありがたがって話を聞いてくれるようになるから本人もそれが嬉しくて益々元気になり長生きする、という好循環を生んでいるのだという事らしい。
リタイアした普通のサラリーマンの話なんて、家では子や孫だけではなく妻でさえ聞いてくれなくなる例も多いというから―――本人も段々と無口になり――ボケはじめて―――なんていうこともあるというからタカさんもできるだけ外にでておしゃべりをするようにしよう―――と思う。
（11/13/18 10:00pm）
2018年11月13日
心の迷い
尿酸値が高いと医者に注意された同僚がいてプリン体の多い物を取るのは避けるようにとのお達しが出たという。ところが彼は酒好きで、ビールはプリン体が多いから飲めないけれど、焼酎やワインならプリン体が少ないから飲んでもいいのだ！などというウソだかホントだかわからない説を誰かから聞いたらしくワイン党に切り替えて随分飲んでいたが――回りの同僚は「痛風にはならないかもしれないが、あんなに飲んだら肝臓を壊すだろうに〜」と言っていたものだ。
幸い、その後、彼が肝臓を壊したという話も聞かないし、痛風にもなっていないようだから、案外、ワインは体によい？のかもしれない。
コレステロールの多いイカやイクラはいけないだの、ニンジンに含まれるカロチンとやらが老化防止によい、あるいは納豆に含まれるナットウキナーゼが、動脈硬化防止によい、だのなんだのとウソだかホントだかわからないような「体によい」「体にわるい」食べ物やら飲物に関する情報が巷には溢れていて、「お肌の若々しさを保つ」だの「しみ、そばかすが消える」だのといった女性にとっての殺し文句を使った食べ物、飲物、薬の類は、有名上場企業まで参加してまさに一大産業になっている。
天邪鬼なタカさんは、「そんなのみんなインチキだ！」と信じない方だったが、年と共に検査の数値もあちこちガタが来はじめてきてから弱気になったところもある。
半年位前に、今まで正常だった血圧が高くなってきたことがあって医者から「少し血圧を下げる薬を出しましょうか？」と言われた。血圧の薬なんて麻薬か何かと同じで飲み始めたら止められない薬に違いないという偏見のあるタカさんは、薬をきっぱりと断ったのだが、偶々その日、テレビの何かの番組で「お茶に含まれるカテキンが血圧によい」なんていうことをやっていた。お茶なら麻薬よりはいいに決まっている！と翌日からペットボトルのお茶、しかもカテキンが一番「濃い」という奴を買ってきて2ℓボトルを一日一本飲みはじめた。カテキンの所為なのか、何なのかわからないのだが3ヶ月もすると血圧は元の正常値に戻りホッとしていたのだが――。
一月ほどまえ、健康診断の血液検査で「少し貧血気味ですねぇ〜」といわれた。若い頃から血の気の多いタイプのタカさんは、生まれてこの方、「貧血気味」なんていわれたことはなかっただけに驚いて、医者に原因はなんだろうかと聞いてみたら、「まあ、加齢でしょうかねぇ〜」と何とも身も蓋もないことをいう。
ところが、昨日、ひょんなことからネットを見ていたら、「カテキンの摂り過ぎは、貧血を招く」という記事をみつけてしまった―――。
おいおい、血圧を下げる目的で「濃いお茶」を飲んだら、貧血になってしまった！ということかと思ったが――カテキンで貧血になる、なんていう話も与太話かも知れないし―――何を信じてよいやらと思ったら、ちょっとした心の迷いから巷の「あれが良い」「これがいけない」という与太話に惑わされている自分に腹がたってきた。
やっぱり医者のいう「加齢ですね！」が正解なのだろうか――兎も角、今後は喉が渇いたらシンプルに「水」を飲むことにしようと思う。
（11/12/18
10:00pm）
2018年11月12日
裸の祭典
先日のシカゴマラソンに出場した日本の大迫傑選手は、全体3位ながら２時間5分50秒というこれまでの日本新録を更新し、遂に2時間6分の壁を破った。
80年代に宗茂選手が2時間10分の壁を破った時にも驚いたが、その記録さえ今の世界レベルの中では50傑にも入らないというし、現在の世界記録はケニアのキプチョゲ選手が出した2時間1分39秒というのだから、近い内に人類が2時間を切って42.195キロを走る等ということが実際に起きるであろうと強く意識させるものだ。
只、気になるのはここのところの世界、日本新記録ラッシュはナイキ社の厚底シューズによって達成されていると聞くと、10年程前に競泳でおきた高機能水着「スーパーレーサー」による世界新記録ラッシュとそれに続く高機能水着の全面禁止という苦い記憶がチラリと蘇ってくる。
あの時、やはり高機能だとか高反発という化学技術によるスポーツに対する過度なサポートは、競技本来の精神に対する冒とくではないか――といった議論があった。
報道によると最近のマラソン競技では上位入賞者のほとんど全員がこのナイキ社の高反発厚底シューズを履いていたというし、厚底になっている理由が、そこに敷かれた反発力の強いカーボンプレートの為であり、これを履いて走った選手の感想も、「履くだけで前のめりになる」とか「勝手に足が前に出る」など、なんだかあのレーザーレーサーを想起させるようなものがあり、どことなく「早く走るためのドーピング」的な印象があるからだ。
もうかれ半世紀以上前にローマオリンピックのマラソンで優勝を飾ったエチオピアのアベベ選手は「裸足」で走りぬいて2時間15分だったが、その4年後に東京オリンピックで靴を履いてマラソンを連覇した際にはなんと2時間29分もかかり、「靴を履くよりは、やっぱり裸足の方が早いのか―――」と驚嘆したことを思い出すと、この高反発厚底シューズは、本当に許されるべきなのだろうか―――とも思う。
陸上の100メートルでの世界記録は今や高反発の義足をつけて走るパラリンピックの記録に負けていることを考えると、この厚底シューズによる技術革新が留まることをしらずにドンドン進むとその内、「履いているだけで空中を飛ぶ靴」なんていうのが出てきてマラソンレースがエアーレースのようになってしまうのではないか―――等といらぬ心配までしているのだが―――。
この際、全てを原点に戻して古代オリンピックのように競技者は全員、「全裸でなければいけない」なんていうルールにした方がよほど公平な競技が行えるようにも思わないではないが―――。
やっぱり、オリンピックが裸の祭典になったら―――それはそれで大問題でしょうねぇ〜。
（11/11/18 10:00pm）
2018年11月9日
ユルユルの宗教
今も中東の国によってはビザ申請書には「宗教」を書く欄があるという話だが、以前はアメリカ国内でも何かの申請の際に‘religion’を書く欄があるのを見た記憶がある。
さすがにプライバシー尊重の中で、最近ではそんなことはなくなっているとはおもうが――。その頃、この手の申請書には正直にnone（無宗教）と書いてはいけない、という口伝のマニュアルがあり、それを守ってタカさんはBuddhist（仏教徒）と書いていたけれどいささかウソをついたという後ろめたさを感じたものだ。（「他人と宗教の話をしてはいけない」というのは「マナー」だといわれたものだが、本当にそんなマナーがあるのかどうかについては確信がもてないが―――）
「ウソでもいいからBuddhistとでも書いておけ！」というのは、世界のほとんどの国ではアラーでもエホバでもなんでもいいが‘神’の存在を信じるのは人間として当然のことであり、無宗教、すなわち神の存在を信じないなんて―――人間じゃない！と思われて入国を拒否されるから――等といわれたものだったが。
あれから数十年たってみてタカさんの宗教心は相変わらずnoneだが、最近ではまあ「仏教徒」とビザ申請書に書く位はいいか〜という気持ちになっている。
それは両親をはじめいくつかの葬式を仏教式でやってきたし、家には仏壇もあるし、そもそも大学受験の時には禅宗のお寺にこもって勉強したのだし〜なんていう経験を積んできた所為もあるとおもうが、自分はイスラムでもキリスト教でもないし（結婚式は神前だった）そのキリスト教やらイスラム教に巻き込まれると教会やモスクに行かないといけないとか、日に何度かのお祈りをしないといけない、断食をしないといけない、なんて随分とややこしそうなのに比べ、日本の仏教は、寺に行かなくても、毎日勤行をしなくても、肉でも魚でも何でも食べてよいし、酒も幾らでも飲んでよいし、坊さんの妻帯までOKというユルユルさがいいと思えるからだ。
もっとも、タカさんのいうユルユルの日本的仏教徒というやつには、神の概念がないのか？といえばそんなことはない。「お天道様が見ている」という気持ちは常にあるから、できるだけ（！）ウソはつかないようにしているし、もしウソをついた場合、心の隅にやっぱり後ろめたさを感じるのは、西洋人やイスラム教徒が感じる「神」に対する畏敬の念にちかいのかもしれない。
ただイスラムやキリスト教徒が「神の教え」に従うのは、「神様に褒めてもらって、死んだら天国に入らしてもらおう」という打算の目的があるからなのに比べて、タカさんのいうユルユルの仏教徒（山本七平のいう「日本教」に近いかも）は、別に何の見返りを求めている訳ではないというところに大分違いがあるようにも思う。
イスラムとキリスト教、ユダヤ教の間の諍いによって歴史上、数多くの戦いが行なわれてきたし、今も続いていることとか、超大国アメリカの近年の社会の分断だって根本のところには宗派対立があるようにもおもえるだけに、世界の宗教は、もう少しユルユルになった方がいいのでは〜なんて思わないではない。
（11/06/18
10:00pm）
2018年11月8日
花相撲
大相撲で本場所のように成績が次の場所の番付や給金に直接反映する興行と違ってそこでの勝負が来場所に影響しない地方巡業や奉納相撲興行を別名「花相撲」という。
タカさんが子供の頃も、一門単位であるいは合同の地方巡業というのがよくあって東京都内でも、神社の境内などにのぼりがたって本場所などは連れて行ってもらえなかった子供たちは、大喜びで見にいったものだった。
相撲甚句や、初っ切り相撲、お相撲さんののど自慢大会などという本場所ではみられない余興もあって実に面白いものだったが、なんと言っても子供たちのお目当てはその土地出身の力士が出てきて、不思議と勝つことだった。鹿児島にいた頃は、巡業を観に行くと鹿児島出身の鶴ヶ嶺（今の井筒親方の父）や朝潮（初代）が土俵に上がると大歓声があがり、彼等は必ず勝って「故郷に錦を飾り」観客は大満足して帰ったものだったが――あれは、花相撲故の「八百長」だったのではないか？朝潮や鶴ヶ嶺も東北などに巡業に行った際には、相手のその地方出身力士に花を持たせているのではないか？と、子供心にも思ったものだったが。
先日、テレビの地上波で、ゴールデンタイムにバレーボールの世界選手権だかワールドカップの中継をやっていた。バレーボールに興味がある訳でもないのだが、他に面白い番組もなかったのでしばらく見ていたのだが、ふとおもったのはこの間も世界選手権だかをやっていたような気がしたがバレーという奴はなんでこんな日本でばかりやるのかな？ということだった。
テレビ中継中の試合は、世界選手権と名がついているから当然、優勝戦かなにかとおもったのだが―、よく見る「日本対アメリカの5，6位決定戦」だという。5，6位決定戦ということは少なくとも4チームは日本、アメリカより上位がいる訳で、その4チームによる準決勝戦2試合は、その5，6位決定戦に先立って午後1時からと4時から行われておりこちらは勿論テレビ中継なしだったというのだから順番がまるで滅茶苦茶だ。（結びの一番が先にあってそのあとで小結対決があるようなものだ）
花相撲と同じで、開催国が出場する試合をゴールデンタイムにもってくるのは、まあ許されるにしても、日本が出場する試合は、他の試合にはない休憩タイムが特別にあるとのことで（これもテレビ中継のゲストの歌や踊りを入れるためだったらしい）ルールまでもが花相撲の為に変わっているらしい。休憩タイムにゲストの歌や踊りを入れるというのは――途中に初っ切り相撲や相撲甚句が入る花相撲とそっくりだ。
あとで調べてみたら日本で世界大会と名がつく試合が多いよう思ったのも、その通りで、年間数回あるという「世界大会」のほとんど全てが日本で開催されているという。理由は、バレーボールは世界ではあまり人気がなく、その点、日本のテレビ局が放映料などで多額の金を払ってくれるから、今や世界バレーボール協会は日本なしでは成り立たない状況になっているからだとか―――。
まあ、花相撲のように「郷土出身力士が必ず勝つ」という八百長があったわけでもなく（ちなみに今回も日本は5，6位決定戦にも負けて6位に終わったようだ）場所とアゴアシを提供しただけだから、文句をいう筋でもないが―――。
スポーツといえば商業主義抜きのガチンコを思い浮かべてしまう古いタイプのタカさんにとっては、とてもついていけない世界大会だったような気がする。
（11/07/18 10:00pm）
2018年11月7日
女性の年齢
幼い女の子に「何歳？」ときくと指を3本立てたので「三つなの、大きいねぇ〜」というとそばにいるその子のお母さんが嬉しそうに「まだ、先月3才になったばかりなんですよ〜」と答える。
あるいはかなりご高齢の車椅子にのったご婦人に「お幾つになられました？」と尋ねると「90才になります」と返事が返ってきたら「お若くて、とても90才には見えませんねぇ〜」と言えば、本人も付き添いの人も嬉しそうな顔をする―――。
「女性に年齢を尋ねる」のは、モラル違反だといわれ現代ならば状況によっては、セクハラだとも言われかねない行為だが、女性といっても幼女や超高齢者になると「モラル違反だ！」と目くじら立てられることもなく、むしろこちら側の反応次第では先の例のように嬉しがられるケースだってあるように思う。
2-3歳の幼女に限らず、まあ、中学生ぐらいまでの女の子なら年齢を聞いてもそんなに嫌がられないと思うが、それでは「女性に年齢をきいてはいけない」のは何歳から上の女性なのだろうか？
アラサーやアラフォー、だと絶対怒られそうだし、いやいやアラ還暦、アラ古希の女性だってとてもとても怖くて聞けないが―――90、100才近くとなれば尋ねて「とてもそんなには見えませんねぇ〜」というのが礼儀のような気もするし〜。
まあ、それも聞く方の側の相対的な年齢にもよるような気もしないではない。70を過ぎたジイサンになったタカさんが、親類の高校生の女の子に歳を聞いてもまさかセクハラだとは言われないような気もするし―――。
ところで、「女性に年齢を聞くのは失礼」というモラルは、一体どこの国から始まって、日本人に広まったのはいつ頃からなのだろう？
時代劇などではよく「姉さん、幾つだい？」なんて結構ぶしつけに尋ねる場面を見たような気がするが、あれは、ストーリーの背景説明上、そんな台詞をいれているのだとは思うが、現代劇ではあり得ない台詞だ。
アメリカでも、初対面同士がよく相手の年齢を、ぶしつけに聞いている場面に出くわしたが、あれは、タカさんが付き合っていたアメリカ人が粗野で下品な連中ばかりだった――という訳でもなかったと思うだけに―――未だもって謎だ。
（11/06/18
10:00pm）
2018年11月6日
胆力の問題
南洋の青い海で泳ごうとビーチサンダルを履いてビーチに出るとなぜか他の人々がビーサンを履いたまま海に入っていく。日本の海水浴場では砂が熱いからとビーチを歩く時にはビーサンを履いてはいても海に入るには砂浜にビーサンをぬいで裸足で入るのに―――と思って、日本流に裸足で海に入ってしばらくジャブジャブと歩いてみて皆がビーサンを履いて海に入る理由が分かった。
浜辺から少し歩きだして深さが膝ぐらいになった時、グニャリとしたものを踏んだ嫌な感触が足の裏から伝わってきた。ギョッとして慌てて足を抜いたが、今度は反対側の足がまた何か得体の知れないものを踏んでしまったので又ギョッとさせられた。
水が透き通っているから目を凝らして水中を見てみると丁度、大人のウンコのような物体が無数に散らばっているではないか―――。すなわち、自分の回り全体がなた割り型のぶっといウンコが敷き詰められているような状態だ。そのウンコのような物が実はナマコだと気づくのに時間がかかったが――その時はじめてナマコは日本のように冷たい海ばかりではなく温かい海にもいる生き物なのだと知った。
日本人や中国人は古くからこのナマコを食料として珍重してきたが、あの何ともグロテスクな生き物を食べようなどという発想は一体どこからきたのだろうか。漱石の「吾輩は猫である」の中にも「初めてナマコを食いい出せる人はその胆力において敬すべく－－－」という一文があるがまさに名言である。
もっともグロテスクな食い物といえば、イスラム教徒が「悪魔の魚」といって忌み嫌うタコだって（あるいはイカだって）、あるいはウナギやドジョウだって形はグロテスクだ。そう考えれば、最初に食べた人は「胆力において敬すべき人」と言える。
いま我々が好んで食べている植物の中にだってかつては人々が手を出さなかった物は多い。コロンブスの新大陸発見以降、ヨーロッパに伝わったジャガイモは、当初、「聖書に書かれていない」食べ物であり、種をまかないのに勝手に土中で増えること、中毒症状を起こす人がいる――などの理由からこれも「悪魔の 食べ物」と呼ばれて食べられなかったという。ところが、ジャガイモの毒（ソラニン）は若芽を取り除きさえすればよいことが分かってからは、栄養価も高く、保存が利き、大きくて、美味しい等の利点が理解され、西欧を中心として主要な食糧として尊ばれる存在になった。
同じく、南米原産のトマトもその真っ赤な色から長く「毒がある」と誤解され「悪魔の食べ物」として避けられていたというから、今日のイタリア料理やら、日本のチキンライスなどにも必ずや胆力のある御仁がいたことになる。
ナマコからトマトまで考えてみると、人類の食の道は「胆力のある人」がリスクを恐れずに切り拓いてきたといえる訳で―――そう考えると江戸っ子の好物といわれるあの強烈な臭いのするクサヤを最初に作った人も、最初に食べた人もよほど胆力があったか余程の変態かのどちらかだと思うのだが―――あの臭いを嗅いだだけで、とても食べてみようなどとは思わないタカさんは胆力がなく、「本当に美味しいのに――」といっている江戸っ子の妻の方が、よほど胆力があるということだろうか？
（11/05/18 10:00pm）
2018年11月5日
得体が知れない
2000年頃、遊園地や駅などの人の集まるところには必ずあったプリクラだが、いつしかその人気も下火となり次々とメーカーが撤退し、現在、遂に一社が残るのみとなったという。
プリクラで撮った写真と同じものが、今やスマホで簡単に撮れるようになったし、デコメなどの機能もスマホでできるとなれば確かにブームの下火もうなづけなくもない。その内、ひなびた温泉場の遊技場の卓球台とビリヤード台の横にポツンと置いてある―――なんていう存在になっているのかもしれない。
それにしても、一時はあれほどの大ブームを起こしたプリクラなのにその栄枯盛衰のなんと早いことよと今更ながらブームだとか流行というものの得体のしれなさに驚嘆する。
そうそう、何年か前に韓流ブームというのがあって日本のオバサンたちが旦那をほっぽらかしで、連日韓流ドラマ漬けになっているとか、ツアーで韓国に押しかけている―――といった社会現象があったけれど、あれもいつの間にか下火になってしまい数年前に、何かの機会で新大久保を歩いた時には韓流ブームの時には大賑わいだった通りは閑散としていて韓流スターのブロマイドなんかがもう投げ売り状態になっていて、うら寂しさが漂っていたものだったが―――もっとも最近は又新たなK-POPブームとやらで賑やかになっているらしいが―――。
ポケベルがPHSになりケイタイに代わり、更にスマホになったというような技術革新によりやむなくブームが去っていくのはまあ、分からないではないが（プリクラがスマホによって駆逐されつつあるのもその一種か？）、支持率80％に迫ろうかという勢いだった民主党鳩山内閣がわずか2年も経たないというのにブームが去って10％台に落ち込んだ例などは、日本人の政治意識のいい加減さなのか、なんなのか―――どんな政治学者にもその理由は分析できないのではないだろうか。
大統領選の最初は泡まつ候補の一人にすぎなかったトランプ氏が、あれよあれよという間に、（圧勝を信じていたヒラリー陣営を負かして）本当に大統領になってしまったのもブームの一つだろうし、なあに2年は持たない―――とも言われながらも、中間選挙でも持ちこたえるのではないかとまで言われる強さを発揮しそうなのも一種のブームなのか何なのか、さっぱりわからない。
考えてみれば、スターリンやヒトラーが政権をにぎったのだって得体の知れないブームに乗ったからであったことを考えれば―――韓流からトランプまで本当に流行という奴は得体がしれない。
（11/04/18 10:00pm）
2018年11月2日
自然を守るには
側用人から身を起こし老中にまで上り詰めて江戸中期の20年余りその権勢をふるった田沼意次は、貨幣経済を育て町人文化が栄える礎を作ったというプラスの評価がある一方で、彼の失脚後、その後を継いだ政敵白河藩主であった松平定信がその業績をことごとく否定し覆したこともあってその賄賂政治体質が殊更に貶されて今に至るも「田沼政治」は政治腐敗の代名詞として使われるほどだが、厳しい倹約、節約を敷いた松平定信の緊縮財政に音を上げた庶民によって「ああ、田沼時代は景気もよくて自由でよかったのに！」と懐かしがられたともいう。
その庶民の気持ちは有名な狂歌「白河の
清きに魚も 住みかねて もとの濁りの
田沼恋しき」にもよくあらわされている。青く透き通った熱帯の海には精々小さな熱帯魚しか棲めないのと同じで、江戸時代の人も濁った田や沼にはドジョウやフナなどの多種多様な魚が多く棲むが、清流（白河）には魚は棲めないことを良く知っていたからこその狂歌である。
昨日の新聞に面白い記事があった。高度経済成長期には工場排水や生活排水に含まれるリンや窒素といった栄養分が大量に流れ込んだためにそれらの養分を食べてプランクトンが爆発的に増加し、赤潮が発生、漁業が大きなダメージを受けた大阪湾だが、公害に対する規制が強化され排水規制が敷かれるようになって水質もよくなり、80年代には漁獲量のピークを迎えたのだが、その後、下水処理能力が急激に上昇、大阪湾の水質はどんどんよくなり―――最近では「よくなりすぎて」海水浴場には良いけれど魚がさっぱり獲れない―――というまさに「清きに魚も住みかねる」状態になっているという記事だ。海の水も汚すぎても、綺麗すぎても、魚にとっては良くなく、結局、昔のまま、自然のままが一番よいのだという教訓のようにも受け取れる話だ。
魚が棲めなくなったのは水質が良くなりすぎたためだけではなく、関空の埋め立て工事によって湾内に海流がなくなってしまった所為ではないか―――等の説もあるようだが、要するに、人間が自然に手を加えることのみならず、自然を再生させようとする（しすぎる）ことまでも、太古からの自然の営みにとっては、余計なことだということなのだろうか。
同じ日の朝刊に、千葉の湿原で60年前を最後に自生が確認されなくなり、もはや絶滅したのではないかと考えられていた湿原の一年草クロタマガヤツリが、ことし成東・東金食虫植物群落という湿原で61株も確認されたという記事があった。
この湿原の回りは人間の開発により乾燥化が進みススキが群生しはじめていたために乾燥化を嫌う食虫植物保護のために、そのススキを取り除こうと回りの土を掘り返したことによって土の中に60年近く眠っていたクロタマガヤツリの種が眠りからさめて発芽したのではないかという。
人間が開発によって絶滅させたと思われていた植物の種が、60年振りに再び目覚めて群落をつくるなんて―――これも又人間が自然を破壊しても、大自然の力はそんな物には負けないで再び蘇える強さをもっていることを表しているように思う。
「自然を守れ！」というスローガンを実現するための最良の手段は地球上から人類がいなくなることではないだろうかという極論まであるが、一理あるのでは、とも思える二つの記事だった。
（11/01/18
10:00pm）
2018年11月1日
アメリカで生まれた
福沢諭吉の「福翁自伝」に諭吉がアメリカを訪問した際に、「アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンの子孫は今、どうしていますか？」と尋ねたところ、だれもが「さあ、今どうしているか知りません」と答えたのには驚いたと書いている。
諭吉にしては日本人ならば、江戸幕府を開いた徳川家康とか鎌倉幕府を開いた源頼朝の「子孫はどうしているか？」と尋ねられて、「さぁ〜」という答えはあり得ないのに―――と思ったのだ。（ワシントンが初代大統領の座に着いたのは、諭吉の訪米のわずか100年程前に過ぎない）
権力の座が世襲制であった日本と、毎回選挙によって選ばれるアメリカの違いを福沢諭吉が実感し感心したエピソードとして知られているが，ワシントンには子供がいなかったので「子孫」という諭吉の質問が的外れであった――というオチもついているが、その時代から、アメリカ人であれば誰でも大統領に選ばれる可能性を持っていて、大統領になったからと言ってその座を世襲で譲ることはできないというアメリカ民主制の基本に諭吉が実感したエピソードとしてよく引用される話だ。
「アメリカ人なら誰でも大統領になれる」というアメリカンドリームが、今も、現実的なものかとなるとやや疑わしい面もあるが原則は変わっていないのが事実だ。但し、「大統領になれるアメリカ人」という点には、ほんの少し条件がある。すなわち、「アメリカ生まれ」「アメリカ在住14年以上」「35歳以上」の3条件だ。
幼い時に両親に連れられてアメリカに移住し、アメリカ人として暮らしてきて長く国務長官として政権の中枢を担ってきたヘンリー・キッシンジャーも15才の時にナチスの迫害を逃れてアメリカに来て青年期には、従軍経験もあるが「アメリカ生まれ」という条件に合致しないために大統領候補にはなれなかった。
しかし、逆に言えば、この3条件さえクリアーしていれば、諭吉が感心したように「誰でも大統領になれる」わけである。そこで、近年問題視されているのが「アメリカ人」とはだれかという事である。アメリカは誰であろうと「アメリカで生まれれば」アメリカ国籍を取得できるという国籍の属地主義をとっており（日本は日本人の子供はどこで生まれても日本人という属人主義）、すなわち国境を不法に超えて来た不法移民が生んだ子供でも無条件でアメリカ国籍が与えられるから、その子は、将来アメリカ大統領になる条件をキッシンジャー以上に備えたことになる。（アメリカ人の赤ん坊の親（不法移民）は、当然赤ん坊の養育上必要であり人道上からもこれを追い返したりできないから、当然、その親達の生活が成り立つようにアメリカ政府は様々な保護を与える義務が生じる必要があるし、赤ん坊を含めた一家の生活が成り立つように様々な社会手当も必要になる）メキシコ国境を越えてアメリカになだれ込もうとしている7000人にも上る人々の中には臨月の母親とその夫、兄弟たちが多いという）
ここで一気に不法移民を大量に保護しなければいけなくなるというのでは大変だと，反移民を掲げるトランプさんは焦って「アメリカで生まれた子供に無条件で国籍を与えるなんて間違っている！」と大統領令でこの伝統的なアメリカ国籍属地主義の停止を宣言したが―――いやはや、大変なことになってきた。
トランプ支持者として有名な、大統領になりそこねたキッシンジャーの意見を聞いてみたい気もする。
（10/31/18 10:00pm）
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