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日々早々エッセー
バックナンバー集（2018年 7-12月分）
2018年下期の各月バックナンバー： 7月、8月、9月 10月 11月 12月
＜＜2018年：7-12月分 タイトル＞＞
12/28 天候というものは 2/21 宇宙は広い 12/14 加齢ですね 12/13 霜柱 12/07 民主主義のコスト 12/06 最善の防諜法
11/30 ご老公の印籠 11/29 生命倫理の壁 11/27 夢は見るだけで 11/22 ちゃんと並べよ！11/16 ボヘミアン・ラプソディー
11/13 心の迷い 11/09 ユルユルの宗教 11/07 女性の年齢 11/02 自然を守るには 10/31 武蔵の杖 19/26 労働力と人間
10/19 Here or To Go? 10/16 パッチを履いた 10/15 抜け駆け横取り 10/12 身の引き時 10/11 高額配当
10/05 再建断念 10/04 髪の薄いオジサン 09/28 絶体岡田押し 09/26 自然の摂理 09/21 ヤクザと娼婦 09/19 世代ギャップ
08/24 重さの価値 08/20 人徳のなせる業 08/06 本当の七夕 08/03 熱闘甲子園 08/01 8月の祝日 07/31 自動翻訳機
07/27 坂道の家 07/24 夕立 07/20 人生100年時代 07/13 言葉の必要十分条件 07/12 コーランに書いてある 07/10
真の姿 07/06 お手伝い 07/04 暗闇恐怖症
2018年12月28日
天候というものは
三連休の終末から日本有数の豪雪地帯として名高い越後の十日町の温泉に出かけていた。
クリスマスの時期でもありホワイトクリスマスを過ごせるのではと降り積もっている雪を期待もしていたのだが、何と到着した日の朝に初めて纏まった雪が降った、とのことで、ところどころに10㎝位の雪がある程度、近場のスキー場も未だ営業していないというし、パンフレットを見た妻が楽しみにしていたスノーモービルの体験とやらも雪が足らずに未だやっていないというではないか。
関東にいると雪自身をひと冬に一度か二度見る程度なので、ドカーンと降る雪とか数メートル積もっている雪、というのに何となく憧れもあったから正直肩透かしを喰ったみたいでガッカリもしてしまったが―――地元の人は年越し迄に一度も雪下ろしをしないで済みそうだから大助かりだ！と言っていたから、大雪だとか豪雪と言う悪天候がない事を喜び、雪のない地方に住む我々は、無責任に雪がないことにガッカリする―――というのだから――天候に対する考え方の違いは実にさまざまであることにあらためて気付かされた。
考えてみれば、今年は日本中で例年以上に色々な天変地異が起きてきたが、被害に会われた地方に住む人々の苦しみは大変だったろうと同情にたえないけれど、やはり自分がそういう目にあっていないと、どこか実感を伴わなかったことは否めない。
まあ同じ豪雪地帯の人のなかにもスキー場関係者は雪が降らないのを嘆いている人もいるに違いないから、世の中、誰にとってベストの天候というものはないということなのかもしれないが――――。
タカさんだって、今年の夏の暑さには初めて熱射病で倒れ、しかもそれが2日連続だっただけに古希を過ぎた自分の体力を過信してはいけないということを思い知らされたのだが、これだって倒れて以降は体力を過信しての無理をしないようになったし、酒量も（いくらか）セーブするようになったし秋口からは適度な運動にこころがけるようになったから、長い目でみればひょっとしたら今年の夏の猛暑が、タカさんにとっては「怪我の巧妙」になるかもしれないし―――。
そんなこんなで、早くも、もう年の瀬となった。
例年通りこの「日々早々」も今年は今日から新年の1月7日まで休みに入ります。
今年も一年ご愛読いただきありがとうございました。
それでは、皆さま良いお年をお迎えください。2019年が皆さまにとってより良い年でありますように。
（12/27/18 10:00pm）
2018年12月21日
宇宙は広い
JAXAが2014年12月に打ち上げた探査船はやぶさ2は今年目標とする小惑星リュウグウに到着、回りをまわりながら来年には着陸する予定だという。
リュウグウは火星と木星の間にある小惑星帯にある100万個とも言われる小惑星の一つだが、宇宙のスケールでいえばそんな近くの小惑星まで4年掛かって、やっと到達したというのだからやっぱり宇宙は広い！ということを実感する。
SF映画などだと小惑星帯に宇宙船が突入すると右に左に小惑星がビュンビュン飛び交っている―――等という迫力満点の場面もあるが、小惑星帯自身が周囲25億キロにわたるし、その幅は約3億キロにも及ぶ（しかも立体的な帯である）から例え100万個といわれる小惑星といえどもその散らばり方は物凄くまばらで、単純計算で見てもリュウグウの隣の小惑星までは恐らく数万キロは離れている計算になる。
例え隣の小惑星まで1万キロだったとしても周囲数百メートルにも満たない隣の小惑星は肉眼ではとても見えないはずだから、さし当ってリュウグウが他の小惑星に激突する！などというリスクは殆ど皆無といってよい。
しかし、そんな遠くにあるそんなに小さな天体に4年をかけて正確にロケットを到着させたというのだから、人類が備えた科学技術の凄さはまさに神業以上の物といえないだろうか。宮本武蔵は飛んでいるハエを箸で捕まえたといわれているけれど、武蔵の神業もはやぶさ2の偉業に比べればいささか色あせるような気もする。
ところで、つい最近、新たな太陽系外円天体、恐らく準惑星を発見したという科学記事を目にした。
Faroutと名付けられたこの天体は、地球と太陽の距離の約120倍（120AU）以上も離れていて、いまのところ正確な大きさもはっきりしないようだが、何しろ太陽から一番遠い惑星である海王星でもその距離は太陽から30AUしかないのだから、とんでもなく遠い距離にあるということになる。太陽から地球までの距離を光だと8分ほどで届くが、120AUの距離にあるとなると太陽の光がこのFaroutに届くまではなんと16時間40分もかかる計算になる。気の遠くなるような距離だ。
しかし、このFaroutに探査機を送ろうという構想があるという。今現在冥王星を目指して飛んでいる無人探査機「ニュー・ホライズンズ」は、時速約6万キロというスピードで飛んでおり、もしこれと同型の探査機をFaroutに向けて打ち上げれば35年から40年もかければ到達できる！らしい。来年探査機を打ち上げたとしてもタカさんの生きている内にFaroutの映像を見ることはできないが、子や孫、そして曾孫たちはそんな映像をみることができるかもしれないと思えば何だかワクワクしてくる。
人類は凄いなぁ！と思ったが、もう一度、先ほどの計算の通りFaroutまでは光速で16時間40分であるということを考えると---たいしたことはないのかなぁ――という気がしないではない。
というのも、陽系全体の大きさは（端っこにあるといわれるオールトの雲まで）1.6光年、太陽の一番近くにある恒星であるケンタウルス座アルファ星までの距離は4.37光年であり―――宇宙の果てまでは少なくとも138億光年である――――光が16時間40分で到達できる距離を人類は35年から40年かかるとなると――――やっぱり宇宙という奴は想像もできないほど広い―――という事実を突きつけられたからだ―――。
（12/20/18 10:00pm）
2018年12月14日
加齢ですね
「当たるも八卦当たらぬも八卦」といわれる占いで、100％当る占いがある。「あなたはいつか死にます！」というものだ。
有史以来累積すればそれこそ500億人と推計される人類の中で今までに死を免れた人は一人としていないし、人生100年とかいや120才までは生きられる！という話まで出てきている今も、そしておそらく未来も不死の生命を得る者はいないだろう。
すなわちいかに健康な人といえども人は年老いてくると体のあちこちに不具合が出て、遂には死にいたるというのが他の生物同様に人の生命に組み込まれたプログラムだと言ってよい。
ただ以前と違って人の平均寿命がどんどん延びて、日本でも男性は81.09歳、女性は87.26歳となって未だ伸びる余地があるといわれ実際100才以上の人口も6万7千人というのだから年齢だとか老いに対する日本人の考え方が少し以前に比べても様変わりしているのは当然かもしれない。
先日ある会にタカさんと同い年（70過ぎ）の医者が数人いたのだが、偶々「加齢」の話になった時、今の老人が医者を訪れた際にその診断結果を伝える際に、「加齢ですね」という言葉は禁句になっていると異口同音に言っていた。
ちょっと前までは「お歳の所為もありますからねぇ〜」と言えば、皆結構納得していたのに今や「お歳」だとか「加齢」を持ち出すと患者が不機嫌になるのだそうだ。
自分はまだ60才台、あるいは70才台であり平均寿命にも届いていないし、100才までは未だ30年、40年あるというのに「加齢」だとか「お歳」の所為にするとは、この医者無責任なヤブに違いない！と怒りが込み上げてくるらしい。
仕方がないので最近は「お歳の所為」「加齢の所為」は禁句にして、xx症、○○性症候群、といった病名を伝え、処方箋を書くと患者は安心して帰る―――という笑い話のようなことを言っていた。
確かに、タカさんだって体が痒いのは「日光過敏症」だといわれ、視力の衰えは「白内障の初期」なんて診断されると納得するが、考えてみればこの二つともに若い頃には無かった症状だから、「歳のせい」「加齢だから」だとも思うのだが、病名を告げられ処方箋をもらったりすると何となく安心して律儀に薬を飲んで満足しているなんていうところがある。
信長は本能寺の変で、日頃から、好んで舞っていた「敦盛」の一節「人生わずか50年、下天の内に比ぶれば〜」と謡って死んでいったというが、それが長く日本人の死に際の潔さ、のように語られてきたのに今や「歳の所為」といわれて70才、80才の老人が怒るというのだから、良い悪いは別にして―――日本人もすっかり変わった、ということだろう。
（12/13/18 10:00pm）
2018年12月13日
霜柱
師走に入っても夏日に近いほど温かい日があったりして天気予報を余り信用しないタカさんも、さすがに秋ごろにやっていた「今年の冬は暖冬」という予想は、当り、かもしれないなあ～と思い始めていたのだが、漸く、昨日、今日と朝方の気温は冬らしく下がってきたし、ましてみぞれとまではいかないまでも冷たい雨が降ってきたから漸く師走らしさが出てきたかなぁ〜とも感じている。
地球温暖化の原因が人為的なものなのか、太陽黒点の不活性による自然現象なのかは相変わらず論争が続いているものの、ともかく「地球温暖化」はここのところは確かだという気がしなくもない。
というのも、半世紀以上前のタカさんの高校時代には、今頃の季節には、朝、我が家の庭先にも霜が降りて寒かったし、オーバーにマフラー、厚手の手袋をして白い息を吐いて通学していたような記憶があるし、駅までの道端には結構、霜柱が立っていてそれをわざわざサクサクと踏みしめて歩いたりしていた思い出があるのだが、ここ数年、冬になっても目立つほどの霜というのを見なくなったし、霜柱を踏みしめて歩いた―――という記憶があまりないようにも思うからだ。
まあ、もちろん実家は「冬寒く夏暑い」といわれる典型的な内陸気候（？）の多摩地区にあったし、今住んでいるのが湾岸地区（海沿いの為、そんなに寒暖の差が激しくない）の埋め立て地にあるのだから、その二地点の間の気温差は結構あり、今だって多摩の方は毎朝霜柱がたっているのかもしれないが―――もう実家を離れてから長い年月が経つからさっぱり感覚が分からない。
ただやはり、何しろ50年以上前といえば、まだ東京のいたるところの主要道路以外の道路は余り舗装もされていなかったことを考えると、今のように舗装されていない道がほとんどなくなってしまった時代と比較して「霜柱を見なくなったからやっぱり温暖化は進んでいるのだろう」と言ってしまうのも早計に過ぎるのかもしれない―――と思わないではないが。
（12/12/18 10:00pm）
2018年12月7日
民主主義のコスト
フランス革命のきっかけとなったパリのおかみさん達による「パンよこせデモ」とも言われるベルサイユ行進だといわれるが、このパンよこせデモは、前年の凶作や政情不安のために穀物の価格が高騰したためにパリ市民が主食とするパンにも事欠くようになり豪勢な暮らしぶりを続けているといわれた王家に対する怒りが元になって発生したものと言われている。
パリの市民がパンが無くて困っているという話を聞いた王妃マリー・アントワネットが「パンがないのならばお菓子を食べればいいじゃないの」といったことが、パリのお上さん達の怒りに火をつけたのだなどという後世の作り話が結構今もまことしやかに信じられているのは悲劇の王妃マリー・アントワネットにとっては気の毒な話ではあるが。
フランス各地で燃料税引き上げに反対する大規模デモが相次ぎ、一部参加者が暴徒化して治安部隊と衝突、多数の死傷者が出るに至って遂にマクロン大統領はさし当って6ヶ月間引き上げを延期することを発表しデモの鎮静化を図っているが、思い通りに国民の怒りが沈静化するかどうかは今のところ微妙な情勢だとか。
日本でも10年程前にガソリン税値上げに反対する当時の民主党議員の一部が「ガソリン値下げ隊」なるコッパズかしい名前の議員連盟を作ってパフォーマンスをやったことがあったが（その後、民主党が政権を取ったら結局、ガソリン税は元のままにした）、どうもガソリン税やら燃料税とやらは騒ぎを起こす火種になる要素があるようだ。（あの時値下げ隊で暴れた議員さんのほとんどが、今や消えてしまったが―――）
燃料税問題がなぜこれほどまでにフランス国民を怒らせたのかというと、地球温暖化防止の為に脱ガソリン車策を推し進めようとするマクロン大統領が「ガソリン車ではなく電気自動車に乗れ！」「ガソリン車ではなく公共交通機関を使うべきだ！」という意図から発想したものだというから、地方に住んでいて公共交通機関の便に恵まれない人達、あるいはガソリン車から値段の高い電気自動車への買い換えが容易ではない庶民層が、まさにあのマリー・アントワネットの「パンがないのならばお菓子を食べればいいじゃないの」といった事に怒りを爆発させたと同じ状況が出現した――という事らしい。
累積する財政赤字の削減を図り財政の健全化を図ろうという元々の目的の消費税の引き上げが、景気後退の怖れやら既得権益層の反発（選挙での大敗）への怖れから、雲散霧消してしまい、今や増えた財源は、むしろ庶民のご機嫌とりの為のバラマキの為に使われようとしているのにも似ている。
そうそう、ドイツでも寛容な移民政策を推し進めようとしていたメルケル首相も、民衆の支持を失いつつあり遂に党首の座を降りたし、アメリカでもかつての「リベラル主義の理想」は風前の灯となりトランプさんの「何が何でもアメリカファースト」が幅を利かせている。日本の消費税値上げ同様、理想主義的な政治目標とやらを貫き通すということは世界中どこの国でも難しいようだ。
まあ、それが民主主義のコストだということもできるのだろうが。
（12/06/18 10:00pm）
2018年12月6日
最善の防諜法
東西冷戦時代のスパイ活動を扱った映画には、よくスパイと連絡員とのコンタクトが寂しい公園で行われる―――というシーンがあった。
電話機は勿論、部屋にはどんな盗聴器が仕掛けられているか分からないから、二人の諜報員同士が、さりげなく公園で落ち合い、後に残るような書類などは一切使わず口頭で情報を伝えあうという方法がとられた―――という訳だ。
ミッションインポッシブルのように「このテープは自動的に消滅する」と言ったって現代のように消去したはずのデータが復元できる技術がある時代では、情報漏洩の恐れは高いだろうし、やはり当事者同士が寂しい公園で証拠も残らない口頭による連絡をする―――というのが現代のスパイにとっても有効なように思うが―――（最も、今は超高感度の収音マイク付きのドローンとか衛星で盗聴するなんていう方法があるかもしれないが―――）
超情報化が進む現代では、スパイではなくても一般の人でさえ知られたくない情報が何時、誰に盗まれているか想像できないほどだ。何気なく載せたインスタグラムの写真から、自宅の住所や、写した日時まで分かってしまう―――なんていう時代なのだ。
メールアドレスや生年月日、住所や銀行口座といった個人情報がよく知られたサイトから何百万件、あるいは何千万件と、漏洩したとか――――様々な情報サイトから暗証番号などを頻繁に変更した方がよい等という警告だか忠告だか分からないメールがよく飛び込んでくるのだから、自分の個人情報やキャッシュカードの番号もひょっとして――もう駄々洩れしているのでは――と恐ろしくなってくる。
今や、政府迄力を入れて推奨しているキャッシュレス決済だが、我が家でも月々の支払に集金人が来る―――なんていうのは新聞屋位のものでほとんど全てがキャッシュレスだし、スーパーやレストランの支払いもカードによるキャッシュレスがほとんどとなっては、銀行口座の暗証番号が盗まれる怖れがあるからといって、（寒い公園のベンチに行っていた盗聴をさけていた昔のスパイのように）「なんでも現金払い」という昔ながらのマニュアルだけで済ますわけにもいかず、どうしてもあちこちの口座を暗証番号で管理するしかない。
銀行のセキュリティーは本当にしっかりしているのだろうか、このカード会社の情報管理は大丈夫だろうか―――等々、心配したらキリがない。
タカさんがスマホをほとんど使わないのも、妻がスマホで迷惑メールがジャンジャン入ってきて困る――とぼやいているのを見て「使わなければ、情報漏洩の可能性も少ないはず」と考えたからで、電話を持っていなければ盗聴のリスクはない、と考えた昔のスパイの防諜システムを参考にしているともいえるのだが―――。
「それでは、スマホを持っている意味がないのでは」という嘲笑が聞こえてきそうだが、そもそも、持ちたくもないスマホを持たされたのが、「もしも、外出先でこの夏のように倒れたらどうするの！」という妻のプレッシャーに負けて強制的に持たされたのであって、自分から進んでもっている訳ではない――――というところを、ご理解いただけたらと思う。
（12/05/18 10:00pm）
2018年11月30日
ご老公の印籠
テレビドラマ「水戸黄門」のお約束といえば、ドラマの前半で散々悪の限りを尽くした「お代官様」や「悪徳商人」たちが、遂には正義の味方である黄門様ご一行に悪事を追及され、最初の内は、しらばくれているものの、三つ葉葵の印籠を突きつけられると観念して「ははぁ〜」と平身低頭し一切の罪を認め―――一件落着となる―――といったものだったが、こんなに簡単に罪を認めてしまうなんて―――やっぱりドラマならではのことで、あれだけの悪人ならもっと抵抗してしらばくれるなり黙秘するなりすれば良さそうなものなのに―――といったところだが、まあ、老若男女の普通の視聴者には、あの分かり易い黄門様方式が娯楽作品として最適であり、だからこその長寿人気番組になったのだろう。
勿論、現実の社会ではそんな黄門様方式などはありえない。ちょっと前までは、警察の取り調べには取り調べ側の威圧や、暴力まであったというから、容疑者の側もそれに耐えかねて、やってもいない犯罪を苦し紛れに「ははぁ〜」と認めてしまうなんていうこともあったようで、それが原因で多くの冤罪事件が起きてしまった――という事もあった。そんな反省からか、最近の取り調べの様子は、以前に比べて大分マイルドになっているらしく、被疑者の側も、そう簡単には「ははぁ〜」と恐れ入って犯罪事実を認めたりはしなくなっているようだ。
ほんの数十年前なら「容疑者逮捕」の報道の後には、間を置かずして「容疑者が自供を始めた」といった報が続いたように記憶するが、最近の犯罪の報道をみていると、殺人事件をはじめ窃盗、詐欺犯罪までほとんどの容疑者が「身に覚えがない」と否認するケースが多くなっているような気がする。
「日本の刑事訴訟の有罪率が99.9％もある」すなわち日本の検察当局によって起訴された場合の無罪になる確率は1000件に1件あるかないかであるとなれば、（国際的な基準からみて、日本の刑事訴訟のこの有罪率の高さに対しては批判もあるようだが）、警察に逮捕された場合「身に覚えがない」と言って抵抗してみても、裁判所の心証を悪くするだけで量刑に情状の余地がなくなり、却って損だと思わないではない。
やってもいないことをなにも「ははぁ〜」と認める必要はないしその点はしっかりと否認する必要があるが、あの地面師グループのように、あれだけ証拠を突きつけられても「身に覚えがない」と全否定するのは何か勝算あってのことなのだろうか。
ニッサンのゴーン会長とケリー副社長も、いまのところ取り調べに対して「ははぁ〜」と恐れ入ったわけでもないようで、「身に覚えがない」とまでは言っていないが、一説では120億ともいわれる裏報酬を有価証券報告書に記載していなかった点については「違法ではない」と主張しているのだという。
国際的なビジネスマンであり、その片腕の副社長も国際的な弁護士だというから、かれらの「違法ではない」という主張が不気味にさえ感じられるが―――。やっぱり、あれだけの大ナタによって何万という従業員や下請けの従業員、そしてその家族が泣いたことを思えば、さすがに120億の裏報酬や、大豪邸の経費の付け回しを「違法ではない」と居直られていい気持ちはしない日本人は多いのではないだろうか。
日本の検察には、水戸黄門の三つ葉葵の印籠に相当する手があるのだろうか？
（11/29/18 10:00pm）
2018年11月29日
生命倫理の壁
現在レースで走っている競走馬のほとんどがサラブレット種であるが、サラブレッドとして認められるためには様々な規定がありその一つに「自然交配」によって生まれた馬であること、というのがある。すなわち、人工交配（人工授精）によって生まれた仔馬は、サラブレットではないとされ、例え競争能力が優れていたとしてもほとんどのレースに出走すらできない―――という訳だ。
サラブレッド以外の家畜では今や人工授精が当たり前で、例えば「和牛」の場合、肉質が良く、肉量も多い、優秀な雄牛から採取された精液の人工授精によって生まれた牛の肉が「和牛肉」と称して世界中でもてはやされている。
週何回も精液を採取され、それを何十分割したものが、ストロー状の容器に納められ冷凍保存され「和牛精液」として取引され、全国のメス牛に人工授精される―――という訳で、年間で生産される何万、何十万頭の肉用の和牛の父親は、精々数十頭に限られるという訳だ。
これが同じ哺乳類である人間で行われたとしたら――世界の70億人の父親が、数十人あるいは数百人の父親の精液によって人工授精された天才の子供ばかり――となれば――将来、近親交配による弊害は勿論の事、例えば、あまりに人類が均質化し過ぎてしまい、「社会」といった雑多な人が集まった集団が生まれないかも知れない―――と言った様々な弊害が生まれ、早晩、人類社会は消滅してしまうかもしれない。
人工交配を更に上回るのがクローン技術だ。70年代に出現した「クローン羊ドリー」以来、様々な動物でクローン技術は、今や自由自在に実用化され、「愛するペットのクローン」等というものも、既に作られたりもしているが、その技術からすれば「人間のクローン」を作ることは、すでに技術的には簡単であるといわれている。
しかし、クローンといえどもオリジナルの本人の複製という訳ではなく「一個の人格」であり、人間が「人間を創る」といういわゆる神の領域に踏み出してよいものか―――という倫理的な疑問から、今のところ歯止めがかかってはいるが―――それでは、人工授精はいいのか――という問題にまでさかのぼれば、既に多くの不妊治療で人工授精がおこなわれ、多くの命が生まれていることからすれば-――クローン人間を禁じる論拠もぐらつくようにも思うが――――。
ノーベル賞作家カズオ・イシグロの作品「私を離さないで」は、臓器移植の為に作られたクローン人間を題材にした問題作で、「人間」でありながらいつか原本である人間に臓器移植が必要とされた場合、遺伝子からなにから同じ造りのクローンから必要な臓器を取り出すために、いわばスペア臓器保管庫として生まれた子供たちを主人公にした何とも物悲しい傑作だったが―――。
中国の科学者が今月、ゲノム編集で双子の女児を世界で初めて誕生させた、と報じられている。ゲノムを書き換えて思いのままの人間を誕生させる――果たして倫理的に許されるのかどうか――。
韓国で数年前、ES細胞を作ったという大学教授のニセ論文で大騒ぎになったこともあるし、日本でも小保方さんの事件（？）もあったことだし、まだ、この話の真偽のほどは何ともいえないが、いずれにせよ「薄い倫理の壁」を功名心から破ろうとする科学者は、いつかは出てくるだろうな―――と思わせるニュースである。
（11/28/18
10:00pm）
2018年11月27日
夢は見るだけで
人類に残された未開の地とは、今や宇宙しかないと言ってよい。
宇宙科学技術の発展は目覚ましくこの先、人類があと何百年（あるいは何万年）存在しうるかは分からないが、長い時間軸で見ればいつかは人類が他の惑星に移住してその惑星で栄えている――なんていう夢が叶うこともある――と言えそうだが。
人類が今までに到達し、人が立ったことがある天体といえば地球から38万キロという太陽系の大きさ（太陽系の果てまでの距離は約15兆キロと言われている）からすると極々、近傍にある衛星、月だけだ。
アポロが月に到達した時、確か地球から片道2日位の旅程だったと記憶するが、光速だと1秒強の距離だ。地球から一番近い惑星は火星だがその距離は7800万キロ（これでも太陽系の大きさからすれば極近い距離ということになるが）だから光速でも片道4分20秒、アポロでいったとすると一年弱かかる計算になる。（火星もその軌道上を動いているから、実際上は直線距離で行く訳にはいかず、最も効率よく行けるタイミング――2年2ヶ月に一度しかない―――で行ったとしても1年近くかかり、地球帰還をしようと思えばなんだかんだで最短往復6年はかかる計算になるという。
アポロが月に到達し、人類ではじめて月面に降り立ったアームストロング船長が「これは人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」と言ったのをテレビ中継で見た時（1969年）には人並みに感激したものだが、その後、月に人を送るのは金がかかり過ぎるし、大して役に立つ訳でもない（研究としての成果は大きいにせよ、それが直ぐ資金回収につながるわけではない）という理由からか、この50年余り有人月探査は行われていない。（山本夏彦や佐野洋子に、たしか「あんなところへ行ってどうしようというのだ、バカみたい！」というエッセーがあったが、確かにそうかも知れない。）
ところで2020年に火星探査ローバーを打ち上げる計画が持ち上がっており、着々と準備が進んでいるらしい。23台のカメラと数々のハイテク機器を搭載した無人のローバーだが、これは将来の有人火星探査の為の下準備だという。火星のクレーターの中には水がある可能性があり、薄いながらもかすかに大気もあるというし――火星は35～39億年前は生命の宝庫だった可能性まであるとなれば、将来、人類の移住先として考えられる―――などというSFチックな夢が語られてはいるが―――。
片道、1年、あるいは2年、狭い衛星の中に少人数の仲間と閉じ込められて旅をして、大気も重力も少ない不毛の地に降立って-――タッチエンドゴーで地球へ帰還するとしても最短で往復6年（火星への有人飛行では、基本、行ったきり、が原則らしい）――と聞けば、ヨーコさんではないけれど、「そんな所へ行ってどうするの？バッカじゃないの？」という気がしないではない――。
火星よりさらに遠くの衛星だとか、太陽系外の星への旅、となればそれこそ片道何十年、何万年かかる。
1977年に打ち上げられたボイジャーでさえ40年かけて未だ地球から200億キロのところを飛んでいるに過ぎない。太陽系の果てまでの距離（約15兆キロ）の未だ1/1000を進んだに過ぎないのだ―――やっぱり、夢は見るだけにしておくしかないようだ。
（11/26/18 10:00pm）
2018年11月22日
ちゃんと並べよ！
カイロからルクソールにいくローカル便のチェックインカウンターで、イギリス人と思しき観光客が‘Stay on the line! ’(ちゃんと並べよ！)
と叫んでいた。搭乗案内があった途端、カウンターに黒山の人だかりができて、それまでカウンター前に並んでいたイギリス人一向を押しのけて、エジプト人の搭乗客たちが、チケットを手に手に我先にとカウンターの係員に手渡そうとしているのだから列のイギリス人達が頭にくるのも当然だ。
しかも、カウンターの職員も、「順番に並んでください」と注意するわけでもなく目の前に突き出されたチケットから手続きをはじめている―――。
要するに、エジプトには「列を作って順番に」という習慣がないのだから、窓口に殺到する彼等にも職員にも悪気がある訳でもないのだ―――と知っていれば、イギリス人のように怒ることもないし、タカさんのように、呆れることもないのだろうに―――すべては、文化の違い、国民性の違いからおきたことだ。
列を作ってちゃんと並ぶという国民性をもっているのは、タカさんの今までの経験では日本人とイギリス人位なもので、東南アジアの国や中東では、まず列に並んで順番を待つなんていうところを見たことがない。
特にタカさんが経験した中でひどかったのが中国本土で、観光で訪れて市内のバスに乗ろうとした時には、バスが停留所に到着するや否や、人を押しのけて乗車口に殺到する老若男女にはじきとばされて結局、乗れずじまいに終わる―――なんていうことばかりだったから、「何が礼節を重んじる儒教の国だ！」思ったものだ。
アメリカでもニューヨークのバス停留所や地下鉄ホームで人々が並んでいるのを見た事がないし、偶々、列のようなものが出来ていても、列に気が付かなかったようなフリをして「横入り」してくる人が沢山いる。
結構、いい歳になってきたタカさんだから、もしこれから外国旅行する場合、若い時のように、現地の交通機関を使って観光して回る―――等ということは止めて、ツアーバスか、精々タクシーにしようと思っている。
いや、本当に、順番待ちとなれば、ちゃんと列を作って並ぶのは日本人だけだ。それこそ、日本が世界に誇ってもいい‘Cool Japan’ だ。
しかし今朝の新聞に、京都の観光地や繁華街のバス停で、客が列を作らず歩道に広がったりしている、との苦情が絶えず、市の交通局が、一計を案じて、道路と並行に幅約10㎝の白いテープでラインを引いたら、利用客がそのラインに沿って並ぶようになって―――問題が解決したという記事がでていた。
最近の日本では、‘Cool Japan’の風習が失われつつあるということか―――とちょっと嘆かわしく思うところもあるが、なあによく考えてみれば、素直な日本人は、「ちゃんと並べよ！」と叫ばなくても、白線を一本引きさえすれば、やっぱり、素直に並ぶのだともいえる訳で―――まだまだ、規律正しく優しい国民性を失ってはいないということではないかと－－－少しホッとしたのだった。
（11/21/18 10:00pm）
2018年11月16日
ボヘミアン・ラプソディー
モダンジャズは、チャーリー・パーカーが切り拓いた境地を、コルトレーンやミンガス、といった連中が豊かに耕し、エヴァンスやマイルス・ディヴィスで最高地点に達した―――と言うのが60年代後半からのジャズファン歴のタカさんの見方だが、クラシック音楽がベートーベンで黄金期に到達して以降、今に至るももう二度とその絶頂期を超えることが無いのと同じように、マイルスが絶頂期を迎えてから何かに迷ったように、商業主義的なファンクや、倒錯を起こしたようなフュージョンの世界に迷い込んでしまって以降は、あの60年代後半、そして70年代初期の黄金期を超える境地には達していない―――というのがタカさんのモダンジャズ史だが、ただ一度だけ、たしか70年代の後半に、ひょっとしてこのバンドは、マイルスの境地に達する可能性があるかもしれないと思ったバンドがあった。
それはイギリスのバンドQueen(クイーン)だったが、音楽性の高さは当時人気のバンドの中でも群を抜いている―――と思って密かに期待していたものだが、曲による出來不出来の差が激しく、リーダーのフレディー・マーキュリーのゲイっぽいいでたちやら女装に、なにか媚びたコマーシャリズムのようなものを感じて、次第にがっかり感がましていった記憶がある。
その後、91年に彼がエイズを患っていることを公表し、そして死亡した時に、ああ、彼は決してコマーシャリズムでゲイの真似をしていたわけではなく、本物のゲイだったのか―――と思ったら彼が抱えていたであろう心の悩みをしらずに、偏見ばかりをもっていたことを少し後悔したものだったが―――。
11月第一週に封切りされて以降、興行収益トップを走り続けている映画「ボヘミアン・ラプソディ」は、そのQueenとフレディー・マーキュリーを描いた作品だ。
この映画の封切りを知って当初、そっくりさん俳優たちによる見たらガッカリの再現映画の可能性もあるのでは―――とちょっと躊躇したが、まあ、見るだけ見て見ようと出かけた。
そっくりさん俳優たちが演じている―――という先入観からか最初の内はちょっと違和感があったが、その後、撮影期間中に俳優たちがかなり本物の役柄に憑依していった所為だろうか、途中からは違和感は殆どないし、ＣＧを駆使しているとは思うが、最後のウエンブリーでのあの伝説のライブエイドの場面では、サウンドに本物の録音を使っている所為もあってとても「偽物」とは思えない迫力があり、30年振りぐらいに昔、Queenを聞いた時の「何か新しい音楽のジャンルが拓けるのでは―――」と思った感覚が蘇ってきたような気がした。
フレディー・マーキュリーが生きていた時代のQueenをを知っている年代といえば、もう皆、いい歳になっている筈で（といってもタカさんよりは少し若い世代だが）、今の若い人はタカさんが懐かしむ「音楽性の高かったあの頃」の音楽を聴いてどう感じるかは分からないのだけれど、ぜひ一度、試しに聴いて欲しい気がする。
（11/15/18 10:00pm）
2018年11月13日
心の迷い
尿酸値が高いと医者に注意された同僚がいてプリン体の多い物を取るのは避けるようにとのお達しが出たという。ところが彼は酒好きで、ビールはプリン体が多いから飲めないけれど、焼酎やワインならプリン体が少ないから飲んでもいいのだ！などというウソだかホントだかわからない説を誰かから聞いたらしくワイン党に切り替えて随分飲んでいたが――回りの同僚は「痛風にはならないかもしれないが、あんなに飲んだら肝臓を壊すだろうに〜」と言っていたものだ。
幸い、その後、彼が肝臓を壊したという話も聞かないし、痛風にもなっていないようだから、案外、ワインは体によい？のかもしれない。
コレステロールの多いイカやイクラはいけないだの、ニンジンに含まれるカロチンとやらが老化防止によい、あるいは納豆に含まれるナットウキナーゼが、動脈硬化防止によい、だのなんだのとウソだかホントだかわからないような「体によい」「体にわるい」食べ物やら飲物に関する情報が巷には溢れていて、「お肌の若々しさを保つ」だの「しみ、そばかすが消える」だのといった女性にとっての殺し文句を使った食べ物、飲物、薬の類は、有名上場企業まで参加してまさに一大産業になっている。
天邪鬼なタカさんは、「そんなのみんなインチキだ！」と信じない方だったが、年と共に検査の数値もあちこちガタが来はじめてきてから弱気になったところもある。
半年位前に、今まで正常だった血圧が高くなってきたことがあって医者から「少し血圧を下げる薬を出しましょうか？」と言われた。血圧の薬なんて麻薬か何かと同じで飲み始めたら止められない薬に違いないという偏見のあるタカさんは、薬をきっぱりと断ったのだが、偶々その日、テレビの何かの番組で「お茶に含まれるカテキンが血圧によい」なんていうことをやっていた。お茶なら麻薬よりはいいに決まっている！と翌日からペットボトルのお茶、しかもカテキンが一番「濃い」という奴を買ってきて2ℓボトルを一日一本飲みはじめた。カテキンの所為なのか、何なのかわからないのだが3ヶ月もすると血圧は元の正常値に戻りホッとしていたのだが――。
一月ほどまえ、健康診断の血液検査で「少し貧血気味ですねぇ〜」といわれた。若い頃から血の気の多いタイプのタカさんは、生まれてこの方、「貧血気味」なんていわれたことはなかっただけに驚いて、医者に原因はなんだろうかと聞いてみたら、「まあ、加齢でしょうかねぇ〜」と何とも身も蓋もないことをいう。
ところが、昨日、ひょんなことからネットを見ていたら、「カテキンの摂り過ぎは、貧血を招く」という記事をみつけてしまった―――。
おいおい、血圧を下げる目的で「濃いお茶」を飲んだら、貧血になってしまった！ということかと思ったが――カテキンで貧血になる、なんていう話も与太話かも知れないし―――何を信じてよいやらと思ったら、ちょっとした心の迷いから巷の「あれが良い」「これがいけない」という与太話に惑わされている自分に腹がたってきた。
やっぱり医者のいう「加齢ですね！」が正解なのだろうか――兎も角、今後は喉が渇いたらシンプルに「水」を飲むことにしようと思う。
（11/12/18 10:00pm）
2018年11月9日
ユルユルの宗教
今も中東の国によってはビザ申請書には「宗教」を書く欄があるという話だが、以前はアメリカ国内でも何かの申請の際に‘religion’を書く欄があるのを見た記憶がある。
さすがにプライバシー尊重の中で、最近ではそんなことはなくなっているとはおもうが――。その頃、この手の申請書には正直にnone（無宗教）と書いてはいけない、という口伝のマニュアルがあり、それを守ってタカさんはBuddhist（仏教徒）と書いていたけれどいささかウソをついたという後ろめたさを感じたものだ。（「他人と宗教の話をしてはいけない」というのは「マナー」だといわれたものだが、本当にそんなマナーがあるのかどうかについては確信がもてないが―――）
「ウソでもいいからBuddhistとでも書いておけ！」というのは、世界のほとんどの国ではアラーでもエホバでもなんでもいいが‘神’の存在を信じるのは人間として当然のことであり、無宗教、すなわち神の存在を信じないなんて―――人間じゃない！と思われて入国を拒否されるから――等といわれたものだったが。
あれから数十年たってみてタカさんの宗教心は相変わらずnoneだが、最近ではまあ「仏教徒」とビザ申請書に書く位はいいか〜という気持ちになっている。
それは両親をはじめいくつかの葬式を仏教式でやってきたし、家には仏壇もあるし、そもそも大学受験の時には禅宗のお寺にこもって勉強したのだし〜なんていう経験を積んできた所為もあるとおもうが、自分はイスラムでもキリスト教でもないし（結婚式は神前だった）そのキリスト教やらイスラム教に巻き込まれると教会やモスクに行かないといけないとか、日に何度かのお祈りをしないといけない、断食をしないといけない、なんて随分とややこしそうなのに比べ、日本の仏教は、寺に行かなくても、毎日勤行をしなくても、肉でも魚でも何でも食べてよいし、酒も幾らでも飲んでよいし、坊さんの妻帯までOKというユルユルさがいいと思えるからだ。
もっとも、タカさんのいうユルユルの日本的仏教徒というやつには、神の概念がないのか？といえばそんなことはない。「お天道様が見ている」という気持ちは常にあるから、できるだけ（！）ウソはつかないようにしているし、もしウソをついた場合、心の隅にやっぱり後ろめたさを感じるのは、西洋人やイスラム教徒が感じる「神」に対する畏敬の念にちかいのかもしれない。
ただイスラムやキリスト教徒が「神の教え」に従うのは、「神様に褒めてもらって、死んだら天国に入らしてもらおう」という打算の目的があるからなのに比べて、タカさんのいうユルユルの仏教徒（山本七平のいう「日本教」に近いかも）は、別に何の見返りを求めている訳ではないというところに大分違いがあるようにも思う。
イスラムとキリスト教、ユダヤ教の間の諍いによって歴史上、数多くの戦いが行なわれてきたし、今も続いていることとか、超大国アメリカの近年の社会の分断だって根本のところには宗派対立があるようにもおもえるだけに、世界の宗教は、もう少しユルユルになった方がいいのでは〜なんて思わないではない。
（11/06/18 10:00pm）
2018年11月7日
女性の年齢
幼い女の子に「何歳？」ときくと指を3本立てたので「三つなの、大きいねぇ〜」というとそばにいるその子のお母さんが嬉しそうに「まだ、先月3才になったばかりなんですよ〜」と答える。
あるいはかなりご高齢の車椅子にのったご婦人に「お幾つになられました？」と尋ねると「90才になります」と返事が返ってきたら「お若くて、とても90才には見えませんねぇ〜」と言えば、本人も付き添いの人も嬉しそうな顔をする―――。
「女性に年齢を尋ねる」のは、モラル違反だといわれ現代ならば状況によっては、セクハラだとも言われかねない行為だが、女性といっても幼女や超高齢者になると「モラル違反だ！」と目くじら立てられることもなく、むしろこちら側の反応次第では先の例のように嬉しがられるケースだってあるように思う。
2-3歳の幼女に限らず、まあ、中学生ぐらいまでの女の子なら年齢を聞いてもそんなに嫌がられないと思うが、それでは「女性に年齢をきいてはいけない」のは何歳から上の女性なのだろうか？
アラサーやアラフォー、だと絶対怒られそうだし、いやいやアラ還暦、アラ古希の女性だってとてもとても怖くて聞けないが―――90、100才近くとなれば尋ねて「とてもそんなには見えませんねぇ〜」というのが礼儀のような気もするし〜。
まあ、それも聞く方の側の相対的な年齢にもよるような気もしないではない。70を過ぎたジイサンになったタカさんが、親類の高校生の女の子に歳を聞いてもまさかセクハラだとは言われないような気もするし―――。
ところで、「女性に年齢を聞くのは失礼」というモラルは、一体どこの国から始まって、日本人に広まったのはいつ頃からなのだろう？
時代劇などではよく「姉さん、幾つだい？」なんて結構ぶしつけに尋ねる場面を見たような気がするが、あれは、ストーリーの背景説明上、そんな台詞をいれているのだとは思うが、現代劇ではあり得ない台詞だ。
アメリカでも、初対面同士がよく相手の年齢を、ぶしつけに聞いている場面に出くわしたが、あれは、タカさんが付き合っていたアメリカ人が粗野で下品な連中ばかりだった――という訳でもなかったと思うだけに―――未だもって謎だ。
（11/06/18 10:00pm）
2018年11月2日
自然を守るには
側用人から身を起こし老中にまで上り詰めて江戸中期の20年余りその権勢をふるった田沼意次は、貨幣経済を育て町人文化が栄える礎を作ったというプラスの評価がある一方で、彼の失脚後、その後を継いだ政敵白河藩主であった松平定信がその業績をことごとく否定し覆したこともあってその賄賂政治体質が殊更に貶されて今に至るも「田沼政治」は政治腐敗の代名詞として使われるほどだが、厳しい倹約、節約を敷いた松平定信の緊縮財政に音を上げた庶民によって「ああ、田沼時代は景気もよくて自由でよかったのに！」と懐かしがられたともいう。
その庶民の気持ちは有名な狂歌「白河の 清きに魚も 住みかねて もとの濁りの 田沼恋しき」にもよくあらわされている。青く透き通った熱帯の海には精々小さな熱帯魚しか棲めないのと同じで、江戸時代の人も濁った田や沼にはドジョウやフナなどの多種多様な魚が多く棲むが、清流（白河）には魚は棲めないことを良く知っていたからこその狂歌である。
昨日の新聞に面白い記事があった。高度経済成長期には工場排水や生活排水に含まれるリンや窒素といった栄養分が大量に流れ込んだためにそれらの養分を食べてプランクトンが爆発的に増加し、赤潮が発生、漁業が大きなダメージを受けた大阪湾だが、公害に対する規制が強化され排水規制が敷かれるようになって水質もよくなり、80年代には漁獲量のピークを迎えたのだが、その後、下水処理能力が急激に上昇、大阪湾の水質はどんどんよくなり―――最近では「よくなりすぎて」海水浴場には良いけれど魚がさっぱり獲れない―――というまさに「清きに魚も住みかねる」状態になっているという記事だ。海の水も汚すぎても、綺麗すぎても、魚にとっては良くなく、結局、昔のまま、自然のままが一番よいのだという教訓のようにも受け取れる話だ。
魚が棲めなくなったのは水質が良くなりすぎたためだけではなく、関空の埋め立て工事によって湾内に海流がなくなってしまった所為ではないか―――等の説もあるようだが、要するに、人間が自然に手を加えることのみならず、自然を再生させようとする（しすぎる）ことまでも、太古からの自然の営みにとっては、余計なことだということなのだろうか。
同じ日の朝刊に、千葉の湿原で60年前を最後に自生が確認されなくなり、もはや絶滅したのではないかと考えられていた湿原の一年草クロタマガヤツリが、ことし成東・東金食虫植物群落という湿原で61株も確認されたという記事があった。
この湿原の回りは人間の開発により乾燥化が進みススキが群生しはじめていたために乾燥化を嫌う食虫植物保護のために、そのススキを取り除こうと回りの土を掘り返したことによって土の中に60年近く眠っていたクロタマガヤツリの種が眠りからさめて発芽したのではないかという。
人間が開発によって絶滅させたと思われていた植物の種が、60年振りに再び目覚めて群落をつくるなんて―――これも又人間が自然を破壊しても、大自然の力はそんな物には負けないで再び蘇える強さをもっていることを表しているように思う。
「自然を守れ！」というスローガンを実現するための最良の手段は地球上から人類がいなくなることではないだろうかという極論まであるが、一理あるのでは、とも思える二つの記事だった。
（11/01/18 10:00pm）
2018年10月31日
武蔵の杖
安倍首相の祖父であり「昭和の妖怪」と言われた元首相岸信介は、91才で没するまで政界の黒幕的存在として活躍したが、長寿の秘訣を問われて「転ぶな 風邪ひくな 義理を欠け」の３つを挙げたという。
高齢者ならずとも「風邪」は万病の素ともいわれこれが原因で長く寝込むことになる人が多いこと、又、付き合いでついつい飲みすぎ、夜更かしをしてしまいそれが元で体調を崩して―――という例が多いことを考えればなるほどこの２つは特に高齢になったら気を付けたいことがらであるが、最初にあげた「転ぶな」にはちょっと意外感を持つかもしれない。
しかし、高齢になっての転倒事故は、倒れて打ちどころが悪くて―――と直接の死因に繋がるケースもあるが、骨折を伴う場合が多く、足の骨や腰の骨などを折ったりすると、老人は若い時に比べて回復までに何倍もの時間がかかるし打ちどころによっては寝たきりになってしまう場合が多い。
起き上がれないで寝たきりになった場合、体力も知力も衰え、それが死につながるケースは多い。確かに岸信介が長生きの秘訣の第一に「転ぶな」を挙げたのも分からないではない。
新聞によれば、バスの発進、停車の際の特に高齢者の転倒事故が増えており、今年、関東運輸局とバス会社が転倒事故防止キャンペーンをやっているという。
そういえば、高齢者がバスに乗ってくると座席に着くまでバスが発車しないとか、降車の際にはやたらと「バスが完全に停まるまで座席を立たないように―――」というアナウンスが流れるような気がするが―――そんなアナウンスに気付くのも、タカさん自身が運転手からみて「高齢者」と判断されるようになってきているからかなぁ〜とも思う。
確かに、最近バスに限らず電車でも席が空いていない場合、手すりやつり革をがっちり掴んでいないとちょっとした揺れや、発進、停車の際の加減速の際にバランスを失いそうな恐怖感がある。若い頃は手すりもつり革もつかまらずに電車の中で文庫本を読んでいたのに―――なんて思うと、まさに朱子のいった「少年老い易く、学成り難し」をしみじみと感じる。
そういえば、以前「宮本武蔵展」を観にいったことがあるが、生涯60有余の果し合いを闘い、一度として負けることがなかったという武蔵の「木刀」が展示してあり、その先端部分に少しくぼみがあって、説明によると年老いた武蔵はこのくぼみに鉄をはめ込み、木刀を杖変わりにして歩いていたという。
あの剣聖と言われた武蔵でさえ年をとってからは「転ぶな」に気を付けていたということだと聞いてタカさんも、若ぶって歩くのは止めようと思った。
（10/30/18 10:00pm）
2018年10月26日
労働力と人間
嫌われる仕事として3K（きつい、危険、きたない）仕事には人が集まり難いとわれるようになって久しいが、こういった仕事は、人が集まらないこともあって国外にでてしまうとか、かなり機械化が進んでいることもあって、あまり聞かなくなったが、それに代わって新3Kといわれる人が集まり難い仕事が注目されているという。
新3Kとは、すなわち「給料が安い、休暇が少ない、カッコ悪い」仕事ということらしい。たとえば介護や看護などの仕事は、女性達がその主力となっているけれど「やりがい」を感じる仕事とはいえ、他の女性達がつく仕事のような華やかさはないし、介護職などは報酬も安く、又、人相手のサービス業といった面から細やかな気遣いが要求されるわりには、何かとクレームがつき易い仕事だ。
給料もそんなに高くないし、年中忙しいし、文句を言われることが多い仕事―――となれば、「人手不足」が言われる現在では、中々なり手の無い仕事と言えよう。
人に接する仕事であり、それ故に細やかな気遣いが要求される仕事といえば、外食産業などの接客業もそうだ。外国人観光客が増え、さらに東京オリンピックに向けて益々、接客サービスへの需要が増えていくとなれば、この新3K問題をどうにか解決していかなければならないことは確かだ。
3K職場の人手不足解決策としてはロボットやAIが取り入れられてきてはいるが新3Kの方のロボット化やAI化は結構難航しているようだ。
タカさんの街にも「変なホテル」というロボットが接客するタイプのホテルの一つがあるが、物珍しさで覗いてみたが、あんまり客も入っていないようだし、何しろ受付のロボットの違和感は半端なく、これなら不愛想で不細工な人間の方がまだマシだ―――とも思ってしまった。（スーパーのレジも、無人よりも人のいるレジに並ぶ方がいいと思ってしまう年代だからこその感想なのかもしれないが）
安倍首相が所信表明演説で掲げた項目のなかに、人手不足に対処するために「外国人労働者の受け入れ」を挙げていたが、今まで外国人の移民、難民の受け入れが世界一厳しいといわれていた日本にしては180度といってよい方針転換だ。
ただ、いまから半世紀以上前に労働力不足を外国人労働力で補おうとして積極的に移民を受け入れた欧州では今や移民とその家族、子孫の人口に占める割合はスエーデンの20％を筆頭に、軒並み10％台後半に達していて、深刻な人種問題を招いている。
外国人を人手不足対策で大量に入れると一時期は急場しのぎになるかもしれないが、やがて彼等の2世、3世など家族が増え、そこに複雑な差別問題、人種問題が起きないとも限らない。（未だもって、完全に宥和できているとはいえない在日朝鮮人の問題などもその一例だ）
50年前に既に移民の大量流入で混乱していたスイスの評論家マックス・フリッシュが言ったという「我々は労働力を呼んだつもりだったが、来たのは人間だった」という言葉が、今、まさに欧米諸国を悩ませている移民問題の根本であることを考えれば、安倍首相もそういう先々のことまで考えているのだろうか―とちょっと心配になる。
（10/25/18 10:00pm）
2018年10月19日
Here or To Go?
アメリカのハンバーガーショップで品物を注文すると最後に‘Here or To Go?’と訊かれるが、日本語でいうところの「店内でお召し上がりになりますか、それともお持ち帰りですか？」という意味だ。マックなどの店は店内でゆっくり食べられるスペースも充実しておりHereと答える客も多いが、品物を袋か何かに入れてもらい持って出て、車を運転しながら食べようという客や、家や公園にもって行きゆっくりと誰かと一緒に食べよう〜という客等はTo
Goと答えるだろう。日本でも同じことだ。
ハンバーガーショップのみならずフードコートや、スタバやドトールといったコーヒーショップ、最近はコンビニ店の中にも買った品物を店内で食べられる店（そういえば、角打ちの飲み屋なんかもそうかもしれない）が随分多くなったが、こういうスタイルの店のことを日本では「イート イン」というらしい。「イート イン」はナイターやベビーカー（英語だとstrollerストローラー）同様、アメリカでは意味をなさない（場合によっては誤解をうむ）英語？である。（ベビーカーは赤ちゃんが運転する車――という意味にとられるかも知れない―――危険極まりない！）
何回か先延ばしされてきた消費税率10％への上げを、いよいよ来年10月に実施する、と首相が表明した。前回、消費税率上げの際には、駆け込み需要とその反動によって景気が酷く落ち込んだことを考慮し、今回は前広に発表することで影響を和らげようという作戦だとも言われているが、税金の上げを歓迎する納税者など古今東西いない！という「黄金律」どおり文句というかブーイングの声が起こっている。
与党のやる事には何でも反対するのが仕事だと思っている野党は、消費税上げに賛成したメンバーが政党名を変えているだけ―――なのに、かつて自分達が賛成したことなどなかったかのように、「消費税10％実施断固阻止」を叫んでいるし、不足しているという福祉財源をどこに求めるのか――という点については空っとぼけている。
一方で社会保障の充実を要求しながら、その財源としての消費税上げの実施には難色を示す――枝野さん辺りは（かつて民主党時代には税率上げに賛成した身でありながら）、しれっと「消費税率上げ断固阻止」を叫んでいる――いやはや、彼の頭の中ではゲシュタルト崩壊がおきているのではないだろうか。
まあ、社会保障費財源論まで遡ると、いかに何でも真正面から消費税率上げに反対！という訳にも行かないと思ったが「やっぱり、政府の言う通りになるのも腹立たしい」というマスコミは、「軽減税率の仕組みが複雑すぎる！」という理由で消費税率上げ反対論、いやイチャモンをつけている「識者」や「コメンテーター」がいる。
先日テレビでは、同じハンバーガーをイートインで食べれば外食になるから10％、持ち帰りなら食料品に分類されるので8％という税率が適用されることになるが、これはおかしいではないか――！なんていう議論を延々とやっていたが―――。
消費税と福祉財源問題等という本質論を離れたいわば難癖、イチャモンの議論を吹っかけて喜んでいるマスコミのいかに多いことか―――イートインスペースで食べたければ‘To Go’と答えて8％の税率を払い店内で食べればよいだけの話で、まさか警察が来てTo Goと答えたのにお前さんはHere でたべているではないか！と言って脱税で逮捕しにくることもないと思うのだが―――。
（10/18/18 10:00pm）
2018年10月16日
パッチを履いた
真冬のシカゴのオヘア空港に到着する成田発LA経由の便に乗っている知人を出迎えに行ったことがある。
シカゴの冬の寒さは厳しく1月なら最低は－10℃にもなるから、それを知っている成田からの乗客は、しっかりとしたコートや防寒着を着て、あるいは手にもって続々と降りてきたのだが、LAから乗って来たと思われる若者の一団がTシャツ姿で降りて来たのにはびっくりした。
LAの1月だと最低気温でも＋10℃位、日中だと20℃にもなる位だから搭乗したLAの気候に合っている服装のままシカゴに来てしまったのだろうが、「おい、おい、あなたたちそのまま空港の外にでたら死ぬよ！」と言いたくなったし、アメリカは広いから同じ国でも他の地区の気温なんか知らない――なんていう奴が一杯いるのだろうと呆れたものだが――（「アメリカっていう国は、テキサスより広いのかい？」なんていうテキサスの田舎者がいた等というジョークのような話がある位だったし――）
シカゴとLAのような大きな違いではないが、ここ数日の気温の違いは随分大きいように思う。
昔から気温の変化に敏感な（妻に言わせると、体温調節が下手なだけだそうだ）タカさんのことだから一昨日、昼はTシャツを着て過ごした日の夜には長袖シャツを着てカーディガンまで引っ張りだしたし、その翌日にはついにこの秋はじめてタイツの下着（ズボン下）を履いてカーディガンを着て出かけた。
Tシャツから厚手の股引ともいえるタイツに変わるまでわずか1日なのだから、さすがに妻の言う通り体温調節が下手すぎるのか、それとも最近の地球を襲っている「異常気象」の所為なのか分からないが―――。
中一の孫などを見ているとタカさんがパッチを履いているというのに、あのLAから来た、身の程知らずの若者たちのように、まだTシャツ姿だ。老人と若者の新陳代謝が違う―――といってしまえばそれまでの話ではあるのだが―――。
そういえば、タカさんも40代頃までは、冬でもなるべく厚着をしない「伊達の薄着」を通し、自分なりにお洒落に気を使っていたようにも思うが、年齢と共にしゃれっ気も失せ、最近は随分と厚着になってしまったようだ。
パッチという奴、一度履いたらもう春まで脱げなくなる麻薬のようなものだとはわかっているのだが―――。
（10/15/18 10:00pm）
2018年10月15日
抜け駆け横取り
自然番組でチーターが獲物のインパラ追いかけるシーンをみることがあるが、地上最速を誇るチーターも、そのスピードを長いこと持続できないから、巧みにターンを繰り返すインパラを取り逃がしてしまう場合が実に多い。チーターの狩りの成功率は決して高くはないのだとか。何日も狩りに失敗しやせ細っていく子供を抱えて授乳中のチーターなんていうのを見ていると思わず「チーターがんばれ！」と握りこぶしに力が入る。（インパラの身になったらタカさんの考え方はなんと残酷なことか――）
この手の自然番組だと、更にチーターの受難は続く。チーターは、悪戦苦闘の末、やっと獲物を仕留めても、とるものも取り敢えず急いで獲物を咥えて高い木の上にその獲物をもって上がらなければならない。のんびりしていると獲物の匂いを嗅ぎつけたハイエナや、ライオンがすぐその獲物を横取りしに来てしまう―――。
何頭ものハイエナに取り囲まれれば――あるいは、自分より大きくて強いライオンに脅されれば、足の早いだけが取り柄のチーターはとてもかなわない。苦労して獲った獲物を諦めてすごすごとその場を立ち去るしかない―――何ともみじめな姿を見るとタカさんは、「ハイエナ、きたねぇ〜」「何が百獣の王だ！」なんて憤りを覚えるのだが――。弱肉強食という自然界の掟からすれば、当然のことでありその掟があってこそ、自然界の秩序が保たれているのだという事実の前には、タカさんの憤りの方が理不尽というものかもしれない。
そんな、自然のバランスを人間が壊すと、例えば北海道の食物連鎖の頂点にいたオオカミを人間が絶滅させた為に、オオカミがエサにしていたエゾシカが増えすぎ、知床の自然林の木々がシカに若木や樹皮を食い荒らされて――今や荒廃しつつある―なんていう話を聞くと「自然を自然のままに」しておくことの大切さを思い知らされる。
人間社会における「経済の大原則は自由競争だ！」という考え方があり、この200年余りの人類の発展にはこの「自由競争原理」の寄与した大きさは、計り知れないといわれているが―――その一方では「自由競争の行過ぎ」による弊害も大きく、独占禁止法のような様々な法律や規制によって「獲物の横取り」のようなことを禁じようという試みも行われてきた。
しかし、規制が行き過ぎて「チーターが獲った獲物はチーターだけのもの」「他の動物の獲物の横取りは禁止」などとしてしまえば、図体が大きくて足もそんなに速くないライオンや、群れを作って強い動物の獲物や死肉を食べるしかないハイエナなどは絶滅せざるを得なくなるだろうし、それどころかインパラばかりが増えすぎても、草原の草が食べ尽されて荒廃してしまい――なんていうことにもなるかもしれない。
経団連が自主的に決めた大学生の就職採用活動開始時期のルールを守っている企業が何とわずか全企業の4割にも満たず、他は皆フライングをやっている―――という実態があって、経団連の会長が「正直者がバカをみるような自主規制ルールは意味がない」と、怒ったのか「自主規制ルールの撤廃！」を打ち出した。「規制の解除」「自由競争への回帰」を宣言したが、なんでも規制したがる政府は勿論、本来自由競争が大好きなハズの経済界を始め、大学当局、そしてマスコミなどまでもが大騒ぎになっており、「規制は必要だ！」の大合唱が始まっている。
人間だって自然の一部なのだからその社会も、剥き出しの競争原理で成り立っているのは当然―――と考えれば、企業の採用活動に、「抜け駆けや横取り」があっても当然だ―――とは思えなくて、怒り出してしまった経団連の会長さんは、「ライオンやハイエナは許せない！」と憤激するタカさんのような人物なのだろうか？
（10/14/18 10:00pm）
2018年10月12日
身の引き時
昔の職人の世界では、「名人」（現代なら人間国宝）といわれるほどの技量をもつ職人が一線を退いて隠居する年齢というのは随分と早かったという。平均寿命が短かったのだから、それも当然という面もあるし、そもそも人間国宝指定されるのが、それなりに歳をとってからという現代では、「名人」の50代、60代での隠居、ということ自体が、物理的に不可能だが―――。
早くに隠居したらどうやって食べて行くのか――等という収入の心配やら、「早くに引退したら、やる事がなくて何十年もの余生を、どうやって生きていくのか？」「早くに引退などしたら、女房に粗大ごみ扱いされて―――」と考えれば、いくつになっても、自分から身を引くなどという踏ん切りがつかない現代のサラリーマンからすると、昔の名人たちの早目の隠居という話は、ちょっと信じられないが――。
早目の隠居をした「名人」は、古女房とこじんまりした隠居所に引っ込み、仕事は弟子や息子たち、後進に譲って、趣味の世界に生きたり、時には釣りにいったり（昼間から酒を飲んで早寝してしまうこともあったかも）と、悠々自適の生活をしていたらしい。
それもこれも、若い時代に一生懸命働き技術を習得して名人上手といわれるほどになったからこそ手にいれた隠居生活というわけで、弟子たちやその名人に憧れる若い世代が、「俺も、名人といわれる程の人物になって、あの名人と同じように早く悠々自適の隠居生活をおくりたいものだ」と思い一生懸命仕事に励むから、その職人技が代々、幾世代も続くようになる―――という訳で、「早目の隠居」は、次世代の担い手を育てるために、意図的にやっていたというから、中々素晴らしい話しではないか。
名人とちやほやされれば、いつまでも次の世代に自分の技をゆずらず、その内、口うるさいだけで腕の落ちた年寄り頑固職人になってしまうかもしれないし、そういう古手ばかりで上がつかえた世界では、若い者もやる気がでないし育たないから、名人が死んでしまえば、その技術は一代で廃れてしまうかもしれない。
そういう意味では、名人の早目の引退と憧れの隠居生活を、次世代に見せることは、職人芸を次世代、そして行く末永く続ける為には必要だったのだという。
中には、もう後、十年は現役を続けたい――と思った名人もいただろうが、その職人技の世界の将来を思って敢えて早目の引退の道を選んだ―という事もあったらしい。
いまの時代、昔の職人の世界のような「身の引き時が綺麗」という例は殆ど聞いたことがない。
政治の世界を筆頭に企業のトップにせよ、スボーツ、芸能の世界など、ほとんどの世界で「惜しまれながら早めに身を引く」等という話をさっぱり聞かなくなった。
いやむしろ、「もう辞めたらよさそうなものに」と回りが思っているのに、本人は「まだまだやり残したことがある！」「まだ、若い者には任せられない！」と現役にしがみつき、それが回りの迷惑になっている例は多いし、最近は、そんな例を「幾つになっても、やり続けようとするその執念が素晴らしい！」などと賛美する論調の方が強いような気がしないではない―――。
日本社会の物の考え方が、この数十年で大きく変わってしまったようだ。
（10/11/18 10:00pm）
2018年10月11日
高額配当
タカさんの競馬歴はかれこれ50年になるが、若い頃は、朝の第一レースから、いそいそと現場（競馬場）に出かけて、最終レースまで馬券を買っていたものだが、最近は現場に出かけることもなくなり、せいぜい重賞レースを電話投票で買う程度になってしまってはいるが、相変わらず馬券を買うからには「一攫千金」の夢を追って、「穴狙い」に出ることが多い。
1レース当りの購入額も少ないから、大穴狙いで夢を買って、「大金が手に入ったら〜」としばし空想するのが楽しいし、なあ～に、ハズレたところで大金をかけた訳ではないから、「しばし楽しい夢でワクワクした―」ことに使った金額だと思えば安いものだ、と思えるのだ――（まあ、こんな境地に達するには、それなりの授業料（？）とウン十年という歳月を要したわけだが）
いま現在JRAの馬券の中で、最も高額の配当が狙えるのはWIN5という、一日の指定された5レースの一着馬を全て当てる、という超難度の馬券だが、この馬券、一口100円単位で買えて最高額だと6億円が当たる〜というのだから、狙ってみたくなるまさに一攫千金の馬券だ。（実際、過去には最高払戻額4億2千万円という配当が出たことがあるという）タカさんのような「大穴狙いの少額馬券購入者」にとってはありがたい馬券といえるものだが、いつもこの馬券を買う時に一つ悩むことがある。
WIN5の馬券は普通の馬券のように窓口で現金で買うことができず、買う為には口座を開設してその口座からではないと買うことができない。すなわち、万が一、高額配当が当たった場合、どこの誰が買ったが分かってしまい、普通の馬券で高額配当を当てた場合のように「どこの誰があてたのか？」が分からないという（すなわち匿名性がない――）ということが、悩みのタネなのだ―――。
ギャンブルなどでの儲けも、税金の対象になるという法律があり、とくに高額配当金の場合、「当たり投票券の購入に要した経費を差し引いた上で、50万円の特別控除を超える利益があった場合、超えた額の２分の１が所得税の課税対象となる」と定められているから、例えばWIN5で1億円当てた場合、4000万円近くの所得税とその他に1000万円近い住民税を納めなければならないという。今のところ競馬の儲けは、自己申告だから現金で買った馬券で1億の配当を窓口で受け取り、人混みに紛れてしまう――という人ならともかく、口座を開設しどこのだれだかを税務当局が調べさえすれば分かってしまう人が、税務申告しないでいると、「脱税」で摘発され5000万円の税金の他に、多額の追徴金やら罰金を支払わなければならなくなるかも知れないし、それが「前科」となることもあるかもしれない―。
そんなことになれば、「一攫千金を稼いで楽しい夢を実現！」どころか「不名誉の悪夢のどん底」に落ちかねない。考えただけで、なんだか楽しくなくなってくるのだ。
気の弱いタカさんのことだから、万が一の万が一でも高額配当が当たったら脱税する勇気（？）などなく、正直に税務申告するに違いない。（納税は、国民の義務でもあるのだから―――）でも、一生に一度、折角、1億円当てて5千万円も持って行かれるというのも―――何となく気分は良く無かろう――という気もする。
まあ、競馬を50年もやっていて高額配当というのを一度も手にしたことはないというのは、案外、タカさんにとってラッキーだったのかもしれない。
（10/10/18 10:00pm）
2018年10月5日
再建断念
諸説あるようだが世界三大がっかりスポットといわれる「世界名所」がある。
幸いにして（？）そのほとんどを実際に見たが確かに「なんじゃこりゃ〜」というがっかり感は確かに味わえる。（ただのコンクリート製――近くでみると結構汚い―――の噴水であるシンガポールのマーライオン、コペンハーゲンの別に風光明媚でもない海岸にポツンとあるアンデルセンの人魚姫像、少年が立小便をしている――という何の面白みもないブリュッセルの小さな小便小僧像等）
なかでも、小便小僧は、世界中どこにでもレプリカが溢れており（タカさんが一番なじみのあるのはJR浜松町駅の川崎寄りにある小便小僧だが――）、子供の立小便なんて今時、中国人観光客でもやらせないようなことをやっている像がなぜあんなに世界中でもてはやされるのかわからないのに、そのオリジナルだからといって観光客がブリュッセルに行ったら必ず見に来る理由がわからない―――あの像なら浜松町駅のレプリカの方が毎月着せ替えもされているし、まだ面白いと思うのだが）
小便小僧の由来には12世紀のベルギーの独立戦争の物語があるし、像自身400年程前に設置されたという相応の歴史があるようなのだが――要は「子供が立小便をしている姿」でしかなく、しかもその小便で噴水池ができている―ということは――噴水池は小便池ということになり――がっかりするのも当然だ）
この手の、歴史的建造物やら美術品の価値というものは、その背景にある歴史や、文化的価値観が違えば、人それぞれに（あるいは国ごとに）違って当然であり、それを裏返せば「小便小僧は素晴らしい！」とする人も「がっかりした」という人もいるのが当然だ―――。
ミケランジェロの作品の中でも最高傑作という評価の高い「ダビデ像」は、すでに建立から500年、イタリア人にしてみれば（あるいは多くの世界の国々でも）人類の誇るべき芸術作品！であると思っているだろうし、世界中で多くのレプリカが作られ多くの人達が今も感激に打ち震えつつ鑑賞しているが――島根県奥出雲町にあった高さ約５メートルのダビデ像が、4月の地震で足首部分から倒壊してしまったことでちょっとした騒動があったという。
実はこのダビデ像、2012年の設置時には、「公園に巨大な男性の裸像をおくのは教育上ふさわしくないのでは――」（ダビデ像は全裸姿で男性器も表現されているから）という反対意見と「何をいうか、世界も認める一流の芸術作品ではないか！」といった論争が起こった経緯があり、この騒ぎは、当時、海外メディアでも報道されたということがあったという。
町では地震後、像をよみがえらせる予定だったが、以前の反対論の経緯や、新たに住民から「目のやり場に困る」とか「再建するなら下着を履かせろ！」などの声があがり、町議会議員の中には「教育上もよくない、子ども達も嫌がっている」との発言があったそうで、町長は結局、再建を断念したという。
まあ、いずれにせよバンツを履いたダビデ像を立てたりすれば、それこそダビデ像の著作権をもつイタリア政府が怒るだろうし、世界から「芸術への冒涜だ！」等と、激しい非難を受けたかしれないだけに、町長の再建断念は英断だった―――のではないだろうか。
（10/04/18 10:00pm）
2018年10月4日
髪の薄いオジサン
散髪に行って、散髪ももう終わろうとする頃、理髪師が大きめの手鏡と前面の鏡とを合わせ鏡にして「これでよろしいでしょうか？」と聞いてくる。「後ろ頭のカットはこんなものでよろしいでしょうか？」という意味らしいが、普段、自分の後ろ頭など見ることはない（物理的に見られない）から、一瞬見えた自分の後ろ頭に「あれ！こんなに髪の毛が薄かったっけ！」とドキリとしてしまうのだが、「えっ、まさかこんなに後ろ頭は薄い訳ないだろう！」と他人に文句をいう訳にもいかず、冷静な声をよそおって「結構です」と答えるのがいつものことだ。
洗髪をしてくれながら理髪師が「どこかかゆいところがありますか？」と聞いてくる時と同じで、関東人は「頭のてっぺんの左側がかゆい」とか、「もみあげ辺りがかゆい」などと、いちいち注文を付けることはない（といわれている）のと同じで、関東人は「後ろ頭をもう少し刈りこんでほしかった、etc」などと注文をつけず、「結構です」とこたえてしまうものらしい。（関西人だと「鼻の頭がかゆい」とか「足の裏がかゆい」「後ろ頭のハゲを隠して欲しい！」などと一応ボケてみる人もいると聞くが）
我が家の、洗面所の鏡も三面鏡にもできるようになっているから、毎朝、無理をすれば、真後ろは無理にしても横顔位は見られるとは思うが、タカさんは見た事はない―――女性は毎朝、三面鏡とにらめっこしているのかもしれないが―――オジサンが三面鏡で後ろ姿を入念にチェックしている姿等は――あまり見た事はない。
落語に「松山鏡」という話がある。昔、鏡というものが一切ない松山村に正助という男がいた。両親が死んでから18年間というもの毎日墓参りを欠かしたことがないという親孝行者であったので、領主の知るところとなり、ご褒美を貰うことになった。
名主らと村役場に呼び出された正助は、「何なりと望みの物を与える」と領主に言われたが、「欲しい物は何もございませんが、望みを叶えて頂けるなら死んだ父親に会いとうございます」と答えた。
困った領主が、名主に父親のことを訊くと、「父親の、顔立ちは正助と瓜二つでございました」と答えたので、領主は一計を案じ、「望みを叶えてやろう。会いたくなったらこれを見るがよい。但し、余人には見せるなよ」と言って役場に置いてあった鏡を褒美として与えた。
生まれて初めて鏡というものを見た正助は、鏡に写った自分の顔を父親と思い込み、大事に家へ持ち帰り、領主に言われた通り、女房にも内緒にし、納屋のつづらの中に鏡を隠して折に触れて納屋に入り、父親との再会を楽しんでいたのだが―――。
あまりに頻繁に納屋に入る亭主の行動を怪しんだ女房がこっそり納屋へ入り、鏡を見付けた。見ると、鏡の中に女がいるので、てっきり浮気相手をつづらの中に隠していると思った女房は、亭主を詰問し、ついには夫婦喧嘩になってしまった。
そこに丁度、通りがかった尼寺の尼さんが仲裁に入り、事情を訊いたのだが、女房は「つづらの中に浮気相手の女がいる」と言い、正助は「中にいるのは父親だ」と言い張ってラチがあかない。「それなら私が確認して上げましょう」と尼さんは、納屋へ行ってつづらを開けて鏡を見たのだが――。
夫婦のところへ戻ってきた尼さんは、二人に言った。「二人共もう仲直りしなさい。つづらの中の女は、夫婦喧嘩をさせて申し訳ないと反省して尼さんになっていますから」
タカさんが見た髪の薄いオジサンは、きっと松山鏡の話と同じだったに違いない。
（10/03/18
10:00pm）
2018年9月28日
絶対岡田押し
千葉ロッテの外野手、岡田幸文選手が引退を発表した。岡田といっても千葉ロッテファン以外の人にとっては余りなじみのない選手かもしれないが、長年のロッテファンであるタカさんにとっては、絶体押しの選手のである。
作新学院出身だが、甲子園経験はなく日大に進むもすぐに右ひじを故障してしまい大学を中退、地元に戻り足利ガスの嘱託社員となりプロパンガスの配送（重いものになると総重量は50キロ位になる）の傍らクラブチームの全足利クラブに所属し全国クラブチーム選手権優勝に貢献するなど活躍したが、ここでも再び肘を故障するなど決して恵まれた野球人生ではなかった。その間、足利市役所に勤める11才年上の女性と結婚し、野球を続けた結果、08年、高校卒業後6年目の24才の時に千葉ロッテマリーンズから育成ドラフト6位の指名を受けた。
育成枠とはいわば2年間限りの「お試し期間」（見習い）のようなもので、そのお試し見習い期間内で支配下登録を勝ち取らない場合は、クビという厳しい立場であり、給与も年間200万円ほどに過ぎないこともあって、ロッテ入りを猛反対する姉さん女房の奥さんを「2年やって駄目だったら諦めるからどうしてもやらせてくれ――」と説得し、さいたま市のロッテの独身寮に入居して単身赴任を始めた。
二軍のクラブハウスには、椅子と段ボール箱だけでロッカーもないという環境だったこともあり、後に岡田は「ハングリー精神を鍛えられた」といっている。
幸い翌年3月に支配下登録され、背番号66をもらい独身寮を出たものの、一軍ではなかったこともあって、足利市内の自宅から二軍の練習に通ったというのだから、「苦労の人」だった訳であるが、しっかり者の妻も、夫が支配下登録され年俸450万になったとはいうもののいつクビになるか分からないからと――と足利市役所勤めを続けた（今現在も務め続けているとか）岡田の単身赴任生活は今も続いているという。
しっかり者の姉さん女房と努力家の夫という美談は、とかくチャラいイメージのあるプロの花形選手の私生活に比較して、野球ファンのおじさん達の心を揺さぶる――。
その後、岡田は大活躍、特に2010年のロッテの日本一を決めた中日との決戦での延長12回表の決勝打、あるいは2年連続でゴールデングラブ賞を受賞した神業ともいえるセンターの守備は、あれからすでに10年近くが経つというのに忘れられない。
岡田が活躍していた時期にはどんな鋭い当たりがセンター方向に飛んでいく限りは（時にはライトやレフトの守備位置でも）、いつの間にか岡田が現れ超ファインプレーで捕球してくれると信じていたからロッテファンとしては外野にライナーやフライがとんでいくと何か安心して見ていられた―。（参照：岡田名シーン集）
近年は若手の台頭もあって、かつてキャプテンや選手会長を務めた彼も、徐々に出場機会が減っていたのは仕方ないことだろう。岡田らしいといえば足の速さや守備の器用さに比べて打撃力が弱く（なにせプロ入り以来、2496打席連続本塁打なし（2017年シーズン終了時点）のプロ野球記録保持者であり、また2016年10月以来、現在まで57打席連続無安打という野手としてのプロ野球連続無安打日本記録58にあと１とせまる珍記録も更新中だ。そんな珍記録も含めてこんなに魅力ある選手はいない、辞めてしまうのは寂しいが、タカさんは全てを含めていつまでも「絶対岡田押し」である。
（09/27/18 10:00pm）
2018年9月26日
自然の摂理
先日の敬老の日の新聞記事によるとこの日、日本の100才以上の人口は昨年比2000人ほど増え69,785人に達したという。
老人福祉法が施行された1963年には100歳以上人口は全国で153人だったというからわずか50年余りで460倍という物凄い伸びを示した訳だ。（63年の総人口が9600万人あまりだったから総人口（現在1億2400万人）の伸び率を考慮しても長寿者人口の伸び率は桁外れである）
こんなに長寿者が増えた要因は、勿論日本が豊かになってきていることにあるのだろうが、医療技術の進歩、社会福祉制度の充実等々様々な要因が重なっているのだろう―――、いずれにせよ喜ぶべきことではある。
ただ、この7万人余りの100才以上の長寿者の男女別内訳をみると女性が88.1％と圧倒的に多く男性の100才以上人口はわずか1割程であるというから男性の片割れであるタカさんにとってはちょっと寂しいようなところもある数字だ。（もっとも、反面100才以上なんてあまりにも未知の世界でもあり、恐ろしい世界にも思えるから、ホッとする面もないではないが）
基本、一夫一婦制で成り立っている人間社会では、種族の保存上最も効率の良い生物学的、男女性差は50：50であるといわれている。
極端にいずれかが少ない（あるいは多い）と、種族保存のための争いが多くなり、あまりに性差が大きくなりすぎると種族の保存が難しくなるとさえいわれているから、新生児の年齢では男105人に対して女100人が生まれるものの男子の幼児死亡率は女子に比べて若干高いから、両者が生殖年齢に達するころには丁度50:50に調整される－－－というのが、何百万年かをかけて人類が到達した自然の摂理だというのだが―――繁殖年齢を過ぎてもなおかつ生き続ける（死なない）ということになろうとは―――自然の摂理も気付かなかった（？）結果、100歳以上の人口比率女性88％などという事が起きているのではないだろうか。
「人生わずか50年」と誰もが達観して生きてきたのであろう長い日本人の歴史も、わずか100年余りで女87才、男81才となり、それよりも年長者は女性ばかり―――という時代が来るなんて―――さすがの自然の摂理も気が付かなかったようだ。
（09/25/18 10:00pm）
2018年9月21日
ヤクザと娼婦
映画の役者としての経験がほとんどない人を話題優先で映画に使うことがあるけれど、その人物が男性ならばヤクザ役、女性ならば娼婦役で使うのが最も無難だし、概してうまくいくのだとある映画監督が語っていた。
監督によると、男は誰でもヤクザの要素をもっているし、女は皆、大なり小なり娼婦的な要素をもっているから変に演技をつける必要がないのだ―――と若干、偏見的な言い方だったが―――なるほどと思い当たる節もないではない。
たしか元野球選手の江夏豊が初めて映画に出た時にもヤクザ役だったと思うが、彼の経歴もあったのだろうか（確かヤクザとの交際で事情聴取されたり、覚せい剤使用で逮捕されたり－－ということがあった）意外と役にはまっていて迫力があり素人という違和感がなかったような記憶があるし、最近では（タカさんは見ていないが）元AKBの大島優子の娼婦役が好評だったと話題になってもいる。なにせ元AKBでは大島優子にたいして演技経験がある訳でもないだろうし、これも先の監督談（女は皆娼婦的なところがある―――）が符号するようにも思う。
それに、好青年役だとか、純情な娘役というのになると演技力はともかく容姿次第では絶対に向きそうもない人がいて、江夏や大島だとちょっと（どころか土台）無理という感じがするけれど、ヤクザと娼婦ならば男女ともに誰でも無理ではない―――というところもあるように思う。（三浦友和がヤクザ役をやったこがあるし、吉永小百合が娼婦役をやったこともあったけれど、結構はまり役だった）
生まれつき演技力のえの字もないタカさんだが、若い頃には、好青年役は無理だったとは思うがヤクザ役ならできないこともなかっただろう―――なんて思うのだが―――。
（09/21/18 10:00pm）
2018年9月19日
世代ギャップ
安室奈美恵の引退で随分と盛り上がったようだが正直言ってタカさんにとっては何のことやらさっぱり意味が分からないからテレビがこの話になるとコソコソとトイレにでも行くフリをして部屋に引っ込むしかない。なにもタカさん一人だけではない、老夫婦（？）の二人暮らしでは妻だって興味をもって番組を見つづけているとも思えない－－－。やはりタカさんの世代位になるとアムラー世代とは相当のギャップがありそうだ。
そういえば30年以上前のことだが、副社長に誘われてランチを食べに行った際、近くの席に松田聖子がマネージャーたちときていて食事をしていたことがあった。「副社長、松田聖子がきていますよ！」と小声で伝えたら副社長が「それ、誰だ？」と言ったのでびっくりしてしまった。
20歳近く年上のどちらかというと芸能情報などにはうとそうなまじめ一方の人だったが、まさか今を時めく（その当時、郷ひろみとの破局だの、神田正輝に乗り換えたのととかく話題に上っていた―――）松田聖子を知らないという商社の副社長がいるとは―――思わなかっただけにびっくりしてしまった。
タカさんがびっくりしているものだからマズイ！と感じたのだろうか副社長が「ああ、あの歌を歌う人か？」と言った時にはもう笑いをこらえるのに必死だった思い出があるが、あれこそ、いま安室奈美恵を知らないことでタカさんが味わっている「世代間ギャップ」というものだったのだろう。
もっとも、安室奈美恵1977年生まれ、デビューしたのが10代の頃で以来、アムラー旋風を巻き起こし常に芸能界の話題をさらってきた―――とはいうものの、彼女のデビューした頃といえばそろそろタカさん世代は、そういう流行には興味を失いつつあったころで、ましてや女性に大人気だったという彼女は、デビュー以来、オジサン度を深めつつあったタカさんにとっては、別段、妖艶という訳でもなく―――益々、興味の外に去って行った感じであり、今となっては名前は知ってはいるが顔は思い浮かばない「ああ、あの歌を歌う人か？」程度の存在なのだ。
AKB48だの乃木坂ナンチャラといった女の子のグループにいたっては養鶏場でメンドリの一羽一羽の見分けがつかないのと同じで誰一人として名前も顔も見分けがつかない。相当、ボケてきたのかなぁ〜とも思ったが、同世代の友人たちに聞くと皆同じだというから、ちょっと安心している。
女性陣だって世代ギャップはあると思う。例えばもう75才近くにはなっている舟木一夫が今も全国各地を回ってコンサートをやっていると、タカさん世代あるいはそれより上の世代のオバサン、オバアサンたちが大挙して押しかけ紫色の学生服を着て「高校三年生」を熱唱する舟木一夫に熱狂している―――なんて言う話も聞く－－－。
タカさんが今もちあきなおみやテレサテンのCDを愛聴し、AKBの見分けがつかないのは、極々自然の成り行きなのかもしれない。
（09/18/18 10:00pm）
2018年8月24日
重さの価値
商社で鉄鉱原料などを扱っているとその取引品目は鉄鉱石、石炭、鉄くず（スクラップ）等、皆トン単位である。
ところが同じ金鉱部門といわれる非鉄金属でも製品を取り扱っている部門、例えば、軽金属製品部門になると「アルミ板xx枚」「xxキログラム」と随分小さくなるし、貴金属ともなれば「トロイオンス（31.1グラム）」ものによっては「グラム」単位と鉄に比べたら極端に小さくなる。
タカさんは商社でのキャリアーの最初は輸入スクラップ部門だったけれど同僚の女子社員は、「この部の扱い商品は、車内販売もないしお見合いの際にも堂々と言えない－－－貴金属部門だったら恰好よかったのに！」と言っていたことを思い出す。
入社当時は日本の産業も「重厚長大」を目指していたがその内あっという間に「軽薄短小」時代となり、今やそれも通り越して形のないもの、いわゆる情報やIT技術や意匠などの無形のものが主流だ。
昔、鉄鋼問屋をやっていた取引先の社長が、鉄から足を洗って商売替えをしたけれども、結局何を扱っていたかというと「南アやインドからの石材（墓石用）」だと言っていた――ことを思い出す。
彼によると長年鉄をやっていたのでやっぱりトン単位の重さがない物を扱うとなんだか充実感がなく、石材のように重みがあってずっしりとしているものを扱っていると「商売をしている！」という満足感が味わえる！といっていたがけれど、あの時代彼のように重厚長大から軽薄短小への時代の移り変わりについていけなかった人がいる位だから、当然、軽薄短小から今のような情報だとかIT技術、意匠や特許と言った「無形の価値」の時代になって行った時にも、多くの人達が取り残されたに違いない。
考えてみると最近は特に日常生活でもこの流れは顕著だ。タカさん自身もついて行くのに苦労している部分もある。タカさんの亡くなった父親などは、読書にしても分厚い全集を何冊も抱えて家の床が沈み込みそうになっていたが、今やそんな読書家は数えるほどだし、キンドルなどの電子書籍の普及によって本箱も持たない「読書家」も多いというのだから―――精々、雑誌位ならキンドルで読んではいても、さすがに科学書やら小説の類となるとやっぱりリアルな重さを感じる書籍でなければ読んだ気がしない－－－というタカさんなどは、あの石材を扱っていた社長と余り変わらないのかもしれない。
そうそう、新聞の販売部数が近年とみに減っているという。いま、電車の中で朝刊を読んでいる人なんてほとんど見かけなくなったように、ネットでの情報収集が普及しているから新聞の必要性が薄れてきているということもあるが、若い時から新聞を読まないと朝が来たような気がしないタカさんは、どうしてもネットのニュースや、テレビのニュースでは物足りなくて、やはり例え5分、10分といえどもある程度厚みがあって紙面が大きな新聞を手にとっての活字で得た情報ではないと頭に入らない－－－というところがある。
重厚長大から軽薄短小へそして無形へと「重さ」の価値がどんどん小さくなってきたが－－－さてこの先は一体どんな世の中になっていくのだろう―――。
（08/23/18 10:00pm）
2018年8月20日
人徳のなせる業
山口県周防大島町で行方不明になっていた2才の男の子を救出しようと大分から駆けつけたボランティアの男性が、それまでの3日間、地元の警察や捜索隊が発見できなかった男の子をさがしはじめてわずか30分程で発見―――というニュースに日本中が湧きかえった。
数日前に2才になったばかりだという男の子が3日間も山中に迷い込んでよく無事だったと彼の生命力の強さに驚くとともにこの尾畠春夫さんという78才の「スーパーボランティア」の経験と知識の豊富さとそのユニークなキャラに全国の人々が釘付けになったのではないだろうか。
3日も前から大島町に押しかけていた報道陣が尾畠さんの行動を逐一報道、特にテレビのニュースやワイドショーではその一部始終をまるで実況中継の如くに伝えていたから、暑さに青息吐息で家にこもっていたタカさも久しぶりにテレビに食いついてしまった。
見ているだけで不愉快になるような日大のアメフト問題やら、レスリング協会の問題と比べて間違いなく明るくなる話題だけに視聴率も上がっていたのだろう、このニュースは男児発見後も続き、尾畠さんの人となりやら、家族構成、今までのボランティア実績を取り上げていて、今日は再び広島の呉に向かっている―――と最新動静まで報じるに至っては尾畠さんにとっては結構迷惑な話かもしれず、相変わらずプライバシーに無頓着なマスコミの質の低さにはいささか呆れるが－－－。
このニュースを見ていてタカさんが一番印象に残ったのは、報道陣に取り囲まれて救出の模様を語る尾畠さんの右手の小指の先にトンボがとまっていたことだ。
タカさんは、トンボが指先にとまるということはそのトンボが尾畠さんの指を棒かなにかと間違えたのかも知れないとは思わないで、やっぱりトンボもこのおじいさんはいい人に違いない！と慕ってとまったのに違いない！と思えたのだ。
タカさんは子供の頃、よく秋になるとトンボとりをしたものだが、虫網もなにもない時には草の先などにとまっているトンボの真正面から指先で空に丸を描きながらゆっくり近づいてその指先を、目で追っているうちにトンボが目を回したところをさっと捕まえる－－－なんていうことをよくやったものだが－－－尾畠さんはトンボの目を回させる訳でもなく、只お釈迦さんのような手にトンボの方から寄ってくるのだから―――やっぱりこの人は只物ではないのかもしれない。
そうそう、4－5年程前のプロ野球珍プレー大賞に選ばれたのは、広島の今村猛投手だが、それはマウンドで力投を続ける彼の帽子にずっと赤トンボがとまっていて―――、投げ終わってベンチに帰る時もずっと彼にとまり続けていた―――というシーンだったが、あれは決して今村投手の「珍プレー」という訳ではなく（赤トンボの珍プレーではあったかもしれないが－－－）、タカさんにとっては、「今村ってきっといい奴に違いない－－－」と思わせるに十分なインパクトがあったことを思い出す。
そういえば今村投手は今年も相変わらずリリーバーとしての好成績をあげているようでやはり人徳のなせる業なのだろうか―――。
（08/19/18 10:00pm）
2018年8月6日
本当の七夕
人徳のなせる業
山口県周防大島町で行方不明になっていた2才の男の子を救出しようと大分から駆けつけたボランティアの男性が、それまでの3日間、地元の警察や捜索隊が発見できなかった男の子をさがしはじめてわずか30分程で発見―――というニュースに日本中が湧きかえった。
数日前に2才になったばかりだという男の子が3日間も山中に迷い込んでよく無事だったと彼の生命力の強さに驚くとともにこの尾畠春夫さんという78才の「スーパーボランティア」の経験と知識の豊富さとそのユニークなキャラに全国の人々が釘付けになったのではないだろうか。
3日も前から大島町に押しかけていた報道陣が尾畠さんの行動を逐一報道、特にテレビのニュースやワイドショーではその一部始終をまるで実況中継の如くに伝えていたから、暑さに青息吐息で家にこもっていたタカさも久しぶりにテレビに食いついてしまった。
見ているだけで不愉快になるような日大のアメフト問題やら、レスリング協会の問題と比べて間違いなく明るくなる話題だけに視聴率も上がっていたのだろう、このニュースは男児発見後も続き、尾畠さんの人となりやら、家族構成、今までのボランティア実績を取り上げていて、今日は再び広島の呉に向かっている―――と最新動静まで報じるに至っては尾畠さんにとっては結構迷惑な話かもしれず、相変わらずプライバシーに無頓着なマスコミの質の低さにはいささか呆れるが－－－。
このニュースを見ていてタカさんが一番印象に残ったのは、報道陣に取り囲まれて救出の模様を語る尾畠さんの右手の小指の先にトンボがとまっていたことだ。
タカさんは、トンボが指先にとまるということはそのトンボが尾畠さんの指を棒かなにかと間違えたのかも知れないとは思わないで、やっぱりトンボもこのおじいさんはいい人に違いない！と慕ってとまったのに違いない！と思えたのだ。
タカさんは子供の頃、よく秋になるとトンボとりをしたものだが、虫網もなにもない時には草の先などにとまっているトンボの真正面から指先で空に丸を描きながらゆっくり近づいてその指先を、目で追っているうちにトンボが目を回したところをさっと捕まえる－－－なんていうことをよくやったものだが－－－尾畠さんはトンボの目を回させる訳でもなく、只お釈迦さんのような手にトンボの方から寄ってくるのだから―――やっぱりこの人は只物ではないのかもしれない。
そうそう、4－5年程前のプロ野球珍プレー大賞に選ばれたのは、広島の今村猛投手だが、それはマウンドで力投を続ける彼の帽子にずっと赤トンボがとまっていて―――、投げ終わってベンチに帰る時もずっと彼にとまり続けていた―――というシーンだったが、あれは決して今村投手の「珍プレー」という訳ではなく（赤トンボの珍プレーではあったかもしれないが－－－）、タカさんにとっては、「今村ってきっといい奴に違いない－－－」と思わせるに十分なインパクトがあったことを思い出す。
そういえば今村投手は今年も相変わらずリリーバーとしての好成績をあげているようでやはり人徳のなせる業なのだろうか―――。
（08/19/18 10:00pm）七夕といえば当然7月7日の夜ということになるが、例えばあの仙台の七夕祭りは、8月7日である。
そう聞くと、「旧暦と新暦は丁度、一ヶ月ズレているのだから当然そうなるに決まっている」と思い勝ちだが、物事はそう簡単ではない。
一般には新暦の七夕である7月7日を丁度一ヶ月ずらせて「旧暦の七夕」といっているけれど月の満ち欠けをもとにした太陰暦（旧暦）と、太陽の年周期をもとにした暦である太陽暦すなわち（新暦）とが、「丁度1ヵ月のズレ」である訳もないのだから、これは考えてみると「8月7日は旧暦の七夕」というのは、滅茶苦茶な話であって本来の「七夕」とは縁もゆかりもない日付なのだ。
そもそも、中国の民話による七夕とは、夏の盛り星空がきれいに見える新月と満月の中間、すなわち新月から７日目の夜ごろ（月齢６近く）、天の川が綺麗に見えるころの織姫（ベガ）と彦星（アルタイル）との二つの一等星に因んで語られる悲恋物語から来ていることを考えれば、例えば月が明るすぎて天の川があまりはっきり見えない日などが七夕になるのは、おかしいと言える。
そういう条件をクリアすることを考えれば、正確には「七夕」とは新暦に直すと年毎に違う日付になるのが本当だということになり、今年2018年は、伝統的な意味での七夕は8月17日になるという。新暦の七夕からは40日も遅く、いわゆる旧暦の七夕とも10日も違っている。
新暦の7月7日は日本では例年だと梅雨の季節であり梅雨明け前だから、星空はめったにみられないし、みえたとしてもまだ織姫や彦星の高度が随分、低い時期であるからそんなに良くは見えないが、伝統的な七夕の時期（今年は8月17日頃）だと、秋口でもあるし、晴れて星空が見える確率が高い上に牽牛や織女の高度も高くなっており星空のスペクタクルを十分楽しむことができるはずだ。
もっとも、最近の都会では町の煌々とした灯りによって、天の川自身が見えることは殆どないから、伝統的な七夕の夕べに浴衣姿で、蚊取り線香を焚いて、団扇を片手に天の川を見上げる－－－なんていう風情は、全くと言ってよいほど消えてしまったから、精々プラネタリウムに行って楽しむ位のことしかできないけれど－－－。
（08/5/18
10:00pm）
2018年8月3日
熱闘甲子園
甲子園といえば聖地といわれ、タカさんの子供時代にも、男の子の多くが出場を夢見たものだし、タカさんもそれこそ毎日のように友達達と野球に励み、下校の途中では高校の野球部の練習を遠巻きにながめていたりしたものだ。（いまではあり得ないほどの猛烈なスパルタ練習だった）
進学した中学には野球部がなかったのでバスケット部にはいったし、高校に入ってからは大学受験勉強の為に野球をやる時間が無くなり、結局「やる野球」からは離れてしまったが、その事がもう70歳になっているというのに、今更に残念に思えてならない。
今年の夏は、地元の近所の高校が県の決勝まで進んだこともあって妻ともども「もし、決勝に勝って甲子園に行けたら二人で応援に行こう！」とまで盛り上がったのだが―――残念ながら決勝で負けてしまいタカさん夫婦の今年の、甲子園行きは夢に終わってしまった。
そういえば、亡くなった父の高校はその地方の名門でよく甲子園に出場していたものだが（近年はさっぱりのようだが）、出場が決まる度に母校の野球部後援会から寄付金の奉加帳が廻って来ていて、父は毎回、喜々として振り込んでいたが、タカさんももし母校が出場することになったら（ほぼあり得ないが）、ドッサリ寄付するのだが――。
そういえば、あきらめざるを得なくなっていった自分の「甲子園への道」の夢が忘れられない人の多くは、大人になって今度はその夢を自分の子供や孫、あるいは出身校の後輩、地元の高校生に托するようになる－－－というのは日本人の習性とすらいえるようなものになっているような気もする。
タカさんは娘しかできなかったので「子供が甲子園」という夢は実現しなかったが（参照：「麗子ちゃんとのゴルフ」01/6/1）、今年から中学生になった孫は野球部に入り、夏休みに入ってからは、合宿だの朝練だのとこの暑いのに野球漬けの日々を送っているようだ。（孫の話では、今年は15人もの新入部員が入部したというから野球人気も案外、昔と変わらないのかもしれない）
今年の夏の甲子園は100回記念だとか、100回も続いているとなれば、確かに、いくら気象庁が「危険な暑さ」だとか、「今までに経験したことのない暑さ」といっている最中といえども中止も延期も出来ないだろうとは思うし――青春の聖地、甲子園という思いのある男の子、そしてかつての男の子たちは、夏の大会はやっぱり炎天下の野外球場でやるべきもので、ドーム球場なんてもっての外――という思いはあるから、少なくとも今年はこのまま甲子園でやるしかなかろう。
願わくは、東京大会の決勝戦のように投手が熱中症で倒れる――などということのないようにと―――祈るばかりだ。
（8/02/18 10:00pm）
2018年8月1日
8月の祝日
今日から8月だ。
新しい月、8月のカレンダーを見て見たら8月11日の土曜日の日付が赤で書かれており、「ああ、そういえば11日は今年で制定後三回目となる「山の日」の祝日なのだ」と気付いた。
なぜ8月11日が山の日なのか――特段理由があるわけでもなく7月に海の日を制定したのだから、山の日でも作った方いいかも〜なんていう理由でできた経緯もあり、最初から存在感のない祝日ではあったのだが〜。
3回目にしてはや存在感が皆無になってしまうなんて―――安倍内閣の人気とり作戦らしく、どれも上手くいかないものだなぁ〜と笑ってしまう。
小渕内閣がサミットの沖縄開催にはしゃいで発行した二千円札が全く人気がなくて使われず、というより寧ろ厄介者扱いされて、近年は一枚も新規発行されていない――のと何か似たようなところもある。
そもそも、「山の日」の制定そのものが、暑い盛りの6、7、８、月に祝日が一日もないのは寂しいからというのが大元の発想であり、７月に海の日を作ったのだから、海があるなら山があってもいいじゃないか－－－なんていう理由で考えたものだろうが、どうせ8月に一日祝日を作るならお盆休みと上手く繋がり連休になるように8月12日にしておけば、かなりの確率で8月15日のお盆の中日をはさんだお盆休みとその前後の土日とがつながり山の日が振替休日の３連休と重なって－－－暑い最中の８月に大型連休ができて－－－とそれこそ安倍政権の人気も少しは上がったかもしれないのに－－－。
もっとも、元々、8月12日を山の日にしようというのが、お役人達のアイデアとしてでていたのに、例の日航機の御巣鷹山事故が8月12日であったために慰霊祭などが例年行われておりそんな日を「祝日」にするのはまずかろうという政治家先生の判断もあって中途半端な8月11日に決まったという経緯があったとか－－－。
たしかに、「8月12日はケシカラン」という声が起きれば（「不謹慎だ！」という声は少数にせよ必ず起きただろ）、なにかとケチをつけたがるマスコミがそれに便乗するだろうし、今年のようにモリカケ問題などもあった時には、そんなことでも政権の命取りになりかねなかった可能性だってあるから、まあ、無難に8月11日に決めておいてよかったのかもしれないが－－－。
今年は、多くの企業は臨機応変に8月13日の月曜日から14、15、16日を盆休みにするところが多いと聞くから、まあ、8月17日の金曜日の出社日まで一応、６連休は確保できそうで、13日が振替休日になってお盆休みが9連休になる8月12日「山の日のスケジュールよりも、家計は助かる－－－と喜ぶ主婦たちも多いかもしれないから結果的には11日でもよかったのかもしれないが－－－。
（7/31/18
10:00pm）
2018年7月31日
自動翻訳機
一高で英語の教鞭をとっていた漱石がある恋愛物語の中の台詞‘’I love you.’ を「私はあなたを愛します」と訳した生徒に、「日本人はそういう無粋なことはいわないものだ、日本語では『星がとってもきれいだね』と訳すのだ」と言ったというエピソードは有名だし、小説「三四郎」の中にも‘Pity's akin to love’の訳として「可哀想だ、は惚れたつて事よ」と訳すかどうかの論争の挿話がでてくる。年頃の青年が女性に対して「可哀相だ」と感じるということは、要するにその娘さんに惚れてしまったからに他ならない－－－というのだからけだし名訳というべきだとほとほと感心したことを思い出す－－。
AIの目覚ましい能力向上によって我々一般人も高まる期待の一つにAIを活用した自動翻訳システムがある。
それが実現すればもう苦手な語学を勉強する必要なんかなくなり、世界のあらゆる人々とウエアラブルな自動翻訳装置を着けていさえすれば、自由自在に意思疎通ができて、あわよくば世界の美女たちと愛を語り合うことも可能になるかもしれない――というのだから―――期待は膨らむのも当然だが－－－。
しかし、その自動翻訳機能が、‘I love you.’を「私はあなたを愛します」などという味もそっけもない言葉ではなくて「星がとってもきれいだね」と臨機応変に訳してくれるようになるとは思えないし、もし、星のない夜だったら「あっ、蛍が－－－」だとか「風鈴の音がすずやかですね」位の女性がぐっとくる言葉に訳してくれるとは―――とても思えないし、そもそも娘さんが蛍や風鈴を知らない国のひとだったら－－－なんて考えると、どんなにA1が進化しても恋愛を語るにはその場の状況や、二人の感情を細やかに読みとった結果、最適の訳をOut putしてくれる自動翻訳機の実現というのには、無理があるように思うのだが－－－。
「吾輩は猫である」の英訳本を読んだことがあるが、タイトルはやっぱり‘I am a cat.’であり本文も確かに意味は原文の通りに訳してあったものの、漱石の原作の味がよく訳されていたかというと――原作とは似ても似つかないものになっているような気がしたものだった――。
いや、そうはいってもAIは自己学習によってどんどんその能力を高めており、倍々ゲームで増えていくそのデータ量をもってすれば10年、20年もすればその内にAI自動翻訳機が臨機応変に男女の愛の言葉を自動翻訳するようになるに違いない－－－と信じる人も多いし、そう期待する声も高いけれど―――時々刻々、人それぞれに移り変わる男女の恋愛感情を、いかにAI万能の時代になっても機械が翻訳できるようになるとは－－－とても思えないのだが－－－。
（7/31/18 10:00pm）
2018年7月27日
坂道の家
松本清張に「坂道の家」という名作がある。清張小説の魅力的なところは、本筋は推理小説なのだがそこに流れるストーリーがどろどろとした人間の性（さが）を描いていて、殺人のトリックなんかどうでもよいと思わせるところにあるがこの「坂道の家」でも、中年までまじめ一方で仕事にはげんでいた男が、ひょんな切っ掛けで年下の女性にのめり込み段々破滅していって―――店も家族も失って―――女とその愛人に殺されて行くという物語だが、高校生の時に読んでその衝撃は今も鮮明に残っている。
あの小説で何となく学んだことはいくつかあるが、若い時に知らなかった「飲む、打つ、買う」を中年以降になって覚えると身の破滅になるまでのめり込んでしまうものだ――ということだ。
幸いにして（？）タカさんの場合、酒を飲むことと、小さいかけ事をやることは、結構早い時期に覚え、その頃はそんなに金もなかった所為もあって依存症になるほどの、大酒もギャンブルも出来なかったし、その内に結婚もして段々大人の自覚が芽生えてきて「そんなにバカはやれないなぁ〜」という自制ができるようになり―――、年を取るとともに体力も落ちるから大酒も飲めなくなって－－という経過をたどって今日にいたっている。
元々、体力がそんなにある方ではないから、酒を飲んだら酒に体力を奪われ余分な体力がなく、あちらの方には全然興味がもてなかった－－－ということだったので、まあ、今日まで、何の依存症にもならず、すんだのかもしれない。
「坂道の家」とタカさん自身の経験からすると、やっぱり、若い時から品行方正、石部金吉だった－－－という人はアブナイと思う？
最近、子供の頃から優等生で、石部金吉といわれた高級官僚が、彼等にしてみれば、はした金に過ぎない金額の接待やら賄賂を貰ってお縄になっているのを見るにつけ、若い時から多少の酒とギャンブル（競馬とパチンコ）をやっていたおかげで今に至るもまだ身の破滅を呼んではいないタカさんの方が勝ちかなぁ――なんて思う。
（7/2718 10:00pm）
2018年7月24日
夕立
連日続く猛暑は、「異常高温」とやらで例年とは違う暑さだといわれている。
確かに「50年に一度」だとか、「100年に一度」、あるいは「今までに経験したことのない〜」といった枕詞のつく天候が続くから、昔にはなかったような天気になっているのだとは思うが－－－。
タカさんがここのところの暑さで、「昔とはちがうなぁ〜」と思うのは「夕立」である。昔はこんなに猛暑の日の午後、夕方には必ずといってよいほど夕立があったような気がする。夏の盛りの猛暑の日には「夕方近くになって一天にわかに掻き曇り一陣の風とともにザッと夕立がきて」―――となったのに－－－。
雷が鳴り、夕立が来ると気温が5度位は急に下がるから、子供の頃は半ズボンだけでいたりすると母から「雷さんにおへそをとられるわよ」などと注意され夏用の腹巻なぞをさせられた思い出がある。
30分も降った夕立だったが、それが過ぎ去るとさわやかな涼風が吹きはじめ、その涼風に軒に吊るした風鈴がなって――蚊取り線香の匂いがして－－－なんていう日本の夏の夕方らしい風情があったことをおもいだすが－－－。
ところが、このところの猛暑続きの間には、まだ一度も夕立というものにお目にかかったことはない。西日本の方ではそれこそ「今までに経験したことのない豪雨」というのがあり各地で甚大な被害が出と思ったら、その後は猛暑が続き災害復旧に当る人々は熱中症に苦しむ－－－という事態が続いているが、「夕立」があって涼風が吹いて――などという風情が全くなくなってしまったのは何とも残念だ。
タカさんは、小さいころから暑いのは嫌いだったが（冬生まれの所為らしい――）夏の夕立は大好きだった。
縁側から物凄い勢いで降る夕立を飽かずに眺めていたものだが―――。
暑い国では午後に「スコール」という定期的に短時間、激しい雨があって、おかげで夕方からは比較的しのぎやすい涼しさになったものだが、そうなってから夕方、人々は出かけて露店や屋台を楽しむなんていうことをしていた。
夏に出張でインドネシア等に出かけた時には、夕方からプラプラ町に出かけていって夏の夜を楽しんだものだったが－－－。
猛暑に耐える日々を送っていると、あの幼い頃の夕立や、出張先でのスコールがなんとも懐かしく思い出されるのだが－－－。
最近、夕立にめったにお目にかかれないのは何故なのだろうか？
（7/23/18 10:00pm）
2018年7月20日
人生100年時代
落語にでてくる長屋の大家さんというのは、表通りの大店のご隠居さん、というのが定番の設定になっているが年齢的には幾つぐらいだったのだろう。
代々大店を継いでいるにせよ、一代で店を大きくしたにせよ、家督を譲る息子が「若旦那」と呼ばれ、店の手伝いをしながら仕事を覚え同業者仲間にも跡継ぎとして認めて貰えるほどになり、嫁も貰って三代目も生まれていて――という歳になっている必要があるとなると、結婚年齢が今よりは随分と早い江戸時代でも早くても40代後半、少なくとも50代にはなっていたのではないだろうか。
幼年時死亡率が高かった時代ではあるが、20歳まで育った人々の平均死亡年齢は60歳、61歳というところであったらしいから、それから逆算するとご隠居さん、といわれるのは大体50歳から60歳までの10年程ということになる。
ご隠居さんは、大体、家督を譲った店の裏庭にある、隠居所に引っ込み長屋の家賃やら、息子から払われる月々の生活費などで、連れ合い（落語ではばあさん、などとよばれている）とつつましいながら不自由のない趣味人としての生活を送っている―――等という状況が目にうかぶ－－－。
働き詰めの半生をおくり一家を為し、引退、引退後はのんびりと趣味を楽しみながらおばあさんと老後の人生を楽しむ―――何とも、羨ましくなる生活だが―――その期間というのが10年程というのは、短いようではあるが、丁度良い頃合い、ということもできるような気もする。
現代に生きる我々はどうだろう。世襲でもないサラリーマンならば仕事を含めた家督を譲る――なんていうこともないし、住まいだって2世帯住宅にすることぐらいはどうにかできたにせよ、次男坊、三男坊のことを考えたらそれも簡単ではない。
そもそも、結婚年齢が遅くなっている現代では60歳、65歳にまで定年が延びていたとしても、まだ子供たちは、一人前になっていない―――という状況だって珍しくはないだろう。
隠居してから10年程度の寿命と思えばまだ自分の老後だってあれこれ心づもりは出来るが、「人生100年時代」なんていわれるようになってくると引退後の人生は、30年から40年にもなる。自分が20歳の時に50歳、60歳の時の自分が想像すらできなかったのと同様で、とてもじゃないけれど老後の心づもりなんてできないのではないだろうか。
老後も楽しめる趣味を持て、なんていわれるがゴルフにしたって釣りにしたって毎日やっているプロゴルファーだって漁師だってある程度の歳になったら「引退したい！」と思いながら日々やっていることだと思うと、偶にならいいけれど、ゴルフや釣りを40年も50年も、毎日やりたい－－－なんて素人が思うのはなんだかとんでもない勘違いではないかという気がする。
「人生100年時代」は、もちろん幸せなことであるのだろうが、嬉しい反面、深くは考えたくない未来、になっているのではないだろうか。
（7/19/18 10:00pm）
2018年7月13日
言葉の必要十分条件
4半世紀前に封切られた映画「ジュラシックパーク」は、6500万年前に絶滅したといわれる恐竜を現代に蘇らせる―――という荒唐無稽とも思える設定だったが、その方法というのが、琥珀の中に閉じ込められている蚊から、その蚊が吸った恐竜の血を採取して更にその血の中から恐竜のDNAを取り出して―――というもので、山中教授のIPS細胞（万能細胞）からあらゆる臓器や器官が作れるようになるという話が現実に近づいている今なら、ジュラシックパークの設定も満更荒唐無稽ともいえないのではないか－－とさえ思えてくるようになってはいるが－－－。
もっとも、6500万年前のDNAが実際に残っているとは思えないしやっぱり設定には無理があるような気もするが、人類の祖先の骨の化石からはDNAが採取できている（古い物だと300万年前の人類）ということを考えると、20万年前から3万年前まで生きていたというネアンデルタール人や、約10万年前に出現したといわれる我々の祖先ホモサピエンスの化石からDNAが採取できているという事実から考えれば、そのうちネアンデルタール人や、初期のホモサピエンスをそのDNAから蘇らせることができるかもしれない－－－なんていうことを想像してしまう。
もし、そうやって蘇らせることができたとしたら－－－タカさんが是非知りたいのは彼等には言葉をしゃべる能力があるかどうかということだ。
DNAとか化石といった「物的証拠」によってネアンデルタール人と我々ホモサピエンスとの違い、あるいは共通点が分かるという話には説得力を感じるが、それはあくまでも彼等の物理的、身体的特徴についてであり、「ネアンデルタールは言葉が話せなかった」とか「ホモサピエンスが言語能力を持ったのは7万年前」というような、学説、すなわち彼等の言語能力については何の物的証拠も残っていないだけに、どうも眉唾っぽくも思えてしまうのだ。
ネアンデルタール人の遺跡からは、例えば岩絵のようなものが一切見つかっていないということから、ゴリラやチンパンジーが絵を書かないし、言葉をしゃべらないのと同じで、ネアンデルタールも言葉をしゃべらなかっただろう〜という説は、今一つ説得力に欠けるように思う。
近縁の人類であるホモサピエンスは喋れた－－－という説も7万年前の彼等の遺跡には岩絵や洞窟壁画が残っているからという根拠が掲げられているが、では絵がかけるとどうして言葉が喋れたといえるのか－－－となると今一つ釈然としない。
ホモサピエンスの脳の重さは体重の2％を占めるに過ぎないが、その脳が消費するエネルギーは体全体の消費量の20％にも達し、これはどの哺乳類の中でも群を抜いて高い比率であり、この高い比率は、ホモサピエンスが言語を使って思考と会話というエネルギーを高消費する機能をフルに使っている為だ－－－といわれるが、これだって、「言語能力があるから脳のエネルギーを使っている」ということを言っているだけであって、「ホモサピエンスは脳で多くのエネルギーを使っているから言葉をしゃべるようになった」という事の証拠ではないと思う。
人間が人間であることは「言語を使う」ことだと言われているが、それでは人間がなぜ言葉を使うようになったのか――の必要十分条件とは一体何なのだろうか。
（7/12/18 10:00pm）
2018年7月12日
コーランに書いてある
厳格なイスラム教国であるサウジアラビアで、女性の自動車運転が解禁されたという。「サウド家のアラビア」という意味の「サウジアラビア」という国名を名乗るこの国だから、いかなる改革も支配者（サウド家）の指示がなければ行われないが、この解禁も、改革派の皇太子が父親である国王の許可を得て行ったものだという。
石油資源で世界トップクラスの金持ち国であるサウジだけに新たな運転免許取得者の女性達が一斉に購入するであろう車は、当然高級車であるから欧米、それに日本などからもこの新規需要を狙っての猛烈な売り込みが始まっているという。
サウジの人口は3200万人程というからこの日本での女性免許保有者割合（65％程度）の1/4が免許を取って新車を購入すれば、400万台の需要が起きることになる訳だ。
これに加えて今までは外国人女性（1000万人いるといわれる）もサウジ国内では車を運転できなかったのでこの女性達もサウジ国内で運転するために、新車購入すると仮定すれば、更に数百万台の需要が生まれる－－－ということになる。
トランプ大統領の輸入車に対する関税引き上げで困っているドイツ車などが、このサウジの新規需要狙いで目の色を変えているというのも当然だ。
商社勤務時代、タカさんもサウジには何回か行ったが、厳格なイスラムということでこの国の不自由さ、異様さ、には日本人のタカさんは、閉口したものだが、その一つが女性が人前で働けない（従って、運転などもってのほか）ということだった。
車の運転手は勿論、ホテルの従業員、事務所のお茶くみといった仕事も、全員、インパキといわれるインドやパキスタンからの出稼ぎ労働者だから、街中、国中がなんとも殺風景だった。
偶に、町のモールなどで女性（らしき）姿を見ることはあっても、これが又、全身をすっぽりアバヤと呼ばれるベールというかフードで覆われた黒い衣服をつけており、目の部分だけが辛うじて出ているという代物で、これは完全にカラス天狗のようなものであって却って薄気味がわるかった。
最近はこのアバヤにも豪華な飾りのついたものとか、デザインが斬新なものもあるようだが、それでもやっぱりギョッとする姿だ。
もっとも、運転免許同様、女性達からこのアバヤの風習を解放せよ！という声は起きないという。その理由は風邪も流行らないのに日本の若い女性が大きなマスクをしているのと同じで、スッピンで出かけられるし、しかもアバヤの下のお洒落に気を使わなくてよい－－というズボラな理由もあるというから――なるほどという気もする。
さまざまに進むサウジでの改革だが、この国に入ったら外国人でさえ一切酒が飲めないという厳格な禁酒の掟だけは、解禁される可能性はゼロだ。
理由は、神の言葉だといわれる「コーランにそう書いてあるから」だ。コーランが書かれた時代にはまだなかった車の運転を女性がしてよいか、どうか、等と違って禁酒は未来永劫、変えてはいけないルールなのだ。
まあ、そんな訳でタカさんも、今更、イスラム圏の国に出かけて行こうという気には―――なれない。
（7/11/18 10:00pm）
2018年7月10日
真の姿
輝きながら昇っていく朝陽、お昼近くに天空で燦燦と輝く太陽、そして真っ赤に燃えるように沈んでいく夕陽、そのどれもが同じ大きさであることは、理屈としては理解できるが、どう見ても朝夕は大きく、日中はそれほどでもないように見える。
満月にしても同じで、夕方上って行く月と、天空にある月とではその大きさは倍ほども、時には倍以上も違って見える。
手に5円玉をもって腕を伸ばして5円玉の穴を覗く満月は、地平線近くにある時も、天空にある時も、その穴の中にピッタリ入ってしまうことから大きさは変わらないことを実感することもできるのだが―――。
太陽を見る時も、月を見る時も人は周囲のもの（水平線や地平線、あるいは回りの山々とか建物といった）との相対的な比較でその対象物の大きさを理解しようとするから、脳が勝手にその大きさを違って理解してしまう－－－すなわち錯覚を起こしてしまうためにこういった勘違いが起こるのだそうだ。
まあ、それはそうだが―――とタカさんは思う。人が大きな夕陽を見て、なんと大きくて美しいな夕陽だ！と思うのを「単に錯視を起こしているだけだ！」と身も蓋もないことをいう方が―――間違いともいえるような気もしないではない。
現代は夜でも人工の光に溢れていて、都会などでは星空は殆ど見えない。しかし、デジタル技術を使えばニューヨークでも東京でも人工の光の影響を全てデジタル処理で消し去って星明りだけの夜空の映像を作ることができるが―――この映像を見た時、これこそが、人工の手の加わらない「自然の夜空」だと感激するけれど、同時に、ふっと「でも、これって本当に自然の姿といえるのだろうか？」とも思った。
そうそう、モスキート音というのがある。これは高周波の音で、若者、特に20歳以下の人々には聞こえるけれど、20歳を過ぎた人々には聞こえない音だそうで、このモスキート音を、深夜に公園で流したところ、公園に夜な夜な集まって悪さをする若者が大幅に減った―――という実験を足立区でやって成果をあげたらしいが――、この場合でも、果たして若者達が聞いているモスキート音が騒がしい深夜の公園の音が「自然」なのか、それとも我々年長者が感じている静寂につつまれた公園の音こそが「自然」なのかは―――どちらとも言えないような気がする。
我々は常に世の中の真の姿とは何かを求めてはいるけれど―――世の中にはこれこそが真の姿等と言える姿などはないのだ－－－という気がしないではない。
（7/09/18 10:00pm）
2018年7月6日
お手伝い
娘夫婦の家に食事に招かれることがあるけれど、料理を作る娘のお手伝いを孫娘がしきりにしたがるのをみて、「ああ、やっぱり女の子は小さい時からちがうなぁ〜」と妙に感心して、おもわず頬が緩んだ。
夕食のお手伝いといってもまだ小学校の4年生だと母親としても娘にやってもらう事といえば、包丁を持たせるなんていうことは（母親の方がビビッて）とてもやらせられず、せいぜい餃子の餡をつめて形を整えるとか、サラダをサラダボウルから皿に取り分けて並べる、といった本当に初歩的なお手伝いなのだが、孫娘は実に喜々としてやっているし－－－それを見ている、招かれたおじいちゃん、おばあちゃんも「まあ！えらいわねぇ〜」「えらいねぇ〜！」を連発するから孫娘も益々張り切ってお手伝いに励む！という訳だ。
この頃の小学生は早い内から、ピアノだ英語だ、お習字だと習い事も多いし、高学年になると受験の為の塾通いなんていうのも忙しくなることもあるから、お手伝いを子供にさせなくなっているらしい。（その間に勉強しなさい！なんていうことになるのだろう）
それだけにタカさんが子供の頃に比べて今時の子供の「お手伝い」というのは極端に少なくなっているように思う。
あんまりお手伝いをするタイプの良い子ではなかったタカさんだが、鹿児島にいた小学生高学年の頃は、毎日のお風呂の掃除、焚きつけなんていうのは、タカさんの「当番」といわれて必ずやっていたから、その頃の経験から、タカさんは今でも「火おこし、「火つけ」は大得意だ。（マッチ一本から薪に火をつけ、風呂を沸かすなんていう芸当ができる人が今日本に何人いるだろうか）
孫娘がそうであるように、「お手伝い」というのは、やってみると意外と楽しいもので、当時のタカさんも母に褒められ、「ありがとう！」「たすかるわ！」といわれることが快感で、冬の最中に外の焚きつけ口で寒風に晒されての風呂焚き等は、辛かったと思うが、今になって思いだすと「楽しかった！」思い出しかない。
それにしても、料理を作るにしても下ごしらえされた材料とか、温めるだけ、並べるだけでよいお惣菜が溢れている現代では、昔ほど料理に手間も時間もかからなくなっているから、勢い、子供がやるお手伝いの量も少なくなっているのではないだろうか。
孫娘が娘の料理を手伝っているところを見ると、あれが結構この二人にとっては「母と娘」の楽しい思い出として一生残る貴重な時間なのではないか〜という気がする。
そういえば、タカさんもよく母の毛糸の巻き取りの手伝いをした思い出があるが、陽だまりの縁側で二本の腕に渡した毛糸を、母が毛糸玉に巻き取るのに合わせて腕を左右にリズミカルに動かすのだが、そういう時に限って鼻の頭がかゆくなって困ったことも、幼い頃の母との思い出として懐かしく思い出す。
最近は、家で手編みのセーターを編むお母さんも皆無で、セーターなどは、皆、既成のものが豊富にあるから手編みなんていうのは、流行らないのだとか－－－。
孫娘が包んだ餃子は、数個に過ぎなかったので、お兄ちゃんとパパに－－とのことでタカさんはごちそうになれなかったのだけれど―――きっとどこの餃子よりも美味かったことだろうと思う。
（7/05/18 10:00pm）
2018年7月4日
暗闇恐怖症
小学校の3年生位の時だったとおもうが、父に石井桃子訳の少年少女向け「トム ソーヤの冒険」を買ってもらいそれまで読みなれたいわゆる「良い子向け」の物語と違う、勉強嫌いで悪戯好きの少年の話に夢中になったものだった。（参照：「トム ソーヤーの冒険」）
その思い出があったものだから後にシカゴに赴任してから、このトム ソーヤの冒険のモデルになった町であるミシシッピー河沿いのミズリー州ハンニバルを訪れて物語の舞台となったあのトムがポリ—伯母さんから罰として命じられたペンキ塗りをやらされた塀とか、町沿いに流れる大河ミシシッピーやそして河に浮かぶ島などを見て回ったが、何と言ってもハイライトだったのはトムが女友達のベッキーと二人で迷い込んだという洞窟へのツアーだった。
迷い込んだら二度と出られないという洞窟へのツアーは、今でもガイドの案内なしでは入れないのだが、確かに一歩踏み入れば迷路のように入り組んでおり、灯りがあっても案内人なしでは入口に戻ることさえ難しいのではないかと思われて、一歩奥に進むごとに恐怖心がました。（勿論、物語の中でこの洞窟の中でトムとベッキーが道に迷いベッキーが泣き出すし、トムも必死に出口を探す－－－という逸話がありそれを覚えていた所為もあるが―――それに、確か悪者の人殺しインジャン・ジョーもこの洞窟から出られなくなって白骨死体で見つかるというエピソードもあったし――）
洞窟ツアー中、ガイドが「それでは、これから真の暗闇を体験してもらいましょう！」と言って自分のもっている案内灯や、洞窟のガイド灯のスイッチを切ったのだが、その間のⅠ－2分の体験は、それ以前にもそれ以降にも全く経験することのなかった性質のものでまさに「真の暗闇」と呼ぶに相応しいものだったことを今でもまざまざと思いだす。
どんな闇夜でもなにがしかの（星明りなり蛍の光なりの）うっすらとした明かりはあるもので、映画館だって非常灯の灯りやら、階段の段差を示す蛍光塗料の光などの薄明かりがあるものだし、日本の鍾乳洞などでは夜光虫やヒカリゴケの光などがあるものだが－－－あの、トム
ソーヤの洞窟の中の暗闇こそ真の暗闇だった。
若い頃、友人のアパートに酔っぱらって泊めてもらったことがあるが、その友人は夜中テレビと明かりをつけっぱなしなので「消してもいいか？」といったら彼は暗闇恐怖症なので消さないで欲しい、といわれタカさんは中々眠れなかったことがあるけれど、彼の暗闇恐怖症があのハンニバルの洞窟に行った時には、何となく理解できたような気がしたしたものだ。
タイの鍾乳洞に迷い込んだ少年達13人が10日ぶりに無事発見されたという。洞窟の大半が水没しており彼等が避難している洞窟内の高台から救助するにはあと幾日か掛かるらしい。
命は助かったのがなによりではあるが、10日間もの間、暗闇に閉じ込められていた恐怖感はいかばかりのものだったろうか、タカさんとしては想像するだけでも身の毛がよだつのだが―――。
日本のJAICの排水専門家も加わった1000人規模の国際編成の救助隊が13人の救助にむかっているということだが―――、一刻も早く彼等が灯りの中でご家族との再会を果たせるようにと切に願うばかりだ。
（7/03/18 10:00pm）
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