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2022年6月
＜＜6月タイトル＞
06/30 需要崩壊 06/29 ギッコンバッタン 06/28 とかく浮世は 06/27 関心の度合い 06/24 ノーヒットノーラン 06/22
外交の世界 06/21 雲隠才三 06/20 円安を止めるには 06/17 きれいな花には 06/16 株主資本主義 06/15 梅雨と雨傘
06/14 インフラ 06/10 許容派 06/09 滑稽な政策 06/08 何がフェイクか 06/07 プーチン支持派 06/06 ブルとベア
06/03 東坡肉 06/02 雷電 06/01 あだ名
2022年6月30日
需要崩壊
人は物価の上昇はある程度は、受容するし受容せざるを得ないという側面もあるが、不要不急ではない物の価格がとんでもなく急激に上昇してしまった場合―――例えばコーヒーが一ヶ月で一杯8000円になったら、いくらコーヒー好きでもコーヒーを飲まなくなり、市場は壊滅してしまうだろう。こういった形で起きる市場崩壊を「需要崩壊」という。
ガソリンの価格が急上昇していてこれ以上の急騰が続くと市場崩壊が起きるのでは――などという話もちらほら聞くが、電気自動車や水素カーが完全にガソリン車に置き換わるにはまだまだかかるだろうから、各国政府も市場崩壊を防ごうと必死になんらかの手をうつだろうからまだどうにかなるかも知れないが―――。
アメリカでは今中古車の価格が上がっているという。得にトラックにいたっては小型のものでも前年比40％も上がっているというのだからこれはまさに狂乱とも言える物価上昇だ。中古車の市場価格は勿論新車価格によって決まると言ってよい。アメリカで中古車を購入する時に皆が参考にするのがブルーブックといわれる中古車の査定価格を書いたもので、各社の車種ごとに事細かく「〇〇年型ならいくら」「xx年型ならいくら」といった査定額が表示してある。
この査定額は勿論新車価格が基準となっており、「3年落ちなら幾ら」「5年落ちなら幾ら」と査定額もかなり機械的になっていて販売者も購入者にも公開されているから、結構信用度は高いものだったが―――しかし、このブルーブック価格も昨年版と今年の版とでは40％も違っている―――というのだからアメリカ人もびっくりしているだろうし、にわかには信じられないのではないだろうか。
中古車市場の高騰の理由はいろいろあるが、根本的には中古車の発生元（？）である新車の供給量が落ちていることだという。新車生産が半導体などの部品不足や人手不足、物流の滞留などによって大幅に落ちており、「そろそろ新車に買い替えようか」という訳にも行かないユーザーたちが中古市場に車を売らないことが一番の要因だという。
例えば22年型の新車生産がコロナ前の70％程度だというから、いまから3年後の25年には「22年型の中古車」の供給が落ちることは目に見えており、現在の中古車価格の暴騰は、今後数年も続くことが確実だという説もある。車は、公共交通機関や鉄道といった代替手段がない訳でもないだけに、これ以上の価格上昇は需要崩壊につながらないかと――ちょっと心配だ。
（6/29/22 11:00pm S.T）
2022年6月29日
ギッコンバッタン
今や日本では見ることもなくなってしまったが、半世紀程前までは東京でさえ町内に一つや二つの非常用の井戸がありそこにはギッコンバッタンと手押しのポンプがあったという記憶がある。あの手押しポンプという奴、原型はなんと紀元前のエジプトにあって、ナイルから畑に水をくみ上げる為に使われていたというから、原理は意外とシンプルなものだったのだろう。
そういえば、アメリカではあの手押しをちょっと大きくしたようなポンプで石油をくみ上げているのをよく見かけたが（特にテキサスやカリフォルニアには多かった）、その後、海上の大型掘削リグや、アラスカでの大規模な石油採掘が、コストも安いからと主流になり、あの地上の石油ポンプはコストがかかるからとあまり脚光を浴びなくなってしまっていたが、ここに来ての国際石油課価格の高騰もあってあの再び注目が集まっているのだとか。たしかに原油価格が1バーレル130ドルと2年前に比べて100ドルも上がれば、いかにコストが高くとも、採算は合うのかもしれない。
もっとも、いくらガソリン価格が上がろうとも環境派の人たちの「二酸化炭素削減！」「自然環境を守れ！」の声をあげるだろうから、それを気にしてバイデンさんも、「すぐさまギッコンバッタンを増設せよ！」とは言い出せないだろうが。
エネルギー問題といえば、最近は「自然環境」だとか「温暖化防止」「安全性」が最優先で、「コスト」は二の次、三の次になりがちだが、現実社会ではやはりコストが最優先になるのは、ギッコンバッタン式の石油掘削井戸の動向を見ているとよくわかる。
実は、アメリカは、現在輸入する石油量より輸出する石油量の方が多いという石油出超国である。折からの石油価格急騰で先月のアメリカの石油収入は前年同月比なんと76％も増えているからアメリカ人はロシアのウクライナ侵攻でガソリン代が上がって大変だ！といっているが、実はアメリカの石油資本は、そのお陰で大儲けしているのだ。
そんなに石油輸出で儲かっているなら、石油輸出に関税をかけその分を国内向けのガソリン価格の補助金に回せば、アメリカ国内のガソリン代は一気に２㌦下がり１ガロン３㌦（現在は５㌦）になるという計算が成り立つのだそうだが―――まあ圧倒的な政治力を持つ石油資本が、そんなことを許す訳もない。バイデンさんも、やっぱりプーチンとイランを悪者にしている方が無難というものなのだろう。
（6/28/22 11:00pm S.T）
2022年6月28日
とかく浮世は
温暖化防止の為に化石燃料を使うな、経済制裁の為にロシア産の天然ガスを使うな、核廃棄物を出す原子力発電を止めろ―――といった様々なスローガンが叫ばれ、ここのところ続く猛暑では電力が逼迫しているから節電に協力しろといわれながらも、「しかし熱中症防止の為には、冷房を我慢しないで積極的に利用しましょう」とテレビの健康番組が言っている。いやはや一体どうしたらいいのか―――といいたくもなるが。
冬の寒さにも夏の暑さにも人間の生活に於いてもはや冷暖房は欠かせないし、そのために必要なエネルギーにはまだまだ化石燃料や原子力なしという訳にはいかないとなれば、（特に高齢者などに）節電を要請するのは、過酷な要求ということになる。
実は3年前の夏、二度熱中症で倒れ救急車で搬送され、一度は入院を余儀なくされたことがある。車でスーパーに行き、駐車場から家に荷物を運び込もうとしていてふらふらと倒れこんでしまい起き上がれず、救急車で近くの大学病院に担ぎ込まれたのだが、そこで点滴を受けるなどしている間に血液検査をしたところ、体温が上がり過ぎたために肝機能が急激に低下していることが判明、このままでいくと劇症肝炎になるといわれしばらく入院することになったのだ。
幸いにして数日で肝機能も回復し退院となったのだが、あれ以来熱中症恐怖症のような状態になってしまい、暑い盛りに外出することが怖くなってしまった。
悪いことにこの三年近くは、コロナもあって極力外出は控えるようにとのお触れもあったし、それにこの猛暑による熱中症アラートとあっては散歩すらも控えざるを得ず―――そんな状態で、運動不足が続くと今度は、フレールになるとおどされるし――――。
熱中症を怖れれば、フレールになるといわれ、節電協力をすれば、今度は熱中症が怖いし―――。
いやまさに何事においても「とかく浮世はままならぬ」ものだ。
（6/27/22 11:00pm S.T）
2022年6月27日
関心の度合い
参議院選挙候補者の何を基準に選ぶかを問う調査によれば、いつものことながら今回も経済対策・物価対策がトップで回答の50％を超えており、ついで外交・安全保障と社会保障のそれぞれ15%あまりとなっていた。
揚げ足をとる訳ではないが、回答の中での経済対策、物価対策、それに社会保障に関する各候補（あるいは各政党）の公約は、一律に「経済を活性化させます」「物価を安定させます」「所得をあげるようにします」「社会保障は充実させます」という言葉であふれている。
「物価が上がるのは仕方がないし、その対処法は各自努力すべきだ」「社会保障ばかりに頼らないで欲しい」などと選挙公報に書く候補がいるわけもないから、どの候補も、どの政党もその主張に差がでないのはは当然だ。
安全保障政策でも「国を護る」か「憲法を護る」かの表現の違いがあるかもしれないが、どちらも「もし侵略を受けたらどうするのか」については具体的指針（逃げるのか、戦うのか）がある訳ではない。80年近く直接戦争に携わっていない国なのだから、いくら毎日ウクライナの惨状をみせられたところで侵略や戦争を我がことのように考える切迫感が持てないし、敢えて問われれば勢い「スパゲティーが値上げして大変だ」「ガソリンが値上がりして大変だ」といった身の回りの愚痴を述べるしかないしそれが一番無難というものなのだろう。
そういえば、数日前に現在アメリカ世論がもつ関心事のランキングをみたが、圧倒的に物価問題への関心が高く、国際問題や銃規制などへの関心は低く、多額の軍事支援を行っているウクライナ問題について関心があるという答えはわずか1%だったから、やはり直接米軍が参戦している訳でもない他国の戦争への関心度は低いのは、世界中どこでもあまりかわらないのだなぁ～と思ったものだ。
（6/26/22 11:00pm S.T）
2022年6月24日
ノーヒットノーラン
世界で最も人気があるプロスポーツコンテンツと言えば文句なくサッカーだが、アメリカではサッカーは上位5位までにも入らない。人気コンテンツといえばNFL（フットボール）、NBA（バスケットボール）MLB（野球）、言ったところでサッカーの人気はそれほどはない。
プロスポーツ大国であるアメリカで何故？と思い、94年にFIFAワールドカップがアメリカで開かれた当時ロスにいたので、アメリカ人の同僚たちに聞いたところ「フットボールやバスケ、ホッケーのような激しいコンタクトがないから」とか「そもそも、アメリカにはサッカーの歴史がないから」などという意見の中で、一番納得のいった理由が「サッカーは時間ばかりかかって、点数が少ないから」という意見だった。
長い時間かかって0対0、挙句にPK戦で決着をつける―――なんていう試合は、120対118で最後の1秒迄ハラハラドキドキのNBAや、1チーム総勢45人がオフェンス、ディフェンス、スペシャルチームなどに分かれて入れかわり立かわり出場し、肉弾戦を戦わせ平均すれば1試合で30から60点は入るNFLの試合の迫力に慣れてしまっているアメリカ人には、退屈なものに見えるのかもしれない。
そういう意味で言うと、今年、28年振りという佐々木朗希の完全試合を含むノーヒットノーランが既に5試合も出ている日本のプロ野球は、アメリカ的にはどうなのだろうか――と思う。野球好きだった大統領のルーズベルトが「野球で一番面白いのは8対7で贔屓チームが勝つ試合だ」と言ったというが、日本でもこれは至言だという気がする。
ノーヒットノーランは、四球やエラーはカウントしないという規定だからNPBでも今迄85回達成されており完全試合に比べれば、そんなに珍しい訳でもないのだが、これをやられた側のチームのファンにしてみたら実にたまったものではない。
実はタカさん2014年に千葉ロッテマリーンズの応援に行っていた際に当時西武ライオンズだった岸孝之投手（現楽天）に四球一つだけという準パーフェクトともいわれるノーヒットノーランをやられて、ゲームセットまで見ていて実に情けない気持ちになったもので、一緒に応援していたマリーンズ応援仲間と悔し紛れに「好い物を見せてもらいましたね～」と慰め合った思い出がある。
そんなこともあっただけに、佐々木朗希投手にパーフェクトを喰ったオリックスファンには―――ご同情申し上げる次第だ。
（6/23/22 11:00pm S.T）
2022年6月22日
外交の世界
「外交には敵も味方もない。あるのは国家利益だけだ」と言ったのはソ連の最期の最高指導者ゴルバチョフだが、外交という現場に直接携わる者としての冷徹な事実を述べた迄だろう。
当事者でない者、例えばマスコミやら庶民と言われる人たちにとっての「外交べき論」から行けば、正義だとか善悪、あるいは心情にもとずく外交こそが望ましい外交だろうが、そんな甘ちゃんでは外交で国を亡ぼすことになる―――というのが外交当事者の本音だろう。
その資金が結局は、ウクライナの人々を殺しているロシアのプーチンの資金になっているのだから、即刻サハリンでの液化天然ガス事業から撤退すべきだ―――という世論が幾らあったとしても、国益を考えれば事業撤退などしたらたちまちの内に首都圏のガスが止まるだろうし、ただでさえ夏場を迎えて苦しいエネルギー事情が大変なことになるから、事業撤退せず、ロシアに資金を支払い続けようという日本や、いかにアメリカに助けられているからといってもアメリカに同調して反ロシアに舵を切り過ぎると、食糧やエネルギー、はてはアラブ諸国との関係では、時にはイスラエルの肩をもってくれたロシアに不義理になるし将来的にも国益を考えればリスクが大きいと―――ロシアの名指し非難には二の足を踏んでいるイスラエルも、「正義よりは国益」という外交の鉄則に忠実なのだろう。
もちろん、そんな日本やイスラエルを表立って非難するわけでもなく、「最重要な同盟国」等と言って持ち上げるアメリカ自身も、その姿勢はアメリカの国益を優先するからこその判断なのだ。
まさに外交は魑魅魍魎の世界だということが身に染みるウクライナ問題だ。
（6/21/22 11:00pm S.T）
2022年6月21日
雲隠才三
岸田首相自身が「岸田派の次代のホープだ」と可愛がっていたという吉川赳議員が18歳の女子大学生と飲食をともにし、ホテルにチェックインする様子が週刊誌にスクープされるというスキャンダルで、参議院選挙の直前というタイミングだけに自民党、自民と連立を組む公明党にとってはまことに間の悪い出来事が起きた。
自民党議員の中からも即刻議員辞職をさせてダメージを最小限でとどめたいという声が一斉に上がったそうだが、当の吉川議員はさっさと自民党に離党届を提出して雲隠れしてしまったという。党籍を離れてしまって雲隠れとなれば、警察ではないから誰も手の出しようもない。ほとぼりが冷めた頃に出てこようという魂胆なのだろう。
吉川議員は前4回の選挙では選挙区では落選を続けており比例復活している議員なので、道義的には自民党を離党すれば自動的に議員辞職するのが筋なのだが―――今迄にも比例復活した議員が離党しながらも議員辞職はせず、ほとぼりの冷めた頃に又再び国会にしれッとした顔をして復活する―――という例は与党に限らず何人もいるから、吉川さんもその線を狙っているのだろう。
もっともこの雲隠れ策なるもの、スキャンダル議員にとっては最善の策ということらしい。こんな時に、公の場に出てきて言い訳をする―――という手は、議員さんの間では最悪手なのだろう。どう考えても、このスキャンダルは言い訳ができないだろうし、例えば「18歳だと知らなかった」と言い訳をしても週刊誌のことだから、「吉川議員は18歳だと知っていた」という裏をとっているだろうし、他の週刊誌などもここぞとばかりに吉川氏のこの女子大生以外との「悪行」をあることないこと暴き出すだろうから―――ここはやっぱり雲隠れ策が最善策だ。
「雲隠れ」と聞くと、真田十勇士の一人、伊賀の忍者雲隠才三の名前を思い出す。立川文庫では、才三は、甲賀流の忍者猿飛佐助とともに大坂夏の陣で、家康の本陣に忍び込み、電光石火の活躍を見せ家康の首をとる寸前まで行くも失敗し、又いずれともなく姿を消した忍者として子供の頃の、タカさんにとってはカッコ好いヒーローだったけれど―――。
吉川議員をはじめ近頃の「雲隠れ」には、カッコよさのかけらもないから―――才三もきっと怒っていることだろう。
（6/20/22 11:00pm S.T）
2022年6月20日
円安を止めるには
わずか3カ月余りで為替が20円以上も円安となり輸入物価の上昇を招いているためにどうにかして円安を止めろという世論がかまびすしい。市場に於ける需給という「見えざる神の手」によって動く為替を人為的に止める（動かす）方法はいくつか考えられるが、いずれの方策もそれによって起こるデメリットも大きく、いう程に簡単ではないから、矢面に立たされた観のある日銀の黒田総裁が、現在のゼロ金利政策の継続を宣言すると、マスコミなどは「無策」だとか「頑固」だと悪罵を浴びせ果ては「スーパーで買物もしない癖に」などと金融政策とは関係のない話を持ち出して悪口を浴び、庶民と言われる人たちは「そうだ！そうだ！」と拍手する――というなんとも訳の分からない情況になっている。
円安を止める方法はいくつかあることはある。一つ目は今FRBが物価上昇を抑える為にやっている方法で政策金利を上げることだ。ロシアが西側諸国による金融制裁によってルーブル安となった際に金利を一気に20％引き上げ、そのお陰でルーブルが持ち直したように、FRBも短期間に金利を小刻みに0.25％ずつ引き上げて物価の沈静化をはかっているが、ロシアもアメリカも金利上昇に伴う物価の高騰というデメリットをもろに受けている。ただでさえ総供給に対して総需要が足りていない日本経済において金利をあげたらますます需要が落ち込むだろうから、こんな乱暴な手は打てない、と黒田総裁が頑固に言い張るのも分る。
二つ目は為替介入をする手だが、これも、いくら日本が金持ちだといっても、国債為替市場相手に手持ち資金で相場で戦うということは、まさに蟷螂之斧であり、極めて短期に1-2円動かすことはできたとしてもここぞとばかりに為替の鬼たちの総反撃を食らい、かえって円安を誘導する事にもなりかねない。ましてやアメリカがドル高容認で動いているのに、それにに対抗してドル安（円高）誘導に動くなど無理筋過ぎる。
現在の円安で困る事といえば、輸入物価の高騰だが、エネルギーや輸入食糧品などの自給率が低いものを短期間であげることはできない。食糧の自給率をあげたいならば、国産品への切り替えを極力はかり、エネルギーの国産比率をあげたいなら原発の再稼働、高機能原発新設といった政策を推進することだがいずれも10年単位の時間がかかる。もちろん中国などへシフトしてしまった生産設備を、日本国内に戻すことも必要だが―--。欲の皮の突っ張った日本経済にそんなことができるだろうか。
（6/19/22 11:00pm S.T）
2022年6月17日
きれいな花には
こんな植物がここに植わっていたのか――と気付くのは季節がきてその植物に花が咲きそろっている時だ。
梅雨が本格化してきた最近では、「ああここにも、あそこにもあったのだなぁ」と驚くほどの数の紫陽花が咲き誇っている。「梅雨」と言えば「紫陽花」という言葉が条件反射的に浮かんでくるのは、この日本原産の花が、日本人のDNAに「梅雨」とともに刻み込まれているからだろう。
花といったが、我々が見ているのは実は花ではなく花のガクだという。一般的に花は、雨が降ると花びらを閉じるが紫陽花は雨の中でも花を閉じないでむしろ鮮やかさを増すように見えるのも、開いている部分がガクなので閉じる必要がないからだ。（そういえば中学生の頃、リバイバル曲として大ヒットした井上ひろしが歌った「雨に咲く花」は、なんという花の事をうたっていたのだろうか―――）
今や世界中で見ることができる紫陽花だが、先にも書いた通りこの花は、日本原産の花で、江戸時代に長崎出島に来ていた医者でありプラントハンターでもあったシーボルトが欧州に持ち帰り各地に移植され、たちまちの内に世界各地に広がったものだという。
何しろ紫陽花の繁殖力は強く、挿し木によってたちまちの内に増えていくから、200年余りの時間があれば世界中にその勢力を伸ばし繁栄して皆に愛されるようになるには十分だったということだろう。
ロンドンのキューガーデンには、この日本固有種の紫陽花の大群落があるし、サンフランシスコの公園でも紫陽花を見つけてうれしくなったことを思い出す。
そうそう、紫陽花の繁殖力が強いのは、葉や茎に毒があって虫が寄り付かない所為でもあるという。花が綺麗だからといって料理の飾りなどに使って間違えて食べると大変なことになるとも聞く。紫陽花をみたら「きれいな花には毒がある」という言葉を思い出そう。
（6/16/22 11:00pm S.T）
2022年6月16日
株主資本主義
浅野内匠頭が殿中で吉良上野介に刃傷沙汰に及ぶという暴挙を働いたことで赤穂藩2万石は取り潰しとなり、300人いたという士分の家臣たちと、足軽や中間など800人余り、彼等の家族を含めれば総勢3000人ほどがたちまちの内に路頭に迷う状態に陥ってしまたというのだから、社会保障制度もなく、転職もままならない身分社会で内匠頭の短慮は何とも罪深かったということだろう。
江戸時代の藩は、日本的企業に似ていると思う。もしトップが大ポカをして、たちまちの内に会社が潰れるということになれば、その企業に勤める社員たちは、職を失い収入の道を断たれることになる。失業保険制度などが江戸時代よりは整備されているとは言え、ひょっとしたら子供は進学をあきらめなければいけなくなる―――なんていう悲劇の可能性まであるかもしれない。そういう意味では、江戸時代の大名も、現代の企業経営者も、多くの人の人生に対して重い責任を負っているということにもなる。
終身雇用制度、年功序列、企業別組合、という三種の神器で躍進してきたいわゆる日本的経営に行き詰まりがみられはじめた80年代に盛んに言われたのが株主資本主義を標榜するアメリカ的経営だ。
日本的経営との一番大きな違いは「企業は誰の物か」という点だった。アメリカ的経営では、企業は株主の物である。企業には、顧客や従業員、地域社会、取引先等々色々なステークホルダー（利害関係者）がいるが、一義的には企業の持主である株主の利益を最大化するためにそれらのステークホルダーを大事にしなければならない―――という割切った考え方であり、企業をあたかも自分の身内（家族）の様にとらえてきた多くの日本人は、大いに戸惑い反発する者さえいたのだが―――。
今や、能力主義に基づく給与制度が主流で、年功序列制のかけらもないとなれば、「会社の為に頑張って我慢すれば、きっといい事があるに違いない」なんて考えるスポ根的な社員などというのは絶滅しているのではないだろうか。そもそも、企業経営者が、株主があれよあれよと思う内に、平気で株式（すなわち会社）を外国企業に売ってしまう世の中では、そんな企業に忠誠を誓うなんていう気にはなれないだろう。
まあそれが今や当たり前ではあるものの――――株主資本主義の浸透によって日本は、何か大きなものを失ってしまったような気がしないではない―――。
（6/15/22 11:00pm S.T）
2022年6月15日
梅雨と雨傘
いよいよ梅雨入りして傘の出番が多くなってきたが、今は出先で雨に降られてもコンビニや駅の売店には、透明なビニール傘が1000円位で並んでいるから、出がけに降っていなければ、天気予報のお姉さんの「お出かけの際には念のため、傘をお持ちになって」なんて言う言葉も全く無視して出かける人が多いようだ。お陰で日本でのビニール傘の年間消費量は6000万本～8000万本だというから日本の成人は、一年に一本はビニール傘を買っているという計算になる訳だ。
どこでも買えるし安いとなれば雨が上がれば不用の持ち物になってしまい持ち歩くのは不便な傘は、諸外国に比べて日本では街中にゴミ箱が多く設置されているし、店には傘立ても多いから、忘れ物のフリをして置いて行ってしまう人も多いようだ。（お陰でビニール傘の9割を生産している中国にとっては、日本は毎年コンスタントに買ってくれる良いお客さんという訳で―――その内「日本も、あまり反中で動くとビニール傘の輸出を止めるぞ！」と日本を脅す材料にと考えているかも―――）
ビニール傘もまだなかった時代、傘を忘れると結構大変だったことを思い出す。小学校の頃、雨が降りだしてくると、女の子の中には、傘をもって母親が迎えにきてくれる子が何人かいたもので、学校から遠かったタカさんは、そんなことはなかったけれど、女の子がちょっとうらやましかったことを思い出す。
雨傘と言えばカトリーヌ・ドヌーブが主演した「シェルブールの雨傘」を思い出す。この映画も学生時代に渋谷の東急名画座でみたが、典型的なフランス美人の若かりしドヌーブが、軍隊に行ったまま音信不通の恋人と、彼女に言い寄る別の男との間で揺れ動く女心をせつなく演じていて、その物語のラストシーンのせつなさとともに忘れられない。
そうそう、奥様とのなれそめは、会社帰りに雨に降られ駅で雨宿りしていると、近所に住むやはり会社帰りの女性が「お入りになりませんか」と傘をさしかけてくれ、それがなれそめで結婚したという先輩がおられて、何とロマンチックな―――と感心したことがあったが―――。
梅雨はうっとうしいと思うこともあるが、日本人にとっては、かかせない季節でもある。
（6/14/22 11:00pm S.T）
2022年6月14日
インフラ
落雷で、付近一帯が停電してしまった時に、普段当たり前に使っている電気のありがたさを痛感するように、水道やガスなどのインフラに我々がいかに依存しているかを痛感することがある。
我々都市型の生活を営む人間ほど、その度合いが高いことはオール電化に切り替えてしまった家庭が、計画停電の際には、にっちもさっちもいかなくなってしまった事や、高層マンションで屋上タンクが空になり下の階まで階段で降りて水をもって上がることも出来ず、ホテル住まいを余儀なくされた人とか、ガスもプロパンならすぐに使えるようになったのに、都市ガスだったために三食外食に行かざるをえなかった家庭があったことを思い出す。
マッチ一本あれば火がおこせるというのに、今やなんでも自動点火だから、マッチを常備している家などというの皆無になっている。（例えマッチがあってもガスも来ていないし、七輪や炭もない現代生活では、マッチの活躍の場さえない―――蚊取り線香をマッチで火をつけている―――なんていうのも、多分絶滅危惧種に近いのでは―――）
先週末から突然インターネットがつながらなくなり、色々試したがどうにもならず、プロバイダーに電話するも週末は休みでつながらず、漸く昨日夕方にサービスマンが来てくれて回復したものの、つくづく今の生活は、電気、ガス、水道並みにネット環境というものも重要インフラなのだなあ～ということを実感した。
基本的にはネットケーブルのレベルが経年劣化によって下がっていたことが原因だとの説明を受けたが回復すれば、止まっていた水道が流れ出したのと同じように、たちまちの内にネットがつながらなかった時の不便さを忘れてしまうのだから――――タカさんの近代インフラどっぷり度も、相当なものだと思う。
考えてみると、60年も前の田舎の生活では、停電は結構多かったし、鹿児島では井戸水をくみ上げて、五右衛門風呂を薪で湧かしていた時代もあった（タカさんは、風呂を沸かす係を仰せつかっていた）。それと比べたら（比べる必要もないが）、わずか半世紀一寸で、日本人の生活は本当に便利になったが、その分非常時対策は実に脆弱になってしまったし、人間の生活力はめちゃめちゃ弱くなってしまった―――とも思う。当たり前のインフラが当たり前に使える中にいるだけに、生活環境を破壊されているウクライナの人々の苦難はいかばかりであろうかと思う。
（6/13/22 11:00pm S.T）
2022年6月10日
許容派
ガソリン価格が上昇を続けているし、小麦価格が上がっていることでパンやパスタの値上げも続いているとかで、スーパーで買物をする主婦たちにマイクを向ければ「やりくりが大変！」というセリフが異口同音に返ってくるというのに、物価の番人と言われる日銀の黒田総裁が、「家計は値上げを許容している」などと発言したものだからマスコミが一斉に叩きに回り、黒田総裁は早々と謝罪に追い込まれてしまった。
消費税が初めて導入された時（1989年）、大反対運動があり、新聞にも「100円玉を握りしめて駄菓子を買いに来た子供が、3円足りないからと断られ、泣きべそをかいていた」なんていう記事がまことしやかに出ていたように、歴史的にも世界的にも、「値上げ」にもろ手を挙げて賛成する市民とやらは存在しないから、黒田総裁の発言はやはり不用意だったとは言える。但し「不用意」ではあるが、必ずしも「間違い」あるいはフェイクだとも言い切れないのではないだろうか。
ガソリンや小麦製品など多くの品物の価格はここのところ上昇しているのは確かだが、消費者物価指数は4月の時点で昨年同月比2.1％と8年振りに上昇してはいるが、これはアメリカの上昇率8.1％の1/4である。眞子さんや小室さんのNY暮らしに比べたら―――かなりの割合の日本人は、いやいやながら、あるいは仕方なく「許容している」と言えなくはないのではないだろうか。
ちなみに運転免許を返納して車をもたなくなったタカさんは、保険料も駐車場代も、車検料もいらなくなったうえに、何せガソリンを買わなくなったから直接的にはガソリンの値上げは響いてはいないし、朝食は米派（血糖値を考えて雑穀米）だから、小麦値上げも直接は関係ないから―――黒田さんが言った「許容派」に属しているのかもしれない。
黒田さんの肩を持つ義理もないけれど、「自分で、買い物にも行かないのに―――」だとか「高い給料をもらっている人に物価のことをとやかく言う権利があるのか！」といった悪口雑言的な非難を浴びせるのは、なんだかいやらしさのようなもの感じてしまう。
ちなみに我が家は、食料品などの買い物は、ネットスーパーで済ませているからそういう意味では「買い物にも行かない派」でもある。
（6/09/22 11:00pm S.T）
2022年6月9日
滑稽な政策
10年程前に日本の年間出産者数が100万人を切りそうだと騒ぎになったが、先日発表された令和3年度の出産者数は82万人だったというから、タカさんの生まれた第一次ベビーブーム時代（1947-49年）の毎年270万人―--と比べれば最近のそれは当時の1/3に過ぎず、1947年の日本の総人口が7千8百万人、現在のそれが1億2千5百万人であることを考えると日本人の人口再生産能力の低下は著しいものがある。
このまま出生率が下がり続ければ100年後には日本の総人口は、5千万人、200年後には1千万人となり、300百年後には絶滅する―――等という計算上の話もまことしやかに聞こえるが―――。
少子高齢化の危機が叫ばれるようになって久しいが―――高齢化の方は、人の寿命が幾ら伸びるといっても、生物学的には、せいぜい120歳程度と言われているから、今から100年後の日本での高齢者の増加率は、年間Max80万人程ということになり―――大した問題ではなくなっているかもしれない。（但しその頃には、年間出生数が30万人位になっているだろうから社会全体からみた「少子高齢化」に変わりはないだろうが）
長年政治課題として取り上げられてきた少子高齢化対策だが、まさか高齢者が減らせ！なんて言う政策はナチスでもないかぎり打ち出せないから、必然的に少子化防止策、すなわち「産めよ増やせよ政策」が語られることになるが――子供を産む、産まないはあくまでもプライベートな問題であって、これを強制することはできないのだから土台無理がある。
古代ローマ帝国が絶頂を迎え、皆が豊かになったら、人々は子供を作らなくなって日々の生活を楽しむようになり（当時のローマの出生率は現在の日本と同じ位だったともいわれる）、結果ローマ帝国の滅亡につながったという話もあるように、日本に限らず豊かになった国で多産に向かわせようという政策は、ありえないと考えるのが当然だろう。
「子供を作れば何百万円」「子育て費用は一切国が負担」という大盤振る舞いをしたところで、ブリーダーでもあるまいし、その手当欲しさに子作りする――等という人がいるだろうか――いるとしたらそれはある種のホラー社会だ。
あくまでもプライベートな問題である出産という営みを、国力の衰退を防ぐ為などという政治的な理由から推進させようという発想自体が滑稽ではないだろうか。
（6/08/22 10:00pm S.T）
2022年6月8日
何がフェイクか
9.11のテロの首謀者といわれたビン・ラディンが腎臓病で透析を受けており死にかけている―――だとか、各地を転々と逃げ回っていたイラクのサダム・フセインが重病だ、といった話は、各国の情報機関などからの物を含め頻繁に流されていたし、近くは太り過ぎの金正恩の余命がもう数年もない―――という情報もあったが、ビン・ラディンにせよフセインにせよ結局、その後何年か生き続け特殊部隊が隠れ家を襲撃し実際に銃撃するまでその影響力を行使していたし、金正恩などは、いくらかのダイエットはしたかも知れないが、相変わらず権力を一手に握っており、ここ連日はドカン、ドカンとミサイル連射を続けてご満悦な様子で、そうそう近日中に死ぬとは思えない。
ウクライナ侵攻（いつの間にかウクライナ戦争というところもでてきているが）を進めるプーチンが白血病で死に前だとか、パーキンソン病で、もうダメだろう、などといういう情報が西側の複数の情報機関から連日流されているが、これもビンラディンや金正恩情報と同じ類の「そうあって欲しい！」という思いが膨らませた妄想、ガセである可能性だってありそうだ。
何せ世の中には今やフェイクニュースが溢れかえっており、しかも困ったことに、何がフェイクで何がリアルな情報なのかを確かめる方法がないのだから始末に悪い。しかも実に多数の情報とやらが、連日山のように押し寄せるのだから―――もはやウクライナに関してはニュースなど見ない方が混乱しないで済みそう打とすら思う。
今現在、物価高に悲鳴を上げていると言われるロシア国民だが、本当に生活が苦しくなってきているのか、えん戦気分が高まってきているとも報じられるが本当なのか―――ニューヨークやロンドン、あるいは東京にいる西側市民が実態を知りようがなく、マスコミからの報道を疑いながらも頼りに判断するしかないのだから、プーチンが行き詰ってきているかどうかなどということの判断は、しようがないのが本当だろう。
そう考えると、テレビにでてきてああだこうだと解説する学者やらコメンテーターと称する人々は、よく恥ずかしげもなくやれるなぁ～とある意味感心もするが―――。
（6/07/22 11:00pm S.T）
2022年6月7日
プーチン支持派
ウクライナ侵攻を続けるロシアに対抗して西側諸国がウクライナ支援に回ることによって、ウクライナで起きていることは、強権国家対民主主義国の代理戦争の様相を呈している。
強権国家の象徴となっているロシアと、ロシアに似て習近平の独裁色を強める中国では、圧倒的多数の国民がロシア支持、ウクライナ非難の世論を形成しており、ロシアに対して批判的な意見を述べる事は、非国民扱いを受けることを覚悟するか、場合によっては命の危険すら伴うともいわれている。「鬼畜米英」の世論で凝り固まっていた太平洋戦争時の日本と変わらない情況なのだろうと推測される。民主主義国側にいて、ロシアの侵攻は許し難いという世論の大勢の中にいる我々からは、「侵略する側を支持するなんて～」とロシアや中国の世論は、ちょっと信じがたい思いもするがなぜこんなことになるのかと考えてみた。
勿論、強権国家ならではの自由な報道を徹底的に制限し、体制側のプロパガンダプロパガンダ（特定の思想・世論・へ誘導する意図を持った行為） の成果が大きいのだろうが、それは、体制支持のプロパガンダを求める人々が多くいて、そのプロパガンダと違う意見を嫌っているからと考えることも出来る。すなわちロシアや中国では、根本的に人々は今の体制側の居心地がよいから（嫌いだからといって簡単に逃げられないからということもあるが）―――ということではないだろうか。
ロシアに於いては、かつてのソ連時代には100％の人々が国家の下で日々の生活の糧を得ていたが、ソ連崩壊後の現在でも政府関係者、公務員、大学関係者、教職員、年金生活者、財閥傘下企業の従業員が、いわゆる現体制によってその生活の糧を得ている。家族を含めて国民の約2/3は、体制すなわちロシア政府が潰れてしまっては、明日の糧にも困る―――となれば、ほんの一部の知識人や、既に海外に逃れてそこで自立している一握りの人たち以外は、プーチン一人が失脚するだけならともかく、今現在の「ロシアの体制」が崩れ、そこにEUやNATOが入ってきて、「今の体制は全てチャラにして、一から作り直す！」なんて言い出したら大変だ！という恐怖心があるから、本能的に「プーチン支持！」とならざるを得ないのだ。
中国が「共産党支持、習近平万歳」となるのも同じ理由であって「自由だ、民主主義だ」と叫んでみても国内にいる限り、食うに困るし家族を養えない、となったらどうしても「体制支持」に走るのは当然なのではないだろうか―――。
（6/06/22 11:00pm S.T）
2022年6月6日
ブルとベア
相場用語でブル（雄牛）とかベア（熊）という言い方をするが、これは雄牛は角ので突き上げて攻撃するが、熊は前足で掻きこんで攻撃することからきており、ブルとは強気相場、ベアとは弱気相場のことをいう。
ニューヨーク証券取引所の前の広場にある巨大な雄牛の像は、証券会社メルリリンチのロゴであるが、これは強気相場が好きな株式関係者の間で好まれており、かつてこの雄牛像撤去騒動があった時には、証券関係者のみならずニューヨーク市民からも大反対運動が起きて撤去中止になったという。
もっともブル人気はあっても、ベアをロゴにしようという証券会社はまだ聞いたことがない。
そういえば、「空手バカ一代」の大山倍達も、雄牛を一撃で倒したという伝説はあるが―――弱気の象徴である熊を倒したという話がないのは、多分弱気の象徴の相手を倒しても、自慢にはならなかったからだろう――――。
北海道で5月中にヒグマによる人身事故が何件か起きたというニュースがあった。最近は暖冬であったり、エゾシカが増えていることでヒグマの冬場の食糧も結構あり冬眠しないで済むクマというのもいるらしいが、基本的には熊は、エサの乏しい冬場には冬眠して、雪解けとともに目覚めて、又来るべき冬に向かって猛烈にエサを食べて体重を増やし冬眠に入るので、春には冬眠から覚めて腹の減っている熊がエサを求めて人里にでてくることがあるのが理由らしい。
熊は、冬眠中は、排尿や便を一切しないでひたすら代謝を下げて眠っているというのだから、「夜中に何度も、何度も―――」などというオジサンたちにとっては実に羨ましい驚異的な生き物である。
熊は人間とおなじ哺乳類でしかも巨体であるのになぜ半年も眠り続ける事ができるのか―――（メスはその間に出産までするという）――――実に不思議な哺乳類だ。
（6/05/22 11:00pm S.T）
2022年6月3日
東坡肉
“春宵一刻値千金”（春の宵のすばらしさはほんの一時であっても千金に値する）という漢詩「春夜」で知られる蘇東坡（そとうば）は、北宋の文人んで優れた書家、画家、大政治家としても知られた人物だが、タカさんが一番感心するのは中国料理の名品の一つである「東坡肉」（トンポーロー）を考案した―――という異例中の異例な人物であることだ。
レタスをメインにしたサラダであるシーザーサラダが、このサラダを初めて作ったメキシコのシェフのシーザーさんの名前をとったものだとか、ハヤシライスがこの料理を始めたハヤシさんの名を冠している―――というように料理に個人名を残している人物は幾人かいるが、今から1000年も前の中国の著名文人で、今も中国料理に欠かせない一品の考案者として名を残す人物というのだから凄い。
彼はこの料理が余程好きだったと見えてその賛歌を漢詩にもしている。
黄州好猪肉(黄州猪肉は良い)/價賤等糞土.（値段は安く糞土に等しい）/富者不肯喫(金持ちは食べようともしないし) /貧者不解煮（貧者は煮方を知らない）/慢著火少著水(おもむろに火にかけ、少し煮て)/火候足時他自美(程よく火が通ればうまい具合に仕上がる)/毎日起来打一碗(毎日起き掛けに一碗づつ食う)/飽得自家君莫管(自分で満足できれば他人がとやかく言うことはない)
台湾の故宮博物館で、見学の時間が限られているとしても、これだけは見ておくべきとされている「神品至宝」とされているのが玉髄という鉱物でできた「東坡肉」だ。（翡翠でできた白菜とともに飾られている）
鉱物でできているとはいえ、そのみずみずしさと言い、艶と言い、なんとも美味しそうで本物の東坡肉と見まがうような代物だが、この至宝も蘇東坡の漢詩に啓発されて作られたものらしいから、蘇東坡のレシピ詩の影響力はすごいものだ。
先日行った中華の店では「東坡肉はありますか」と聞いたところ東坡肉はないが豚角煮ならある、との答えが返ってきた。東坡肉は皮がついているが豚角煮は皮なしであるのだが―――やっぱり本場物の方が遥かに美味いだけに食べないでしまったが―――どこかに本物の東坡肉がないものだろうか。
（6/02/22 11:00pm S.T）
2022年6月2日
雷電
横綱照ノ富士の孤軍奮闘の優勝によってどうにか面目を保った形の大相撲五月場所だったが、美学で成り立っているともいえる大相撲が、台無しになりかねないほどの苦境に陥った原因は大関三人の体たらくである。
三人の大関の内かろうじて千秋楽に勝ち越しに漕ぎつけたのが貴景勝一人だけで、残る二人の内、御嶽海が6勝9敗、正代に至っては5勝10敗という酷さで来場所「カド番」となるというのだから相撲の美学が好きなタカさんとしてはがっかりというよりは腹が立つひどさだ。
その地位まで上がれば勝ち越してはいても10勝あるいは11勝をあげていなければ引退するしかないといわれる横綱と違って、大関は2場所連続で負け越さなければその地位が安泰で、2場所連続で負け越しても引退までは強要されず大関を陥落しても次の場所で10勝上げれば再昇格できるという特例迄あって優遇された立場でもある。その優遇策に甘えているとしか思えない大関連中の体たらくはあまりにも不甲斐ない。
そういえばつい最近大関を陥落したのは昨年7月の名古屋場所中に新型コロナ対策ガイドラインに違反し、連日飲み歩いていたという大関朝の山が不品行を理由に6場所出場停止処分を受けて陥落以来ということになるが、負け越しによるカド番のみっともなさ以上に不品行による陥落というのも大関という地位の重さを踏みにじる行為だ。朝乃山のファンでもあるだけにタカさんは、忸怩たる思いだ。
ダメ大関ばかりの今の大相撲だが、今から200年ほど前の大関雷電爲右エ門は、史上最強の大関といわれている。当時は、今の様に年6場所ではなく年２場所しかも1場所10日間であった時代に、現役生活21年、本場所在籍36場所（大関在位27場所）で、通算黒星が10個、勝率.962という未曾有の力士だったという。そんなに強かったのに、彼が横綱になれなかったのは土俵上で投げ飛ばした相手が二人もそのケガが下で死んでいることが理由だというから凄い。しかも、彼は48手のうち「鯖折り」と「かんぬき」という技は禁じ手として封じられていた（この技で骨折し引退に追い込まれた力士がいたという理由で）というのだからますます凄い。
赤坂のお寺に雷電の墓があり何度か行ったことがあるが―――3人の大関と朝の山も是非一度お参りでもして欲しいものだ。
（6/01/22 11:00pm S.T）
2022年6月1日
あだ名
タカさんが小学生の頃に流行った春日八郎の「お富さん」の歌詞に出て来る「切られの与三」は、歌舞伎の世話物「与話情浮名横櫛」（よわなさけうきなのよこぐし）の中に出て来る登場人物で、お富さんと割りない仲になった商家の若旦那与三郎のことだ。
彼は、お富さんと密会していたところ、お富さんが世話になっているその筋の男にめった切りにされ、その時の顔の傷から「切られの与三」というあだ名で呼ばれてるようになった男だ―――。
顔に傷のある色男で、今は落ちぶれてゆすりたかりで暮らしているとは言え名前が「切られの与三」というのだから――女性客ならぞくっと来るスター級のピカレスクだ。
与三郎のあだ名が「切られの与三」というのだから確かに蔑みの呼び名ともいえるが、今でいうなら「カッコイイ」名前とも取れなくはない。
今、小学校では生徒同士が、「あだ名」で呼んだり「呼び捨て」にしたりせずに、「さん付け」するようにと指導する学校が増えているという。あだ名が、いじめにつながるケースがあるからだそうで、お互いを「さん付け」で呼ぶようにという指導がなされているということだが―――。
確かに幼稚園までは、「マーちゃん」「みっちゃん」「ゲンちゃん」などと呼ばれていて、そのあだ名をタネに一度や二度からかわれた経験をしていた子供たちが、「鈴木さん」「中村さん」などと呼ばれるようになればちょっとお姉さん、お兄さんになった気分になれるかもしれないが―――そのためにかつてお互いをを「マーちゃん」「みっちゃん」と呼び合っていた時の、親密さは失われてしまいはしないか――ともおもわないではない。
冒頭の歌舞伎の、与三郎の名セリフに与三郎がお富さんににじり寄っていくときに言うことば、「ご新造さんへ、おかみさんへ、お富さんへ、いやさ お富、久しぶりだなぁ～」という名セリフがあるが、最初の呼びかけ（ご新造さん）には他人行儀さがあり、それから、段々親しみを増したよびかけになり―――最後の「いやさ お富」で昔の深い男女関係だった頃に戻る―――という段取りが名セリフたるゆえんであってこれを「お富さんへ、お富さんへ、お富さんへ―――」というさん付けだけにしてしまっては―――選挙カーの連呼と変わらなくなってしまう―――なんておもってしまったのだが。
（5/31/22 11:00pm S.T）
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