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2021年4月
＜＜4月タイトル＞
04/27 ユルユルはどうなる 04/27 今どきの若い者 04/28 バクシーシ 04/23 ビデオ判定 04/22 一代年寄 04/21
片務的 04/20 コロナ後遺症 04/19 いつか来た道 04/16 エポックメーキング 04/14 しょぼい聖火リレー 04/13 付いて行かねば
04/12 確率のマジック 04/09 もつ煮込み 04/08 最低法人税率 04/07 向こうから外れる 04/06 責任をとりたくない 04/05
矜持を持って 04/02 覆水盆に戻らず 04/01 汀のさくら
2021年4月28日
ユルユルはどうなる
ロックダウンを行い、これに反する行為に対しては強制力をもって罰する、という中国のみならず西欧諸国でのコロナ対策に比べると、お願いベースともいわれる日本の緊急事態宣言やら蔓延防止措置はなまぬるすぎる、という意見も多い。
ただ、警棒で叩いても、手あたり次第しょっ引いても中々感染者数がへらない国（それどころか増えている国まである）に比べると、感染者数が不思議なことに一桁も二桁も低い日本には山中教授のいう「ファクターX」という特別な要因があるのではないかとも思えるが、まあこればかりは今のところ某国人がいう「我が国の人間は狂牛病に弱い」だとか「我が国の人間は、日本の原発処理水に弱い」（自国が放出している処理水は問題ないらしいが）という何か迷信っぽい話に聞こえなくもないが。（山中先生、早くファクターXの結論を出してください）
まあ、それはともかくこの、強制力をともなうか厳しい規制か、ユルユルの規制か、という問題について、今から二千五百年前の孔子が言っていた言葉を思い出した。
論語にある、子曰、導之以政、斉之以刑、民免而無恥、導之以徳、斉之以礼、有恥且格（これを導くに政を以ってし、これをととのえるに刑を以ってすれば、民免れて恥なし。これを導くに徳を以ってし、これをととのえるに礼を以ってすれば、恥有りて、かつただし）である。
孔子は、『人を導くのに法をきっちり定めて、刑罰をもって強制しようとすれば、人は、法律の網をくぐり抜けて恥じることがないが、人を導くのに道徳をもってし、人を統治するのに彼等の礼節を信じて任せれば、人というものは、徳と礼節を失い悪事を働くことを、恥だと思うから、自発的にその身を正すようになるものだ』と言っているのだ。
いくら警棒で脅しても、高い罰金刑を決めても、人々の中にはその決まりを、かいくぐろうとする者が出てくるし、かいくぐった者の中にはその事を自慢するものまででてくるだろうが、あくまでも人々の、「社会の為に蔓延防止に及ばずながら協力しよう」という自発的な公徳心を信じて任せるならば、警棒や罰金刑よりも高い効果がでるはずだ―――というのだが―――。
中国や西欧の一部でのやり方は、いわば人間性悪説に基づくもの（厳しく取り締まらなければ人は言う事をきかない）であり、日本のやり方は論語的な人間性善説に基づくやり方と考えられなくもないのだが―――。
コロナに関しては今のところ中国流の全体主義的やり方の方が成果をあげているようにも見えるが―――日本流のユルユル方式も感染者数から見れば善戦（苦戦中ではあるが）していると言えなくもない。
願わくば、ユルユル方式にも勝算があって欲しいとは思うが―――ワクチン接種がいつになるやら見通しも立たないが、今しばらくの辛抱だと思いたいものだ。
（04/27/21
10:00㏘）
2021年4月27日
今どきの若い者
三度目の緊急事態宣言が出された東京では、居酒屋などの酒類を提供する店に対しては休業要請、居酒屋であっても酒を提供しないという条件ならば営業してもよいが、午後8時までの時短が要請された。
居酒屋に行って酒を飲まないという人はいないだろうから「居酒屋は休業しろ！」と言っているのと同じであり、たっぷりとした休業補償費を約束する訳でもなくセコイ言い方で「休業しろ！」という小池都知事には、飲食業界は恨み辛みが募っていることだろう。
とはいうもののこの「要請」に従わずに酒を提供し夜遅くまで店を開けていたりすれば、マスコミを筆頭に、世間からは猛烈なバッシングを受けるだろうから、飲食店はこの小池都知事の「要請」に泣く泣く従うしかなかろう。店の立場にたてば、なんとも気の毒ではある。
そんな事情で、店の方は、嫌でも従わざるを得ないけれど、客側の方はどうだろうか。最近にわかに増えていたという、「路上や公園などの集団飲食」についても小池知事は、「注意喚起」すると発表しており、同時に商店街などには「屋外照明の夜間消灯」を要請しているというのだから（街灯が消えたら治安は大丈夫だろうか）、さすがに暗がりの道路や駅前で缶ビールを片手に飲む―――という人は減るだろう。（もっとも、今はやりだというソログルといわれるおひとり様風を装ってグループで集まる「ソログル呑み」なんていうのが出てくるかもしれないが―――）
オランダやフランスでは何度目かのロックダウンが始まっているが、ロックダウン疲れからなのかわからないが、「個人の自由の侵害」だと抗議する若者を中心とした市民が集まって抗議デモを行い、取締りの警官と乱闘を繰り広げ、逮捕者が出ているという。こんなニュースを見ると「欧州の人間は何をやっているのだ」とも思うが、同じ状況に置かれた日本の若者は、なんと大人しいことか―――、余程飼いならされてしまっているのか？とも思わないではない。
まあ、年寄りの口癖である「今時の若い者は―――」という言葉の後に「俺たちの若い頃は、もっと覇気があって押しつけには反発したものなのに！」と続けるか、「俺たちの若い頃は、こんな時にはフランスの学生運動（カルチェラタン騒乱）の猿真似をしたものだが、今の日本の若者は、しっかりと日本らしい社会規範を守るようになっていて偉い！」と感心すべきなのかは―――迷うところではあるが。
（04/26/21 10:00pm）
2021年4月26日
バクシーシ
コーランにはイスラム教徒が行わなければならない五つの義務（五行）が定められているが、その中の一つに喜捨がある。豊かな者は貧しい者に施しをしなければならない、という義務だ。
すなわちこの神（アラー）の定めた掟を守らない者は、死後天国に行けず未来永劫地獄で苦しむことになる―――というのだから豊かな信者にとっては恐ろしい神の掟だ。
エジプトにいた頃、貧し気な大人や子供に物乞いをされるとき彼らがいう「バクシーシ」とはこの喜捨のことを言っていると聞いた。街の中で子供にとりかこまれ一斉に「バクシーシ、バクシーシ」と迫られるとちょっと恐怖心さえ抱くことがあり手持ちの小銭を渡すこともあったが、日本の乞食ならば「おありがとうござい」（ちょっと言い方が古すぎるか――）位いうところを彼等は決して「シュクラン（ありがとう）」とは言わない。
バクシーシを与えというのは、金持ちのあなたが神の与えた義務を果たして天国に行く手助けをしてあげたのであって、寧ろ神の教えを実践するチャンスを与えてあげた、あなた（金持ちの方）こそ、自分（喜捨を受けた側）に感謝しお礼を言ってもいいはずだ―――という訳で、この日本との常識の180度の違いには、最初は驚き、時には腹を立てたりしたものだった。（なるほど、と納得するまでにそう時間はかからなかったが）
イスラムに限らず、仏教、ユダヤ教、キリスト教、ヒンズー教など宗教には、すべからくこの「豊かな者は貧しい者に施しをしなければならない」という喜捨の教えがある。
宗教を持つ動物は人間だけで、その人間だけが持つ宗教には「喜捨」の教えがある―――ということは、人間は元来お互いを助け合うようにできている生き物なのだ―――と考えることも出来るのだが―――。
人間性善説に基づくそういう考え方には心が和むし、ほっとするところもあるが、同時に、世の中は性善の人ばかりではなく、性悪の人も多く、「バクシーシ」が悪徳宗教の金集めであったり、賄賂の別名であったり、時にはバクシーシが怠惰を生む温床になったりするケースもあるから喜捨の制度は、社会の為にならないとする考えもないではない。そういう人たちの中には、社会の正常化のためには、「喜捨はしない、受け取らない」と決めて社会的な税制と社会福祉だけで機械的にやっていった方が、すっきりするではないか、という極論を口にする人たちもいないではない。
性善説か性悪説か、原始以来永遠に結論の出ない問題のようだ。
（04/25/21 10:00pm）
2021年4月23日
ビデオ判定
審判の判定に対してビデオ判定を要求できるというプロ野球のリクエスト制度は、試合の流れがブツブツと中断されて間延びがするとか、絶対的であるべき審判の権威が失われる、といった反対論も多かったが（特にOBに多かった）、すっかり定着してきたようで今年のシーズンは、タカさんが応援している千葉ロッテと巨人の試合では、昨シーズンの一試合平均0.7回よりもずっと多いように感じる。
両チームともに接戦が多い所為なのか、監督（井口監督と原監督）が二人とも文句をつける性格という所為なのかは不明だが、確かに試合途中で度々間延びがしてしまうことや、「審判どこみてるんだ！」というムードが漂うことは、制度導入前にOB連中が言っていたことが多少は当っているようにも思う。
このビデオ判定のリクエストに基づき検証の結果、当初の判定が覆ること（すなわち、リクエスト成功率が昨年、一昨年の33％前後よりも、今年は更に上がっているような気がするが実際はどうなのだろう？
毎回、ジャッジを下すとリクエストが入り、検証の結果、前判定を覆さなければならないという立場に置かれた審判は、極端に言えば観客のみならず、テレビ中継を見ている全国の視聴者の前で自分の技量について恥をかかされたようなもので、その精神的なダメージは相当なものではないかと同情するが―――。
逆に言えば、リクエスト成功率が低い監督は、「イチャモンばかりつけるが的ハズレの多い監督」という目で見られ、来期契約が危ぶまれはしないだろうか―――。
なんでもデータ化されてしまう今のプロ野球では、自分の下した判定が覆った率の高い審判だとか、リクエストが失敗に終わった率が高い監督などと言うデータもランキング形式で出てくるのだから当事者はたまらないのでは～とも思うが～。
現在はリクエストできないとされているストライク、ボールの判定や、ハーフスイングやボークの判定も、その内に人間の審判ではなく、AIによる機械判定にすれば、こういった問題は起きないかもしれないが―――果たして、それでファンは野球観戦を楽しめるだろうか？
かつて名物審判と言われた二出川審判は、翌日の新聞に自分のジャッジが明らかに間違っていることを示す写真が掲載されたとき、「これは写真が間違ってる！」と平然と答えたというが――今の時代、「このビデオ画像は間違っている」などと言える審判がいたらどうなるだろうか―――。
（04/22/21
10:00pm）
2021年4月22日
一代年寄
神事を起源とする相撲を、「スポーツ競技の一種」と割り切るにはいろいろ難しい面がある。他のスポーツではよくみる刺青（タトゥー）やヒゲは「美しくない」という理由で許されないという話も聞く。（髷が結えない程の禿頭になると引退させられるという話は、どうもウソらしいが―――）
日本の国技などともいわれる大相撲だが、外国人力士が加入するようになってからは、こういった日本特有の文化や習慣と国際的なスタンダードとの齟齬を調整するのは難しくなってきている。
日本相撲協会に設置された「大相撲の継承発展を考える有識者会議」が約2年間に及ぶ討議の結果を提言書にまとめ提出したが、「伝統の継承」についての部分はともかく協会にとっては、耳の痛い提言が並んでいて、特に新聞などが注目しているのは、功績顕著な横綱に対して一代限りで襲名を認めていた「一代年寄」は、「存在意義を示すものを見いだせない」と言っている部分だ。
これまでに一代年寄を与えられたのは、大鵬、北の湖、貴乃花の3人であり（千代の富士は、辞退）3人共に既に亡くなるなり、引退するなりして現在は一代年寄は誰もいないが、既に44回の優勝を果たしている横綱白鵬には、与えられる可能性があるだけに、この有識者会議の意見書が言っているのは、「白鵬に引退後、一代年寄を名乗らせるのはどうなのよ～」という意味に受け取れなくもないし、気の早い新聞は「一代年寄『白鵬』襲名危機！」などと書いてもいる。
意見書が述べている要点は、「そもそも、協会の規定のどこにも『一代年寄』の規定がない」ということと「一代限りだと弟子たちが、親方が引退した場合など行場がなくなってしまい伝統が継承されない」という2点から、今後は一代年寄を続けるべきではない、というのだ。
今は協会管理となっている年寄株だが、かつては何億円もの金が必要だったこともあり、一代年寄株をいわば功労金として受け取れればメリットも大きいし、現役横綱の内に内弟子をとることができるのも大きなメリットではあるが、弟子に部屋を継がせることができないとか、年寄り引退時に年寄株を売って譲渡益を退職金がわりにすることも出来ないというデメリットもあるのだから、確かに一代年寄制を、将来に亘って続けるのも問題かもしれない。
只、大鵬もそうだったが、白鵬は、立ち合いに良く張手やかち上げを使うことが、「横綱の品格を傷つける」などと批判されることが多いが、ルール上、別に禁じられている訳でもないのにこういう言われ方をするのは、スポーツの世界標準にはない「相撲の美学」「日本の伝統」というものが大相撲には厳然としてあるからだろう。外国出身の力士には分かり難い部分だろう。
白鵬は一代親方が許可されなかったとしても、既に日本に帰化しており親方株を手配することは十分可能とも言われているが――大功労者ではあるもののここのところ五場所連続休場続きで横審の「注意」が継続中となると「一代年寄危機」は、痛いかもしれない。
（04/21/21 10:00pm）
2021年4月21日
片務的
中国による尖閣諸島領域への侵犯が続く中で、ブリンケン国務長官、バイデン大統領による「尖閣は日米安保条約の適用対象という確約を得た！」、と日本側は大喜び状態だが、アメリカ側にとっての大サービスともいえるこの発言には、それ相応にアメリカ側にも日本側から得たいものがあるからだ、と冷静に考える必要がある。
その一つは対中国包囲網に日本ももっとかかわって欲しいということだが、対中依存が抜き差しならない日本にとっては、そう簡単には踏み切れないところでもある。
以前から片務的な安全保障条約だといわれる日米安保だが、歴代のアメリカ大統領は、「米国にとっての負担ばかり多くて、日本側はただ乗りしている」という不満をもっていた。安倍前首相と好関係とも言われた前大統領のトランプ氏ですら、駐留米軍の経費負担などでは再三「不公平だ」と日本側の負担増を求めてきた。
日本がまだ経済的にも戦後復興時期にあった時期には、日本は「憲法の規定上、日本はなにかと制約があるので、せいぜい後方支援で勘弁して―――」と言い続けてきたものの、アメリカの方が段々金欠になってきてからはそうもいかなくなってきており、日米安保の片務解消に関して日本もそうそう逃げ切れなくなってきているのは事実だ。
日米安保の片務的というのは、日本国憲法の条文に従うならば、米国は日本を防衛する義務があるが、日本は米国が攻撃を受けた時に（もし同時に日本が攻撃されていなければ）米国を助ける義務がない、ということである。
友人と町を歩いていて自分が暴漢に襲われた時には、友人には助ける義務があるが、友人だけが襲われ自分には危害がおよばないのであれば暴漢を攻撃してはいけない、というのだから―――これで真の友情が成り立つものだろうか。
今回の日米首脳会談でのバイデン大統領やブリンケン国務長官の「尖閣確約」には、当然「日本側もそれなりの見返りをしてくれよ！」という意味が含まれている。そこのところを考えもしないで「尖閣を守って呉れるんだって！」と日本中こぞって大喜びしているのだから――その内実を知ったらアメリカ側も呆れることだろう。
尖閣という日本の領土領海を守る主体は、あくまでも日本であって米国は、その時、助っ人になりますよ、と言っているだけであることを忘れてはいけない。
国会では憲法改正の手続きの前提となる国民投票法改正案にだが、2年前から自民党、国民民主党、維新などが採択を提案しているが、またもや立憲民主党が「審議が尽くされていない」と採択を拒否しているために、今回も憲法改正は前に進みそうにない。これでは、いくらアメリカが「尖閣を守る手伝いはする」といってくれても、主体となる日本が動けないというのであれば、その内アメリカも日本に呆れてしまうだろうし、喜ぶのは中国ばかり――ということになってしまう。
（04/20/21 10:00pm）
2021年4月20日
コロナ後遺症
イギリスの国家統計局とレスター大学の共同研究によると、新型コロナウイルスの世界的流行の第一波で感染し退院した4万7780人のうち、29.4％が140日以内に再入院し、回復者全体の12.3％が新型コロナウイルス感染で発症した重篤な心臓病、肝臓病、腎臓病、糖尿病で亡くなったことが判明したという。
すなわち新型コロナウイルス感染に罹って、直接死亡しなくても、その後、患者の1/3が再入院し8人に1人が亡くなっている――ということだ。
もともと慢性疾患を持つ人は、コロナが重症化しやすく、死亡率も高いことは知られていたが、こういう人達は、一旦コロナから回復したとしても、その後、持病が悪化し亡くなっていた―――というのなら理解できなくもないが、同論文では、持病をもっていた患者に限らず65歳以下の感染者でも、感染を契機にして、糖尿病を発症するという報告もなされている。これは、年齢にかかわらず一旦コロナに罹患すると、体がインスリン抵抗性をもってしまい、そのために2型糖尿病を発症する率が高くなるからで、コロナ患者は、退院後も医師が継続的に観察し、必要な薬を毎日服用させるべきだというのだ。この共同研究によると、コロナ罹患者の退院後の死亡率は、ウイルスに感染していない同様の慢性疾患を持つ患者の死亡率より、約3.5倍高い、というのだから、ゆゆしき問題だ。
日本の糖尿病患者数は、世界9位の800万人とも言われており、特に65歳以上のいわゆる高齢者の約半数は、心臓病、肝臓病、腎臓病、糖尿病などの持病を抱えていることが統計上わかっているからことを考えると、老いも若きも、コロナを甘く見ることなく、絶対に罹らないように細心の注意を払うべきことは明らかだ。コロナに罹っては、碌なことは一つもないのだ。
ところで、米国から帰国した菅首相は、今年9月までには、15歳以上の国民全員にコロナワクチンを接種できると発表したが――――7月にはオリンピックを何が何でも開催する！という自らの発言と随分矛盾しているように思うのだが―――。
昨日の日々早々（参照：「いつか来た道」4/19/21）にも書いたが、日本のマスコミでこの矛盾を指摘したところは―――今日のところまだおめにかかってはいない。
（04/19/21 10:00pm）
2021年4月19日
いつか来た道
太平洋戦争前の日米の国力（GNP）差は10倍から20倍あったという。軍の総力戦研究所が開戦前に行った日米戦のシュミレーションでも日本側の敗戦という結果がはっきり出ていたというし、この彼我間の明らかな力量差を知る者は、指導層のみならず一般にいた。
しかし、日本は開戦に踏み切り、その結果、民間人を含めて多くの犠牲者を出すに至った訳だが、それでは何故、大惨敗を喫するということがわかっていたのにも関わらず、誰もそれをとめようとせず、戦争に突っ込んでいってしまったのだろうか。
戦後、70数年間、繰り返し問われるこの疑問だが、山本七平が、著書「空気の研究」で述べているように、日本では論理や主張を超えて人々を拘束するいわゆる“空気”という奴が、絶対的権威のような力をふるっているから―――という説がかなりうなずけるように思う。
その“空気”という得体のしれぬ奴は、現代の日本にも強く残っていて我々日本人の行動や主張を支配しているのではないだろうか。
日米首脳会談後の両首脳による共同記者会見で、ロイター通信の記者が、菅首相に「公衆衛生の観点から、日本は準備ができていないと指摘されるのにオリンピック開催を進めるのは無責任ではないか」という問いが投げかけられたが、菅首相はこの質問には答えず「じゃあ日本側から」と話して共同通信の記者を指名した。世界中が見ている共同記者会見の席上で、質問をスルーするとは菅首相も、随分失礼だとは思うが、スルーした理由もわからないではない。
完全に第四波ともいわれる感染急増が起きており全国では、連日5000人もの新規感染者が出ているというのに、百日後には、東京オリンピックをどうしても開催するのだという日本の方針は、連日、一分間に3人のコロナによる死者がでているのに「絶対に外出制限もロックダウンもしない！」「マスク義務化法案や 貧困層へマスク配布法案には拒否権を行使する」というブラジルのボルソロナ大統領と同じレベルの無責任さではないかと外国人記者たちは考えているようだが、しかし、質問と同じような質問が日本人記者からは今まで一切でたことがないのはなぜだろう。
まさに、確実に負けが予測されるのに突っ込んでいった太平洋戦争同様に、コロナ五輪と言われるようになることがほぼ確実なのにもかわらず、ブラジル大統領並の蛮勇でそれに突っ込んで行こうとする菅首相に対して「五輪は止めるべきだ」とは、自分からは言い出せない―――という“空気”が日本の関係者、マスコミに蔓延しているのだ。
ネズミたちが猫の首に鈴をつければ自分達は安心できる、と話し合ったものの、それでは誰がその役を引き受けるかという段になると、皆しり込みをしてしまった―――というイソップの話と全く同じ状況に陥っているのが、日本のマスコミ、そして言論界でありこれは、山本七平のいう“空気”に通じる70年前に通った「いつか来た道」に思えてならない。
（04/19/21 10:00pm）
2021年4月16日
エポックメーキング
EV車はエンジンを持たないでモーターで走行するのだから二酸化炭素や窒素酸化物を排出しないゼロエミッションカーである。又、現在開発が進められている自動運転技術が完全実現すれば、人が運転する必要もなくなる。すなわち、EV車が完全普及しそれがどれもAIによる完全自動走行をする社会――そういう時代が一体あと何年後に実現するのだろうか。
ローマ教皇が地動説を認めガリレオに謝罪したのはガリレオの死から350年がたった1992年のことであった。EVもAI運転も、近年の技術開発の速度にはめざましい物があり、そういう社会が実現するまでの時間は、地動説が容認されるようになるまでの時間ほどは勿論かからないだろうが、そうはいっても、古い思想やいままでの技術で、成り立っている既存勢力が、一気に新しいものに入れかわるということも、極めて起きにくく、その切り替わりには思った以上に時間がかかるようにも思う。
ガソリンエンジン車の部品総数はエンジン回りだけでも3万、全体では10万とも言われており、それ等の部品産業、車両メーカーといういわば組み立て企業を頂点にした裾野を形成していてそれらのいわゆる自動車関連産業といわれる分野で働く人の総数は、540万人と日本の全産業人員の約7％をしめており、その家族も含めれば大変な数にのぼるが、もしすべての車両が部品の数だけでもガソリン車の1/10以下というEV車に置き換われば、その産業に携わる人は勿論1/10以下で済むだろうし、モーターで動くとなれば電気メーカーが参入できるのだから「自動車産業」その物がいらなくなってしまうかもしれない。
無人の完全自動運転が実現すれば、80万人いると言われるトラックドライバー、30万人といわれるタクシードライバーが職を失うばかりでなく、宅配便、郵便配達、路線バス、あるいはゴミ収集車などもいずれ無人化されてしまうと大勢の人が職を失うことになるだろうし、自動車保険会社、運転教習所、免許センター、自動車修理業や白バイ警官ですら、いらなくなってしまうかも知れないとなると―――そんな大規模な天動説から地動説への転換のようなエポックメーキングな(画期的な)転換が10年や20年の間で起きるとは中々考えられないのだが―――。
（04/15/21
10:00pm）
2021年4月14日
しょぼい聖火リレー
遂に新規感染者が1000人を超えたという大阪で、公道での開催が中止された聖火リレーが、万博記念公園を締め切って関係者だけでひっそりと行われた。
公園内の太陽の塔などをめぐる3キロのコースを15区画に区切って100人のランナーが走ったというのだが、ニュース映像でみる無観客の公園を走るランナの姿に、東京オリンピック開催決定時に、嫌がらせの為に韓国が作っ手ばら撒いた「放射能五輪」のポスターの絵柄を思い出した。
放射能五輪ではないとは言え、はからずも韓国の反日グループの思惑どおり、東京オリンピックは「コロナ五輪」として世界中に知られることになってしまったのではないだろうか。
予定通りに7月には開催するとすれば、聖火リレーは、3月末には始めなければならないうスケジュールにそって、ズルズルと始めたものの「オリンピック気分を盛り上げる」という聖火リレー本来の目的とは裏腹に、各地では密を避けてのリレーとなり、大阪では実に間の悪いことにコロナの爆発的感染中に当ってしまったというのだから、こんなことならしょぼい聖火リレーをやる位ならいっそのこと大阪でのリレーはスキップしてもよかったのではないかとも思わないではない。
この聖火リレーの様子が世界に流れれば、既に不参加を決めた北朝鮮に続きビビッて、不参加を申し出る国や地域がでてくるのではないだろうか。まあ、いまのところどこの国も不参加の口火を切りたくないのか、選手団の派遣を取りやめを言い出した国はないが、あの万博記念公園での「無観客聖火リレー」の画像を観た選手たちの中には相当ビビっている選手もいると思う。
直近のNHKの世論調査によれば、昨年7月には「中止すべきだ」が7割にも上った意見が32％に減ってはいるものの、「無観客で」「観客数を絞って」が合計で59％に上っており、「これまで通り開催する」と答えたのは2％にすぎなかった。おそらく国民もいくらやめろといっても政府もIOCも言うことを聞かないのだからと、あきらめの気持ちが強くなってきているのではないか、とも想像できなくもない。
万博会場で繰り広げられたしょぼい聖火リレーと同じ光景が、7月には新国立競技場で繰り広げられるのだろうか――。
（04/13/21 10:00pm）
2021年4月13日
付いて行かねば
与えられた知識というものは、簡単に忘れてしまうものだが、自分から取りにいった知識というものは中々忘れないし、身になるものだ。テレビで見た教養番組の内容（与えられた知識）は、次の日には何を見たかさえ忘れてしまっているものだが、自分で本などを読んで得た知識、あるいは事典などで調べた知識（取りに行った知識）というものは、結構後々迄忘れないものだ。
そう考えると、コロナ後にますます進むと思われるリモート化・デジタル化（基本与えられた知識）によって人々の知性、教養の劣化ということが起きないかとも思う。
人間の脳は、使えば使うほどその可能性は深いとはいうものの、使わなければ意外なほどのなまけ癖があるものだ。卑近な例でいえば、携帯もなかった時代、だれでも10や20の電話番号は、そらで覚えていたものだが、今やスマホの電話帳を見れば番号も見ないで相手の名前を押しさえすれば通話ができるようになって、自宅の電話番号でさえ覚えている人は少なくなっている。
なにも、わざわざ大学に行かなくても、リモートで講義が聞ける、あるいは通勤電車にもまれて毎日通わなくても仕事ができるとなれば、一見便利なようにも思えるが、果たして、失われてしまう、かけがえのない物はないのだろうか。
そういえば、高い年間授業料を払わされているのに、受ける授業はリモートばかりというのでは、いわゆる「大学生活」の経験ができず、学友も出来ないからまるで「通信高校」で高い授業料をとられているのと同じではないか―――という大学生の嘆きを聞いた。最近、対面授業もおいおい再開されてきているとはいうものの、昨年一年間に休講や、リモート授業によって失われた貴重な青春の時間は、もう二度と戻ってはこない。大学に限らず、幼稚園や小学校、中学、高校に至るまで、生徒達にとってコロナ休校で失われた時間は、もう二度と戻ってこないと思うと気の毒でならない。
新年度からはおいおい対面授業が始まっているようだし、タカさんの街の、小学校や中学校では、列席者を絞ってとはいうものの、今年は入学式なども行われるようになっているおりリアルの生活が戻ってはきているから、その分、リモートやデジタルは減ってはいるのだろうが―――。そうはいっても、世の中がもはやコロナ以前の世界に完全に戻ることはないだろう。
そうであるならば、タカさんも歳とは言え、ある程度はリモート化やデジタル化の世の中に、付いて行けるうにしていかなければなるまい。
（04/12/21 10:00pm）
2021年4月12日
確率のマジック
「東京ドーム300個分の広さ」と言われても一体どれ位広いのかピンと来ないのと同じで、この1週間でのコロナの感染者が「人口10万人当たり16.4人」等と聞いても多いと思って心配するべきなのか、たいしたことはないと少し安心してよいのか、どうもピンと来ない。
比較として「フランスでは305人」だとか「アメリカでは144人」「ブラジルでは231人」と聞けば、日本はそれほどひどい訳でもないと思えてくるが、「オーストラリアは0．22人」と聞くと「日本は何をやっているんだ！とも思う。（中国は10万人当たり0.01人だというが、大事故を起こした新幹線を証拠隠滅のために地中に埋めてしまうような隠ぺい体質の国の事ゆえ、その数字は、全く信用はできないが――）
それはともかく、統計的に算出された確率とか比率というものは、往々にして人の判断を迷わせる。
各国で進むワクチン接種にしても、血栓症を起こす確率が160万人に1人の割合と聞けば、その1人に自分がなる可能性があるような気がして接種を躊躇する人が出る一方で、逆にワクチン接種さえすればもうコロナの心配をしなくてよくなるだろう、と接種に殺到する人もいる。しかし、いままでの実績では接種後免疫を得る人は79％だというから、それは接種をした人の21％は、コロナ患者になる可能性がある―――コロナワクチンが役に立たない―――という意味でもあるわけで、その確率は5人に1人とかなり高いともいえる訳だ。
160万に1の確率にビビる人もいる一方、5人に1人の確率の方には、自分はならない、と確信する人もいるというのだから、人々の多くは確率の本当の意味を実感的に捉えられないということではないだろうか。
例えば、ジャンボ宝くじの1等が当たる確率2,000万分の1だというから、東京都と千葉県に住む人、赤ちゃんから老人まで全員が1枚ずつ買ったとして、その内1人が7億円引き当てるという確率にしか過ぎないというのに―――、タカさん自身も毎年「宝くじは買わなければ当たらないが、買えば万に一つ（実際は2000万に一つだが）の確率で当たるかもしれない―――」と確率のマジックに引っかかってこのかた半世紀以上に渡って毎回買い続けている。
いやはや確率のマジックは本当に分かり難い。
（04/11/21 10:00pm）
2021年4月8日
もつ煮込み
昔は生まれてこの方肉類や乳製品などは口にしたことがないというおばあさんというのが結構多かったものだ。
亡くなった父は、80近くになるまで肉料理が好物だったが、その母、すなわちタカさんの祖母は生まれてこの方肉類とチーズやバターなどの乳製品を口にしたことはないといっていた。タカさんは若い時はともかく最近は肉よりは魚の方を好むようになってきたから、祖母の隔世遺伝子が結構強いのかもしれない。
日本で、大っぴらに牛肉が提供されるようになったのは、慶応3年（1867年）、芝の牛鍋屋が最初だというから今でこそ、日本料理の代表の様にも言われるすき焼きにしてもその歴史はせいぜい150年程に過ぎないわけだが、今では日本人にとって肉食は欠かせなくなっており、特に若い年代ではダイエット中の女性でもない限り肉を敬遠する人は少ないのではないだろうか。
ロンドンにいたとき、丁度狂牛病騒ぎがあって有名ステーキレストランが軒並み牛肉を出せなくなっていたことがあって、その時、美味くもないチキンのローストと、羊の内臓をミンチにして羊の腸につめて茹でた「ハギス」というスコットランド料理が出てきたが、スコットランドの人には申し訳ないがその見た目と強烈さに仰天したことがあった。その時一緒に食事をしたイングランド人の同僚は「イングランドではみじん切りにした腎臓でつくるキドニーパイというのは食べるが、ハギスなんていうのを食べるのは初めてだ」といっていたから、我々日本人が「イギリス」とひとまとめで呼んでいる国は、実はスコットランドだとかアイルランド、ウェールズといったそれぞれ異なるアイデンティティーを持った地方の連合体なのだということを知らされた。（イングランドの中心地であるロンドンのパブにはスコッチウィスキーはあるが、飲む人はほとんどいない）
内臓の料理といえば、最近のよく見かけるもつ焼きとかもつ鍋は、内臓肉を使った料理だが、今から50年も前には、なかったように思う。関西では内臓肉のことをホルモンといっていたようだがホルモンとは関西弁で「ほおる物」という意味だとも聞いたことがあるが、関東では見かけることはなかったように思う。スコットランドのハギスをイングランド人のロンドン子が知らないのと同じようなものだったのだろう。
そういえば、船橋や大井等の、公営競馬場に行った時には、モツを味噌で煮込んだ「もつ煮込み」をつまみに昼からビールなんていうことをやっていたが、最近はコロナで競馬も無観客開催になってしまいその機会もなくなってしまった。馬券の方は、ネットで買えるものの歳をとると、やはり競馬もリアルの方が遥かに楽しいように思う。
（04/07/21 10:00pm）
2021年4月8日
最低法人税率
アメリカのイエレン財務長官は、米国がG20に対し、法人税率の国際的な最低水準を採用するよう呼び掛けていることを明らかにした。
バイデン大統領が発表した、2兆ドルのインフラ整備・雇用創出計画の財源確保のための、法人税の引き上げに対する援護射撃ともいうべき呼びかけといってよいだろう。
法人税率の引き上げによってアメリカの国内企業の税率は28％に、多国籍企業の税率は最低21％になるのだが、「法人税率の引き上げ」と聞くや否や特に多国籍企業は、本社機能を法人税率の低い国又は地域に移転させてしまい法人税負担を少しでも軽減させる手法を取ることが予想されるだけに、イエレンさんとしてはこういった「節税」とは名ばかりの税逃れを許してはならないということからのG20への呼びかけになったようだ。
タックスヘイブンにぺーバーカンパニーを設立し、脱税あるいは節税をはかっていた世界的な企業、個人の名前1150万件が暴露されたのは5年ほど前だが、その中には日本企業や個人も多数含まれていたことを思い出す。どの企業も、「合法的なものである」と言い逃れていたし、日本の税務当局もその後、査察に入ったという話はきかないが、いずれにせよ儲けた金をパナマのぺーバーカンパニーに移し、払うべき税金を払わないで済ませたという事実には変わりはない。
スイスやパナマの様に税金の抜け穴になることで、稼いでいる国もありそれが堂々と国際的に通っている以上は、企業や個人を道義的には責められても法的には裁けないのと同じで、法人税率の低い国に本社機能や持ち株会社を移し、少しでも払う税金を少なくしようというのは、資本の論理から言えば当然だし、逆にそんな手も打たずに高い税率を払っている企業は、（資本の論理からすれば）株主に対する怠慢行為とすらいえるかもしれない。
そういう意味からすれば、少なくともG20の間では、最低法人税率を決めましょう、「自分だけ税率を低くして世界の多国籍企業を総取りしましょう」などという国のエゴは止めましょうよ、というイエレンさんの提案は、ある意味「目から鱗」の、世界税制史上の画期的提案－--とも受け取れる。
もっとも例えG20でこの合意がなされても、G20以外の国や地域で「低い法人税率を提供するから是非わが方に来て欲しい！」というところが出てくるかもしれないし、そういうところに移転する企業も後を絶たないかもしれない。（ちなみに度々債務危機に襲われるちょっと危なそうな国だが、アイルランドの法人税率は欧米の半分以下だ―――）
税金を、納める側と取り立てる側とのせめぎあい、だましあいは、有史以来のことではあるのだが――――。さてどうなることやら。
（04/07/21 10:00pm）
2021年4月7日
向こうから外れる
「当てと越中褌は向こうから外れる」というのは、自分にとっての都合だけで当てにしていたことというのは、往々にして、先方の都合や故意によってダメになるものだ、という意味だが北朝鮮の東京五輪不参加宣言を聞いた韓国の文在寅政権の事を言っているようにも聞こえる。
東京五輪開催が決まった当初は、五輪と福島の原発事故を結びつけ「放射能五輪」と名付け、防護服姿のランナーが走るポスター迄作って世界に東京五輪の悪印象を植え付けようとした韓国だが、その後「待てよ、東京五輪を利用して北朝鮮との融和推進の舞台として使ったら世界に受けるのでは―――」と考えついたようで、一転して「東京五輪に全面協力」を打ち出してきた。自分の都合一つで臆面もなく態度をコロコロと180度豹変できるのにはあらためて驚かされたものだ。
もっとも、卑屈なまでの北朝鮮に対する融和姿勢の片思いのみっともなさには、韓国国内からも批判の声は高く、折からの不動産汚職などのスキャンダルもあって政権支持率は急降下しているが、この北朝鮮の東京五輪不参加宣言が、さらに追い打ちをかけてしまった形だ。
一応、韓国外交部は、北朝鮮の東京五輪不参加宣言の直後「開催まで時間はまだ残っている。北朝鮮が参加することを期待している」と未練たっぷりだが、コロナによって国内が疲弊し餓死者も出始めているともいわれる北朝鮮が不参加宣言を翻す可能性は少ないとも言われている―――。
もっとも今日も大阪では700人台の感染者がでるなどして第4波に入りかけているともいわれる日本は、ワクチン接種も中々進まないし、これで本当に7月に五輪を開催できるのだろうか。
こんな様子を見たら北朝鮮ばかりではなく不参加宣言をする国が続く可能性だってあるのだから、五輪そのものの中止も考えられなくもない。そうなると、韓国の淡い期待すら「向こうから外れる」ことだってあり得るかも―――。
（04/06/21 10:00pm）
2021年4月6日
責任をとりたくない
EUの医薬品局は3月、新型コロナウイルスワクチンの接種後に血栓が確認されたことを受けて一旦接種を中断し調査を行った結果「接種によるメリットはリスクを上回る」との結論に達し接種を再開した。
調査の結果、血栓が起きる確率は160万人に1人の割合のリスクでしかなく、ワクチン接種によるコロナ発症予防効果79％というメリットの方が遥かに大きいというのだ。中国などの全体主義国家でもない限り、「接種したくない」という人は接種しないことも可能であり、ごくわずかなリスクを恐れて、感染を蔓延させるよりは接種を続け感染を抑えた方が、社会にとってはメリットが大きいというのだが、このEU医薬品局の説明と接種再開の方針を、各国は受け入れたのだが――日本だったらどうだろうかと思った。
日本では75年頃、それまで進められていた三種混合ワクチンの接種で数例の副作用が起き訴訟沙汰になった例があり、以後訴訟を、恐れた国が、数年間接種をやめてしまったことがあった。その為に接種を受けていない世代の高校生たちが修学旅行で海外に行き感染症を発症し「日本人来るな！」の大合唱を受けたこともあったし、子宮頸がんワクチンに関してもその副作用を訴える声もあって接種に消極的になるなどのごたごたがあったが、あの時のトラウマもあって簡単に「接種によるメリットはリスクを上回る」などと言う言葉を国なり厚労省が発することはまずありえなくなってしまっているのだ。当局がそんなことを言おうものなら「人一人の命を国はどう考えているのだ！」との大ブーイングが起きるかもしれないし、当局の責任者どころか内閣でさえ吹っ飛ぶ可能性すら考えられる国になってしまっているのだ。
そんなこともあって、国民の大多数がワクチン接種を終えたといわれるイスラエルを筆頭に、着々と進む海外でのワクチン接種に比べ、日本のそれは世界の最後進国と言ってよい状態だが、そこには先に述べたように、日本を覆う「ゼロリスク希求のメンタリティー」と「だれも責任をとりたがらない」という体質がにじみ出ているように思う。
立憲民主党は、コロナ対策不備を責めれば政府を追い詰めることができると考えたのか2月に「政府のウィズ（With）コロナ政策では甘い！ゼロコロナで行くべきだ」と党独自の「ゼロコロナ戦略」を打ち出した。しかし、3月に入って緊急事態宣言下にもかかわらず感染者は増加、一方営業時間短縮を迫られた業界では休廃業も激増するに至って「ウィズコロナでこれだけ苦しんでいるのに、ゼロコロナなどと言われたら自分達に死ねというのか！」という反発の声が上がり、更には「コロナ感染ゼロになるまで経済活動を止めろ、それまで給付金でやりくりしろ、では日本どころか世界が沈没してしまう！」とい反発まで起き3月には某党幹部は、「ゼロコロナを目標に掲げるべきだと、精神論を言っただけだ」とトーンダウンしてしまった。いまさら、だれも立憲民主党に「夢物語」を語って欲しいと思っていた訳ではないのに―――。
国民のワクチン接種がいつになるかもわからない現状の一方では、オリンピックは7月開催への暴走は止まらない。これも、誰もが、誰かが止めて欲しいと思いつつ、誰もその責任をとりたくないという事情からの暴走だと思うが―――小池都知事もこのところさっぱりオリンピックについて発言しなくなっていませんか？
（04/05/21 10:00pm）
2021年4月5日
矜持を持って
1997年に香港が英国から中国に返還されるにあたって、香港には、返還から50年間は一国二制度の下、高度な自治が与えられる―――との合意がなされた。しかし、返還からわずか20年でこの合意は、一方的に反故にされてしまった。というのは、先月中国全国人民代表大会（全人代）常務委員会は、香港立法会（国会に当たる）選挙への香港民主派の立候補を阻止できる仕組みを導入してしまったのだ。
これで、香港立法会には親中派と認定されない者は立候補できなくなったのだ。すなわち、香港での民主主義は中国共産党の全体主義によって終局をむかえることになってしまったのだ。
この一国二制度という元々インチキ臭い甘いエサに惑わされて、というか騙されていた各国は、香港民主派同様に詐欺被害にあったようなものだが、かといって詐欺犯を非難する訳にもいかない事情を抱えている者も多い。というのは、既に中国に進出した企業、サプライチェーンを中国に依存してしまったところや、投資、貿易などで中国との関係が抜き差しならぬところまできてしまっているところは、下手に中国を批判してむくれられても、そのしっぺ返しで、自分達も困ってしまうからだ。詐欺と同じで騙した方がもちろん悪いのだが、騙された方にも責められるべき点はある。
新疆ウィグルでの中国政府によるジェノサイド進行にしても香港問題と同じような事情にある。「世紀のウソだ！」と居直る中国に対して非難をぶつけると、どんな仕返しをされるか分からないし、自分の側の損害も甚大になるのではないか―――と恐れる企業や一部の政府までもが、「香港民主派やウィグルの人権」よりも御身大事とばかり、口を閉じている。金の為なら、矜持なんてどうということはない、というのだから情けない。
中国が主張するインチキな「一国二制度の呼びかけ」といえば次に気になるのは台湾だ。民主主義と自由を求める人がが多数を占める台湾に対して「一つの中国」を主張する中国が、その魔の手を伸ばすのではないかという予測も絶えない。先月、米インド太平洋軍司令官は「中国が6年以内に台湾侵攻する恐れがある」と発言しているが、同じような見方をする情報筋も急激に増えてきている。
中国の台湾侵攻等という事態になればその時、日本はどうするつもりだろう。世界有数の親日国であり日本にとっての大親友ともいうべき台湾の大事に、台湾を守るといっている世界の民主主義国（韓国には？がつくが）の側に立つのか、なんだかんだ言を左右して、態度をあいまいにするか――――。
米国訪問に当って菅首相には、バイデン大統領と、日本としての矜持を持って話し合って欲しいものだ。
（04/04/21 10:00pm）
2021年4月2日
覆水盆に戻らず
ニュースを聞いた時、エイプリルフールのジョークかなと疑ってしまったぐらいだが、ニューヨーク州のクオモ知事と州議会は、嗜好用大麻の使用を合法化する法案に正式に合意したという。
法案が可決すれば、ニューヨークでは、21歳以上ならば大麻を購入できるし、個人消費用なら自宅での栽培も許可されるという。
調べてみると、嗜好や医療目的での大麻を解禁している国は、ヨーロッパの英・独・オーストリア・オランダなどと多く、中東でもイスラエルなどでも許されているという。アジアでもなんと韓国で医療用として合法化されているというから、厳格に大麻を禁じている日本はその内に、酒を禁じて取り締まっているサウジやイランの様に「遅れた国」と言われるようになる可能性すらある。
教義的に酒を禁じている宗教は多いが大麻を明確に禁じている宗教は意外と少ないといわれるのは、大麻は、幻覚作用を伴うためにそれが宗教的イニシエーションに使われることも多かったからかもしれない。（多くの宗教で、儀式の際に香を炊くのもある種の幻覚作用を誘っているのかもしれない）
ニューヨークのクオモ知事は大麻を解禁するメリットの一つに州税収入が期待できることをあげており、ニューヨーク州だけでも年間400億円の収入が見込めるという。たしかに非合法化しているとこの分の収益が、闇の組織の手に渡っている訳で、合法化したら闇組織の収入減を絶つことになり治安が改善するかもしれない。
税の大きな収入源である所為なのかタバコや酒が合法化されているのに、日本では大麻を禁じているのはなぜか？という疑問が大麻解禁論者からよく投掛けられるが、それに対する余り明確な答えをきいた記憶はない。（より刺激の強い薬物への入り口になるから―――という理由が上げられるが、ビール好きが皆、ウィスキー好きになる訳でもないと思うが―――）
もっとも、銃所持を合法化してしまっている国に比べれば、厳しくそれを規制している日本の方がはるかに安全であるのと同じで、一旦大麻を解禁してしまって大変なことになってしまえば、もう元へ戻せなくなってしまうかもしれないのだから、やはり世界標準がどうであろうが日本は大麻を厳しく取り締まり続けるに越したことはないと思う。ことわざにも「覆水盆に戻らず」というから。
（04/01/21
10:00pm）
2021年4月1日
汀のさくら
壇ノ浦でわが子、安徳天皇とともに入水したが助けられて京に連れ戻された建礼門院は尼となり大原にある寂光院で平氏一門の菩提をとむらっていた。その建礼門院を後白河法皇が訪ねていく場面を描いたのが平家物語の大原御幸だが、物語の中でも一番といってよいほどの名場面だ。法皇が訪ねていった寂しい尼寺の情景として「池水に汀のさくら散り敷きて 波の花こそ盛なりけれ」という一文が好きで、大原まで足を延ばし尼寺である寂光院を訪れたことがある。
大原御幸に描かれた池は、それなりに大きな池だろうと想像していたのだが、実際には想像よりはるかに小さな池だったのにはちょっと驚いた。花の季節ではなかったので、水際にさくらの花びらが浮かんでいるという情景を見ることはできなかったのだが、何代目かのさくらの木はちゃんと池の汀にあり花の季節であれば、千年前の物語の情景を今も見せているのだろうなぁ～と想像させるに十分だった。
千鳥ヶ淵のさくらもそうだが、汀に植えられたさくらは、満開を過ぎて散り始めると、花びらが水面に散り落ちて帯状になって浮かんでいて、その様を「花筏」（はないかだ）という美しい言葉で現すが、大原御幸の「汀のさくらちりしきて」、という情景もきっと花筏だったのではないかと思う。
我が家の近くの川沿のさくら並木も、今日観たら散り始めており、花びらが川に花筏になってただよっていた。
日本人がさくらを愛でる一つの理由は、さくらの散りぎわの潔さにあるようだ。多くの花はその盛りには皆それぞれに美しいが、くちなしのように満開を過ぎて花びらが変色しはじめても、そのまま散らずにしがみついている花や、椿の様に花びらではなく首からポロリと落ちていく花とちがって、さくらは潔さをよしとした昔の日本人の魂に合致するものだったようで、江戸時代の国学者本居宣長も「敷島の大和心を人、問はば 朝日に匂ふ山桜花」と詠っている。
散り始めた散歩道のさくら並木だが、あと一週間もすればもうあの見事な満開がうそのような、若葉のさくら並木になるのだろう。
さくらの花を自分の短い人生になぞらえ見事に咲いて、見事に散っていきたいものだと思い、散りぎわを見てちょっと寂しい思いにとらわれるが、同時に、自分の人生が終ってもその後に続く人たちがいると思えるから日本人は、さくらが好きなのかもしれない。
（03/31/21 10:00pm）
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