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　　日々早々エッセー

バックナンバー集（2012年1-6月分）

2012年の上半期各月バックナンバー：1月、2月、3月、4月、5月、6月、

＜＜2012年：1-6月分 タイトル＞＞  
06/29 脱法と合法 06/27 本当に削減すべきなの？ 06/25 ソーラー発電というギミック 06/22 もてる災難 06/20 右と左 06/15 生で食べる！ 06/08 奪って欲しかった 06/06 まるで別人 06/01 永遠の謎 05/25 イーストトーキョー 05/23 ウップス！とアウチ！ 05/22 見たよ！ 05/18 二股は何故いけない？ 05/10 鰻重一万円 05/08 トルネード 04/27 どこまでが病気か 04/26 パブリック ドメイン 04/20 エゾ鹿はなぜ増えたか 04/13 星の数ほど、芥子粒ほど 04/11 さくらに思うこと 4/06 コナオトシ 04/04 どうすりゃいいんだ！ 04/02 匿名による言論 03/30 六大関 03/23 宗教というカルマ 03/19 リスとネズミ 03/16 絶賛！ピナ・バウシュ 03/12 敬う気持ち 03/09 小さな政府と保守 03/07 霊能者は悪人か 03/05 絶対に安全 03/02 歯医者嫌い 02/29 お誕生日 02/27 自然を見る力 02/24 習熟度別クラス編成 02/17 春は来る 02/14 情人、愛人、恋人 02/10 選択肢がない 01/30 総ざんげが必要だ！ 01/27 決める覚悟 01/20 遊びと戯れ 01/19 船旅、やめておこう 01/17 人いきれ 01/13 値引きセールはお得？ 01/06 松飾り

2012年6月29日

脱法と合法

政治資金規正法の不実記載に問われた小沢さんが記者たちの質問だけではなく裁判でも繰り返しいったのは「何等、法に触れるものではない！」というフレーズだ。

小沢さんが言いたかったのは「法に触れない限り何も非難される筋合いのものではない」ということなのだろう。

かつて、政治資金規正法成立の立役者本人が「天下国家のことで忙しく、政治資金報告書は秘書にまかせっきりであり自分は一切見たこともない」と堂々とのたまったことに驚いたが、収支報告書に不実記載があっても政治家本人を罰する規定がない！というのだから二重に驚いた。小沢さん、法律を作る時にこういう抜け道をちゃんと考えていたということなのだろうか。

しかし、いくら小沢さんが「何等法に触れない！」と言ってはみても、世間は中々そうとってはくれない。「政治家としての倫理はどうなるのだ！」とか、「法に触れなければ何をやってもいいのか！」といった非難の声は高いからこそ、噂される小沢新党への支持率もわずか10％に過ぎないのかもしれない。（反増税、反原発をスローガンに掲げるそうだからもう少し人気があってもよさそうなものなのに）

世の中には法には触れないかもしれないが許せない行為というものはたくさんある。

不倫をしたからといって姦通罪という規定がない以上これを罰することはできない。不法ではない、すなわちとりようによっては「不倫は合法」なのだから、「何等法に触れるものではない！」と居直ってもよさそうなものだけれど、まあ、一般的には「道徳的に許せない！」とか、「奥さんや子供のことをどう考えているんでしょう！」「人間の皮を着たケダモノよ！（まあそこまではいわれないかもしれないが）」と法律違反で警察につかまる以上に大変なことになるかもしれない。

法に触れなければ全て合法という訳にもいかない。「不法行為」というものがある。借金を返さないことは、不法行為だが刑罰が与えられる訳ではない（詐欺罪が適用されたら別だが）。

最近、話題の脱法ハーブの「脱法」というのはどうだろう。「違法」薬物を取り扱えばそれは不法であり当然罰せられる。しかし、法で「吸引を禁じられている」薬物成分を含むハーブを「お香」とか「アロマ」だといって売っている場合はどうだろう。

客がこれらのハーブを吸引することを知っていたとしてもあくまでもしらばくれて「まさか吸うとは考えもしなかった」という販売店主を、逮捕する訳にもいかない。無理やり逮捕しても裁判では相当、もめるかもしれない。

極論すれば、法で禁じていない以上、それは「何等法に触れるものではない！」と言い張ることはできる。この論法からいけば、「脱法」という言葉自身がおかしいということにもなる―――。

そういえば、テレビで見た脱法ハーブ屋のニイチャンと小沢さんの顔付きがなんとなく似ていたような気もしてきたが―――。

（6/28/12 9:00pm S.T.）

2012年6月27日

本当に削減すべきなの？

一昨年、ペルーを訪れたがこの時の一行は総勢14人ほどだったが、クスコについた初日、夕食に出てきたのはタカさんを入れて、わずかに4人だけ、残りの人たちは皆、軽い高山病の為なのだろうか部屋でダウンという状態だった。

14人中10人のダウン率というのは高すぎる、とガイドが言っていたが、低地にくらべてクスコの酸素量は2/3以下だというのだからおじさんおばさんばかりのツアーにとっては過酷だったということなのだろう。（翌日には皆回復して、マチュピチュなどの観光にでかけたが）

あの時、人間にとって酸素がいかに大事かということを実感した。大気中の酸素濃度は約21％だが、これが18％になると人は息苦しさを感じはじめ、12％を下回ると立っていられなくなり、6％以下になれば死に至るといわれている。

人類のみならずほとんどの地球上の生命にとって必要不可欠な酸素だが、大気中にある単体の酸素（酸素ガス）は、すべて植物が光合成によって作ったものだ。

植物は太陽光を利用し二酸化炭素と水を原料にして酸素と炭水化物を合成する「光合成」を行なっている。(参照：「酸素のはなし」)

我々は植物が作った酸素を呼吸し、同じく植物が光合成で作った炭水化物からエネルギーを得ている。地上に植物がなければ我々は生きていけないのだ。

我々にとって欠く事のできない植物の光合成だが、その原料は先にも述べた通り太陽光と水と二酸化炭素である。このいずれが欠けても光合成は行なわれず、そうなると地上の大半の生命は絶滅だ。

太陽光と水はまだ数十億年は地球上に存在するといわれているが、ちょっと心配なのは二酸化炭素である。

原始地球の大気はほとんどが二酸化炭素だったとも言われているが、その後、海の水に大量の二酸化炭素が溶け込み、又、シアノバクテリアが作った二酸化炭素を原料として光合成によって発生した酸素が鉄と結合する（酸化鉄ができる）ことなどによって徐々に減少、現在大気中に漂う二酸化炭素はわずか0.035％でしかない。（酸素の21％に比べていかに少ないか分かろうというものだ）

恐竜が繁栄していた今から1億年前でも二酸化炭素濃度は0.2％と現在の5倍以上あったといわれている。豊富にある二酸化炭素を使って植物は盛んに光合成を行なっていたから植物は巨大であったし、その植物を食べる草食恐竜も、その草食恐竜を食べる肉食恐竜も巨大だったのだ。（食べ物が豊富ならば、大きく育つのは現代のメタボと同じ理屈だ）史上最大の恐竜の体重は70トンあったともいわれる。現在、世界最大の地上生物である象の10倍にもなるのだから二酸化炭素豊富な時代、いかに地球は豊かだったかということだ。

先日、NHKの科学番組を見ていたら、ノーベル賞受賞者の根岸英一博士が「温暖化を防ぐために二酸化炭素を減らすのは馬鹿」と言っておられた。博士によれば、現在植物は太古の時代にくらべて薄い二酸化炭素の所為で光合成能力が落ちているが、二酸化炭素をもっと与えてやれば、実りも豊かになる―――人類の食料問題の解決にもなる−−−とのこと。

そうだとすると、大金をかけて「二酸化炭素削減！」をやっている現代の地球温暖化防止運動は、「馬鹿」ということになってしまうが−−−。

同じ日、日経に近年の太陽活動の低下、太陽極の四極化などによって地球寒冷化のおそれが出てきているという記事が大きく出ていた。｢温暖化している｣という記事はおおげさにとりあげる一方、「寒冷化するのでは」という記事（記録的な寒波だとか、冷夏といった）は殊更ネグレクトする新聞にしては珍しいことだと思ったが（案の定、他の新聞やNHKは完全スルーだが）、本当に寒冷化が危ぶまれるならば、「二酸化炭素削減」運動はそろそろ見直しした方がよいのではないだろうか。

（6/26/12 9:00pm S.T.）

2012年6月25日

ソーラー発電というギミック

原発停止、化石燃料費上昇等もあって電力料金の値上げは避けられない情勢だし、将来に亘って値上げは続きそうだ。

そんな中「ソーラー発電によって電力出費を抑えることができる」という美味しい話が喧伝されている。ソーラーパネルを設置し、自家発電をすればその分、電力会社に対する支払い額を少なくすることができるし、余った電力を売電すれば｢発電収入｣を得ることもできる―――と、まさに一石二鳥だと宣伝されている。

しかも経済的に「お得」というだけではなく、ソーラーという二酸化炭素を排出しないエネルギーを利用することによって地球温暖化防止にも役立つ―――というのだから、「自分も、人類にとって、いや地球にとってよいことをしているのだ」という清々しい気分になれるのだからこんなよいことはない、という訳だ。

震災後（震災前もそうだったが）の日本をめちゃくちゃにした前首相が昨年のG8サミットで「日本は1000万戸にソーラー発電装置を設置する」と突然ぶち上げ、時の経産大臣をはじめ各大臣、産業界が「聞いてないよぉ〜」とびっくり仰天したこともあったが、あの時、経済界（ソーラーパネル産業界を除いて）から「本当にソーラーはお得でしかも二酸化炭素削減に役立つのか？」という疑問符が投げかけられたことを思い出す。

その後菅さんも退陣させられ、あのソーラー1000万戸発言も、その具体化キャンペーン話も雲散霧消してしまったが、「ソーラー発電って本当に必要？」については、まともな検証のないまま、今もなんとなく「改築、新築するならソーラーを付けるか！」といった善意の市民が多くいる。

それに乗じて「儲かって、儲かってしょうがない」ソーラーパネル業界は、「お得でエコ！」の宣伝に余念がない。

しかし、本欄で以前にも書いたけれど、ソーラー装置の取り付け費用を、自家発電による電力費削減と売電による収入で「元取り」するまでの年数は、以前より短くなっているとはいうものの未だに15-20年程度はかかるということを忘れてはならない。

ソーラーパネルメーカーの「耐用期待年数」そのものが20年程度でしかないことを考えると(一般にメーカーの「期待」は実勢よりも多目であるのが普通だ）、耐用年数が来るまでに「元取りの費用回収」ができる可能性は少ないと考えるべきだろう。しかも、太陽光発電は設置後、急激に発電効率が落ちることもよく知られており「20年間、毎月一定量の発電量が得られる」というのも絵空事なら、故障などの度にかかるメインテナンス費用もバカにならない。「パネルを設置すれば長い目で見ればお得」というメーカーの宣伝を鵜呑みにするのは早計だ。

それでも、「多少、損をしたとしても、一酸化炭素削減になり地球環境によいことをしているのだから」とエコマインドに溢れた人たちは、利他的な清々しい気持ちになれるのだからいいじゃないか、というかもしれない。

しかし、ここにもギミック（からくり）がある。ソーラーパネルの生産、輸送、据付の過程で排出される二酸化炭素の量は、ソーラー発電によって削減される二酸化炭素の量より多いことが計算上、分かっている。

要するに、ソーラー発電はソーラーパネルメーカーやソーラー発電計画をぶち上げ(儲けるつもりの）孫さん、あるいはエコ派を任じる政治家や市民運動化を儲けさせるものの、装置をつけた人たちには損を、そして地球環境には余計な負荷をかけるというなんとも壮大なギミックだということのようだ。

火力発電や原発がよいといいたい訳ではないが、熱病のような自然エネルギー賛歌にうなされるのも考え物だということだ。

地球環境によかれと思えば人類がいなくなることが一番だというつもりはないけれど。

（6/24/12 9:00pm S.T.）

2012年6月22日

もてる災難

巨人軍原監督が女性問題で二人の男に脅され1億円を支払ったと「週刊文春」が報じた。

「お前が女に手を出したことをバラすぞ！」と脅され、これが世間に明るみに出てはまずいとその脅迫に屈し1億円払った−−−という事実を見る限り、原監督がこれほどの有名人でなかったならば、彼は「被害者」といってよく、「可哀想にねぇ〜」とか「よくそんな金があったねぇ〜」あるいは「奥さんにはバレたのかしら？」といった反応、最悪でも「バカだねぇ〜」で済んだとは思うが−−−。

それが、相手が元暴力団員だったということになると（巨人軍は否定しているが、週刊誌によれば小指がない人だというからちょっと説得力が弱い）、「反社会的人物への利益供与」になってしまい「暴対法」の禁じている「犯罪行為」の加害者ということにもなりかねない。

そんな疑惑が出てきたとなるといかになんでも、「良い子のあこがれ巨人軍」の監督に座り続けるのは適切ではないようにも思える。

読売巨人軍はこの事実を2006年には把握していたにもかかわらず、幹部が鳩首の上「黙っておこうな！」と決め、今の今まで闇に隠していたというのも、社会の公器である大新聞社の子会社としてはいかにもまずかった。

特に問題なのは、本来、中立であるべきマスメディアの読売新聞が、「この事実を週刊誌にバラしたのは元巨人軍代表だった清武だ！」と証拠もないのに一方的な報道を行なったことだ。今、問題なのは「原監督が暴力団に1億円払ったのか」「巨人軍はその事実を闇に葬ろうとしたのか」であって「誰が、この秘密をバラしたか」ではない。

大読売とあろうものが、ナベツネの「清武憎し！」の意向を忖度したのかこんな「赤旗」や「聖教新聞」並の身内贔屓報道をするというのも何とも情けない。

読売は原監督を脅した二人は「元暴力団員」ではない！というけれど、早速朝日新聞その内の一人から「自分は元暴力団員」という確認をとっているというから読売・巨人軍の旗色は悪い。

よしや現暴力団員ではないにせよ、女性問題をネタに相手の男性を脅し、1億円をゆすり取った人物を「反社会的人物」ではなく「一般人」であると言い張るのはもいかにも苦しい。

研修生との不適切な関係がバレながらも大統領職に留まり、「ヒラリーには叱られたが、二人の絆は強まった！」と言ったクリントンの例にあやかろうとしたのだろうか、原監督も「妻とは、二人の夢に向かって一歩ずつ前進しています」と記者会見で語り、監督の椅子にも留まるとのこと。でも本当にこのまま巨人の監督でいいのかなぁ〜。

タイガーもそうだったけれど、有名人で高額を稼ぐスポーツ選手は、よほどもてるのだろうし、又、彼等の女性関係をネタにゆすりをかけようという男や女もうじゃうじゃいるということなのだろう。

そう考えると、愛人と隠し子がいたにもかかわらず（あるいは、放射能が怖くて逃げたにもかかわらず）騒がれもせず、政界で相変わらず大物風を吹かせる小沢さん、その辺の危機管理のノウハウをスポーツ選手に教えてあげたらどうだろう。

（6/21/12 9:00pm S.T.）

2012年6月20日

右と左

30メートル先にある旗棹を回ってくる徒競争に出た場合、あなたは旗竿を右回りで回るだろうか、それとも左回りで回るだろうか。

統計によると、手足は右利きという人は多く、回り方は左回りが多いのだとか。タカさんは、手は右利き、足も利き足は右だが、左回りは不得意で、どうしてもこういう場合、旗竿を右回り（時計回り）したくなる（してしまう）。

陸上のトラック競技などは全て左回りだし、先日、孫の運動会を見に行ったら父親参加のこの主の競技（ボールをドリブルしながら旗竿を回ってくるといった）を見ていたらほとんどのお父さんは、旗座を左回り（反時計回り）していた。ということは左回りが割と苦手なタカさんはかなりの少数派に属するということになるのだろうか？60数年生きてきてはじめて感じた疑問だ。

色々とネットなどを調べてみると「心臓が左側にあるのでそれを保護する為に手は右利きが多い」だとか、「右脳人間、左脳人間の違いによって右利きと、左利きに分かれる」といった俗説はあるものの、しっかりとした科学的論拠があるわけでもないようで、確かに統計的には、タカさんのような例は珍しいにせよ「そんなの変だ！」といわれる筋のものではないらしい。（手、足、目、右回り、左回りも左右バラバラという人もいるようだ）

太古の時代に描かれた岩絵などを見ると太古の人類は狩猟などの際には右手で槍をもっているというし、チンパンジーなどでも右利きが多いという統計もあるらしいが、さて利き足、あるいは右回り、左回り、どちらがより本能的なものなのかとなると、そこまでは記録したものがないからよく分からないというのが本当のところらしい。

そういえば、中山競馬場は右回り、府中競馬場は左回りだが、タカさんの生涯馬券成績は圧倒的に中山の方がよい。（なみにアメリカの競馬場はほとんどが左回り、イギリスは右回りが多かった。それもあってイギリスでの馬券成績の方が、アメリカよりも良かったような気がする。タカさんのギャンブル運は右利きであることは間違いないようだ。

時計の針は皆右回りだ（時計回りという位だから）。これは北半球では日時計の影が右回りに動くことから来ているのだとか。（勿論、南半球の日時計は、反時計回りに動く）

台風が接近している。そういえば、（北半球では）台風の風や雲は左回り、南半球では時計回りだ。

右回り、左回り、ちょっと思いついただけでも、これだけ色々あるのだから、やっぱり自然界には右と左についての何か深遠な原理があるような気がしないではないが−−−。

（6/19/12 9:00pm S.T.）

2012年6月15日

生で食べる！

明治の初め、フランス人に「魚を生で食べるなんて日本はなんて野蛮なのだ！」と言われて、フランス留学経験のある西園寺公望が「貴公等も牡蠣を生で食べるではないか」と言い返し、フランス人は黙ってしまったという話がある。

牡蠣はともかく海産物を生で食べる民族は世界的に見ても珍しいようだ。あの「何でも食べる」といわれる中国人でさえ、上海料理には中華油をかけて食べる「刺身」があるけれど、その他には生魚を食べる料理はないというし、この上海風の刺身にしても、日本の刺身を参考にして始まったものであって歴史はそんなに古くないとも聞く。

最近は、世界的な日本食ブーム、すしブームで海外でも、魚の生食は、それほど奇異の目でみられなくなったけれど、それでも、アメリカの中西部辺りにいけば、今でも「日本人は生で魚を食うらしい！」と気持ち悪がられるに違いない。

魚は生で食べる日本人だが生肉を食べるという習慣は全く無かった。（馬刺しは、朝鮮出兵から敗走する加藤清正が食料に困りやむなく愛馬を生で食べたのが起源であり、あくまでも非常食であったとか）

そもそも明治まで、1000年近くに亘って肉食が禁忌（タブー）だったのだから（タカさんの父方の祖母は、100歳近くで亡くなるまで肉や乳製品をナマグサモノ、といってたべなかったし、数十年前まではそんな年寄りも多かった）ちょっと前までの日本人なら「肉をナマで食う！」なんて想像するだけでも身震いしたことだろう。

厚労省の審議会が7月1日から牛の生レバーの提供を禁じる決定を下した。食品衛生検査所で全国173頭の牛のレバーを検査したところその内2頭のレバーから腸管出血性大腸菌（O-157）が検出されたという。現状、これらの菌を有効に除去する手段がないことから、一律に「生レバー禁止」を打ち出したという訳だ。

グランドキャニオンの断崖には「これから先は危険」という注意書きがあるだけという「自己責任」の国アメリカに比べて、いたるところに柵を巡らして、お上が過剰に「安全を守る」日本との違いが又、この「生レバー禁止」にも現れたようだ。

「一方的な規制には反対だ。現状でもすべてが汚染されているわけではない。一定のリスクがあるだけで問答無用に規制するのは理解できない」とか「ある程度のリスクがあることを了解してそれでも食べたいという人がいるのに国がこれを禁じるのは自由の侵害ではないか」という声もあるけれど、なあ〜に、又、生レバーで食中毒事件が起こればまたぞろ「国は何をやっているんだ〜」と国の責任を追求する輩がでるだろうから、厚労省が先手を打ちたくなるのも当然かもしれない。（規制が増えれば厚労省の許認可権限が増えるし、食品検査院やら何やらの天下り組織も作れるのだから、厚労省にとっては一石で二鳥も三鳥もという「オイシーイ」規制という意味もある）

タカさんが生まれてはじめて「韓国焼肉」を食べたのは20歳を過ぎてからだった。あの当時は、すき焼きの肉と違って余り美的とはいえないカルビとかいう生肉だとか、ミノという名の内臓が皿に盛られて出てきただけで、結構怖気づいたものだった。それから何百回と韓国焼肉を食べてはいるが、いまだに生来の臆病風もあって生レバーは食べたことがない。（ちなみに「馬刺し」も未経験）食べない内に禁止されてしまう生レバー、禁止まであと数日、今生の思い出に食べてみるべきだろうか。

そうそう、蛇足ながら玉子を生で食べるのは世界広しといえども日本人だけだということを御存知だろうか。中国人は、「生玉子を食べるのはヘビと日本人だけ」といって日本人をバカにするのだとか。玉子かけご飯なんてあんなに美味しいのにねぇ〜。

（6/14/12 9:00pm S.T.）

2012年6月8日

奪って欲しかった

女王在位60周年にわく英国だが、「紳士の国」といわれる一方では昔から「海賊の国」「泥棒の国」などとも言われ海軍力を使って世界各国から金銀財宝を集め、日の沈むことのない大帝国を築いたことは有名だ。

大英帝国の残光は、今も世界各地に残っていることを思えば、一瞬たりとはいえアメリカの不動産を買占め、ハリウッドの映画会社を買収するなど絶頂期にあった日本だが、あれからわずか4半世紀でその痕跡をほとんど失ってしまい、今や「過去の栄光」などうたかたの夢に帰してしまったその浅薄さにはがっかりさせられる。

英国がいかに凄い帝国であったかの一例は、大英博物館に行ってみると目の当たりにすることができる。

わざわざギリシャを訪ねてあのパルテノン神殿に行っても見ることのできない神殿の外壁を飾るエルギンマーブルといわれるすばらしい彫刻も、ナポレオン軍がナイル河口にあるロゼッタで発掘しヒエログリフ解読の手がかりとなったかの有名なロゼッタストーンも、皆大英博物館に誇らしげに飾ってある。

エルギンマーブルは18世紀にイギリスのエルギン卿がパルテノン神殿から剥ぎ取って英国に持っていってしまったものだし、ロゼッタストーンは英国がナポレオン軍に勝って取り上げたものだ。

それぞれに、もともとの持主であるギリシャ、エジプトが「盗まれた我が国の貴重な文化遺産だから返せ！」ともうかれこれ1世紀に亘って叫び続けているけれど、英国は頑としてこれを拒んでいる。

「これらは人類共有の文化遺産であり、故国で保存するより、英国博物館で保存していた方が安全だ」という屁理屈を堂々と通してしまうところなぞ、さすがに未だに世界一の帝国の面影は色濃く残っている。(ロンドンにあるオベリスクは、銀の置時計と「交換」したことになっているが、その銀時計、交換の翌月に止まってしまったというとんでもないバッタ物だった。今、カイロの王宮跡の博物館に飾ってある)

里帰りした日本の浮世絵展を見にいったが、アメリカの富豪、あるいはメトロポリタンやボストン美術館が保有する浮世絵の見事なこと。息を呑む美しさだが、これらの貴重な文化遺産が日本にはない−−−という事実に唖然とした。

しかもエルギンマーブルやロゼッタストーンと違って日本の浮世絵や仏像といった文化遺産は、日本人が自らの意思で手放したものだ。

余りに見慣れた、あるいはありふれていた物だったからその真の価値が分からなかった、あるいはわずかな金に目がくらんだ、といった理由で手放したのだろうが―――最近、あちこちで文化遺産の返還問題が喧しいが、対価を得て手放したこういった美術品は返還を請求することなどできない。

どうせなら、浮世絵も奪って欲しかった−−−とすら思う。

アニメにしてもそうだが、日本人はこういった美術工芸の才能には恵まれているが、それを鑑賞、評価し、その貴重な遺産を保持する能力には欠けているということなのだろうか。

（6/07/12 9:00pm S.T.）

2012年6月6日

まるで別人

男は定年近くになり、女は子育ても一段落したし−−−と言った具合に時間に余裕ができてきた所為か、還暦を過ぎた頃から高校や大学等の同窓会、同期会が俄かに多くなってきた。

先日も高校の同期会の催しがあり出席したのだが、中には卒業以来会うこともなかった同期生もいて、「一体、あいつ、誰だっけ？」と随分と戸惑った。

男子のクラスメートの場合、高校の3年間、年中顔を突き合わせていたとはいえ、当時は細身の紅顔の美少年も、（お互い）年齢を重ね（すっかり老け）、頭髪は薄くあるいは白くなり、なによりも体型がでっぷりとしてきているのだから「誰だっけ？」と迷うのも当然だ。

男性でこうなのだから、（こういうと怒られそうな気がするが）女子クラスメートの変わり振りに驚いたのなんのといって−−−。

淡い恋心を抱いていたマドンナは、たしかに上品な老婦人（？）になってはいたが、あの頃の輝くようでいてしかも清楚な少女の面影は当然ない。それに、やっぱり体型の変化や目じりやクビ筋のしわ、ほうれい線は、覆い隠しようがない。「まるで別人じゃないか！」「ああ、青春の我がマドンナの思い出はあのまま綺麗に残しておきたかった！」と40数年振りの再会を一瞬悔いる気持ちもないではなかった。

オーム真理教事件で指名手配中だった菊池直子容疑者が、17年間の潜伏の後逮捕された。あの見慣れた指名手配写真の彼女と、逮捕直後に撮られた彼女の写真を見比べてみて「まるで別人じゃないか！」と思った人は多かったと思う。

高校三年間、のべつ見ていた同級生の顔でも、何年も見なければ「まるで別人」と思うのだから、指名手配写真を数回チラ見した程度の大谷容疑者の17年間の変わり様に気がつかなかったという近隣住民の驚きも当然かもしれない。

ただ、我々には「まるで別人」とも思える彼女を見て「大谷容疑者に似た人物がいる」と警察に通報した人がいたというのだから、こちらも驚きだ。（一瞬見ただけの人の顔をすらすらと似顔絵に書いてしまうといった特殊能力を持つ人もいるのだから、それほど奇跡的なことではないのかもしれないが）

「まるで別人」の大谷容疑者を「手配写真に似ている！」と気付いた素人がいる一方、今回も昨年8月に「大谷容疑者に似た人物がいる」という一般からの情報がよせられたにも係わらず、この情報を握りつぶしてしまったという神奈川警察の怠慢振りにはあきれる。そういえば、昨年末のオームの平田信容疑者の場合も、本人が警視庁に出頭し「僕、オームの平田です」と言ったにも係わらず「最寄りの署の方へ行ってくれ！」と門前払いをした警官がいたというから、少なくとも首都圏の警察の「指名手配者認知能力」は素人であるタカさんといいとこ勝負のようだ。

大谷容疑者の自供によれば、オーム事件で指名手配中の残る一人高橋克也容疑者は、6年程前まで大谷容疑者と川崎市のマンションで一緒に暮らしていたというし、大谷容疑者がこのマンションを出てからも昨年末まで同じマンションで暮らしており、近隣のステレオが煩いなどとご近所トラブルを起こしていたという。

それが事実なら、川崎の警察は一体何をしていたのか−−−ということにもなるが。多分、神奈川県警の言い訳は「まるで別人だった」ということになるのだとは思うが。

（6/05/12 9:00pm S.T.）

2012年6月1日

永遠の謎

麗子は、亡くなる直前にパスポートの更新申請をしており、遺品の中に引換証があった。

申請後、1週間で新しいパスポートが発券されることになっていたこともあって問い合わせてみたが、規定では本人が死亡した場合、発給済みパスポートなら返納、未発給の物は廃棄処分となるとの答えだった。

父親としては、生前、あの娘が手に入れたいと思っていた物が既に用意もできているとなれば、せめて仏前に供えることができないものなのだろうかと思わないではなかったのだが―――。

あの年に起きたある事件で亡くなった8歳の少女が死の直前にハワイへの家族旅行の為に申請したパスポートが特例としてVOIDの刻印を押して発給されたという話が新聞に載ったことも、麗子のパスポートも特例申請してみるべきだっただろうかとあれ以来、ちょっと心残りとなっている。

麗子は、3歳の時から高校卒業までサンフランシスコ、シカゴ、ロスアンゼルスで暮らした経験を持っていたし、大学に入ってからも父親の赴任先であった英国をはじめとする欧州に旅行するなど、海外旅行好きだった。

又、亡くなる直前に海外出張の予定があるというような話もしていたし母親とは旅行の計画など話していたようだったから、きっとあのパスポート更新も、なにか具体的な旅行の計画があったから行ったものだったのかもしれない。

年頃の娘が、海外旅行の計画を父親に語ってくれたとは思わないし、父親としてもとてもそんな質問をする勇気もない。ただ、父親としては幾つになっても可愛い娘の行動が気になっていたし、知っておきたいという思いは抑えがたいものだった−−−。

麗子が次ぎはどこの国に旅しようと思っていたのか、どんな男性と結婚したいと思っていたのか、どんなお母さんになりたいと思っていたのか、11年前のあの日以来、父親にとっては永遠の謎のままになってしまった−−。

（5/31/12 9:00pm S.T.）

2012年5月25日

イーストトーキョー

50年ほど前、京都タワー建設時、「古都京都の景観にタワーは相応しくない」という反対論が巻き起こったが、あっという間に建設されてしまった。このまま野放図な建設が続いたのでは大変と、京都市ではあわてて「京都市景観条例」を制定、京都タワー以降、京都での高層建築は厳しく規制されるようになった。

50年前のこのタワー建設論争を知らない人にとっては、タワーはすでに京都の景観に溶け込んでいて違和感がないのかもしれないが、当時、古都の雰囲気が好きなタカさんにとっては、いまだに、東寺の塔よりも高く（京都では、昔から東寺の塔より高い建物を建ててはいけないという不文律があった）、しかも古都の色にマッチしない（白いローソクをイメージしたのだとか）あの塔には違和感というか不快感を持ってしまう。

1889年にエッフェル塔が建設された当時には、モーパッサンなどの文化人を中心にして「パリに鉄塔とは――パリの名誉を汚すものだ！」という反対論が起きた話も有名だが、建設から120年、今や「大昔の古きよきパリ」を知る人もなくエッフェル塔といえば、むしろ「古きよきパリ」を象徴する建物だといわれるようになっている。

以前、本欄でも書いたがタカさんは東京タワーにまだ一度も上ったことがない。「おのぼりさんではあるまいし、何時だって上ろうと思えば上れる」と思ってきたからという理由もあるが（長く東京に住んでいるのに、「まだ一度も上ったことがない」となんだかちょっと誇らしげに吹聴する友人も結構いる）、あの「エッフェル塔のパクリ」だとも言われる塔の景観に違和感を持ち続けてきたという理由もあるようにも思う。

近年、スカイツリーブームに伴って、あるいは「三丁目の夕日」などで「懐かしい昭和30年代」を語る道具として東京タワーが「歴史の証人」として再注目を浴びているけれど、タカさんは今一つ乗れないでいる。

先日、国技館で相撲を見た後、開業前のスカイツリーまで歩いてみた。30分ほどの距離だったが、昔ながらの（どちらかというと静かな）下町といわれる地域を歩いている内にスカイツリーに近づくにつれて人ごみが増え、改装を終えた商店が立ち並ぶ通りもにぎやかになっていく様に、このスカイツリーが下町に与えるであろうインパクトの大きさ（巨大さ）が実感された。

近くに行って見上げるスカイツリーは高すぎて逆に全容が見えない。この建物が平屋と精々二階立ての家々が並んでいた下町の景観、そしてその雰囲気や情緒にどれだけのインパクトを与えるのかと思った時、古い人間だからかもしれないが、スカイツリーの出現を手放しに喜んでよいものだろうか−−と思った。

嘗て、「業平橋」と言っていた駅の名前は、いつの間にか「とうきょうスカイツリー」に変わっていた。その駅を通る私鉄線はかつて東武伊勢崎線だったのだが、これまた「東武スカイツリーライン」になっていた。スカイツリーですっかり近代化した街並はもはや下町ではなく、台東区をもじったのか最近は「イーストトーキョー」というのだとか。

スカイツリーに持つ違和感は、タカさんだけのものだろうか。

（5/24/12 9:00pm S.T.）

2012年5月24日

ウップス！とアウチ！

大相撲夏場所で平幕優勝を果たした旭天鵬は、モンゴルから来日して20年、既に日本に帰化しているということもあって夢は日本語で見るという。

夢をその国の言葉で見るようになればその国に馴染んだということになるというが、旭天鵬は今や正真正銘の日本人ということなのだろう。（インタビューでの受答えなどを聞いていると、なまじな日本人のお手本になるとさえ思った）

アメリカとイギリスという英語圏で10年以上暮らした割にはタカさんの英語はたいしたことはないのだが、それでもかの地で暮らしていて「ああ、大分英語に慣れてきなぁ〜」と思えたことはあった。

それは、何かに躓きそうになった時などに、とっさにOops！（ウップス！）と言ってしまったり、手を何かにぶつけた瞬間、Ouch！（アウチ！）と叫んでしまった時だ。決して意図的に英語を使った訳ではなく、反射的に口をついてしまうのだ。（もっとも、帰国してからも暫くはこの条件反射が直らず、思わずアウチ！と叫んで、「ちょっと英語ができると思ってワザとらしい！」とばかり顰蹙の目でみられることがあったのは困りものであったが）

その他にも自分では意識しないのに、（今でも）思わず口をついてでる単語が幾つかある。

運転免許をアメリカで取ったこともあって最初に覚えた車関係の言葉には英語が多い。アクセルはGAS、ガソリンもGAS、洗車はCARWASHを使ってしまう。（先日もSSで「カーウォッシュをお願いします」といったら店員さんに「はぁ〜？」と聞き返された。）

そうそう、ドラマなどでは結構当たり前に使われているRESERVATION（予約）もよく使うが、当然、今の若い人たちも使っているとばかり思っていたが、先日、某一流（？）ホテルの予約をしようと思って電話を入れ「RESERVATIONお願いします」といったら「御予約ですね」と言いなおされた。

そうそう、我家では練り歯磨きのことは未だにアメリカで使っていたPASTE（ペースト）と言っているが、我ながらその理由はわからない。

「日本語を大事にしよう」とか「訳のわからない横文字を使うのは止めよう」といったキャンペーンが時折、文科省や国語学者などから仕掛けられるけれど中々直らないどころか、ますます横文字が氾濫するようになってきている。

かつては「ケイタイ電話」もしくは「ケイタイ」と一応は日本語由来の言葉だったものが最近はスマホ（スマートフォン）というカタカナ語（少なくとも日本語オリジンではない言葉）になってしまったし、タカさんのようにケイタイを持たない人間は論外としても、スマホ（横文字）ではなく未だにケイタイ（日本語）を使っている人は「遅れてる〜」といわれるようになってきてしまっている。

最近、気になっているのは、ロック歌手でも演歌歌手でも、あるいは作家や役者でも皆自分達のことをArtist（アーティスト）と呼んでいることだ。

Artistの本来の意味は「芸術家」であり、中でも画家とか彫刻家のことを指すことが多いと辞書にあることを考えるとそれこそ自称Artistというのは「キザ」過ぎるように思えなくもない。

まあ、大なり小なり自己顕示欲がある（キザな）人でなければ芸術には向かないというからそれでいいのかもしれないが。

（5/23/12 9:00pm S.T.）

2012年5月22日

見たよ！

朝早くからやきもきしながら見上げる空にはどんよりと雲がたちこめ朝日を隠している。

次に東京で見られるのは300年後だという金環日食を観察する千載一遇のチャンスなのに−−−とやきもきしながら日食メガネを手に空を眺め続けたが−−−、その内、時折雲の切れ間から日の光が射すようになって来て、瞬間、部分的に欠けている太陽が見えるようになって来た時には心底ほっとしたものだ。

金環食が開始するといわれた時間には、予告通り（不思議なほど正確に）、月が太陽の中にすっぽりと納まり見事な黄金のリングが見えた！日食の為なのだろう、周囲の外気がひんやりとしてきたように感じられたのは、実際に日食を体験したからこその感覚だ！

余りに身近な存在であったがために太陽も月も「天体」の一つであるなどと思ったことはなかったが、日食メガネ越しにみた月と太陽は、天空を軌道にそって運動する「天体」であることを実感した。

夜、満月に輝く月、あるいは真っ赤な夕日として見た太陽に比べて天空で交差する月と太陽が思ったよりははるかに小さいと感じたのも驚きだった。

それにしても、気象学者は明日の天気でさえ予想を外すというのに、天文学者はなぜこんなに稀な現象である日食の起きる時間を正確に秒単位で予告できるのだろう−−−等々、時々雲に隠れながらも続くこの天体ショーを堪能しながらあれこれ考えた。

前回日本列島のこれだけ広範囲で金環日食が見られたのは平清盛が生まれる3年前だった等という話を聞けば、今日、金環食を観察できたことが、大変な幸運であったようにも思えてくる。何か近々、良い事でもありそうにすら思えて何だかうきうきした気分になってくる。

小学校5年の時、鹿児島の小学校で日食観察をしたことを思い出す。あの時も、金環日食（当時は、金環食と言っていたように思うが）が見られるといったことが新聞に出ていたが、残念ながら金環日食が見られた北限は種子島辺りまでであったため、鹿児島では完全な金環にはならず観察したのは部分日食だった。その時に、新聞などで（当時はまだテレビなどなかったような気がするが）「次に金環食が見られるのは今から54年後の、2012年5月」などと報じられていたことを今日、うっすらと思い出した。

小学5年生のタカさんにとって「54年後」という言葉がどんな想像をかきたてたのか全く記憶にはないが−−−。

次は300年後だそうだ。勿論、自分が見られる訳ではないけれど、300年後、我々の恐らく10代位先の子孫たちが日食メガネをかけて空を見上げている姿を思うと、何だかますます楽しくなってくる。

（5/21/12 9:00pm S.T.）

2012年5月18日

二股は何故いけない？

さすがに少し下火になったけれど某俳優による二股騒動は一時ワイドショーを沸騰させていた。

超美形(?) の一流モデルと、有名（？）料理評論家兼レストランオーナーの二人に同時にプロポーズしていたのが、たいして売れていそうもないチンケな役者であったこと、「二股！」と迫る報道陣を前に (居直った方がよかったかもしれないのに）みっともなく涙を見せるダメ男、という絵柄は、日頃芸能ネタには全く興味のないタカさんにとっても中々面白かった。

ところでこのゴシップ、そういった男女関係についてとんと晩生である(?) タカさんにとって色々分からないことだらけでもあった。

男が芸能人だったから「二股」といわれているのかもしれないが、この手の話、一般人の場合なら二股というよりは、「結婚詐欺」と言われてしまいそうに思が、二股と結婚詐欺の違いはどこら辺りにあるのだろうか。

同時に二人に「結婚して欲しい」とプロポーズしてしまったのは確かにやり過ぎかもしれないが、同時進行で二人もしくはそれ以上の女性と交際している男なら数多くいると思うが、この場合はなにも報道陣の前で泣く必要もなかったようにもおもうが−−−。この辺りの「笑ってすませる」か「泣いてみなければおさまらない」かの境界線はどの辺りにあるのだろうか−−−。

男が女を二股にかけたということだったが、これが逆に女が男を二股、三股にかける例の方がもっと多いようにも思うが、その場合は「手玉に取られた男がバカだった」で済んでしまうことが多そうだが、二股の「罪悪度」には男女差があるのだろうか？　（そういえば昔、聖子ちゃんにもそんな過去があって、あの時は泣いて見せてはいたけれど−−−）

自然界を見ているとオスもメスも二股、三股は当たり前だが、なぜ人間だけは二股は「いけない事」なのだろうか。

イスラム圏では妻を4人迄持つことを許されているし、つい最近まで日本の政治家や軍人の多くはお妾さんを何人か抱えていたのに、なぜ最近の日本は男に節操を求めるようになったのか―――。

最近、スーパー銭湯に行くと、30分近く鏡の前で髪などの手入れに余念のない若い男が目につく。風呂から上がった時でも、タオルで頭を一拭きするだけ、という青年時代（今でも）を送ってきたタカさんにとっては、なんだか人間のオス（男）が、昔とは随分と違う生き物になってきたような気がしてならない。

そういえば、動物界では孔雀などオスが美しく飾り、メスは結構貧相という種も多いが、そういう意味では人類も徐々に生物界本来の生態に戻りつつあるのだろうか。

みるからにやさ男、人前で泣いて見せられる男（そういえば海江田さんも人前で泣いていたなぁ〜）が、美女二人を手玉に取れる世の中になったことで色々考えさせられた。

（5/17/12 11:00pm S.T.）

2012年5月10日

鰻重一万円

麻布飯倉にある鰻の超有名店は、天然うなぎにこだわっていることを売りにしていて、箸袋にも「釣り針が入っていることがあるので注意して下さい」といった注意書きがある。名店といわれるほどのうなぎ屋の職人が蒲焼を作っているあいだも釣り針に一切気付かなかった―――などということがある訳もないだろうから、この注意書きは単に「当店は天然うなぎにこだわっています」ということをあざとく強調しただけだとは思うが―――。

日本全国で消費されるうなぎは年間10万トンにも及ぶが、「国内産天然うなぎ」となるとわずか250トンしかないというのだから確かに「天然うなぎ」には価値があるといえる。(汚染された川や沼で育った天然物と、管理された養殖池で育った養殖物のどちらが｢衛生的か｣となると―――異論もあるだろうが)

このうなぎ屋、会社の接待などで数回し行ったことがあるものの、自分で支払いをしたことがないので値段はよく覚えていないが、「たかがうなぎ」であるにも係わらず、相当なお値段であったと記憶する。

そんな貴重な天然うなぎだけれど、昨日の新聞によると、那珂川や利根川、霞ヶ浦といった茨城県でとれた天然うなぎから100ベクレルを超える放射性セシウムが検出され、政府は出荷停止を指示したという。茨城県の天然うなぎ出荷量は年間約50トンと全国第一位だというから茨城産がアウトということになると、例の飯倉のうなぎ屋の鰻重の値段は更に上がるのではないだろうか。昔に比べると会社接待費も削減されている世の中、いつまでも天然うなぎにこだわり続けると、この店の経営は大丈夫かと、陰ながら心配になってくる。

日本で消費される年間10万トンのうなぎの大部分は輸入養殖物（中国産だけでも年間6万トン）であり、「国内産」を謳った養殖物も稚魚（シラスウナギ）の段階、あるいはある程度肥育された段階で輸入して出荷前に「国籍作り」をした「帰化うなぎ」が大半だ。(鹿児島で見たうなぎ養殖場は山の中の工場みたいなところだった)

一昔前なら「贅沢な食べ物」というイメージがあったうなぎだが30年ほど前から外国産の養殖物が大量に入るようになり、すっかり｢お手頃値段の食べ物｣になった。「今日はうなぎよ！」といえばお父さんも子供も文句は言わないというので、うなぎの別名は「忙しい主婦のオタスケマン」とも言われるのだとか。

ところが最近、このシラス不漁が続いており、卸売価格が急騰、養殖うなぎといえども、そうお手頃な物でもなくなってきているのだとか。(シラス不漁は「温暖化の所為だ」とか「乱獲によるもの」とか諸説あるらしいが)

物の値段は需給で決まるというが、天然物がセシウム騒動で減り、養殖物も「温暖化」で減るという供給減に加えて、最近では中国、台湾、韓国、シンガポールといった以前はうなぎを余り食べなかった国でのうなぎ消費が急激に伸びているという需要増もあり（ある人の台湾旅行記には、台湾のうなぎ屋に行ったら、店の前に100メートルの行列ができていたとあった）うなぎの需給はかなり逼迫してくる可能性がある。その内に、「鰻重一人前一万円」時代がくるとしたら―――。精々今の内に食べておくとするか―――。

（5/09/12 9:00pm S.T.）

2012年5月8日

トルネード

連休最後の日に関東で吹き荒れた竜巻の被害の映像に、あらためて自然の力の凄さを思い知らされた気がする。

日本でもこんな大きな竜巻が起きるのかとびっくりしたし、今朝ラジオのMCも同じように思ったのか「温暖化による異常気象が関係しているのかも」などというベタな「何でも温暖化の所為」論を語っていたけれど、調べてみると竜巻の本場ともいわれるアメリカ程では勿論ないけれど、日本でも毎年、20件程の竜巻が起きていて大きい被害を出した記録もかなりあるようだ。（近年、数が増えたとかスケールが大きくなる傾向にあるということはないから、「温暖化原因説」は、やっぱり時流を意識した「ベタ」コメント―――ある意味では「デマ」―――といってよいだろう）

以前シカゴに住んでいたことがあるが、イリノイ州でも（本場といわれるオクラホマ州程ではないにせよ）結構頻繁に竜巻が起き、「竜巻警報」が発令されていた記憶がある。

よほど竜巻の恐ろしさが浸透しているからなのだろうかシカゴでは、学校では必ず「竜巻避難訓練」が行われていたし、住宅の多くも竜巻対策としてリビングルーム等が半地下（部屋の2/3位が地下という作り）になっていた。竜巻は台風と同じで南から来て北に抜ける性質があるので半地下の部屋の南側の壁を背にしてうずくまっていれば、例え竜巻で家が吹き飛ばされても人が巻き上げられることはないのだとか。

そうそう、それから当時聞いた話では、竜巻が住宅街などを襲う場合、道路などの障害物の少ないところを走ることが多いという。ところが道路を走ってきた竜巻もT字路のような行き止まりに突き当たると（当然）曲がりきれないからT字路にある建物は竜巻被害に合いやすいのだとか。そんなこともあってT字路周辺の住宅価格は周りの建物に比べて安い−−−という話を聞いたが−−−その真偽の程はさだかではないが。

最近は水害があれば「治水対策は十分だったのか」、地震が起きれば「地震予知の不備」などといった風に、いかにも「自然災害は避けられる」「自然災害はある意味では人災だ」という論調が多く、昨日の竜巻の場合でも冒頭述べたラジオMCのような「人為的CO2増加による温暖化の所為だ！」といったいかにも「人間は自然を傷つけることも、コントロールすることもできる」といった思い違いがされがちだが、予知のしようもないし、対処のしようもない、言ってみれば被害に合うか合わないかは、全くの「運」としかいいようのない自然の脅威があることに、人間はもっと謙虚にならなければならないなぁ〜と思う。

（5/07/12 9:00pm S.T.）

2012年4月27日

どこまでが病気か

新婚の妻が吐き気を催す−−−、若い夫やカップルの親たちが「すわ、オメデタか？」と色めきたつ−−−ベタなドラマ脚本でよく見かける場面だ。

つわりは「女性が赤ちゃんを産む過程で起きる正常な体の反応」として古くから「病気じゃない」と言われてきたが、一方、つわり経験者によれば、その苦しさ(気持ち悪さ)は病気以上だとも聞く。

果たしてつわりは「病気」なのだろうか。大分、昔に経験した身近な人(?)によれば、つらいからと言って医療機関（産婦人科？）に行っても「お腹の赤ちゃんによくないから」という理由で吐き気止めなどのクスリをくれる訳でもないし、「しばらくの間、がまんしなさい」といわれるだけだったとか。多分今も、その状況は変わらないだろうとのこと。

アメリカでは「つわり」はMorning Sickと言う。言葉からは、一見病気と認められているようだが、民間医療保険は「出産」でさえ特約がないとカバーされないぐらいだから、「つわりは病気ではない」という認識が一般的だ。

つわりに限らない、これは病気なのだろうか、病気として医療保険の対象にするべき性質のものだろうかと判断に迷うような体の状態というのは多い。

そもそも、「病気」とは何だろう。ある辞書には「体に不調や不都合が生じた状態」と書いてあるが、眠くてだるい、食べ過ぎて胃が重い、といった「不調や不都合がある状態」を病気とは言わないが、肝硬変が原因で起きているだるさの場合とか、食べ過ぎもあるが胃がんの所為もあって胃が重いならば、確かに病気と言ってもよい。「病気か」「病気とはいえないか」の線引きは実に難しい。

インフルエンザや肺炎なら確かに病気といえるかもしれないが、「ちょっと風邪気味で鼻水が出る」とか「二日酔いで気持ちが悪い」といった程度でこれも「病気」というべきかとなると微妙だ。

しかし、今の日本の健康保険は「二日酔い」も「風邪気味」も、病院に行けば(待ち時間は長いにしても)一応医者が診てくれるし、クスリも出る。医療費もクスリ代も、勿論、健康保険の対象だ。（おかげで、近年の公的医療費の額はとてつもない額に及んでおり尚増え続けている）

別の辞書を見ると「病気」とは「健康でない状態」と書いてある。そもそも「健康な状態」とは何かとなれば、結局は「病気のない状態」となり、これでは「病気」も「健康」も曖昧で不毛な修辞学的堂々巡りになってしまう。（最近は「肥満は病気」だとされるが、単なるデブが病気か？といわれるとデブの側も反論したくなるだろう）

特に診断が難しいというか、曖昧になりがちな「うつ病」の場合、生活保護受給者には医療費負担ゼロで、精神安定剤、向精神薬などがこれも患者負担ゼロで処方されることに目をつけた「貧困ビジネス」の連中が、ホームレスなどにうつ病を装わせてタダのクスリを大量に入手、これをヤミ市場で売りさばいている例などを見ると、諸外国に比べて国民皆保険制度が整っている上に、「なんでも病気」として認定してしまう日本の医療保険制度が、財政赤字を益々加速させる―と懸念しない訳にはいかない。

「弱者を切り捨てるのか！」と叱責を受けるかもしれないが、国民健康保険がカバーする病気の範囲をしっかりと定義しなおす必要があるようにも思う。

（4/26/12 9:00pm S.T.）

2012年4月26日

パブリック ドメイン

著作物や発明といった知的財産の創作者や発明者といった個人に与えられる知的財産権が、人類全体にとっては有益だとは言い切れないケースが多々あるように思う。

もし、紫式部の「源氏物語」の著作権が今もその子孫に継承されていたとしたら（紫式部の子孫というのがいるかどうか知らないが）、世界に誇る日本文学の金字塔的作品も、最近よく見られる著作権を巡るドロドロの紛争に巻き込まれ、その偉業に傷がついていたかもしれない。

漱石の「我輩は猫である」も漱石の死後、既に100年近くが経過しており、著作権法の定める「著作者の死後50年」を経過しているために、その著作権は消滅し、今、この作品を誰が新たに出版しても、あるいは映画化しても原作に対する著作料の支払いの必要はない。（新たに書かれた映画脚本には著作権が発生するが）

このような場合「著作権の消滅」とネガティブに捉えるのではなく、「著作にともなう個人の権利が、人類共有の公共の物となった」とポジティブに考えるべきだ。

こういった個人の権利が消滅した知的財産のことを一般的にはパブリックドメイン（公有）と言っている。

知的財産権の仕組みそのものは、個人の創作意欲あるいは発明を奨励するものであり必要な制度であるとは思うが、最近、個人の権利の主張が余りに行き過ぎて、公共の財としての知的財産という面がないがしろにされがちであることが気がかりだ。

そもそも知的財産に関する法令などは、「権利者」保護の観点から作られたものであり、その著作物の享受者（例えば、カラオケの客や、小説の読者といった）の側の利便性だとか、楽しむ権利、といったものにはほとんど配慮が為されていない。

その結果、「ガリガリ亡者の権利者対著作権の不正使用者」といったなんとも醜い争いが起こりがちだ。

あなたがカラオケ店に行って一曲歌うと大体2円から5円程度の著作権料が取られ、その著作権料が、作曲者、作詞者に支払われる。（JASRACという著作権協会は、独占企業であり、その仕組みは何かと疑惑の目で見られるブラックボックスになっているということもあるようだが）作曲家や作詞家の才能に対して正当な報酬が支払われることについては著作権法などによって既にガッチリとした体系が作られ、その権利が保護されていることについては、異論を唱えるつもりはないが、最近はこの著作権法による権利主張が、ネット社会が目指す「情報の解放性、共有」との間で様々なトラブルとなり、その結果、著作権法がネットの発展、発達を阻害するいわば「旧体制の亡霊」になっていることに大いに疑問を感じる。

嘗ては許されていたレコードからテープへのコピーも、「私的利用」であることがあきらかであるに係わらず、違法化を画策する著作権協会などの既得権者の動きには時には怒りすら覚える。

ラジオから流れる自分の好きな曲を録音し、それを商業目的ではなくネットを使って友人に送ったとしたら―――かつては禁じられていなかったこういった行為すらも、「ネットで大量にコピーされる危険があるから」という理由で禁じられる方向だ。

こういった著作権者の権利主張の行き過ぎは、その内に、カラオケで歌っただけで2円取られるだけでは済まず、鼻歌や口笛で歌った場合にも金を取られるなどという著作権地獄につながらないかと懸念する。

本来、知的財産権は｢源氏物語」のように「人類の共有物」として人類文化の発展の為に寄与すべきものであって、「金、金、金！」の欲望の手段となっている今の姿はやはり問題だ。

理想論に過ぎるとは思うが、一言。

（4/26/12 9:00pm S.T.）

2012年4月20日

エゾ鹿はなぜ増えたか

世界自然遺産の登録審査基準の一つに「自然地域等が、その価値を保護すべく管理されていること」という条件がある。「富士山を世界自然遺産に！」という運動が中々実を結ばないのは、既に自然の形をとどめぬほどに進んでしまった周辺開発、富士の裾野周辺に広がる廃棄物不法投棄の山、ごみだらけの登山道、といった状況を考えれば、遠くから観た富士山がいかに雄大で壮麗だとしても「世界自然遺産」に相応しくない、と言われても仕方がないようにも思う。

白神山地にしても自然遺産認定されたのは、白神山地のほんの一部に過ぎない。行ってみれば分かるが、認定されなかった地域は、林道などの開発、ブナ林を伐採して植えられた杉の単一林（実に美しくない）だらけで、正直言ってとても「自然」とはいえない物になっている。

白神の場合、自然遺産認定区域には今やマタギ猟の猟師でさえ入山できない、といった徹底的な「自然保護策」がとられている。こうなると、本当に世界自然遺産に認定が、地元の人たちに歓迎されているのだろうかといった疑問もわいてくる。

知床が世界自然遺産認定を申請していた時期、知床におけるエゾ鹿が問題になった。エゾ鹿が木の芽を食い荒らすことによって自然林が荒廃、貴重な森が失われるという問題だ。繁殖力の強いエゾ鹿の食害を食い止めなければ知床の自然はいずれ失われるのではないかという疑念があり、それが審査委員の間で問題になったというのだ。しかし、かと言ってエゾ鹿の食害を阻止する為に、エゾ鹿の駆除を進めるとなると、これまた、エゾ鹿という「自然生態」の破壊につながる（駆除されたエゾ鹿の体内に残ったナマリ弾をイヌワシが食べ、イヌワシの繁殖に害をもたらす、といった問題も指摘された）という問題もあり、要するに「エゾ鹿を放置しても、駆除しても世界遺産認定は受けられないのでは」という心配が囁かれたものだった。

幸い（？）、知床は世界自然遺産として認定されたが、今もこのエゾ鹿問題、「放置すれば食害で自然が破壊されるが、人間による駆除は自然生態系保護に反する」は、中途半端な形で残されたままだ。（駆除したエゾ鹿は回収するなどの細かい規則を作り、年間100頭ほどを駆除しているが、１万頭以上いて年間増加率20％といわれるエゾ鹿にとってこの程度の駆除頭数ではなんの効果もないといってよいものだとか）

このエゾ鹿問題、そもそも昔はどうだったのかといえば、多数生息していたニホンオオカミがエゾ鹿を襲うことでその生息数は一定に保たれていたという。もちろん太古の時代からエゾ鹿は若木の枝を食べていたが、知床の樹木も一定程度の食害ならば、それをリカバーして樹林を維持する---すなわち、オオカミの数、エゾ鹿の数、そして知床の植生量の3つが自然のバランスを保っていたのだ。

明治以降、人間がこの地に入植し、家畜などを襲うオオカミを徹底駆除、結局絶滅に追い込んだことによってエゾ鹿が増え続けたが、人間は更に「エゾ鹿保護」の名目でエゾ鹿の駆除を制限したことによって、知床の自然植生を破壊が進んだという訳だ。

このエゾ鹿の例などを見ると「自然を本当に守りたいならば、地上から人類がいなくなることだ」という一見極論に思えるテーゼにもいくらかの真理が隠されているのではないかと思わないではない。そう考えると「自然エネルギー」に対する盲目的な讃美にも、原子力利用同様に大きな危険が潜んでいるような気がしないではない。

（4/19/12 9:00pm S.T.）

2012年4月13日

星の数ほど、芥子粒ほど

「星の数ほど」とは数の多いことの例えだが、実際のところ宇宙に一体どれ位の数の星があるのだろう。

星の数といっても惑星や小惑星の数までいれるとなると、その数の根拠がはっきりしないので、「星」とは太陽のように自ら光輝く「恒星」に限定し、先日観た科学番組を参照して計算してみた。

最新宇宙科学によれば、宇宙にある銀河の数は、約2000億だといわれている。通常一つの銀河には約2000億の恒星がある。（我々のいる天の川銀河系にも、太陽を含め約2000億個の星があるということだ）

従って宇宙にある星（恒星）の総数は、2000億 x 2000億個、即ち4x10²²個《400垓(ガイ)――垓とは、億、兆、京、の上の単位》ということになる。

400垓といっても想像つき難いが、地上にある砂粒が約1000兆個だそうだから、全宇宙にある恒星の数は、地球上にある砂粒の4000万倍ということになる。

女性にふられた友を慰める言葉として、「女なんて星の数ほどいる」などというけれど、おばあちゃんから赤ん坊まで全て入れても世界中の女性の数なんて高々世界人口70億の半分、35億しかいない。「女なんて星の数ほど−−−」という慰めのつもりが、却って「星の数に比べたら、めちゃくちゃ少ない！」ということにもなり、失恋で傷ついた友の心に塩をすり込むような逆効果になりかねないかも−−。

宇宙にこれだけ溢れて（？）いる恒星だが、太陽からもっとも近い恒星であるケンタウルス座のアルファ星までの距離は4.4光年、'77年に打ち上げられ太陽系外へ向けて飛行を続けている宇宙船ボイジャーがこのアルファ星に向かって飛んだとしても後8万年は飛び続けなければ到達できない距離ということになる。

そうそう、ビッグバンから135億年が経っているが、現在宇宙の大きさは(地球から見て)750億光年以上の大きさになっていると推定されているという。

ということは、「我々の存在なんて、芥子粒のように小さい」という表現も宇宙という時空軸で考えたらとんだ見当違いということにもなる。

宇宙ということについて知れば知るほど興味は尽きない。

（4/12/12 9:00pm S.T.）

参照：「宇宙の寿命に比べれば」12/26/11

2012年4月11日

さくらに思うこと

日本中にさくらの名所といわれるところは随分多くあるが、その内のかなりのところに花見に行った。

さくらの開花時期は限られるのだから、丁度見ごろにそれらのさくらの名所を訪れるとなると、精々一年に2ヶ所とか3ヶ所に限られるが60年余り生きていると、その延べ数はそれなりに多くなるという訳だ。

さくらの名所以外にも、人はそれぞれ「自分にとってのさくらスポット」を持っているように思う。「さくら百選」などに載っている名所が、「全国ラーメンランキング百選」に載っているような人気ラーメン店だとするならば、「マイ　さくらスポット」は、近所や出身校の近くにある通いなれたラーメン屋のようなもので、全国的には知られていないものの自分にとっては全国一美味しいような気がする小さなラーメン屋のようなものだ。

そんなマイさくらといえば、タカさんにとっては小学校の校庭に咲いていたさくらの大木（このさくらの前で、入学式の日、クラス全員で記念写真を撮った）であり、もうかれこれ三十年以上、毎年花見をしている近所（歩いて5分ほど）の小さな運河沿いのさくら並木である。（そうそう、あまりに大木になりすぎて、手に余ると切ってしまったが、実家の庭に咲いていたさくらも今は亡き父母の思い出とともに懐かしくおもいだされる）

昨日、靖国神社から北の丸公園、そして千鳥ヶ渕という毎年恒例にしているお花見に行ってきた。天気もよく、昨年の自粛騒動（？）の反動もあるのだろうか、人出は多く、皆さくらの花を見てにこやかだった。（花見に来て憂鬱そうな顔をしている人はいない）

さくらの花をじっと見ているといつも「さまざまなこと思い出すさくらかな」という芭蕉の句が浮かんでくる。一年に一度、ぱっと咲いてぱっと散るさくらに、自分のこと、そして今は亡き人たちのことを思い重ねてしまうのは日本人の習性のようなものかもしれない。

一年に一度なのだから、後、何回花見の季節を向かえ、自分の足で花見にいけるだろうかと思う。そして、もう自分が見ることがなくなった何十年も何百年も先にも、花見の季節は巡ってきて、未来の花見客も「さまざまなことを思いだす」のだろう。

（4/10/12 9:00pm S.T.）

参照「さまざまな事」(3/30/07)

2012年4月6日

コナオトシ

最近は、ラーメンや牛丼といったB級グルメ（？）にも評論家とかプロといわれる指南役がいて、ああしろ、こうしろと結構うるさい薀蓄を吹聴するようになったこともあって、素人（？）が気楽にこういう店に行けなくなってきたと感じることがある。

ちょっと前までは、ラーメン屋に行って「ラーメン一つ」といえばちゃんとラーメンが出てきたものだが、最近は、「バリカタで」とか「ヤワで」といった麺の固さの指定（？）をはじめ（中にはコナオトシ等という訳のわからない注文もある）、「細麺で」だの「フト麺で」だ、「縮れ麺」やら「ストレート麺」といった麺の種類、更には「トッピング」（かつては具と言っていたはずだが）にしても、「チャーシュー3枚、メンマ多目に、ヤワネギで」などとなんだか符丁（？）による細かい注文をしなければラーメン製作に入ってもらえないかの雰囲気だ。

先日、評判の店だというラーメン屋に、ふらりと入ってみたが、客の多くがこの調子で細かい注文をつける「ラーメン喰いのプロ」みたいな雰囲気でなんだか落ち着かない。そんな雰囲気に気おされて、食券を渡したお兄さんに「どうしましょう？」等と聞かれ、どぎまぎしながら「えぇっと、フツウで」等と小声で答えるしかなかった。そんなに緊張して食べた「行列のできるラーメン店」のラーメンが美味い訳もない。

よほど有名な（？）ラーメン店ならまだしも最近は、全国チェーンの牛丼屋でさえ何だかプロっぽい符丁が飛び交う。「ツユダク」だの「具大」だのとどうもフツウではない牛丼があるらしい。「早い、美味い、安い」手軽な牛丼はどこにいったのだろう。

ちょっと通ぶって注文するというのは、まだ回転寿司などと無かった時代、寿司屋でやることはよくあった。「アワビの硬いところ、つまみで！」とかシメに「かんぴょうを手巻きで」などと注文していたころは、何だかちょっと優越感にひたれたものだが、ラーメン屋や、牛丼屋であれこれ符丁を並べたところでどうも雰囲気は出ない。

そうそう、細かな注文といえば、アメリカのレストランに行った日本人客が往生するのが、この点だ。例えば、ステーキレストランならば、まず肉の焼加減を聞かれる（最近は日本でももちろんそうだが）、蝶ネクタイなどした立派な体格のウェイターに、英語で問われると日本人はどうしてもどぎまぎしてしまう。焼具合の次にはサイドだ。ポテトはどのように料理するか「ベークドか、マッシュかフレンチフライ（日本ではフライポテトというが）か」を聞かれ、例えばベークドと答えると今度はバターをつけるか、サワークリームにするかと質問は続く。サラダにしてもドレッシングは何にするか（サウザンドか、イタリアンか、フレンチか、オイルエンドビネガーか等々）などと聞かれた日には、「もうなんでもいいから！」と答えたくなる。

ところが、ああでもないこうでもないとウェイター相手に注文の詳細を決めるあの時間が、アメリカ人にとっての、レストランの楽しみの一つなどと聞いたことがある。日本人には到底理解できない部分だ。（ところで、さんざん細かな事を聴いた割には、ウェルダンもミディアムもレアも結局同じものが出てくるのがアメリカのステーキレストランだ）

ショーウィンドーに並んだ食品サンプルを見て注文するだけでよかった古き良き時代の食堂が懐かしい気がする。

（4/05/12 9:00pm S.T.）

2012年4月4日

どうすりゃいいんだ！

東日本大震災が「想定外」の震源、そして規模で起きたことで原発関係者はもちろんのこと地震学者といった専門家、政府や地方自治体、あるいは企業や個人にいたるまで、「想定外」という言葉で見るべきリスクを見ないですませていた人々、すなわち日本人1億3千万人が総反省を迫られたこの1年であった。

その反動は、想定外などという余地を全くと言ってよいほど排除し「考えられうる最大限のリスクに備える」という、震災前とは180度違ったリスク想定の連発となって、再び日本中が大騒ぎになっている。

西日本で想定される東海、東南海、南海の三連動地震の規模は、震災前の想定最大マグニチュード8.7が9.0に修正され、この地震による津波の被害地域の面積、津波の高さともに従来予測の倍近くに修正された。高知県の太平洋岸ではところによって津波の高さは38メートルと発表されていてこの地域に住む人たちの間では動揺が広がっている。相模湾での地震、津波の予測数値も大幅に上方修正（？）され、横浜駅周辺、鎌倉市では水没する地域の予想範囲の広がりを聞かされた住民は夜も眠れないのではないだろうか。東京湾北部（市川市の海岸沖辺り）での直下型地震の想定も発表され、首都圏の大部分が震度7、あるいは震度6とこれまた従来想定よりはるかに激しい揺れが予想されるとの発表で、しかも津波水没地区の予想地図を見る限り東京湾岸は「ほぼ水没」といえる状態だ。

この他にも北海道沖、東北における異常な地震頻発も予想されており、こういった地震予測を鵜呑みにすればもはや日本列島に住むこと自身が、導線に火がついた爆弾を抱えているかのようなリスクといわんばかりである。

見据えるべきリスクに目をつぶり、原発事故も、震災、津波も「想定外」という言葉でその責任を逃れた政府をはじめとする多くの関係者が（地震学者たちも恐らくその中に含まれるだろう）おおいに「反省」し厳しく見直した結果、想定規模が大きくなったというならそれはそれでよいことというべきだろうが、何となく「できるだけ予想を大きく言っておけば、もし本当に地震や津波が起きたとしても、自分達の責任は問われないで済むだろう」などと考えて「考えうる最大級の被害規模」を予測発表しているのではないか、と思えなくもない。(東京湾北部地震については過去に発生したという記録はないが、「10万年前に、起きたとおもわれる痕跡がある」という学者の解説を聞いて−−−自分としては本当にどこまで警戒すべきなのか大いに悩んでいる)

原発にしても福島での事故のことを思えば、これだけの揺れや、津波の想定が出ているとなれば、地震列島の日本で再稼動することは最早不可能という結論になるだろうし、西日本の太平洋岸沿いの町や村は全て放棄して住民は、海抜20メートル、30メートル以上の高台に移住しなければならないということになるだろう。予測を信じるなら正直行って日本列島に人の住めるところなんてなくなるのではないだろうか。

高台移住を町ぐるみで行うにせよ全住民が移住に賛同するなどということは考え難い。高齢者などの中には「もう、老い先短いからこのまま海岸近くに住みたい」という人もいるだろう。そうなると町は、道路や水道などのインフラは高台と旧市街というダブルで維持しなければならなくなる−−−。財政難の折、そんなことができるだろうか。

こうなったら、グランドキャニオンに柵を設けず「ここから先に行くのは自己責任」という看板があるだけというアメリカを真似て、「海抜、30メートル以下に住むのは自己責任」といった看板でも立ててつきはなすなどという手もかんがえなければならないが―――「一人でも反対がいたら橋をつくらない」などという美濃部流コンセンサス社会である日本ではそんな強攻策は無理だろう。

「考えられる最大の被害予測」の発表も結構だが、「だからどうすればいいのか」が全く示されず（精々、「なるべく早く高い所へ避難」などという意味もない掛け声だけだ）只々、「xx年以内に起きる可能性は80％」などと言われても、徒に不安が募るばかりだ。

相次ぐ被害想定の上方修正は、いかにも責任ある態度のように見えて、これこそ究極の無責任ではないかとも思う。

（4/03/12 9:00pm S.T.）

2012年4月2日

匿名による言論

「アラブの春」の大きな起爆ツールとなったソーシャルネットワーク(SNS)であるFacebookの世界会員総数は9億人に達し、しかも今も日々その会員数は急増しているといわれる。これだけの会員数を誇るFacebookだが、日本ではそれほどの伸びを見せていない。08年5月には、早くも日本語サービスが公開されたにもかかわらず、その後4年間で日本での登録者数は未だに500万から600万人と総人口に比べてかなり低いレベルで推移している。

日本でFacebookが普及しない理由としては、アラブ地域などに比べて、日本には既に、mixi、モバゲータウン、GREE、Twitterといった既存のSNSが普及していた為に後続のFacebookがそれほど必要とされなかったこと、あるいはFacebookが英語を基本コミュニケーション言語としているのに対して日本では英語で世界とコミニュケーションできる人口、あるいは英語でコミニュケーションする必要を感じる人口が少ないことなどがあげられている。（日本人同士が、日本語でコミュニケートできれば十分だ！という日本人が多いということ）

しかし、タカさんはFacebook不振の一番の原因は、Facebookユーザーとなるには、実名登録をする必要があることなのではないかと思う。

Facebookのユーザー登録画面を開いてみればよく分かるが、まず本人の実名と顔写真、実社会でのプロフィールの登録が義務づけられている（しかも登録必要事項がまさに根掘り、葉掘りとやたらと細かい）。多分、通称などでの登録も可能だとは思うが、あくまでもFacebookの基本哲学が「匿名に隠れた無責任なコミュニケーションではなく、お互いがプロフィールを明らかにした上での「ガチな（？）」意見交換の場」であることを考えると通称や偽名を使うことはルール違反だろう。

しかし、実名や詳細なプライバシーをネット上で明らかにしてよいものなのか−−−となると、学校裏サイトだの、2Chあるいは、ネットにおける「荒らし」の実害の話を知っている日本人の多くには躊躇われるところだ。

変な言い方だが、日本人は昔から、匿名や偽名に隠れた上での発言は得意だが、堂々と個人名で、あるいは個人プロフィールを明らかにした上での発言は（選挙に立候補するならともかく）苦手だし、こちらの名前を明らかにして相手をクソミソに批判するなどという欧米流の論争になれてはいない。　Facebookのプラットフォームは、日本の風土にはどうも合わないように思う。

太宰治の｢人間失格｣に、『「それは世間が、ゆるさない」「世間じゃない。あなたが、ゆるさないのでしょう？」「そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ」「世間じゃない。あなたでしょう？」「いまに世間から葬られる」「世間じゃない。葬むるのは、あなたでしょう？」』という有名な一節があるが、日本人はいまでも、「世間」だとか、「世論」といった匿名に隠れて他人を批判するし、アメリカの新聞では社説でさえ多くの場合、署名入りであるのに対して日本では、社会の公器を名乗る新聞ですらほとんど全ての記事が無署名、すなわち匿名(朝日新聞だとか読売新聞という偽名に隠れたある意味では無責任な言論)だ。「匿名や偽名に隠れて発言し、批判からは我が身を隠す」という姑息な言論が日本人の言論の本質だとなると淋しい気はするが−−、我が身に翻って考えてみたい課題だ。

（3/31/12 9:00pm S.T.）

六大関

惜しくも千秋楽に大逆転を喰って初優勝は逃した鶴竜だが、13勝2敗の好成績で大関昇進を果たした。

千秋楽の夜、NHKテレビの「サンデースポーツ」に出演した鶴竜が、勝っても負けてもポーカーフェースを保っているのは意識してやっているのかと聞かれて「相手に対しての礼儀として表情を表すのは相撲の伝統に反すると教わったので、それを守っている」と答え、横にいた白鵬が「この大関は立派だ！」と褒めたのが印象的だった。

朝青龍や日馬富士といったモンゴル人力士が、

鶴竜の昇進で、来場所からは大関が六人になる。大関六人ともなれば星の潰し合いが激しくなり、相撲が益々面白くなるという見方もあるが、やはりどうしても大関の負け越し、角番といったケースも増えてくるだろう。ただでさえ「大関陣がだらしない」といわれて久しいだけ六大関が却って相撲人気に水を注すことになるかもしれない。

というのも、タカさんが小学2年生の頃、横綱は四人（今でも空で四人の名前を言える。千代の山、吉葉山、鏡里、栃錦の四人だ）

負けが続けば引退せざるを得ないが

（4/01/12 9:00pm S.T.）

2012年3月23日

宗教というカルマ

シリアのアサド政権による反体制派への弾圧が続いているが、アサド政権非難を強めるアラブ連盟各国に対しアサド政権支持を続けているのが中東ではイランである。

ロシアや中国が国連によるアサド政権非難決議に拒否権を発動した理由は、両国にとってアサド政権が武器輸出のお得意様であること（反体制が政権奪取すると両国は輸出代金の未払い分を回収できなくなる）、あるいはロシアにとって重要なシリアの港の使用権を失う可能性があることなどの利害関係がらみが裏にあるのだが、イランの場合にはアサド政権がイランの国家宗教であるイスラム教シーア派の一派、アラウィー派であるということが主な理由だ。

シリアは国民の約80％がイスラム教スンニ派だが、政権を握っているのは国民の15％に過ぎないアラウィー派である。イスラム教の大きな派としてはスンニ派とシーア派があるが、スンニは全世界のイスラム教徒の約9割を占めており、1割のシーア派はイランを除けば各国で少数派となっているところが多い。イランにとってはスンニ派の大海に浮かぶシーア派の拠点としてのアサド政権はどうしても守りたい島という訳だ。

嘗てのイラクのフセイン政権はイラクで多数を占めるシーア派の中に浮かぶスンニ派の島だったのだが、フセイン政権が崩壊すると同時にシーア派が政権中枢を占めるに至ってしまっており、スンニ派にしてみれば、シリアの政権を崩壊させることで、イラクで失った失地分を取り戻したいという思惑もある。サウジアラビアなどのスンニ派支配国のシリア反体制派への支援はこういう意図が働いているからのものだ。

さて、ここまでの話、イスラム教に余り馴染みのない日本人にとっては分かり難いのではないだろうか。そもそも、同じイスラム教（神様の名前はアラー、経典はコーランであり全く同じ）なのに何で仲が悪いの？　そもそも、スンニとシーアはどこが違うの？といった点すら見当もつかないのではないだろうか。

シーア派は過激だと思われがちだが、タリバンや、アルカイダはスンニ派だ。アフガンなどの場合、スンニ派同士で争っているけれど、その同士討ちは何の為なのか、知っている日本人は少ない。

そもそも、同じ一神教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の違いは何なのか、どうしてお互い仲が悪いのか？　調べてみると各宗教の違いよりも、同一点の方がはるかに多い。キリスト教の聖書の内、旧約聖書はユダヤ教の聖書を丸々パクったものだし、イスラム教ではイエスを、預言者の一人として教えているのに、お互いが相手を邪教扱いしているのだから、何とも理解しがたいところがある。

アメリカの大統領選挙にしても、政策の争いというよりは、同じキリスト教の中での宗派争いといった方が正しい位だ。（天地創造が正しいか、進化論が正しいか、等という論争は部外者から見たら余りに幼稚すぎて笑えてくる、サントラムがアメリカ大統領になって天地創造説を学校で教えろ！などと言い出したらアメリカは再びあの暗黒の中世に戻るのだろうか）

仏教にしてももう幾つあるか数え切れない程になってしまった各宗派の違いなんて、言える人は宗教学者など極少数に過ぎないだろう。

さらには、新興宗教やら占い師やらが次々と生まれて―――というのだから、ドーキンスではないけれど―――動物の中でも宗教を持つのは人間だけだが、宗教が人間にとって多大な災難の元になってきたのも事実。宗教って人間にとっては業（カルマ）のようなものということなのかもしれない。

（3/22/12 9:00pm S.T.）

2012年3月19日

リスとネズミ

ホテルのステーキハウスで食事をしていた時のこと、ガラス窓越しのベランダ風花壇にネズミがいるというので隣の席のお客が騒いでいた。

閉されたガラス窓の外の事でもありレストランの従業員も慣れたもので、客もそれ以上騒いだ訳ではなく直ぐに騒ぎはおさまったのだが、ネズミ嫌い(ヘビも)のタカさんとしては予期せぬこの小動物の出現に、いささかの動揺を覚えたことは確か。

このホテルの近くのディズニーランドで、ミッキーマウスならぬ本物のネズミを見たという話はネット投稿などで時々見るけれど、遊園地やホテルといった人の集まるところには自然とネズミも集まってくるという話は本当なのだなぁ〜とあらためて思った。

アメリカやオーストラリアの公園ではリスを見かけた日本人観光客が、「日本と違って自然が溢れている！」感激するのはよくあることだ。

タカさんもリスならば、「さすがに、この国には自然が溢れている」と感激し、嬉しくなったりもするのに同じげっ歯類の小動物であるネズミだと「自然が溢れている！」とは思わないのはなぜだろう。

「日本野鳥の会」が都市のゴミを漁るカラスの保護運動をしているという話はきかないし、それこそ「まだ日本にも野生が残っている」と喜んでよいはずのニホンザルやイノシシ、クマ、などになると野生保護どころか、こういった動物による農作物被害を避けるために、いかに「害獣を駆除するか」ということになるのもある意味では随分と矛盾した話だ。

先日、長崎県東彼杵町で、猟犬に追われたイノシシが民家近くに追い詰められ、血を流しながら犬と格闘、道路脇の斜面を転落した挙句に漁師に、やりで急所を突かれて仕留められたという騒動があったという新聞記事を見た。

イノシシも考えてみれば、あの「可愛い！」リスと同じ野生生物であり、自然の中で生きていくために人家近くに食糧を求めて出てきたのであろうが、人や犬が寄ってたかって血だるまにした挙句、やりでめった突きにされ殺されてしまったというのだから、これこそ動物虐殺と言ってもよいような話しだが、もちろんこのイノシシに対する同情論も、イノシシ保護活動の兆しも一切ない。

イノシシが人間にとって害獣だから当然だという考えから来る物なのだろうが、そうだとすると人間のいう「自然保護」だの「動物愛護」なるものは、どこかインチキがあるのではないかとも思えてくる。

タカさんが、「リスは可愛くてネズミは嫌だ」という感覚は、クジラやイルカを保護せよという人たちが年間、数千万頭、数億頭の牛や豚を屠畜して喰ってしまっていることの矛盾に気がつかないのと同じで、要は自分達の好き嫌いの一存で他の生命の価値を勝手に決めているという人間の傲慢さが根本にあるということなのだろうか。

（3/18/12 9:00pm S.T.）

2012年3月16日

絶賛！ピナ・バウシュ

前衛舞踏というものを毛嫌いしてきた。全身白塗り裸のオバQのような男たちが、苦悶の表情を浮かべながら奇妙に体をくねらせて―――只々「気持ちワルーイ」としか思えなかったのだが。

今、公開中の「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」を見ていままでの前衛舞踏に対する考え方を180度変えた。ピナ･バウシェのダンスは、いままでタカさんが気持ちワルーイと思っていた舞踏とは全く次元が違う舞踏芸術だと思えたのだ。

ピナ・バウシュは09年に急逝したドイツの舞踏家、舞踏演出家だが、この映画は彼女が主催していたヴッパタール舞踊団のダンサー達が、ピナの代表的作品を踊るもので、これをピナの友人でもあった天才ヴィム・ヴェンダース監督が3D映像に納めたものだ。

3D映像は出現したものの、これまでの3D映像は単に2次元のスクリーンに映し出された映像が「飛び出して見える」というだけの単なる「もの珍しさ」をウリにしていただけで、「立体映像の持つ新しい可能性を切り拓いた」といったものではなかった（それだけに、最近は3Dも結構、飽きられてきている）が、ヴィム・ヴェンダースはこの映画で、3D映像とはこうあるべきだという手本を示したと言ってよいと思う。

映画ではピナの代表作である「春の祭典」「カフェ・ミュラー」「フルムーン」「コンタクトホーフ」などの作品が演じられるが、その舞踏の舞台は、土を撒いたステージ、水をふんだんに使った舞台といったもの、あるいは、公園の中、森や湖、人気のない工場の敷地やモノレールの中、あるいは街中の交差点といった空間で繰り広げられる。そしてここで踊られるダンスを時には俯瞰で、あるいはダンサーの中に入って3D映像が捕えていくのだが、映画の観客は、時には自分がダンサー達に取り囲まれているように感じるだろうし、又、ある時には自分と正対して踊るダンサーの激しい息遣いや、汗のしたたりすら感じるように思えるだろう。

次々に繰り広げられるこういったダンスをみていると、ピナ・バウシュがダンサー達にいう「言葉にならないものをダンスで表現しなさい」という言葉の意味を体感できたような気がした。多分人類は、言葉を持つより以前に既にダンスによって自分を表現することを覚えたのではないかと感じたからだ。

この1週間で2回観たけれど、ストーリーのある映画とは違って、何度観ても飽きない。前衛嫌いの方（多分、多いと思うが）、騙されたと思って是非、一回観にいかれてはいかが。ピナ・バウシェの天才に驚かされること請け合いだ。

（3/15/12 9:00pm S.T.）

2012年3月12日

敬う気持ち

卒業式などの学校行事に於いて君が代斉唱、あるいは日の丸掲揚の際に起立しない教員に対して懲戒を課すことが憲法の保障する「思想信条の自由」に反するかどうかの論争は延々と続いている。

一応、最高裁は、起立しない教員に対してこれを職務命令に反するものとして懲戒に処することは違法ではないという判決を出しているが、この判決では「君が代の際に起立をすることを命ずることは、（君が代を拒否したいという）個人の思想信条を強制的に縛ることにはならない」という何とも分かり難いものであり、「国旗、国歌法を追認するための法匪的な言辞に過ぎない」という反君が代派の批判に十分耐えられるものとは言い難いことは確かだ。

諸外国では国旗、国歌に対する敬意は、国民大多数のコンセンサスであり（大リーグの開会式における国歌斉唱の際には、観衆全員が起立しているではないか！といった議論がもっぱらだ）、日本では、公務員という国から給料を貰っている教職員が、国旗国歌に対する敬意を払わないというのは国際常識から考えても公共に対する裏切り行為だ！といった不起立教職員に対する非難の声が高いのは事実だが、そう考えるのは単に「起立すべき派」の人たちの「個人の思想信条」であることも事実。

多数が正しいと思う思想信条ならば、少数の反対派の思想信条の自由を束縛してもよいという論理にはならない。思想信条には民主主義の多数決原理はそぐわない。

君が代訴訟下級審判決では（憲法解釈にまでは触れないものの）「不起立に対して懲罰を課することは違法」という判決がいくつか出ていることを考えると、体制の一翼を担う三権の最高府である最高裁が、体制側の欲する判決を、こねくり回した上でひねり出したと思えなくもない。

個人的には、日本国民として、日の丸、君が代には誇りを持っているし、国旗掲揚・国歌斉唱(QVCマリンフィールドでは3連戦の初戦開始前のセレモニーで必ず行われる)の際には率先して起立し清々しい気持ちになったりするし、そういう時に意固地に起立しない少数の人に対してなんとなく不快な気持ちにもなったりするけれど、やっぱり「他人は他人、自分は自分」だし、彼等を強制してまで立たせることはよくないと思う。

1947年まで、不敬罪というのがあったが（いまでもタイにはあるという）、思想信条の自由に反するとして廃止されたが、国旗を焼くといった行為なら多少の議論の余地があるかもしれないが、起立しない位で懲罰というのは戦前の不敬罪の時代にもどったような気がしないではない。

キリスト教の教会に行けば、自然に帽子を脱ぐし祭壇の前で一礼位はする。神社の社殿の前に進む時には、ガムを噛んだりはしない。十字架や社殿の前で不敬な行いをすれば何か「罰が当たる」などと考えてするのではなく、やはりそこにはその宗教を信じている訳ではないが、そういう物に対しては人として敬いの気持ちを持つべきではないかと思うからだ。

国旗、国歌が一部の人たちとはいえ敬いの気持ちどころか嫌悪の対象になっていることは残念ではあるが、だからと言ってこれを罰するというのもいかがなものかとは思う。

（3/12/12 9:00pm S.T.）

2012年3月9日

小さな政府と保守

共和党予備選挙前半の山場であるスーパーチューズデーでもロムニーVSサントラムの指名争いには決着がつかず、候補者同士のネガティブキャンペーン（要するに、相手の悪口をあげつらう作戦）の過熱化には共和党支持者も嫌気がさしてきておりそれが結果的に民主党のオバマの再選に有利に働きはじめているという。

4年前の予備選の際には民主党内でオバマVSヒラリー・クリントンのかなり激しい言い争いがあったが、あの時の二人の言い合いには、それぞれの政策面での違いを強調するといったポジティブな論争があり、それが無党派層の関心を呼ぶという側面があった。

しかし、今回の共和党の中傷合戦は、いかにネガティブキャンペーン好き（？）のアメリカ人でも目に余るところがあるということなのだろう。（武士道精神の残滓がまだある日本では、相手を誹謗中傷するような選挙キャンペーンは中々成功しない）

なにしろ、共和党予備選での中傷合戦は、シギとハマグリが争っていたら漁師に両方とも採られてしまったというまさに「漁夫の利」的勝利をオバマ陣営に与えそうな情勢なのだとか。（野田VS小沢の意味のない争いによって漁夫の利を得そうなのはどこの党なのだろう）

共和党といえば伝統的に「保守」そして「小さな政府」だ。しかし、最近とみにこの二つが相矛盾することが多くなってきており共和党のアイデンティティーが崩れつつあるように見える。

例えば過去にもアメリカの財政赤字の肥大化は共和党レーガン、ブッシュ時代に起きているという前科が示すように、規制を緩和して自由化を進めた場合、特に金融、情報通信などを中心に富の集中化（貧富の差の拡大）を生んでしまう。このようにして生まれた超富裕層の放埓さは、キリスト教的価値観を是とする「宗教保守」にとっては許しがたいものとなる。（聖書は「金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい」と言っているようにピューリタニズムと豊かであることは本来は両立しない）

又、アメリカ的保守とはすなわち「強いアメリカ」の維持であるが、強いアメリカを実現させるためには当然軍事費などの予算を削る訳にはいかなくなる。中国に対し、あるいはイランに対して強面で物をいい「強いアメリカ」を維持するためにはなにしろ莫大な軍事予算は避けがたい。すなわち小さな政府では、「強いアメリカ」という保守の理念を実現できない。

共和党の「小さな政府」も、民主党の「大きな政府」も、減税、減税で賄うことはできない。既に、アメリカ全体の富の39％を、上位1％の富裕層が握るようになってしまったアメリカ社会が、宗教保守的な「野のバラ」の清貧さやピューリタン的道徳を掲げること自身、自家撞着もいいところだ。

共和党支持者を中心とした｢自分さえよければいい」という「ティーパーティー」運動（これが狂信的なプロテスタントと結びついているところも怖いが）にも限界が見え初めているが、そのカウンタームーブメントとして起きた「ウォール街を占拠せよ」勢力も、ただ単に「俺たちにも金をよこせ！」と叫んでいるに過ぎない以上、大きな政治勢力に育つ可能性は薄い。

あの巨大国家アメリカも、政治的な指針を何一つ立てられず、さまざまな利己主義的な要求を掲げる選挙民に対するポピュリズム的な迎合の中で大海の中を漂流している。

アメリカがそんな混乱状態なのだから、マッカーサーに「まだ12歳の少年」といわれた日本の民主主義政治が方向感のない泥沼の中で行き場を失っているのも致し方ないことなのかもしれない。

（3/08/12 9:00pm S.T.）

2012年3月7日

霊能者は悪人か

「オセロの中島」が何者なのか知らなかったとか、興味がなかったという人でさえテレビのワイドショーや週刊誌を騒がせている彼女と女性霊能師（？）による家賃滞納・引き篭もり騒動には興味を引かれたのではないだろうか。何を隠そう芸能ニュースなどには興味なしと言っているタカさんだが、この騒動には、ノリピーの覚醒剤騒動、押尾学のホステスMDMA死以来何かと気になっている。（なぁ〜んだ、興味がないとかいいながら、結構芸能ゴシップ好きじゃないか〜と思われる方も多いとは思うが）

しかし今回の騒動、いくら霊能師の指示に従っているとはいえ、40歳にもなった大の大人が自分の判断で家賃不払いやら引き篭もりを続けているのだから、彼女を「被害者」だと言い、彼女にマンション占拠をやめさせることを「救出」等というのはおかしいのではないかという気がしないではない。

娘が霊能師に取りこまれて裁判沙汰にまでなっているとなればご両親が心配するのは当然だが、芸能レポーター達がお為ごかしに「中島さんを一刻も早く救出しなければ！」などといった調子でマンションの回りを取り囲み（一時期は200人もの報道陣が取り囲んでいたのだとか）、スタジオのゲスト達や、コメントを求められたタレント達も、「早く、帰ってきて欲しい！」などと彼女を「哀れな犠牲者」扱いしているのも何ともウソっぽい。確かに、彼等もコメントを求められて、まさか正直に「アホやねぇ〜」とか、「差し押さえまで行って、大騒ぎになった方がもっと面白くなるのに〜」という訳にもいかないことは重々承知ではあるが−−−。

中島犠牲者論に立てば、当然霊能師は悪者ということになる。この霊能師とやら「体型はマツコデラックス似」だとか「高級焼肉好きで木嶋佳苗被告そっくり」と形容されているところにも悪意が紛々と漂う。芸能ニュースだから殊更報道の中立などという気はないがそれにしても随分と偏った報道ではないだろうか。

個人、あるいは小規模な霊能者、カルト宗教は数多くあるし、こういう連中が壺を1000万円で売ったとか、除霊と称して数千万円を巻き上げたなどという「事件」もこれまた腐るほどある。規模が小さい内は、こういった霊能者やカルトは加害者・犯罪者だと非難され、自分の意思で金を払った信者（？）たちは、事件として取り上げられた時には突然「被害者」「騙された気の毒な人達」になる。しかし、これがちょっと大きな組織になって某宗教政党の後ろ盾宗教法人のようになれば、その資金集めをインチキだ！詐欺だ！と非難されることはないし「お題目を唱えれば事業は成功する」などといったご宣託もインチキだといわれることもなくなる。某宗教法人もこの霊能者も、やっていることはそんなに変わりはないような気がするのだが。

いやいや、「この世界は、神が6日間で創り、人間はアダムとイブの子孫である」という余りにインチキ過ぎる話を信じる人たちが、アメリカという世界最強の国の大統領にその熱心な支持者であるサントラム候補を押してかなりの接戦に持ち込んでいるし、イスラム原理主義の多くの狂信者たちは「爆弾でテロを実行すれば天国に行ける」と信じているし、彼等にそう信じ込ませる宗教指導者という名の霊能者もいる。

ニーチェやドーキンスではないけれど、宗教とかオカルトという奴、マツコデラックス似の霊能者から世界的宗教指導者までその違いはそれほど大きくはないようにも思うが。

（3/06/12 9:00pm S.T.）

2012年3月5日

絶対に安全

4月から中学で「武道」が必修となる。剣道などと違って柔道ならば、特に道具をそろえる必要がないという理由から大半の中学では柔道を選択することになるというが、「柔道は危険だ！」という親が多くて学校側は苦慮しているのだとか。

親たちは、この28年間に中学での柔道による死亡事故が100件程起きていることをその反対理由に掲げているが、一方、学校側では、死亡事故の大半は部活動時のものであり、年間10時間程度の武道の時間では危険な投げを教えるところまではいかないと主張しているという。

柔道を多少なりともかじっておくことは護身の為にも有効だし、柔道や合気道で習う「受身」によってとっさの際に我が身を守ることができるようになるというのに、100％の安全を求めていざという時に約に立つ護身の術を教えないことが果たして、子供達の一生の為に本当によいことなのだろうか。

又、中学時代に、武道を通じて日本の伝統や文化を学ぶという事も意義のあることだと思うのだが、「絶対に安全とはいえないから」という理由でそのような機会を与えないというのも行き過ぎではないだろうか。

折から、神奈川県海老名市では今は使っていない小中学校のプールを釣堀として再活用するという何だかマンガのような案が検討されているという新聞記事を見た。同市では「プールでは事故が起きる可能性がある」という父兄や学校関係者の要請により06年に学校プールの全廃を決めたという。無用の長物となった学校プールを壊すには費用がかかるからと放置されていたが、それなら近所のお年寄りたちに釣りでもして貰っては―――というアイデアが「学校釣堀」構想につながったという訳だ。

万一水難事故に合った際には、泳げないよりは泳げた方がよいに決まっている。しかし、都会に住む子供たちが水泳を習おうとしても学校プールが全廃なので、子供を有料のスイミングクラブに通わせるしかなくなってしまった。まさか、教育委員会とスイミングクラブが癒着していて学校プール全廃を決めた―――などということはないだろうが、海老名の父兄たちは「安全、安全！」と言っている内に自分達の首を絞めているようにも見える。

柔道や水泳に限ったことではない。今の日本では、「絶対に安全とは保証できないならやめてしまえ！」というある種、エキセントリックなまでのリスク回避思考が大手を振ってまかり通っている。

震災の瓦礫の残留放射能が規制値以下であったとしても、「自分たちの県での処理には反対だ」という人が15％もいるという。彼等は、「規制値以下といっても微量でも放射能がある以上、―――やっぱり危ない！」というのだろうが、彼等は地球上のあらゆるところに微量の自然放射能があるということを知っているのだろうか。「放射能フリー」を求める限り彼等が住めるところは地球上にはない。（宇宙に出てもそこは磁気バリアのある地球とは違い強力な宇宙線（放射線）の飛び交う世界だ）

安全を求めることは重要だが、「究極的に安全」などということは求めることができないという限界を知ることも必要だ。

（3/04/12 9:00pm S.T.）

2012年3月2日

歯医者嫌い

この半年ほど歯科治療に通っている。歯医者嫌い（まあ、好きだという人はいないとは思うが）のタカさんが通うようになったそもそもの切っ掛けは、右上と左下の奥歯が痛むという要するに前歯以外では物が噛めないという悲惨な状態になってしまった為で、さしもの歯医者嫌いも観念して通い始めたのだが―――。

数回の治療で神経を抜いて貰うなどしたお蔭で痛みは取れたのだが、それからが長いこと―――月一回程度の割でどこをどう治療してくれたのか分からぬままに早半年、この調子で行くと後一年や二年はかかるのではないかという懸念も頭をよぎるが、なまじ歯医者に「早くしろ！」的なことをいったが為に、邪険な治療で敵討ちをされたら―――などと思うと何も言えず、ヘビに睨まれたカエルのように延々と続く歯医者通いに耐えている。

「一番高い被せ物をして下さい」といいさえすれば、治療は三日で済むとアドバイスしてくれた人がいるけれど、右と左合わせてウン十万円x2というのも、そんな金があるなら又、ラスベガスに行った方がよいような気がするし−−−。（総入れ歯にしたら200万円かかったという人もいたが、歯医者ってどうしてこんなに高いのだろう−−これも歯医者嫌いの原因の一つだ）

そんな治療を続けている最中、先日、ガムを噛んでいたら治療中だった左の奥歯の仮の詰め物の一部が取れてしまった。痛くはなかったけれど舌先でその部分を探ってみると、奥歯が一本抜けたような感じがした。慌てて歯医者に行って診てもらったところボールペンの先で突っついた程度が欠けていただけだという。

直ぐに簡単な詰め物をしてくれたけれど女性のアシスタントの「表面がちょっとはがれただけなのになにを大げさな―――」とでも言いたそうな雰囲気(多分気の所為だとは思うが）をひしひしと感じてちょっと恥じ入って帰ってきた次第。

人の舌先と指先はもっとも神経が鋭敏なところという話は聞いてはいたが、今回あらためて舌先って言う奴は、偉く敏感なところだなぁ〜と実感した。

人体各部位の「神経細胞の量」を図式化した人形、「ホムンクルス」（まだ見たことがないという人はネットで検索してみて下さい）を見ると、確かに舌と唇、そして手と指が異常に大きく描かれている。この大きく描かれた部分が神経の集中している部位ということなのだとか。

そういえば、人間の指先は10ミクロン(0.01�o)と20ミクロンの厚みを区別できるという。その一方、目をつぶっている人のふくらはぎにフェルトペンで点を書いて、どこに点を書いたかを当てさせると正確にその点を言い当てることはできないという。指先の神経は物凄く鋭敏なのにふくらはぎの神経は鈍感だということの証拠なのだとか。

そういえばヒゲの剃り残しがあるかどうかは、鏡を見るよりは指先で顔の表面を触った方がよほどよく分かるというのもやはり同じ理屈のようだ。

舌も含めて人間の口の中の神経も、めちゃくちゃ繊細にできているのだからそんな口の中をドリルやペンチでいじくり回す歯医者が皆に好かれる訳はないというのは、極めて理論的な帰結である。

タカさんの歯医者嫌いは、タカさんが臆病な所為ではないということが分かってちょっとホッとしている。

（3/01/12 9:00pm S.T.）

2012年2月29日

お誕生日

今年はうるう年なので4年に1回の2月29日がある。

麗子が生まれたのは、うるう年ではなかった37年前の2月28日だったけれど、生前彼女はよく友達に「よかったわねぇ〜誕生日が2月29日じゃなくて」といわれると言っていた。

友人たちは4年に一度しかこない2月29日生まれだと誕生日が4年に1回しかない−−−と考えたからそういう風に言われるのだと思うと言っていたが―――。

もちろん法律上は、うるう年の2月29日生まれも平年には2月28日に一つ歳をとると定められているから「4年に1回しか歳をとらない」などということはないのだが、確かに「今日が誕生日当日だ！」という実感を4年に一度しか味わえないのはちょっと淋しいかもしれない。

もっとも逆に考えれば、自分と同じ誕生日の人が365分の1の確率でいる我々に比べて「誕生日は2月29日」という人は1461分の1しかいない「希少価値」な訳で、そう思えば、それはそれでちょっと嬉しいかも。

そうそう「今日も誰かの誕生日」という歌があったけれど、1年365日は毎日誰かの誕生日になる訳で、当然、クリスマスイブの12月24日生まれや、クリスマス当日の12月25日、あるいはお正月の1月1日生まれという人もいる。こういう大きなイベントと誕生日が重なる人たちの誕生祝いはどうなっているのかだろうか。正月元旦に誕生会をやっているという光景はどんなものなのか中々イメージできない。（大晦日が誕生日なら結構盛り上がりそうだが）

妻の誕生日は8月だが、誕生日が夏休み中なので、小中学生の頃、学校のクラスの誕生会は7月生まれの子たちと合同だし、友達の誕生祝にはプレゼントを持って出かけたことはあるが、自分の誕生日には、皆田舎のおじいちゃん、おばあちゃんの家などに出かけてしまっていて、お祝いの言葉を貰えず「淋しかった」という。孫娘が妻と同じ誕生日なのだが、彼女も大きくなったら同じように思うのだろうか。

タカさんと弟の誕生日は3日しか違わない。小さい頃から家での誕生祝はタカさんの誕生日当日（父のボーナス支給日でもあった）に合同で行われていた。弟は今でも「何で自分の誕生日ではなくて、お兄さんの誕生日に合わせたのか」と、多少ひがんでいるようだ。

ロスにいた時の秘書のジェニファーは13日生まれだったが、彼女も「7年に1回の割で私の誕生日が13日の金曜日になってしまう」と言っていた。

誕生日とは、その人にとってかけがえのない大切な日であるにもかかわらず自分で選ぶことのできないものだ。人の一生は生まれる日からその終わる日まで天与の定めに従っているということだろうか。

（2/28/12 9:00pm S.T.）

2012年2月27日

自然を見る力

朝、天気予報を聞いていると「降水確率20％」位でも「念の為、折り畳み傘をお持ち下さい」と予報士が付け加えることが多い。降るか降らないかは本来、「零か百か」だから「念の為」などという予報は、何もいっていないのと同じではないかなどと思うのだが―――。

あの降水確率という奴、気象庁が1980年から始めたものだというが、多分「当たらない！」と言われ続けたお役所である気象庁が、役人らしく「言い訳の道具」として考え付いたのではないかというのが、天気予報嫌いのタカさんの見るところだ―――。（妻にはよく「あなたは、何か気象庁に恨みでもあるの？」といわれる）

スーパーコンピューター「京」で計算したところで千変万化する大気の流れを予測することなんてできないだろうから、いくら精度が高まっているといったところで明日の天気などそうそう正確に予測などできる訳がないというのがタカさんの天気予報不信の理由であり、「降水確率50％」などという「降っても、降らなくても当たり」の予防策をはったことしか言わない気象庁の、三ヶ月予報なんて辻占と同じだと思う。（ちなみに、昨日発表された長期予報では「今年の夏は暑い」そうだ）

雨が降るかどうかを知ることが重要だった漁師や農家は、昔は雲の流れを見るとか、「朝焼けは雨、夕焼けは晴れ」といった古くからの言い伝えなどを総動員して、自らの体感で天気を言い当てていた。タカさんの世代より上の人なら出かける前にラジオやテレビの天気予報を聞いてもそれを鵜呑みにせず、自分で空の雲行きを見て、雨が降るか降らないかを判断する。

タカさんも「折りたたみ傘をもってでるべきかどうか」は自分で判断するが、これが外れることはめったにない。気象庁の「降水確率20％」で「念の為、折り畳み傘をお持ち下さい」という予報を鵜呑みにするなんて、なんだか霊能者の言うまま操られているという某お笑いタレントと同じではないかとすら思う。

2003年に突如、アメリカ北東部と中西部からカナダ・オンタリオ州に至る地域を襲った29時間も続いた大停電の日の夜、「夜空に不思議な光がたくさん見える」という問い合わせが、新聞社や放送局に殺到したという。停電になったことで夜空の星がくっきりと見えるようになっただけなのだが、日頃、都市の明かりで見えない星が見えたことで人々は、パニックに陥ってしまったというのが真相なのだとか。

幼い頃に田舎で降るような星空を見て育った身には信じられないような話だが、せいぜい数個の星しか見えない夜空を見て育った現代の都会育ちの若い（あるいは中年の）日本人もニューヨークと同じようなことを思うかもしれない。

人は地球という自然環境の中に生きているにもかかわらず、明かりが満ち、（天気予報などの）情報が満ちている現代、人は自然そのものを見なくなっている。それは幸せなことといえるのだろうか。

（2/26/12 9:00pm S.T.）

2012年2月24日

習熟度別クラス編成

既存の制度や枠組みに慣れきってしまい「変革など無理！」と諦めきっている今の日本人にとって、早急な実現可能性に疑問はあるものの、大阪の橋下市長が示した「橋下版船中八策」が、それなりの「目覚まし効果」をもたらしたことは事実だろう。多くの規制政治家や既得権者にとってはあの船中八策が「太平の眠りを覚ます蒸気船---」のような効果を果たす可能性は少なからずあるかもしれない。

その橋下市長が、公立の小中学校でも留年制度を取り入れることを検討して欲しいと教育委員会に申し入れたという。

留年というと即「落第」というイメージと結びつきがちで、なにしろ「競争はよくない」といって運動会の徒競争を廃止するとか、皆が手をつないで一緒にゴールする等という珍妙な教育を主張する日教組や、「教育改革反対」をとなえる「現状維持」志向のマスコミや教育評論家の、猛反対が予想されるだけに、実現性は低いのではないかとも思うが、いずれにせよ船中八策の「参議院の廃止」「首相公選制の導入」並みに現状にとらわれない型破りな改革提言には又々、驚かされた。

橋本氏の「留年」構想の中身をよく聞いてみると「成績が悪ければ落第させる」という意味ではなく、学習達成度が足りない学科は、「補習クラスを作り再度教える」ということだというから、「留年」というよりは、「習熟度別クラス編成」という方が正確なようだ。そうであるならば、日本人の学力の急激な低下を食い止めるための一つの教育現場改革のアイデアとして、十分検討に値すると思う。

例えば「分数の足し算ができない大学生」が増えているといわれるが、小学4年生頃には習う「分数の足し算」をこの時期に習得できなかった場合、それ以降の算数、数学はまるでわからなくなってしまう。山で道に迷った時には、「迷い始めた地点まで戻る」ことが鉄則であるのと同じで、「分数の足し算ができない大学生」を作らない為の唯一の方法は、小学4年生の時に分かるまで教えることが必要だ。

ところが、習熟度別クラス編成（能力別クラス編成）は、「差別を生む」などというなんでも平等主義が蔓延している日本の学校制度の中では、「迷い始めた子」はそのままにして進級させてしまう。それが、結局大量の「分数の足し算ができない大学生」を生むことになっているし、それは日本社会にとっても、そして「分数の足し算ができない大人」になってしまった本人にとって、大きな損失であることは間違いない。

習熟度の高い子供には飛び級などの制度を適用しようという話が出た場合でも、文科省や日教組は習熟度の低い子供たちに対する「差別につながる」と反対をするが、教育者ならば「能力を持つ者の成長を抑えたからといって、能力の劣る者の能力が伸びる訳ではない」という原点に思い至るべきだ。

3月生まれの我が娘は、幼稚園ではクラスで一番小さかった。その娘が、娘より1年近く早く生まれた4月生まれた同級生と同じ一年生になった時、正直言って「月齢別クラス編成にしてもらわないと娘がかわいそう」などと思ったものだった。

能力別編成にももちろん色々なデメリットはあるとは思うが、頭から「そんなことは無理！」などと否定せず、「子供の能力にあったきめ細かな教育」とは何かを、是非、じっくりと検討すべきではないかと思う。

（2/23/12 9:00pm S.T.）

2012年2月17日

春は来る

スギ花粉が飛び始めたようで街にはインフルエンザ対策の為ばかりとはいえない、花粉症対策の為とおぼしきマスク姿が増えてきているような気がする。

昨年夏の日照量が少なかった影響で、今年のスギ花粉の飛散量予測は平年並みより少なく、多かった昨年の半分以下になるらしい。又、今年の冬の平均気温が低いこともあって花粉が飛びはじめたのも昨年より2週間ほど遅いのだとか。

日本三大名瀑の一つ袋田の滝も先日全面結氷したがこれは6年振りのことだという。確かに今年冬の寒さはかなり厳しいということのようだ。

そういえば、先日、気象庁が今年最初のさくらの開花は予測を発表したが、開花は例年より遅くなるだろうとのことだ。（まあ、今年のさくらの開花は例年より早くなるだろうなどとは素人でも思わないが）

さくらの開花も、スギ花粉の飛び始めと同じ位遅くなるとすると首都圏でのさくらの開花は丁度、入学式の時期とぴったり重なるかもしれない。大学の9月入学が話題になっているけれど、やっぱり日本の入学式はさくらの季節がぴったりすると思うのは、古い世代だからだろうか。

昨年も、さくらの開花は例年より遅かったように記憶する。少なくとも2年連続で「例年より遅い」となると、「地球温暖化」はどうなっているのだろう？　と思わないではないが、あれだけ「地球温暖化」を叫んでいた温暖化カルトの人たちは最近は、随分と静にしているけれど―――都合の悪い時には静にしているというのは何故だろうか。もっとも、中には「今年の冬が寒いのは、地球温暖化の所為だ！」という珍妙な説を唱える温暖化カルトの御仁がいないではないが。

今年の春の訪れはいつ頃になるのだろう。二十四節季の一つである「啓蟄」は、地中で 冬ごもりしていた虫が春の到来を感じ、草木が芽吹くと同時に地上へ這い出してくる日だそうで今年は3月5日がそれに当たるが、今年の寒さからすると後2週間ほどで春になるとはちょっと思えないのだが―――。

そうそう、啓蟄といえばアメリカにもこれと似たような季節のイベントがある。ペンシルバニア州などを中心としたドイツ系移民の人たちが19世紀から守っている風習で、例年2月2日に冬眠しているグランドフォグというジリスの一種を無理やり穴倉から引っ張り出し、そのグランドフォグに春の訪れる日を占って貰うというイベントだ。（グランドフォグが、タキシードにシルクハット姿の祭の主催者に、グランドフォグ語でお告げを伝えるのだという）

今年のグランドフォグのお告げによると「今年の冬は後6週間続く」のだそうである。即ち、このお告げによると春の訪れは3月15日頃、すなわち啓蟄の10日後ということになる。気象庁の予報とどっこい程度の信頼性（？）はありそうなお告げだ。

いずれにせよ春まであと一ヶ月程。あと一ヶ月も寒さが続き、インフルエンザや花粉症に悩まされるのかと思うとちょっと鼻白むけれど、「終わらない冬はなくあと一月もすれば春になる」と前向きにとらえれば、春もそんなに先の話ではないと思えてくる。

（2/16/12 9:00pm S.T.）

2012年2月14日

情人、愛人、恋人

古代ローマに始まったといわれるバレンタインデーの風習が日本で始まったのは50年ほど前、メリーチョコレートが自社のチョコ拡販の為に「女性から好きな男性にチョコを送って愛を告げる日」だといって宣伝したことが起源であることはよく知られている。

本来のバレンタインデーは「女性から男性へ」とも｢チョコレート｣とも関係なく、単に男女間、家族や友人同士でプレゼントを贈る、というものでありアメリカ駐在だった時に、「日本では−−−」と話したら、「日本人は我々の風習に、なんちゅうことをしてくれたのだ！」と言われたことを思い出す。（日本人が、アメリカ人に日本茶を出したら砂糖を入れて飲まれたようなものか）

もっとも、最近はアメリカ人もバレンタインデーにチョコを贈るという「日本流」が結構普及しているとか。でも、花とかカードを贈るのが一般的であり、日本と違うのは「男性から女性へ」プレゼントするのが基本という点だろう（勿論、女性から男性でも構わないがそんなに多くはない）。

バレンタインデーには「女性から男性」へ、そしてホワイトデー（3月14日？）にはお返しとして「男性から女性」へという風習も、やはり日本の菓子業界が、売上拡大の為にでっち上げた風習だ。今や、日本のみならず韓国や中国、台湾にある「ホワイトデー」だが、欧米人には「何？　それ！」といった代物だ。

ホワイトデーなるものを勝手にでっち上げた挙句、「女性からのプレゼントに男性がお返しをする場合、3倍返しが常識！」などという（女性週刊誌を使っての）キャンペーンがあって以来、義理チョコとわかっているのに倍返し、3倍返しをしなければならない小遣いの乏しいお父さんたちには、もはやバレンタインデーは一種の厄日になってきているという笑えない話もある。

香港に出張していた時に丁度バレンタインデーだったのだが、中国ではバレンタインデーのことを「情人節」といっているのを見て「えっ　情人？」とちょっと笑ってしまったものだ。「情人節」というのは元々牽牛織女が年一回の逢瀬を楽しむ七夕のことだったのだが、バレンタインデーが中国に入ってくるようになってこちらも情人節ということになったのだとか。

「情人」を国語辞典で引いてみると「情交関係にある人。愛人。いろ。」などと載っている。「愛人」も国語辞書には「情婦、情夫、情人」となっているところを見ると日本ではどうも「情人」や「愛人」には生々しいニュアンスがあり可憐な乙女たちが胸をときめかせながらチョコレートを贈る男の子というイメージとは随分違う。勿論、漢字の母国である中国では「情人」や「愛人」は日本語の「恋人」に近い意味でありいやらしい意味はないようだ。

中国語に詳しい訳ではないが、以前中国の人に聞いた話では「恋人」という言い方は（無いではないが）中国語ではまず使わないのだとか。ということは、日本語の「恋人」が持つプラトニックラブのニュアンスを持つ言葉は中国語にはないのだろうか。西欧と同様に、恋愛とは限りなくセックスに近い概念なのだろうか？？？などとも考えてしまったのだが−−−。

言葉のちょっとした違いから類推できるのは、それぞれの国、文化による恋愛観の違いということなのだろうかなどとも思ったが、タカさんは、なにせこの辺りの事情となると疎いもので−−−この辺で止めておこう。

（02/13/12　9:00pm S.T. ）

2012年2月10日

選択肢がない

アメリカ大統領選挙の共和党候補選びが3月のスーパーチュースデーに向けて激しさを増している。

2年間をかけての大統領選びの過程はなんとも壮大な無駄にも見えるが、世界で最大最強の権力を握る人物を選ぶために、これだけの時間と、とてつもなく莫大な金をかけていることに却って安心感のようなものを感じないではない。

もし、アメリカの大統領が、インチキなマニフェストを立てて総選挙を勝った政党の仲間内だけの談合で、浮かび上がってきた（鳩、菅、そしてドジョウのような）人物がつくようなことになったら世界はもうとっくの昔に滅んでいるかもしれないのだから。（何しろアメリカの大統領は、世界一の軍事力の指揮権をもっているのだ）

共和党の予備選をみていると、基本的には相手候補の悪口（ネガティブキャンペーン）が一番上手い候補が勝つといった仕組みになっていることとか、そんなネガティブキャンペーンの中味がほとんど金がらみ女性関係がらみのものであることなど、相手の悪口をいうことは「潔くない」と思う日本人のメンタリティーからすると、辟易とするところはあるが、それでも二年もかけてこういった悪口雑言の中傷合戦を勝ち抜いた者が最終的に大統領になるのだからそれはそれで「大した人物」ということなのだろう。

アメリカの大統領選みたいなことを日本の指導者選びにやってみたらと思わないではないが、残念ながら日本の政治家にはあんな過酷なキャンペーンを戦い続けられるほどの識見やガッツを持った人物は見当たらないし、なにしろアメリカの大統領選挙を支えている「国民参加のプロセス」を日本の選挙民に期待することができない以上、やはり無理だろう。

アメリカの選挙民はいいなぁ〜とうらやましく思えるのは、この「政治プロセスへの全員参加」という部分だ。

「大きな政府」か「小さな政府」かといったところからはじまり、保守か、リベラルか、増税か減税か、中絶反対か容認か、等々数限りない選択肢があるなかで、数多くの候補が様々の選択肢を提示し、選挙民はその選択肢の中から自分の意思にもっとも近い候補を選ぶことによって次第に次期4年間のアメリカという国の行く道を決めるプロセスに加わる。

選挙民には最初には多くの選択肢が用意されており、その中から自分がもっとも好ましいと思う物を選んでいく−−−という自由は、政治参加における必須の条件だ。

日本ではどうだろう。民主党も自民党も言っていることはほぼ同じだ。選挙の投票以外に選挙民には一切の選択の余地がない。

首相となるべき人物についてもドジョウがいいか、優柔不断なナヨちゃんがいいかといった程度の小学校の学級委員長選挙レベルの選択肢しかないとなれば、選挙民は、政治参加の意欲などもちようがないではないか。

共和党候補選びのバカ騒ぎを見ながら、そんなバカ騒ぎを羨ましく思う日本の選挙民は哀れとしかいいようがない。

（02/09/12　9:00pm S.T. ）

2012年1月30日

総ざんげが必要だ！

読売新聞が行った世論調査によると消費税率の引き上げが「必要だ」と答えた人は全体の63％にものぼったという。

野田首相のいう税と社会保障の一体改革なるものが、その狙いは「社会保障制度を維持するため」との大義名分を掲げている以上、「年金制度が崩壊したら困るから、消費税増税も、まあ、仕方ないか！」と考える人が63％もいるということなのだろう。

但し、消費増税の本当の目的は「社会保障制度の維持」などというきれい事ではなく、1000兆円にも膨れ上がった日本の借金を少しでも減らそう、あるいは減らないまでもこれ以上増えないようにする為」ではないかという疑いは拭えない。（少なくとも、野田さんを裏で操っているといわれる財務省の狙いはそこにある）

嵩んだ借金を減らす為にせよ、年金制度をはじめとする社会保障制度を維持する為にせよ、やっぱり消費増税をするに当たっては、少なくとも「借金をこんなに増やしてしまったのは誰か」「社会保障制度が維持できないようなことにしてきたのは誰か」という責任の所在を明らかにして、責任ある者がちゃんと謝罪し、「失敗学」ではないが、何でこんなことになったのかを総括する必要があるという意見にはうなずける。

ところが、「国会議員が多すぎてムダな金がかかったから」だとか「お役人天国を放置したためにこうなった」などという矮小な議論がまかり通っているけれど、国会議員の歳費や定数を削ったところで出てくる財源は1000兆円に比べたら微々たるものだし、役人の給料を下げたからといって（まあ、下げた方がいいには決まっているが）その額はやはり1000兆円の何千分の一にしかならないことを考えれば、今国会で喧々諤々やっている「公務員給与の引下げが先だ！」「議員定数削減、歳費削減が先だ」という議論は、要するに「1000兆円の借金」やら「社会保障制度の維持困難」の真の責任者、真の原因の追究をかわすための目眩ましに思える。

「1000兆円の借金」やら「社会保障制度の維持困難」を招いたのは直接的には歴代の政治指導者やら役人といった政策決定者、日本経済の指導者たちかもしれないが、そんな政治家を選び、1000兆円まで増え続けた国の借金や破綻する懸念もある社会保障制度によってそのメリットを享受してきたのは我々、一人一人の国民、特に中年以上の世代だということを忘れてはならない。

既に年金を需給しはじめている世代、あるいはもうすぐ年金需給が始まる世代にとってはもし突然「年金制度維持が困難になりました」といわれたら困るから、「年金制度維持の為に必要です」といわれれば「消費増税も致し方ない」「消費増税は必要だ」と答えるだろうし、子供手当（今度は「子供のための手当」と名称が変わるらしいが）やら農業補償やらの選挙目当てのばら撒き手当の恩恵（？）に預かっている人たちは、やはりばら撒き手当をもらえなくなると困るから〜という理由で「消費増税も致し方ない」と答えるだろう。

しかし、今世論調査の対象にもなっていない18歳以下の世代、将来年金が本当にもらえるかどうかも分からないし、まだ子ども手当などばら撒きの恩恵に預かっていない若い独身世代はどう考えるだろう。

彼等が成人し10％とか20％の消費税を払わされるようになった時に「俺たちの親の世代、そして爺さん、婆さんの世代は自分達の作った借金のツケや、自分達の年金確保の為に、俺たちにこんなにも高い消費税を勝手決めた！」と今の現役世代を恨むことになりはしないだろうか。(一度上がった消費税が下がるなんていうことがあるとは思えない）

タカさんは消費増税も致し方ないとは思っているが、結局は自分達が散々メリットを享受してきた（多分、これから数年、数十年は享受するであろう）ツケを我が孫の世代に押し付けてしまうことになることに忸怩たる思いを拭い去ることはできない。

野田さんやら歴代の指導者、役人たちを叩くばかりではなく（叩く必要はあるが）、自分達は彼等の共犯であり、彼等と同じようにその責任を逃れようとしていることに対する「総ざんげ」が必要ではないかと思う。

（01/29/12　9:00pm S.T. ）

2012年1月27日

決める覚悟

日本的経営の長所の一つに「稟議システム」が挙げられることがある。組織全体で企画をあらゆる角度から検討し（中には突っつき回しているだけという部署もあるかもしれないが）、課長、部長、本部長、社長による裁可（はんこ）を積み重ねた結果漸く一つの案件が許可され実施される。

「石橋を叩いて渡る」ように時間と多くの手間をかけて(多くの人の手を経て)検討され尽くされた案件ならば、失敗のリスクは当然低くなるから、アメリカ的な経営に於いて往々にして起こりがちな「一人のトップによる決断の失敗」による経営ミスが起こり難いし、万一、その案件が失敗に終わったとしても「皆ではんこを押したのだから（皆が失敗の責任の一端を負っているのだから）」と、お互い傷を舐めあうので結局誰も責任をとらないで済む。（失敗の責任をとらないで済むというのは、サラリーマン社長が多い日本企業にとっては好都合だ）

勿論、稟議に時間がかかり過ぎることで、スピードが要求される昨今の企業経営においてはどうしても日本企業は欧米企業に遅れをとりがちだというデメリットはあるのだが−−−。稟議システムというのは言い方を変えると「コンセンサス」優先システムでもある。「皆が賛成したじゃないか〜」となれば、失敗した場合でも結局「誰も責任をとらない」で済んでしまう。

十年ほど前、米国式経営全盛時期があった。（今は、米国式経営だからダメという風潮さえあるけれど――（世の中移ろいやすいものだ）ところがそんな米国式経営全盛時代でも、多くの企業には稟議システムが残っていた。すなわち米国式経営による責任と日本式経営のコンセンサス尊重が奇妙に並立していたのだ。その為に多くの企業では、稟議許可のはんこを押した部長、本部長、時には社長が失敗の責任を問われるなどという以前には無かったような事態が発生した。責任が伴うとなれば、誰も決めたがらなくなる。いままでは下から上がってきた稟議書にめくら判をおしていた偉いさんたちが一斉にはんこを押さなくなってしまったのだ。稟議書が上がってきても、決済せず（ダメならダメと否決印を押せばよいのにそれもせず、かといって可決印も押さないで）未決書類箱にほうりこんでいるだけという偉いさんが続出し、ただでさえ遅い日本企業の意思決定が益々遅くなったものだった。

企業経営に限らない、家庭内に於ける問題にせよ、恋愛関係にせよ「決める」ということには必ず責任が伴う。（親に押し付けられた結婚なら、「決めたのは私じゃない！」と結婚の失敗を親の所為にして気楽に離婚もできるが、親の反対を押し切って自分が結婚をきめたのなら面子上、そうそう簡単には離婚する訳にもいかなくなる）

野田首相は施政方針演説で「決められない政治からの脱却」の意欲を訴えた。ハシズムだの独裁だのといわれながらも「決めようという意志」が見える橋下大阪市長の人気にあやかろうとしたのかもしれないが、ここ6代ほどの内閣の最大の欠陥は「決められない」「決めようとしない」ことだっただけに野田さんの意欲は買いたいところだが―――。冒頭述べたように「決める」ということには常に「責任」が伴うという自覚が野田首相にはあるのだろうか。

税と社会保障の一体改革にしても、議員定数削減問題にしても、あるいはTPP問題にしても今の所野田さんが何をどう決めたいのかははっきりしない。刑事被告人の小沢元幹事長、参議院利権ボスの興石幹事長、岡田副総理や、与野党の有象無象の言うことに右往左往し、時には「丸呑み」という奇策に打ってでるなど首相としての「決める！」という意思は見えてこない。ひょっとして「決める」とはいいながら失敗した時の責任を取りたくないばかりに、コンセンサスを優先しその責任逃れを考えているのではないかとも思えてならないのだが―――。

斜陽英国の救世主ともいわれた鉄の女、マーガレット・サッチャーは「私はコンセンサスというものは、さほど重要なものであるとは思いません。あれは時間の浪費の原因のようなものですから」といったという。彼女が独裁的であったという批判の為によく引用される言葉だが、むしろ、混乱する大英帝国の首相として「決める」そしてその「決めたことに責任を持つ」という強い意思を示した言葉として賞賛すべきだとさえ思う。

どじょう首相にサッチャーのような強い「決める」覚悟があるだろうか？

（01/26/12　9:00pm S.T. ）

2012年1月20日

遊びと戯れ

今年のNHK大河ドラマ「平清盛」で劇中歌として流れる「遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん」は、平安時代に流行った歌謡である今様の中の有名な一節で、後に「遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそゆるがるれ」と続くのだが、小学校で習った覚えがある。(今は、高校の古典教科書に載っているそうだが、ということは半世紀前の小学生は、今の高校生並みの古典素養を教わっていたということになる)

この歌、意訳すれば「人は一時(いっとき)遊ぶために生まれてきたのだろうか、一時戯れる為に生まれてきたのだろうか、そういうことも考えずに無邪気に遊び興ずる子供たちの声をきいているとなんだか物悲しくて心がゆさぶられてしまう」といったところだろうか。

何の為に生まれてきたのか、一体何のために生きているのだろうか、と考え無常を感じるという心情は今も昔も変わらないだけに、千年も前の今様に現代に生きる我々が変わらぬ共感と感動を覚えるのだと思う。

それにしても、天皇や貴族にとっての教養といえば和歌であった平安時代、その頂点にあった最高権力者、後鳥羽上皇は、白拍子や庶民が愛唱していた今様を好んでのめり込んでいたというのだから余程変わった人だったのだろうか。現代に置き換えたら代々クラシック音楽愛好家であった宮家の長が突然バイオリン演歌節語りになったようなものなのだから―――。

ところでこの歌の中で、同じ意味のように使われている「遊び」と「戯れ」には違いがあるのだろうか。辞典を見ると平安時代には「遊ぶ」とは「詩歌や管弦を楽しむ」という意味であり、「戯れる」とは「おどける、ふざける」とか「いたずらをする、ふまじめなことをする」であり意味は微妙に違うようだ。要するに「遊び」は本気度が高く、「戯れ」はふまじめというかいい加減なものという違いがあるようだ。

確かに、今でも趣味のゴルフだとかギャンブルは「遊び」とはいっても、「戯れ」とはいわないし、悪代官が腰元女中の胸元に手を入れれのは「遊び」というよりは、「お戯れを！」と言う方が相応しいようにも思う。（長年続いている浮気なら「遊び」ともいえるが、一晩限りのキャバクラならば女遊びというよりは「戯れ」に近いかも)　

「梁塵秘抄」の中にはタカさんの好きな歌がまだまだたくさんあるが、敢て選ぶとすればもう一つは「仏は常にいませども、うつつならぬぞあわれなる、人の音せぬ暁に、ほのかに夢に見え給ふ」だ。

日本の古くからの自然信仰と渡来した仏教信仰が融合した日本的信仰の真髄がここにあるのでは、あるいは日本人の持つ無常観とはまさにこのような素朴なものだったのではないか−−−など色々と考えさせられる。

（01/19/12　9:00pm S.T. ）

2012年1月19日

船旅、やめておこう

豪華客船として1970年頃まで活躍していたクイーン・メリー号はロングビーチ湾内に係留され静態保存されていて、その一部はホテルとして現在も営業している。

このクイーン・メリー号ホテルに泊まったことがある。船は岸壁としっかりとつなげられているから、岸壁に付属した建物と言ってもよいぐらいなのだが、船室に座っているとゆっくりとした揺れを感じる。接岸しているとは言え、船本体は水上に浮かんでいるのだから、湾内の波の影響でやはり微妙に揺れるのだ。小刻みな揺れなら耐えられるかもしれないが、大きくゆったりとした揺れを横になったベッドで絶え間なく感じるうちに何だか気分が悪くなってくる。船酔いだ！

元々、車酔い、船酔いし易い性質ではあったが、まさか湾内に係留されている船で船酔いするとは思わなかった。夜遅くにチェックインしたし、港近くにはこのホテルの他に泊まるところもないとなれば、がまんしてここで一晩過ごすしかなく、散々な目にあった。あの時「絶対に船旅（例え係留されている船とはいえ）はしない！」と心に誓ったものだ。

地中海で座礁転覆したクルーズ船は横浜ランドマークタワーを横にして浮かべた位の大きさだそうで、総トン数もクイーン・メリー号の2倍近いというが、そんな大きな船でもやっぱり揺れるだろうし、まして転覆したら乗客を置き去りにして船長をはじめ乗組員の方がさっさと逃げてしまうと聞けば、船旅に対する恐怖心は更に増す。

ところで、この豪華客船には乗客、乗員4200人が乗っていたが、内43人は日本人ツアー客だったのとのこと。豪華クルーズといえばかつては「金持ちの旅」というイメージがあったが、このコスタ・コンコルディア号に乗り合わせた日本人客の大半は、関空ローマの往復航空運賃、8泊10日でローマ、ベニス、マルセーユ、バルセロナといった地中海観光名所を巡るクルーズ代、船内での食事代込みで25万円程度というパッケージツアーの参加者だという。こういう旅ならば、ホテル代や観光地巡りの飛行機代などが、別途必要になる地上旅行に比べたら、費用的にはかなり割安だ。いまや船旅は「豪華な金持ちの旅」というよりは「庶民的でリーズナブルな旅」になっているらしい。

地中海クルーズの場合、船は夜出航、朝には次の寄港地に到着というスケジュールなので乗客は、日中観光地を周り夜は船をホテル兼移動手段として使うことができ、これなら費用ばかりではなく旅行時間も大幅にセーブできる。

コスタ・コンコルディア号のプロモーションビデオを見たが、船内には幾つものレストラン、バー、プール、カジノそしてショッピングモールまでありまるで超豪華ホテルが海に浮いているといった感じだ。費用がリーズナブルで内容は超豪華となればクルーズ船ブームも当然かも知れない。（カリブ海クルーズなどは、陸上のホテルよりクルーズ船に泊まる方が治安の面で安心だ！という客で人気があるらしい）

良い所ずくめとなれば、一度、試してみようかなぁ――とチラット思ったが―――いややっぱり係留されているクイーン・メリー号で酔ったことを思い出し、転覆しても乗組員にほっぽらかされるリスクを考えたら、やはり、止めておくべきだろう。

（01/18/12　9:00pm S.T. ）

2012年1月17日

人いきれ

40年程前まで北海道では有力な輸送手段として馬が活躍していた。冬支度の頃など、石炭や薪を一杯に積んだ馬車をよく見かけたものだし、冬には真っ白い鼻息をもうもうと吐き出しながらそりを引く馬の姿をなんとも頼もしく見たものだった。

こういった輸送で活躍していた馬は、その御者(馬稼ぎ、とか馬喰と言われていたと思う)の家に家族と一緒に飼われているのが普通だった。勿論、一家の大黒柱とも言える馬を大切にしていたからこそ人は馬と一緒の屋根の下で暮らしていたということなのだが、御者一家にとっては馬と一緒に暮らすことで寒い冬には暖房効果を得るというメリットもあったという。

そういえば、いつもは夫婦二人だと寒々としがちの我が家も、6歳と3歳の孫が遊びにきて元気に走り回ったりしていると暖房を切ってもよい位温かくなってくるのは、（馬と一緒にしたら娘に怒られそうだが）小さいとは言え孫達の発熱量が老人二人のそれとは比較にならないほど多いからということなのだろう。

一冬でも空き家になった家の傷みは激しいという。やはり家というものは本来、多くの生き物が住んでいてこそ維持できるということなのだろう。

昨年(平成23年)に生まれた子供の数は105万人とかろうじて100万の大台を保ったものの戦後最低を記録したという。これはいよいよ昨年で、団塊ジュニア世代の出産がピークアウトしたことによるということだそうで、人口予測に寄れば日本に於ける出生数低下は今後回復する見込みはないともいう。回復しないどころか2055年の出生数は45万人、2105年には23万にまで減るという予測もあるという。

その頃には地球温暖化が進んでいるからまあいいや！などと考えるかもしれないが、人口が少なくなり子供のいない家、一人暮らしの家が多くなった40年後、90年後の日本の家庭の冬はきっと暖房代が嵩むのではないかとも思うのだが。

やっぱり本来家庭というものは人いきれでむんむんしている位の方があらまほしいようにも思うが−−−。

（01/05/12　9:00pm S.T. ）

2012年1月13日

値引きセールはお得？

先月だったかビッグマックが単品一個200円というキャンペーンをやっていた。油ぎとぎとのポテトだとかコーラとセットにしたら600円近くの値段になるなら、ポテトもコーラもなしでビッグマック2個400円の方が随分お得になる。400円なら牛丼には負けるかもしれないが、コンビニ弁当より安い！という計算になるのだから――。

しかし、あのキャンペーンが終わって以来、まだ一度もマックに行っていない。一個200円だったビッグマックをそのほぼ倍近い値段で買うとか、ポテトとコーラがついたセットで700円近い金を払うのがなんだか損をしたような気分になるからだ。

随分前だが、タカさんの家の近くにちゃんこ料理店があった。この店は本場所開催中、すなわち年間で90日の間は「ちゃんこ鍋半額」サービスをしていたので本場所開催中にはよく行ったものだ。半額になるのはちゃんこ鍋だけだが鍋を囲んでとなれば客は当然酒を飲むし追加の料理も頼むからこのちゃんこ店採算はあっているように見えにぎわっていたのだが―――しかしこの店、一年ほどで店を閉じてしまった。

経営不振の原因はどうもあの「場所中、ちゃんこ鍋半額キャンペーン」だったようだ。というのも「ちゃんこ鍋半額」に慣れてしまった客は、キャンペーン期間ではない年270日余りの間はまずこのちゃんこ料理店に行かなくなってしまったのだ。千秋楽までは一人前1500円で食べられた鍋が千秋楽の翌日には一人前3000円だとなればなんだかばかばかしく思えてその店に行く気がしなくなるという訳だ。

ビッグマックやこのちゃんこ料理店の例のように値引きセールというのは中々難しい。今や常態化している牛丼の値引き合戦も、値引き期間が終わると、途端に客数は大きく落ちるという。その為、客足回復を狙って又無理な値引きキャンペーンをはじめるというまさに「死の値引き合戦」が繰り広げられているのだとか。

中には「半額ならお得！」と思う客の心理を狙って通常の倍の価格を「通常価格」だといつわり、「キャンペーン中は半額」などと宣伝して客を騙すといったインチキ商法まであるという。地元客や常連さんならば「あの店のちゃんこは一人前、3000円だし場所中は1500円だ」と知っているからこんなインチキキャンペーンには乗らないけれど、これがインターネットでとなれば全国に散らばる不特定多数の客の中には「えっ、3000円も安くなるなら」とわざわざこの店を訪れる客も出てくるだろう。

昨年、正月にスカスカおせちで大騒ぎとなったグルーポンなどのインターネット購買にもこういった危うさがある。そもそもこの手の商法の仕組みは、「購入者が増えれば商品を大幅に値引きする」といって二重価格を設定、「通常ならばこの値段だが購入者が何名以上になれば何パーセント引き」といううたい文句で客を集めるというものだ。元々、10000円の商品を20000円と宣伝し、500人集まれば半額の10000円と宣伝すれば乗ってくる客は多いかもしれない。

「損して商売する奴はいない」というから、「赤字覚悟の値引き」などといっても売る側には何らかのメリットがあるからその値段になっているはずだと考えれば、やたらと値引きセールに興奮するのもどうかな〜ということなのかもしれない。

（01/12/12　9:00pm S.T. ）

2012年1月6日

松飾り

暴力団の資金源にもなっているといわれたこともあって、警察が事業所や飲食店へのお正月の松飾り売りを徹底的に取り締まったといった理由もあったのだと思うが、近年の正月は街で松飾りを見かけることが少なくなったように思う。

住宅街でも、東日本大震災の影響だと思うが、昨年クリスマスシーズンには、家の回りを電飾で飾る家が突然全くなくなってしまったけれど、お正月の松飾りも余りみかけなくなった。あったにしても全体的に随分と小ぶりになったような気がする。

そうそう、昨年まではフロント部分にミニチュアの注連縄などというなんとなくアンマッチな乗用車を見かけることもあったが、今年は年が明けて以来まだ一台も見ていない。（結構、車で出かけてはいるのだが）

松飾りを見る限り、日本の正月の伝統も徐々に廃れつつあるかのようにも見えるが、どうもそんな訳でもなさそうだ。各神社仏閣への初詣客は例年に比べて減ったという話は聞かないし、正月2日の日、偶々銀座を車で通ったら、各デパートなどの福袋を求める客なのだろうか、とんでもない人出と車の数だった。

松飾りという正月習慣は、淘汰されつつあるものの、やはり日本の「正月習慣」として人々が愛着を持つものは残るという自然淘汰が進んでいると考えるべきなのかもしれない。「伝統を残す為には伝統は変わらなければならない」ということが現在進行しているということなのではないだろうか。

半世紀いや四半世紀前の大晦日、主婦たちはお節料理作りで大忙しだった。かまぼこや伊達巻は買ってくるにしても、黒豆を煮て、きんとんを作り、ごまめを煮て、数の子を漬けてといったところは各家庭でやっていた。もちろん、煮しめやなます作りなども年越しそばの際の添え物のてんぷら作りと同時進行で行っていた。いや、あのころの正月準備は一家あげての大騒動だった。

今、各家庭では、果たしてお節料理のどこまでを「手作り」しているだろうか。お節料理を注文で揃えるなどということは半世紀前ならば、よほどのお金持ちしかしなかったように思うが、今や有名料理店やデパートといわず、スーパーやコンビニなどでも豪華なお節セットが手頃な価格で買える様になったのだから、働いている主婦はもちろん、どこの家庭でも「手作り」するのがバカバカしいに違いない。

お餅を近所で寄り合って搗くなどという風習もなくなった。のし餅、切り餅、鏡餅の類も真空パックされたものを買ってくる方がカビも生えないし、余程効率的（？）だ。そもそも、大手スーパーをはじめ正月元旦から開いている店も多いのだから、焦って年末に買い溜めするとか、何日も前に準備をする必要もなくなった。

そうだからと言って年末年始の風景ががらりと変わったという訳ではない。年越しといえば、今も昔も紅白を見て年越しそばを食べ、元旦の祝い膳には豪華なお節を並べ、これまた鯛の塩焼きやら、お雑煮といった日本の伝統的な正月料理が並ぶし、お年玉という子供たちにとっては嬉しい風習もしっかりと残っているのだから、子孫に伝えるべき「日本の正月」は核のところでしっかりと守られているといえる。

自分が子供の頃のお正月とはいささか感じが違うが、孫と一緒に過ごす今のお正月は、自分にとってはまさにこれこそ「日本のお正月」という気がする。孫たちも、半世紀後には、今とは多少は変わったにしても、やはり核のところでは「これこそ日本のお正月」といえる正月を迎えてくれることだろう。　　　

（01/05/12　9:00pm S.T. ）

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